著者
清水 英範 布施 孝志 中田 真人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.473-492, 2008 (Released:2008-09-22)
参考文献数
66
被引用文献数
3 2

広重や北斎などの江戸の風景画には,富士山や江戸湾などの地形や江戸城の眺望を巧みに取り入れた素晴らしい都市景観が数多く描かれている.しかし,これらの風景画の多くは名所絵であり,江戸の都市景観の実態は,現代に至るまで,ほとんど明らかにされていない.本研究では,江戸絵図を基礎資料として,当時の都市景観をビジュアルに再現するための方法論を構築した.具体的には,江戸絵図の幾何学的な歪みを補正し,明治時代の東京の地形データと現代の広域地形データを統合し,さらに,江戸市中や江戸城の建造物について,主に高さ情報の時代考証を行った.そして,これらの成果を総合して,富士山や江戸湾,江戸城などの眺望を考慮に入れた,江戸の都市景観再現CGを構築した.
著者
清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1-I_20, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
94
被引用文献数
3 3

建築家ヴィルヘルム・ベックマンが明治19年(1886)に立案した東京の都市計画(東京計画)は,国会議事堂の位置を,現在と同じ永田町の丘に示した初めての都市計画である.しかし,この事実は歴史に埋もれ,これまで研究の対象とされてこなかった.本研究は,国会議事堂の位置選定に主眼を置いて,ベックマンの東京計画を初めて詳細に論じ,主に次のような事実を明らかにした.1) 彼の議事堂の位置選定は,当時の政府の方針や新聞・雑誌の報道とは異なる,斬新なものであった,2) それは,彼の確固とした意思と見解,そして,東京の地形への確かな理解に基づくものであった,3) 議事堂の位置を永田町の丘としたことは,放射状道路網の線形設計をはじめ,彼の東京計画全体に支配的な影響を与えた.
著者
清水 英範 布施 孝志
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-18, 2010 (Released:2017-11-29)
参考文献数
20

広重や北斎などの江戸の風景画には、富士山や江戸湾などの地形や江戸城の眺望を巧みに取り入れた素晴らしい都市景観が数多く描かれている。しかし、これらの風景画の多くは名所絵であり、江戸の都市景観の実態は明らかにされていない。本研究では、江戸絵図を基礎資料とし、その幾何学的な歪みを補正し、明治時代の東京の地形データと現代の広域地形データを統合し、江戸市中や江戸城の建造物について高さを中心としたモデリングを行い、江戸の都市景観を再現した。主に、富士山や筑波山、江戸湾、江戸城などの眺望景観の再現結果に対して、風景画などとの比較を通し、その解釈を与えることにより、江戸の都市景観の実態を紐解くことを試みた。
著者
布施 孝志 安井 仁 清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.496-504, 2006 (Released:2006-09-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

江戸市中における景観において,富士山等の遠地形は重要な要素の一つであったといわれている.しかしながら,史料に記述された地点以外における遠地形の視認可能性は,これまでのところ議論されていない.本研究では,当時の人々の眺望対象であった遠地形が江戸市中のいかなる地点から視認できたか,その可能性について分析を行うことを目的とする.最初に,古地図の幾何補正を行い,デジタル地形モデルを作成する.更に,視認可能性の分析にとって重要となる構造物の高さデータを整備する.これらのデータを用い,江戸市中からの富士山等の可視マップを作成する.その結果,史料に記載の見られない江戸各所からも富士山視認の可能性のあることが明らかとなった.
著者
清水 英範 堤 盛人 森地 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

(1) 基準点となりうる地物の整理江戸朱引内全域にわたり、古地図と現代図との目視による対照を行い、TINの位相を保持している基準点となる地物300点を整理した。(2) TINを拡張した幾何補正手法の有効性と限界の確認TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法を従来の常套手段である多項変換等と比較し、その有効性を確認した。また、TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法の限界を例示し、TINと多項変換を統合した幾何補正手法との比較も行った。本研究においては線形街路の多い江戸城下町を対象としていることから、TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法を用いている。(3) 古地図分析支援システムに要求される機能の確認都市計画史等の文献を調査することにより、古地図分析支援システムとして要求される機能を確認した。(4) 古地図の土地利用図の作成TINとアフィン変換を統合した幾何補正手法により天保御江戸絵図(1843)を朱引内全域にわたり幾何補正し、大名屋敷や神社・仏閣などの土地利用ごとにポリゴン化した。これにより、現在の文京区に相当する地域の土地利用図の作成を行った。(5) 古地図分析支援システムの有効性の確認幾何補正した古地図の構成要素をベクター化することにより、古地図の定量的分析を支援することが可能となる。さらに、現代のGISデータを用い、当時の空間的状況と地形との関係を分析することが可能となる。(3)において確認したGISの機能を用い、(4)において幾何補正した天保御江戸絵図を対象に、主要街道の縦断線形の分析、標高・地形と土地利用の関係の分析、眺望に関する分析を行い、システムの有効性を確認した。眺望に関する分析においては、CG技術を用い鳥瞰図の作成も行った。
著者
清水 英範 布施 孝志 森地 茂
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.625, pp.89-98, 1999-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14
被引用文献数
10 5

江戸時代の絵図に代表される古地図は, その図が作成された当時の土地利用や交通路の状況を空間的に把握するための数少ない貴重な資料である. 都市史や土木史の研究で古地図を分析対象とする際には, 現代図と比較対照する必要が生じるが, 古地図の幾何的精度は一般に著しく低く, その作業は容易なことではない. 本研究は, 地理情報システムの利用環境を想定し, 古地図の幾何的歪みを可能な限り自動的に補正し現代図と重ね合わせる手法を開発することを目的としている. 論文では, まず古地図の幾何補正に必要な要件を整理し, その要件を満たす手法としてTINモデルとアフィン変換を組み合わせた幾何補正手法を提案する. また, いくつかの実際の応用を通して古地図の幾何補正ならびに提案する手法の意義を例示する.
著者
清水 英範 井上 亮
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-15, 2008-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
52
被引用文献数
1

本論文は、統計GISの発展と利活用には統計データの視覚化手法の進展も必要であるとの問題意識の下、地図を敢えて変形させることによって統計データの空間分布の特徴を視覚化する、カルトグラムという視覚化手法の潜在的な魅力と可能性に着目し、その合理的かっ実用性の高い作成手法を構築した。手法構築の基本的方針は、(1) 作成手法の全体像を単純かつ明快にするため、作成問題を最小二乗法で記述すること、(2) 不必要な地図変形を抑制するため、カルトグラム上の地点間の座北方位角を地理的地図上の方位角に可能な限り近づけるという正則化条件を導入すること、の2点であり、この方針に基づいて三種類のカルトグラムの作成手法を提案した。また、幾つかの事例分析を通して、統計データの視覚化手法としての提案手法の有効性を例示した。
著者
清水 英範
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、国会議事堂の位置を日比谷練兵場内に示したJ.コンドルの官庁集中計画(明治18年)について調査し、計画への経緯やコンドルの計画意図を明らかにした。また、議事堂の位置を初めて永田町に示したW.ベックマンの官庁集中計画(明治19年)について調査し、断片的ながら、ベックマンの調査・情報収集過程に関する新事実を明らかにした。さらに、議事堂建設に関する政府委員会の議事録を調査し、建設地が実質的に最終決定されたのは、議院建築準備委員会(明治43年)であったことを明らかにした。
著者
清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.49-68, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
62
被引用文献数
3

ジョサイア・コンドルが明治18年(1885)1月に立案した官庁集中計画は,霞が関を官庁街,日比谷を公園とすることを初めて示した計画であり,近代都市計画史上,重要な意味を持っている.しかし,この計画に関する既存研究は極めて少なく,計画に至る経緯やコンドルの計画意図については,これまでほとんど明らかにされてこなかった.本研究は,幾つかの新たな史料を用いて,この問題に初めて迫り,1)太政官による官庁集中計画の実施とコンドルの登用は,井上馨が明治17年4月に提出した建議により決定されたこと,2)コンドルの計画には二案あったが,コンドルの本意は,諸官庁を日比谷練兵場内西側及び教導団の土地に集約し,地質粗悪な日比谷練兵場内東側を大公園とする,第二案の方にあったことなど,幾つかの新事実を明らかにした.
著者
宮本 和明 安藤 淳 清水 英範
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.365, pp.79-88, 1986-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
13
被引用文献数
2 6

A model to forecast total demand for housing by its type is built for a metropolitan area. The model is built based on disaggregate behavioral analyses using nested logit models. The nested logit models describe locational behaviors of households, that is, choice between remaining at the present house and moving to a new house, and choice of housing type. They have enough variables to explain these locational behaviors, and the parameters are estimated with good fitness. This study also discusses the way to estimate the numbers of different types of households, which is indispensable in forecasting total demand of housing in the area. It is proved that the forecasting model based on the above mentioned approach can estimate housing demand for the period from 1975 to 1980 in Tokyo metropolitan area with good fitness.