著者
トモリ アキラ 鈴木 宏隆 浦山 益郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.598, pp.87-94, 2005
被引用文献数
1 3

1.研究の背景・目的 ため池は灌漑用に築造された農業用施設である。都市化に伴い、多くのため池は灌漑用水としての利水機能を失いつつある。しかし、利水機能だけでなく治水機能、オープンスペース機能、余暇のための空間提供機能、動植物生息機能など多面的な機能をもっており、都市環境の質的向上に資する可能性をもっている。ため池に関する研究としては、灌漑施設としての水管理に関するもの、老朽ため池の整備に関するもの、ため池の分布や都市化によるため池の改廃に関するものが多い^<2)〜6)>。ため池を都市の環境資源としてみた研究は、中山^<7)>、浦山ら^<1)>、客野ら^<8)>など少ない。また、ため池の水辺における使われ方を分析したものは森ら^<9)>程度であり、都市環境資源としてため池を活用するための設計指針は少ない。そこで、本研究ではため池を活用した公園整備のための知見を得ることを目的に、ため池のある公園とない公園の利用実態を調査し、特にため池の水辺で行われる余暇活動の特徴について明らかにしようとしたものである。2.研究の方法 名古屋市内のため池のある細口池公園とため池のない植田中央公園(図1)を対象に、2004年10月の平日と休日に観察調査とインタビュー方式のアンケート調査を行った(表1・2)。細口池公園は地区公園、植田中央公園は近隣公園に指定されているが、住宅地と中学校が隣接しており、遊歩道、プレイグラウンド、プレイフィールドなど同様の施設をもっていること、両ため池とも近隣からの利用者が多いことなど類似性が高い。相違点としては、公園の規模、ため池の有無である。3.両公園における余暇活動 1)余暇活動の種類 両公園の利用実態を把握するため、散歩、動的活動(ジョギング・スポーツ・友達と遊ぶ・子供と遊ぶ・虫取り)、静的活動(休憩、食事・ピクニック・読書・おしやべり・デート昼寝・緑を眺める・花を眺める・池を眺める・鳥を眺める・動物を眺める・虫を眺める)の3種類に分けて、午前6時から午後5時40分の間、20分ごとに活動位置を地図上にプロットした。細口池公園では休日に延べ4463、平日に延べ1607、植田中央公園では休日に延べ3040、平日に延べ1768の活動が観察できた。両公園ともに休日の利用が多い。また、ため池のある細口池公園では散歩が多いことがわかった。2)余暇活動の種類別に見た空間特性図6のようにゾーンごとに余暇活動を集計した結果、プレイフィールドとプレイグラウンドでは、両公園とも動的行為が集中していた。両公園の違いは、遊歩道を含む堤防エリアにみられた。細口池公園の堤防(水辺空間)では散歩や静的活動、動的活動が多様に行われていた。また、散歩の活動数は植田中央公園周辺の堤防エリアに比べると約3倍もあり、ため池の水辺には利用者が多いこと、利用時間が長いことを示している。4.余暇活動の類型化とその特徴 1)両公園における活動 公園の利用内容を把握するために、表2の選択肢を用意して、インタビュー方式によって複数選択の回答を求めた。両公園の相違点は、細口池公園に散歩および景観を享受する行為である緑を眺める、花を眺める、池を眺める、鳥を眺める等の静的活動が多いことである。一方、植田中央公園では、広いプレイフィールドがあることからスポーツと子供と遊ぶという利用内容が多かった。2)活動の類型化 利用内容21項目をクラスター分析した結果、表3のように7つに類型化できた。類型1(散歩)と類型2(スポーツ)は単一目的の活動類型である。類型3は、散歩+花を眺める、類型4散歩+緑+池を眺める、類型5は散歩+緑+花+池+鳥を眺める、類型6は散歩+おしゃべりのように、複数の活動を行っている類型である。類型7はその他である。類型3〜5(散歩しながら周囲を眺める行為)は、ため池のある細口池公園に特化した余暇活動であることが注目される。3)類型別に見た活動の特徴 活動類型別に利用者属性をみた(表4)。類型1と類型3〜6は、50才代・60才代の中高年齢層が毎日あるいは週に数回、一人で行う日課的な余暇活動であり、細口池公園に多い類型である。一方、類型2と7は若い層が多く、週に数回あるいは月に数回訪れるような余暇活動であり、植田中央公園に多い活動類型であった。4)類型別に見た公園を利用する理由 細口池公園に多い類型1および類型3〜6には、「周辺に緑が多いから」や「鳥や花があるから」を選択するものが多く、散歩できる機能と同時にため池の景観機能を求めてやって来る類型ということができる。5.結論 1)公園内に設けられた施設(プレイフィールドとプレイグラウンド)は動的目的の活動に利用されている。2)ため池周辺の水辺空間は散歩によく使われている。同時に静的活動にも動的活動にも多様に利用されている。3)公園の使われ方を活動の組み合わせによって類型化すると単一目的2つ、多目的の利用5つの合計7つに類型化できた。4)類型1、類型2、類型6と類型7は両公園でみられたが、散歩しながら周辺を眺める活動である類型3〜5はため池のある細口池公園に特化した利用であった。5)類型3〜5の利用理由は、「周辺に緑が多いから」、「花や鳥があるから」と「水面があるから」などため池のもつ特性を享受しようとしたものである。6)以上のことから、ため池を活かした公園整備をするということは、これらため池のもつ便益を享受できるような利用を可能にすることということができる。
著者
松浦 健治郎 日下部 聡 横田 嘉宏 山口 庸介 浦山 益郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.588, pp.87-94, 2005-02-28 (Released:2017-02-11)
参考文献数
32
被引用文献数
4 2

This paper aims to clarify how to form Civic Center in Castle area in relation to Castle-Towns basis analyzing cases of prefectural capital 17 Cities based on Japanese Castle-Towns from Meiji and Taisho era to the early Showa era. Findings are as follows: 1) Government and municipal offices tended to be dispersed, 2) The whole government and municipal offices tended to be located outside Castle area, but those which formed Civic Center tended to be located inside Castle area, 3) Paying attention to "Class" and "Axis" as space elements of making Castle area, as a result of analyzing relationship between those and Civic Center, we discover various Urban Design method of Civic Center such as Discrimination by locating Prefectural office in the site of the main enclosure of a castle and making identified and symbolic Urban Space by locating government and municipal offices together along moat or skirts of a mountain or main streets.
著者
松浦 健治郎 二之湯 裕久 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 第42回学術研究論文発表会 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
pp.75, 2007 (Released:2007-11-06)

本研究は、近世城下町を基盤とする府県庁所在都市30を対象として、戦前の府県市庁舎が敷地内に保存された場合に、1)城下町基盤を活用した都市デザインが影響を及ぼしているのか、2)新庁舎をどのように増築しているのか、を明らかにするものである。 明らかとなったのは、1)「建築空間」の保存については、建築的条件(罹災が無いこと・耐火造・建築年が昭和以降)と立地的条件(敷地面積)が主要な要因となっていること、2)「都市空間」の保存については、都市デザイン的条件(主要街路のアイキャッチ・堀沿い等)が主要な要因であること、3)庁舎を保存するための工夫として、「新庁舎の高層化」・「重要な部分の保存」・「新庁舎を郊外に移転」の3つの手法が確認されたことである。
著者
松浦 健治郎 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.917-922, 2006

本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
著者
松浦 健治郎 二之湯 裕久 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.445-450, 2007-10-25
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は、近世城下町を基盤とする府県庁所在都市30を対象として、戦前の府県市庁舎が敷地内に保存された場合に、1) 城下町基盤を活用した都市デザインが影響を及ぼしているのか、2) 新庁舎をどのように増築しているのか、を明らかにするものである。明らかとなったのは、1) 「建築空間」の保存については、建築的条件(罹災が無いこと・耐火造・建築年が昭和以降)と立地的条件(敷地面積)が主要な要因となっていること、2) 「都市空間」の保存については、都市デザイン的条件(主要街路のアイキャッチ・堀沿い等)が主要な要因であること、3) 庁舎を保存するための工夫として、「新庁舎の高層化」・「重要な部分の保存」・「新庁舎を郊外に移転」の3つの手法が確認されたことである。
著者
松浦 健治郎 横田 喜宏 日下部 聡 浦山 益郎 佐藤 滋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.581, pp.67-74, 2004-07-30 (Released:2017-02-09)
参考文献数
59
被引用文献数
5 3

This paper aims to clarify how to form Civic Center for Urban Renewal analyzing cases of prefectural capital 27 Cities based on Japanese Castle-Towns in the Meiji and Taisho era Findings are as follows 1) Government and municipal offices tended to be nearby castle and gather each other to form Civic Center, 2)Just after replacing feudal domain system with prefecture system and operation of city organization sysytem, there were many cases of conversion of existing institutions to prefectural offices and city offices, 3)Nearby Civic Center, Castle Renewal such as reclaiming moats and creating new roads was done in many cities
著者
井沢 知旦 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1021-1026, 2002-10-25 (Released:2017-11-07)
参考文献数
12

この論文は、一級河川五条川を対象に、住民組織と自治体とがパートナーシップを組んで河川環境を改善し、管理運営している事例の分析を通じて、公共空間の公共一元管理から地域共同管理・運用への移行の可能性を明らかにしたものである。結論は次の通りである。(1)身近な川の環境改善に向けて市民有志が取り組み始めたことを契機に、(2)目的的組織を立ち上げ、広く市民を巻き込んで活動し、実績を積み上げていく中で、市民と行政の信頼を得、(3)住民組織と行政のパートナーシップによって、河川管理者に、地域の要望をつきつけるだけでなく、自らの企画力と行動力で公共空間の整備および管理・運用に関わる高い活動力を認知させることが可能となった。
著者
松浦 健治郎 巌佐 朋広 浦山 益郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.41.3, pp.917-922, 2006-10-25 (Released:2018-06-26)
参考文献数
24

本研究は、39道県庁所在都市を対象として、明治・大正期における官庁街の立地特性及び都市デザイン手法を明らかにするものである。明らかとなったのは、1)近世城下町都市では城郭地区内に官庁街が形成され、それ以外の都市では主要街路沿い又は主要街路沿いに位置する商業地区の裏手に形成されること、2)城郭地区立地型・主要街路沿い立地型で主要街路を活用した4つの都市デザイン手法がみられたこと、3)主要街路から直交する引き込み街路を活用した4つの都市デザイン手法が商業地区裏手立地型で多くみられたこと、4)主要街路又は引き込み街路のアイキャッチに官公庁施設を置く都市デザイン手法は官庁街の立地特性や都市の成立起源に関わりなく、明治・大正期に広く用いられた都市デザイン手法だったこと、である。
著者
浦山 益郎
出版者
三重大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究は、都市近郊に存在する農業用ため池を居住環境資源として位置づけ、その整備・保全・管理の方向性を探るために、ため池の公園的整備が進められている愛知県東海市と農業用ため池として半自然的環境を形成している三重県津市を対象地域として、ため池が持つ居住環境資源としての可能性、住民の利用実態と評価を通してため池の利用効果・存在効果およびため池整備に対するニーズを調査分析したものである。東海市に55箇所、津市に81箇所のため池がある。市街化区域にはそれぞれ18箇所、10箇所であるが、都市公園のスキマに位置しており、都市空間における公園機能を補完する地理的条件を有している。また、市街化調整区域のため池は、周辺の農地や林地と共に都市空間を取り巻く半自然的環境を構成する要素となっている。ため池の整備形態の違いによる効果と問題点を明らかにするために、公園的整備の有無と周辺100mの範囲の土地利用構成からため池の類型化を行い、典型的なため池を10箇所選定し、周辺居住者にアンケート調査を行った。結果を要約すると、公園的整備されたため池は多くの住民に利用されているが、農地や林地に囲まれた未整備状態のため池はほとんど利用されない。周辺に宅地が多くなるほど利用するものが増える。利用されない第一の理由は利用できるように整備されていないことであるが、危険・汚い・アクセスしにくいことも周辺住民の足を遠ざける要因となっている。しかし、ため池の存在自体が否定されているのではなく、むしろため池を積極的に評価している住民が多い。それはため池が利用効果だけでなく、開放性・日照などのオープンスペース機能、生態系保全機能などを持っているためである。その場合、利用効果と同時に存在効果を高めるような整備のニーズが認められる。
著者
神谷 文子 浦山 益郎 北原 理雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.179-186, 2000
参考文献数
15
被引用文献数
16 1

Tourist guide book is a text that shows us the popular images of townscape. This study tryes to find a rule of the composition of sightseeing photographs analyzing 462 photos selecting from 4 tourist guide books. Results are as follows : The view and distance between elements scribed in sightseeing photos are decided from the shape of main subjects, which are classified a dot type, a liner type and a surface type. Furthermore, the structure of them is affected by the composition of main subject and sub elements, which can be classified 5 groups through Hayasi' s qualification theory type III.