著者
片山 一朗 室田 浩之 調 裕次
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.516-521, 2008-10-01 (Released:2008-12-13)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

皮膚症状を有するシェーグレン症候群患者26例を対象に,人参養栄湯を3ヵ月服用させて,皮膚疾患特異的QOL及び自他覚症状の推移を検討した。皮膚疾患特異的尺度としてはSkindex-16を用いた。総合評価では1ヵ月後および3ヵ月後において,スケール·スコアでは症状,感情,機能のうち,症状と感情の3ヵ月後において有意な改善を認めた。自他覚症状では,口唇炎·口角炎,凍瘡様皮疹,手足の冷え,疲労感において1ヵ月後および3ヵ月後で有意な改善を認めた。眼瞼炎,食欲不振は訴えを有する症例が少なく有意差はなかったが,77.8%,66.7%と高い改善率を示した。眼,口腔の乾燥感は30∼40%台の改善率が認められたが,有意差は1ヵ月後の眼の乾燥感においてのみ得られた。副作用はほてりのぼせの1例のみであった。以上から人参養栄湯は皮膚症状を有するシェーグレン症候群の多彩な愁訴を改善し,患者のQOLを高める安全かつ有効な薬剤と考えられた。
著者
大木 麻理奈 横関 博雄 中村 悟 谷口 裕子 佐藤 貴浩 片山 一朗 西岡 清
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, 1997

アトピー性皮膚炎(AD)と病巣感染との関連についての報告は少ない.今回,扁桃の感染病巣の治療として扁桃摘出術(扁桃)を施行したAD患者10例と,歯科の感染病巣を治療したAD患者6例について,その効果を検討した.1990年4月から1996年6月までに当院に入院した成人AD患者183名のうち,扁桃の感染病巣が疑われた28名に扁桃マッサージ試験を施行.25列で,体温,白血球,血沈の上昇,皮疹の増悪のいずれかに陽性所見を認めた.このうち7例と,試験陰性もしくは未施行でも耳鼻科的に適応が認められた3例に,扁摘を施行.経過を追跡しえた7例中5例で6ヵ月以内に皮疹が軽快し,うち2例では1年以上にわたり皮疹の再燃を認めない.扁桃マッサージ試験で皮疹の増悪が認められた患者に,扁摘有効例が多く認められた.また,齲菌や歯根膿瘍などの歯科病変を合併し,抜歯などの歯科治療を施行したAD患者6例中,4例で歯科治療中にADの増悪を認め,全例で歯科治療終了後に一時的にせよADの軽快傾向を認めた.これらの感染病巣の除去により軽快するのは,顔面および頸部の■漫性紅斑ならびに漿液性丘疹,体幹の貨幣状湿疹様の皮疹が主であり,苔癬病巣や結節などは軽快しにくかった.ADの一部の症例では扁摘および歯科治療が有効であり,扁桃炎および歯根膿瘍などの感染病巣の存在も,ADの増悪因子の一つであると考えられるため,AD患者において感染病巣の積極的な検索が必要であると考えられる.
著者
室田 浩之 奥田 英右 片山 一朗
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.157-164, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
28

アトピー性皮膚炎の臨床症状は乳幼児期と学童期以降では臨床症状および経過そして治療反応性が異なる. 学童期以降では痒みが先行し, 掻破部位に慢性皮膚炎/苔癬化病変を形成する. よって痒みの制御が治療において重要である. アトピー性皮膚炎では皮膚の感覚過敏が生じており, 疼痛や温感など通常は痒みに感じない感覚を痒みに感じることがある. この痒み過敏の原因として炎症に伴って生じる皮膚知覚神経の異常な伸長, 神経栄養因子アーテミンの作用, そして中枢神経の増感などが考えられる. 温熱など環境因子によって誘導される痒みの管理にはまず皮膚炎の治療が優先されるべきである. 汗による痒みの対策として, かいた汗を適切に処理することと, 適切な量の汗をかけるように皮膚炎を制御することが大切である. 刺激のみならず, 視覚的刺激や聴覚的刺激も新たな痒みを誘発する. この “伝染する痒み” はアトピー性皮膚炎患者で顕著にみられる. 本稿では痒みの悪化要因と, それらに対する対処方法に関する知見を紹介するとともに過去の論文をレビューする.
著者
有馬 優子 岩田 賢治 濱崎 洋一郎 片山 一朗
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.63-65, 2001
被引用文献数
4

55歳の男性。カルバマゼピン(テグレトール<sup>®</sup>)とハロペリドール(ハロステン<sup>®</sup>,セレネース<sup>®</sup>)の内服開始後に発赤,水疱が出現しておりその両方を原因薬剤と疑った。貼布試験で両者は陽性反応を示し,組織学的にも初診時と同様の皮疹を誘発できたため,この2剤を原因薬剤と考えた。2剤の間に化学構造的類似は認められなかった。
著者
片山 一朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.Suppl.9, pp.B1-B5, 2007 (Released:2012-04-18)
参考文献数
21

紫外線療法は難治性のアトピー性皮膚炎の治療法としてヨーロッパを中心に臨床応用されている。本邦ではPUVA療法が,欧米ではUVA-1療法のなどの有効性が報告されており,最近はナローバンドUVBの試みが開始されている。本講演ではアトピー性皮膚炎の病因論から考える光線療法の作用機序として以下のキーワードに関して最近の知見を概説し,紫外線療法の位置付けと今後の展望を考察した。
著者
寿 順久 小豆澤 宏明 西田 陽子 室田 浩之 片山 一朗 吉川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1510-1514, 2007

症例は33歳の女性.赤い食品の摂取後に出現する顔面を中心とした膨疹,嘔吐,下痢,呼吸困難などの症状を主訴に来院.紅白蒲鉾の負荷試験にて膨疹の出現を認め,紅色の色素成分であるコチニールのプリックテストにても陽性反応を確認した.さらにコチニールの主成分であるカルミン酸を用いた,プリックテスト,スクラッチテストは共に陽性であったため,本症例をカルミン酸によって誘発された蕁麻疹と診断した.コチニール色素はカイガラムシから抽出される紅色の天然色素で,食品や衣類などの染色に幅広く応用されている.近年コチニール色素が原因と考えられる1型アレルギーの報告が散見されるようになり,その背景に関する考察を加え報告する.