著者
深澤 俊行 菊地 誠志 濱田 毅 田代 邦雄
出版者
日本炎症・再生医学会
雑誌
炎症 (ISSN:03894290)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.209-213, 2000-05-29 (Released:2010-04-12)
参考文献数
18

The clinical features of MS in Japanese are said to be characterized by high incidence of optico-spinal MS (OS-MS), although the frequency of it has recently decreased. The term OS-MS is used to describe a subgroup of patients diagnosed with MS, in which the clinically determined lesions are confined to the optic nerves and the spinal cord. The OS-MS is characterized by a female preponderance, a later onset, a higher score of the expanded disability status scale of Kurtzke (EDSS), milder abnormalities on brain MRIs, higher sero-positive rates for some autoantibodies, and higher cell counts and protein levels in the cerebrospinal fluid, compared with conventional MS. The OS-MS is positively associated with HLA-DPB1*0501 allele, and the HLA prohile are different between OS-MS and conventional MS. Therefore, the OS-MS is immunogenetically as well as clinically a distinct subtype of MS.
著者
深澤 俊貴 岩上 将夫 原 梓 漆原 尚巳
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.39-55, 2023-10-31 (Released:2023-12-04)
参考文献数
55
被引用文献数
1

日常的に収集されるリアルワールドデータからエビデンスを創出し,医療や薬事規制の意思決定に役立てることに関心が寄せられている.リアルワールドデータを用いた縦断研究デザインは複雑であり,文章だけの説明では読者がその詳細を理解するのに苦労することが多い.この問題に対処するために,2019 年,薬剤疫学を国際的に牽引する研究者らが産官学から集結し,縦断研究デザインを可視化するフレームワーク「デザインダイアグラム」を開発した.デザインダイアグラムは,標準化された用語とグラフィカルな構成を用いて,読者に研究デザインの詳細を明確に伝えることを目的としており,これにより研究の再現性(reproducibility)が向上すると期待される.国際薬剤疫学会と国際医薬経済・アウトカム研究学会の合同タスクフォースによる過去の成果を基に,ダイアグラムには研究の再現性のカギとなる重要な設定項目が包括的に組み込まれており,研究デザインを曖昧さのない直感的な方法で可視化することに成功している.コホート研究,ネステッド・ケース・コントロール研究,自己対照研究のそれぞれに対して,個別のダイアグラムが提案されている.また最近では,研究に用いたデータの観測可能性をも可視化する新たなダイアグラムが考案された.リアルワールドエビデンス研究のプロトコルテンプレート(HARPER)や,薬剤疫学研究の報告ガイドラインの中でも,研究計画および結果報告の各段階において,デザインダイアグラムの使用が推奨されており,今後さらに普及することが予想される.本稿では,デザインダイアグラムの構成を解説するとともに,そのユースケースを紹介する.デザインダイアグラムの効果的な活用により,データベース研究の再現性と信頼性が向上することを期待したい.
著者
深澤 俊貴 田中 佐智子 川上 浩司
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.777-781, 2022 (Released:2022-08-01)
参考文献数
13

医療データベース(DB)を用いた観察研究の発展には、目を見張るものがある。情報技術革新に支えられた大規模DBの構築と柔軟かつ高度な疫学手法の掛け合わせは、リアルワールドにおける医薬品の使用実態調査、および有効性や安全性の評価をタイムリーに実現させている。本稿では、診療報酬請求情報(レセプト)DB、Diagnosis Procedure Combination(DPC)DB、電子カルテDBを中心に解説するとともに、それらを用いた観察研究を紹介する。
著者
深澤 俊
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.77, pp.109-130, 2013

デイヴィッド・ロッジの『作者だ、作者』は、文学史上の大人物であるヘンリー・ジェイムズを素材に、伝記ではなく小説として作りあげたものである。ジェイムズは一時期、劇作家として表舞台に出ることを望んでいたが、戯曲『ガイ・ドンヴィル』公演初日に「作者だ! 作者!」の歓声に応えて舞台に立つと、ひどいブーイングにさらされて衝撃を受け、以後劇作家の道を断念する。そしてジェイムズは、後期の偉大な小説群を生み出すことになる。ロッジはこの事実に焦点を当て、当時の売れっ子であったデュ・モーリェとジェイムズとの交流に比重をかけて小説化した。この小説の背景となるヴィクトリア朝の演劇事情、大当たりをとったデュ・モーリェの小説『トリルビー』に言及しながら、ロッジの小説に込めたメッセージを解きほぐす。
著者
宮崎 雄生 新野 正明 深澤 俊行 高橋 恵理 野中 隆行 越智 龍太郎 南 尚哉 藤木 直人 土井 静樹 菊地 誠志
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.357a, 2014 (Released:2014-10-07)

【目的】Sirtuin-1(SIRT1)はヒストン脱アセチル酵素であり,神経保護や脂質代謝などへの関与が報告されている.本研究ではヒト単球のIL-10制御におけるSIRT1の役割を検討した.【方法】健常者末梢血から精製した単球を用いLPSまたはIFNβで刺激後にSIRT1遺伝子発現を定量した.健常者,無治療multiple sclerosis(MS)患者,IFNβ治療MS患者の単球におけるSIRT1発現を定量した.単球のIL-10産生に対するresveratrol(SIRT1活性化剤),EX527(同抑制剤)の作用を検討した.【結果】単球におけるSIRT1発現はLPSで低下した一方,IFNβで上昇した.単球におけるSIRT1発現に健常者と無治療MS患者間で差は確認できなかったが,IFNβ治療患者で無治療患者より高い傾向が見られた.ResveratrolはLPS刺激に対する単球のIL-10産生を増強した.IFNβは単球からのIL-10産生を増強したが,この作用はEX527によりキャンセルされた.【結論】SIRT1は単球のIL-10制御に関与しており,IFNβによるIL-10産生増強にも関与することが示唆された.SIRT1は神経変性疾患動物モデルにおいて神経保護作用が報告されており,神経と免疫双方が関与する疾患であるMSにとって有用な治療標的であると予想される.
著者
深澤 俊
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.77, pp.109-130, 2013-10-10

デイヴィッド・ロッジの『作者だ、作者』は、文学史上の大人物であるヘンリー・ジェイムズを素材に、伝記ではなく小説として作りあげたものである。ジェイムズは一時期、劇作家として表舞台に出ることを望んでいたが、戯曲『ガイ・ドンヴィル』公演初日に「作者だ! 作者!」の歓声に応えて舞台に立つと、ひどいブーイングにさらされて衝撃を受け、以後劇作家の道を断念する。そしてジェイムズは、後期の偉大な小説群を生み出すことになる。ロッジはこの事実に焦点を当て、当時の売れっ子であったデュ・モーリェとジェイムズとの交流に比重をかけて小説化した。この小説の背景となるヴィクトリア朝の演劇事情、大当たりをとったデュ・モーリェの小説『トリルビー』に言及しながら、ロッジの小説に込めたメッセージを解きほぐす。