著者
阿部 誠
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-5, 2016 (Released:2017-03-06)

統計的仮説検定において,以下のような経験をした研究者も多いのではないだろうか?(1) 統計的仮説検定が有意にならなかったので,p値が0.05より小さくなるまでサンプル数を増やした。(p-hacking)(2) 有名な論文の内容を再検証しようとリプリケーション・スタディーを行ったのだが,結果を再現できない。(3) ビッグデータを使って,男性と女性100万人のIQスコアから 2 群の差の検定を行った。その結果,標本平均の差は0.1以下だったが t値が10で帰無仮説が却下された。標本サイズが大きすぎるようだ。(4) 統計の初心者は,t値が大きければ大きいほど(あるいは p値が小さければ小さいほど) その効果自体が大きいと,標準化係数(効果量)との概念を混同しがちである。 統計的仮説検定に関する批判は70年代から議論されていたのだが( Morrison and Henkel1970),この10年ほどの間に大きな変化が起きつつある。ひとつは検定力分析の重要性,もうひとつはベイズ推論である。これらはマーケティング・サイエンスの研究者にとっても,実験計画や分析において将来,重要になる可能性があるので紹介しておく。
著者
水野 誠 大西 浩志 澁谷 覚 山本 晶
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7, 2019-06-30 (Released:2019-08-18)

インターネットなどの発展によりデジタルメディア環境が拡大するなか,C 2 Cインタラクションの重要性が増している。本研究ではC 2 Cインタラクションを情報フローとモノ・サービスのフローのどちらを扱うかで大別し,さらにコンソーシャリティの高低も加味して 4 つに分類した。そして,それぞれの領域に対するマーケティング・サイエンスにおける量的モデル研究や消費者行動研究の研究動向について,隣接諸科学の研究を視野に入れつつレビューする。(ソーシャルメディア,クチコミ,オークション,シェアリング)
著者
宮崎 慧 星野 崇宏
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.11-35, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
47
被引用文献数
1

本研究の目的は,複数商品の購買行動間の因果関係を消費者セグメントごとに探索するためのモデルを開発することである。経済時系列解析において,複数時系列間の因果関係を同定する方法の一つにグレンジャー因果性分析があるが,本研究では潜在クラスを導入することで,消費者セグメントごとに各商品の購買行動間のグレンジャー因果性を探索するモデルを開発し,スキャナーパネルデータに適用する。これにより,デモグラフィック属性等の異なるセグメントごとに,適切な商品プロモーション活動を推測することが可能となり,また当期のプロモーション等のマーケティング変数の影響を除去した,選好の時間的推移やロイヤルティーを理解することも可能となる。
著者
阿部 誠
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.29, 2020 (Released:2021-05-10)

顧客の離脱を観測できない非契約型CRMでは,BTYD(Buy Till You Die)モデルを使うこ とによって離脱を推測できる。その代表的なモデルであるPareto/NBD では,リセンシーと フリクエンシーという最小限の購買データから推測を可能にするために,購買行動に強い仮 定を置いている。しかし,購買がランダムに発生するという仮定は,周期性のある店舗,カ テゴリー,商品の購買には相応しくない。また,購買率と離脱率に関する 2 つのガンマ分布 が独立という仮定では,購買行動と離脱行動の関係が無視されている。 本研究では,個々の購買の時点と金額を含んだ顧客購買履歴データを用いて,周期性の有 り無しいずれの購買行動にも対応する柔軟な顧客生涯価値モデルを構築する。先行研究が豊 富なPareto/NBD 系モデル同様,離脱はランダム, 1 回当たりの購買金額は顧客内で対数正規 分布にしたがうと仮定する一方,購買には周期性に対応するロジスティック閾値モデルを採 用する。提案モデルからは,生涯価値や購買の規則性など,CRMに有用な様々な顧客別のマー ケティング指標が得られる。 実証分析では,ヘアサロンの購買(訪問)履歴データを用いて,ランダム購買を仮定した個 人モデル(PE)と混合分布による集計モデル(Pareto/NBD)とで比較した。その結果,検証デー タでの予測精度に関しても,パラメータの安定性に関しても,提案モデルがPE やPareto/ NBDより優れていた。さらに顧客維持戦略への応用として,生涯価値の増加を最大にする 最適介入レベルを顧客別に算出した。
著者
山口 景子
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.61-78, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
22

消費者の心理状態と購買行動の関係性は古くから研究されている。その多くはある時点における消費者間比較によるものだが,消費者の行動を時系列で把握すれば,同様の心理状態と購買行動の関係性が個人内でも観測できないだろうか。そこで本研究では,消費者の心理状態によって変化する購買量に関する意思決定プロセスのモデル化を試みた。実際のビジネスデータに提案モデルを応用してその妥当性を示すとともに,購買行動の時間的異質性を把握することで対応可能となる企業のマーケティング課題への本研究の適用可能性を示した。
著者
石田 真貴 西本 章宏
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.7, 2022-06-30 (Released:2022-08-08)

本研究の目的は,機能的固着を回避できないリードユーザーから革新性の高い新製品アイ デアを抽出することができる,新たなリードユーザー活用法を提案することである。本研究 では,合計 4 つのステップによって開発・評価された新製品アイデアの革新性と類推距離の あいだには逆U字の関係性があること,近距離よりも遠距離の周辺市場に所属するリード ユーザーから発案された新製品アイデアの方が,革新性の高い評価を得ることができること を明らかにした。
著者
竹内 真登 星野 崇宏
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.15-34, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
30
被引用文献数
5

解釈レベル理論とそれに基づく先行研究から,通常のマーケティングリサーチは解釈レベルの高い状態で実施されている可能性がある。すなわち,調査結果は実際の商品選択の結果と乖離していることが想定される。本論文では,被験者の解釈レベルを直接操作(または無操作)したうえでコンジョイント測定法を含むアンケートに回答する実験を行い,その後実際の購入商品を追跡調査した。筆者らは低レベル解釈に操作した条件で無操作の条件よりも実際に購入する商品をより良く予測できることを確認した。これらの結果から,解釈操作を伴うコンジョイント測定法の有用性が例証された。
著者
齊藤 勇樹 星野 崇宏
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.7, 2020 (Released:2021-05-10)

本研究では店舗内での消費者の逐次的な商品選択ログを蓄積できるスマートカートから得 られたデータを活用し,事前の購買行動が事後の商品選択に与える影響について調べた。顧 客8,924人による45,094回の購買機会を分析したところ, 1 )カートに値引きないしクーポン 商品があるとき,また 2 )選択までに既に店内に長く滞在しているとき,高額商品を選択し 易くなることが示唆された。また階層モデルによる消費者異質性理解のための分析からは, もともと値引き商品を買いやすい顧客ほど 2 )の傾向が強まることなどが示唆された。
著者
勝又 壮太郎 西本 章宏 ウィラワン・ドニ・ダハナ 飯野 純彦 井上 哲浩
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.26-52, 2016 (Released:2017-03-06)

本稿では,イノベーション普及理論に関するマーケティング分野のこれまでの進展と今後の展望について論じていく。とくに本稿では以下の 2 点を考慮する。第 1 は,マーケティング周辺分野のイノベーション普及研究について客観的かつ包括的なレビューを行うことを目指す点である。これまでのレビュー手法だけでなく,計量書誌学アプローチを導入し,計量的に論文を分類・分析していく。ただし,分析結果から得られた研究動向については,個別の論文や雑誌を取り上げ,具体的な議論を行っていく。第 2 は,得られた分類の結果を活用し,本誌にこれまで掲載された論文との関係を検討する点である。そして,日本におけるイノベーション普及研究のこれまでの成果と,今後の展開について議論していく。
著者
山口 景子
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-29, 2014 (Released:2014-05-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

ウェブサイトの広告価値を高めるために,ビジターの訪問頻度やその変化を管理できることが企業にとって望ましい。そこで本研究では,時間と共に変化するウェブサイト訪問頻度を説明するモデルの構築を試みた。その際,ウェブサイト訪問頻度に影響を与えるであろう「一時的」「経時」要因をモデルに組み込み,ビジターごとにその影響を評価した。モデルから得られた各ビジターの特性をPPMマトリクスに落とし込んで優良ビジターを抽出することにより,ウェブサイト訪問頻度のOne-to-Oneマネジメントとそれに伴うサービス・マーケティング改善の可能性を提示した。
著者
阿部 誠
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-5, 2013 (Released:2013-07-17)
参考文献数
2

ITの発達により大量のデータを容易に収集できるようになった。たとえば,バーコードのスキャン技術によって,商品の売り上げは,バラエティー,色,フレーバーなども区別した品番単位(これはSKU,stock keeping unitと呼ばれる)で,日別,店舗別に蓄積される。Eコマースでは,消費者の購買履歴が世帯別にレシート単位で自動的に記録されており,通常のデータベースでも何百万,何千万ものレコードが含まれている。しかし,これだけ大量になると,生データのままでは処理の収拾がつかない。そこで第 1 のステップは,まずデータをある程度,集計し,その上で記述統計(平均や分散)を分析したり因果関係をモデル分析したりすることであろう。たとえば個々の顧客の購買や各店舗での販売を集計して,「売上」という指標を作って,それを分析する。しかし,このような集計データの分析はいくつかの難しさを抱えている。本稿の目的はそれを研究者や実務家に知ってもらうことである。
著者
井上 淳子 赤松 直樹 斉藤 嘉一 寺本 高 清水 聰
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.41, 2019-06-30 (Released:2019-08-18)

慶應義塾大学 本稿では,2000年以降のマーケティング・サイエンスと消費者行動研究のトレンドを把握すべく,Marketing ScienceとJournal of Consumer Researchに掲載された論文のアブストラクトをテキスト分析し,両分野に重なるトピックと各分野に特定的なトピックを導き出した。 またJournal of Marketing Researchに掲載された論文の引用傾向を検討し,同誌がマーケティング・サイエンスと消費者行動研究の議論に共通の場を提供する重要な鍵である可能性を指摘した。最後に,両分野の知見が有機的に結びつくことで今後の発展が期待される研究テーマを示し,関連する既存研究をレビューした。(マーケティング・サイエンス,消費者行動,研究動向,知覚,認知,社会的ダイナミクス)
著者
松井 剛
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.13-26, 2016 (Released:2017-03-06)

本論文では,「女子」ということばが市場を創造した事例の調査結果に基づいて,ことばを通じた市場創造を理解するための基本的な概念枠組みを提案する。(a)ことばを通じて新しい解釈枠組みを得て新たな欲望を持つようになる消費者において「解釈ストラテジー」が行われ,(b)人口に膾炙することばを活用したマーケティングを展開する企業において「同型化」が生じ,(c)兆しのあることばを世に広めるメディアにおいて「フレーミング」がなされると,ことばを通じた市場創造が実現するという仮説的な概念枠組みである。
著者
林田 光平
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.63, 2019 (Released:2020-05-11)

現代の食品小売業界においては,消費者の店舗来店と購買意欲を促進する一つの方策とし て,Loss Leading と呼ばれる,一部カテゴリーに対する極端な値引きが恒常化している。し かしながら,実際にLoss Leading により店舗全体の売上・収益が向上しているかどうかにつ いては事前に明確ではなく,実証的な課題である。本研究では,Loss Leader とされやすい日 配品(牛乳・パン・冷凍食品)を事前に抽出し,これらのカテゴリーに対する値引き(Loss Leading)が店舗売上指標に与えている影響を分析する。分析に際しては,Loss Leading の影 響にチェーンレベルで異質性が存在するかどうかを検討するために,異なる価格戦略(価格 を頻繁に高低させるHiLo と常時低価格を訴求するEDLP)をとる 2 チェーンのIDPOS データ を使用する。分析の結果,HiLo チェーンでは,牛乳カテゴリーの値引きにより店舗総売上・ 来店客数ともに増加しているのに対して,EDLP タイプの店舗では,牛乳カテゴリーの値引 きは店舗総売上・来店客数ともに減少させる効果が見られた。さらに,パンカテゴリーにお いては明瞭な影響がみられなかった一方で,冷凍食品カテゴリーではHiLo とEDLP で来店 客数と店舗総売上ともに増加させることが明らかとなった。このように,Loss Leading の効 果については事前には明確ではなく,チェーンタイプとカテゴリーによる異質性を考慮して 価格設定を行うことが重要であることが示された。
著者
山田 浩喜 佐藤 忠彦
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-41, 2012 (Released:2013-07-30)
参考文献数
37

本研究の目的は,消費者の百貨店の小売ミックスに対する期待やパフォーマンス評価が店舗満足に対してどのように影響するかを明らかにすることである。本研究では,それら小売ミックスに対する期待やパフォーマンス評価をその形成メカニズムをもモデル化することにより,モデル内に説明変数として取り込んでいる。提案するモデルは,階層ベイズモデルの枠組みでモデル化し,その推定にはマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた。検証の結果,提案するモデルの有効性が確認できた。また,個別対応型の百貨店マーケティング実務に対して,有効な知見が獲得できている。
著者
本橋 永至 樋口 知之
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-59, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
39

消費者の嗜好やブランド間の競合関係など市場環境は常に変化しており,企業のマーケティング活動の効果も常に一定ではない。マーケターにとって,その変化を的確に捉えることは,需要予測,価格設定,ブランド診断など様々な側面において重要である。本研究では,市場反応の変化は,長期的な傾向の変化と異質な消費者の混合割合に起因する一時的な変化によるものと仮定し,状態空間モデルの枠組みを用いて,市場反応係数が時間と共に変化するブランド選択モデルを構築する。状態空間モデルは,状態変数(観測されない変数)の時間的な変化を表すシステムモデルと状態変数と観測変数の関係を表す観測モデルから構成される。 3 年間のインスタント・コーヒーのスキャナ・パネル・データを用いた実証分析の結果,ブランド固有の魅力度はほとんど変動がないことや,プロモーションの効果は時間と共に変化するが,特別陳列とチラシでは,効果の変動の仕方に違いがあることが確認された。
著者
大野 幸子
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.47-79, 2014 (Released:2014-05-08)
参考文献数
71

本研究では,認知ではなく感情心理の罪感情と恥感情に注目し,行動普及が十分とは言えない高リスク高関与なヘルスケア・サービスの採用を促進するマーケティング戦略の示唆を検討している。罪感情と恥感情は類似した状況で生起するものの,罪感情は行動喚起をもたらし,恥感情は行動回避をもたらすという。行動喚起や行動回避といったマーケティングにとって重要な側面が明らかにされていながらも,既存の罪恥感情尺度ではマーケティングで活用できる尺度がほとんどない。そこで,本研究では尺度開発を試みる。クロンバックαによる信頼性の確認を経て,MTMM( 多特性多方法論)による収束弁別妥当性を確認し尺度構築を行う。その後で,尺度の妥当性を単一特性多方法モデルとの統計的比較から検討する。結果的に,多特性多方法な構造を仮定した新たな感情尺度の方が,より妥当なモデルであることが示唆された。
著者
猪狩 良介 星野 崇宏
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.43-67, 2012 (Released:2013-07-30)
参考文献数
26

本研究では,非集計レベルのWebアクセスデータを用い,サイト属性と個人の異質性を考慮した複数サイトの普及モデルを提案する。提案モデルは非集計レベルのデータを用いることで個人の異質性を考慮し,複数サイトを扱うことで,どのような属性を持つサイトがどういった普及パターンを辿るのか把握することができるため,企業のHP作成や新しいWebサービスを展開する際に有効なモデルになると考えられる。具体的には,消費者異質性に対し潜在クラスを,サイト間の異質性に対し階層モデルを用いた離散型のハザードモデルによって複数サイトに対する個人の閲覧開始時期をモデリングする。提案モデルの有用性を示すために,株式会社ビデオリサーチインタラクティブ社の『インターネット視聴データ』 を利用した解析を行ったところ,潜在クラスによる採用時期や,時間による採用傾向の変化が異なることが確認された。
著者
阿部 誠
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-9, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
19

近年,社会心理学,消費者行動学で展開されている解釈レベル理論(阿部 2009, Trope et al. 2007)は,消費者行動学の研究にも広がりつつある(Hamilton and Thompson 2007, Kim et al. 2008)。マーケティング・リサーチの手法に応用した本誌の竹内・星野(2015)のように,今後は実務のマーケティングでも重要な役割を果たすと考えられる。解釈レベル理論の適用を促進する上で,特にマーケティング・サイエンスの観点から有用な拡張が理論のモデル化であろう。プロスペクト理論における価値関数や確率加重関数のように,モデルを用いることは消費者行動分析のフレームワークとして大変,有益である。ここではモデル化の一つの試みとして,割引解釈レベルモデル(阿部ら 2015)を紹介する。