- 著者
-
津村 幸治
原 辰次
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
量子化データを用いたシステム同定:量子化された入出力データを用いたシステム同定に取り組み,最適量子化器の導出を通して,システム同定に必要な情報量を導出した.本研究では量子化データを用いたシステム同定において合理的な誤差規範について考察し,その妥当性について議論した.特に入力データの生成を確率的に,誤差評価はhard boundを用いた場合,最適量子化器は,確率的アプローチによる最適量子化器と,指数型量子化器とのハイブリッド型となることを示した.ネットワークド制御:信号の伝達に制約のあるネットワークド制御問題について幾つかの結果を得た.容量の異なる複数の通信線を用いたサブバンド符合化問題,対数型量子化器を用いた場合の制御性能問題について結果を導出した.また制御対象が未知の場合の適応制御について,離散時間系,連続時間系の場合について,量子化された信号を用いた安定化適応制御器を導出した.最後に,通信において伝送信号がロスするというパケット落ちがある場合について,様々な場合についての結果を得た.メモリ容量制限下におけるシステムの近似と安定化:動的システムの複雑度の指標として,その状態変数が量子化されたビットメモリシステムの,ビット長を用いることを提案した.その上で,ビット長に制約のある近似問題および安定化問題を考え,近似問題においては,与えられた近似誤差を達成するのに必要なビットメモリ長の下限と上限について,安定化問題においては,安定化を達成するのに必要な制御器のビットメモリ長の上限について,解析的に与えることができた.ネットワーク輻輳制御:TCP/IPを用いたコンピュータネットワークシステムにおける,伝送パケットの流れの輻輳を制御する問題を考えた.有限バッファを持つボトルネックで待ち行列となるモデルを導入し,列長を安定に制御する問題を考えた.従来,安定化の問題についての結果が知られているが,ここでは安定化制御器のパラメトリゼーションを与え,最適制御器を導出した.制御性能限界を示すことにより,TCP/IPを用いたネットワークシステムのより良い構造的特性について明らかにした.