著者
清河 幸子 手塚 聡
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

本研究では,酢,醤油,砂糖から構成される調味料を材料として,言語的符号化が味の記憶に及ぼす影響を検討した。具体的には,32名の大学生に対して,ターゲットとなる調味料の味を記憶するよう求めた後,一方の群では,その調味料の味について言語的に記述することを求めた。もう一方の群では,味とは無関係なクロスワードパズルを解くよう求めた。その後,強制2肢選択型の再認課題を実施し,判断に対する確信度を7段階で回答するよう求めた。なお,ターゲットとディストラクタの類似度の影響を検討するために,砂糖の量を操作し,両者の類似度が高い条件と低い条件の2条件を設定した。結果として,ターゲットとディストラクタの類似度にかかわらず,正しい判断を行った場合の確信度が言語的符号化を行った群で有意に低くなることが示された。この結果は,味を言語的に捉えることがその記憶を妨害することを示唆するものとして解釈された。
著者
植木 理恵 清河 幸子 岩男 卓実 市川 伸一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.92-102, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

「テーマ学習」とは, 児童・生徒が自らテーマを選択し, 情報収集を行い, その結果をまとめて発表する一連の学習活動である。現在は「総合的な学習」の導入への移行期にあたり, このような自己制御的な学習に関する先進的な取り組みがすでに多く報告されている。しかしこれまでの実践事例は, どのようなテーマについて, どのような学習活動を行ったかという記述に留まっているものが多い。教育心理学的な視点からは, 学習者がどのような内的な知識・技能をもち, それをどう高めていくかが問われるであろう。そこで本研究は, 筆者らが大学において地域の児童・生徒を招いて開催してきた実践活動の中で, スタッフがいかにテーマ学習を支援しようと試み, それが子どもたちにどのような効果をもたらしたかについて検討を行った。その結果, 1年間の準備期問とテーマ学習の体験を通して, 子どもたちは「情報どうしを比較すること」「情報を統合すること」といったスキルを自発的に身につけていることが明らかになった。そのような結果をもたらしたスタッフの有効な働きかけとしては「一般的な自己制御学習のスキルを直接教授すること」と「子どものモニタリング機能を担うこと」などがあげられ, 今後のテーマ学習の際にはこのような支援をより意図的に行うことの必要性が示唆された。
著者
高橋 麻衣子 清河 幸子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.470-480, 2013-12-01 (Released:2014-12-24)
参考文献数
23

While reading silently, we process only the visual information of the text. Conversely,while reading texts orally, we process the visually presented text and produce the au-ditory information of the text through articulatory movement. These activities are assumed to facilitate the memory and comprehension of textual information. Although we cannot use such auditory nor motor information while reading silently, there is little difference between the degree of comprehension based on silent and oral reading for adult readers. The purpose of this study is to explain how we compensate the loss of multisensory process during silent reading by comparing the visual processing process during silent and oral reading. In Experiment 1, we measured the eye-movement dur-ing reading garden-path and normal sentences silently and orally. In Experiment 2,we compared the eye-movement during reading more common paragraph silently and orally. The results showed that silent reading took shorter time for comprehension than oral reading, and readers had more visual fixation points and read back frequently dur-ing reading silently than orally. These reading strategies during silent reading seemed to compensate the loss of multisensory process and support the text comprehension.