著者
牧野 悠
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.16-28, 2008-03

柴田錬三郎が生み出した戦後時代小説最大級のヒーロー、眠狂四郎。その必殺剣、刀身をゆるやかに旋回させることによって、対手を一瞬の眠りに陥らしむる魔技「円月殺法」は、いわゆる剣豪小説ブームに乗り、現在に至っても高い知名度を保っている。しかし、その研究は、一定の強度を備えて描写に踏み込んだ考証となりえず、登場以降半世紀に亘り、典拠考察すらされてこなかった。円月殺法の描写は、同時期の剣豪小説の方法と同様、剣術資料を典拠とし、想像上の秘技を紙上に現出させるための、リアリティ向上に用いていた。そればかりか、その典拠は、円月殺法という魔剣そのものを着想させる可能性すら秘めるものであった。また、典拠の性質を鑑みると、作家がそれをいかに利用するかによって、遣い手である剣士の性格形成にも影響を与え、剣豪小説の双生児とも云うべき二人のキャラクターの誕生をもたらすことにつながった。
著者
西内 裕晶 川崎 智也 轟 朝幸 牧野 悠輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1177-I_1185, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
15

本研究は,近年,その実施が増えている中学生を対象としたスケアード・ストレイト的自転車交通安全教室に着目し,講話や自転車乗車講習のような従来の自転車交通安全教室と比べて,教室実施前と実施後で受講者の安全意識の変化を分析した.具体的には,2種類の自転車交通安全教室を別々の中学校にて実施し,安全教室の実施前,実施直後,実施1ヶ月後において,法令理解,危険認知(危険察知,回避行動,実践意志,危険回避)についてアンケート調査を実施し,調査結果を安全教室の種類の違いにより比較するものである.その結果,スケアード・ストレイトの有無により安全意識に顕著な違いや変化は見られないものの,危険認知度については実施しない場合よりも経時変化が少ないことが分かった.
著者
吉田 司雄 中沢 弥 谷口 基 小松 史生子 牧野 悠 清水 潤 今井 秀和 乾 英治郎 末國 善己
出版者
工学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

サブカルチャー領域を中心に、日本発の「忍者」「探偵」イメージは広く世界に浸透している。「忍者」表象に関する国内研究者の共同研究を推進する一方、「探偵」表象に関する研究ネットワークを海外の研究者と構築し、「忍者」と「探偵」とを接合させる形で、日本および東アジアにおける大衆的なイメージの生成過程を分析した。複数の表象が絡まり合いながら、ジャンル横断的に新たな物語コードが生成される様を明らかにした。
著者
牧野 悠
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.23, pp.46-60, 2011-09

藤沢周平は、活動の初期から、武芸者を描いた作品を多数発表している。「隠し剣」シリーズは、そのような武術をテーマとする作品群の代表とすることができる。シリーズの一編である「必死剣鳥刺し」は、近年映画化されたように、時代小説がかつての勢いを失った今日でも、コンテンツとしての命脈を保つ作品である。しかし、本作の解釈にあたり、描かれた剣や武士道を考察する際の補助線として、外的情報を導入した場合、物語の破綻を余儀なくされる。主人公の倫理観や剣法は、作者が作品生成に利用していたという史料から得ることのできる武士のイメージや、それまでの時代小説で描かれた剣法観からは、逸脱したものと判断せざるを得ないからだ。しかし、作品を相対化し得る能動的な読みを、事前に回避する構造を本作は有しており、示された剣術流派の無名性や、三人称でありながら主人公の視線に寄り添う語りの方法に、その一端を見ることができる。
著者
牧野 悠
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.17, pp.11-23, 2008-09

柴田錬三郎が生み出した戦後時代小説最大級のヒーロー、眠狂四郎。その必殺剣、刀身をゆるやかに旋回させることによって、対手を一瞬の眠りに陥らしむる魔技「円月殺法」について、テキストの背後に存在する典拠史料の情報との比較考察を行う。柴錬は、当時の剣豪小説における「正しい剣」とされた無想剣をアレンジし、彼我の心境を逆転させ、敵を無想の境地に導く剣として、円月殺法を造形した。描写上利用された典拠、一刀流の剣術書における、「水月」および「卍」の理念が、円月殺法の性格や描写を決定づけたが、それは同時に、円月殺法の方向性を定めるものでもあった。空間に描かれる表象を、敵に視覚を媒介として認識させ、その精神を無想へと導く円月殺法は、正剣に対する邪剣として造形されたが、それが最終的に独自のヒューマニズムを発現させる物語の展開は、先の史料を典拠に用いた時点で、あらかじめ運命づけられていた。
著者
牧野 悠
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.23, pp.46-60, 2011-09

藤沢周平は、活動の初期から、武芸者を描いた作品を多数発表している。「隠し剣」シリーズは、そのような武術をテーマとする作品群の代表とすることができる。シリーズの一編である「必死剣鳥刺し」は、近年映画化されたように、時代小説がかつての勢いを失った今日でも、コンテンツとしての命脈を保つ作品である。しかし、本作の解釈にあたり、描かれた剣や武士道を考察する際の補助線として、外的情報を導入した場合、物語の破綻を余儀なくされる。主人公の倫理観や剣法は、作者が作品生成に利用していたという史料から得ることのできる武士のイメージや、それまでの時代小説で描かれた剣法観からは、逸脱したものと判断せざるを得ないからだ。しかし、作品を相対化し得る能動的な読みを、事前に回避する構造を本作は有しており、示された剣術流派の無名性や、三人称でありながら主人公の視線に寄り添う語りの方法に、その一端を見ることができる。
著者
牧野 悠 マキノ ユウ MAKINO Yu
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.16, pp.16-28, 2008-03

柴田錬三郎が生み出した戦後時代小説最大級のヒーロー、眠狂四郎。その必殺剣、刀身をゆるやかに旋回させることによって、対手を一瞬の眠りに陥らしむる魔技「円月殺法」は、いわゆる剣豪小説ブームに乗り、現在に至っても高い知名度を保っている。しかし、その研究は、一定の強度を備えて描写に踏み込んだ考証となりえず、登場以降半世紀に亘り、典拠考察すらされてこなかった。円月殺法の描写は、同時期の剣豪小説の方法と同様、剣術資料を典拠とし、想像上の秘技を紙上に現出させるための、リアリティ向上に用いていた。そればかりか、その典拠は、円月殺法という魔剣そのものを着想させる可能性すら秘めるものであった。また、典拠の性質を鑑みると、作家がそれをいかに利用するかによって、遣い手である剣士の性格形成にも影響を与え、剣豪小説の双生児とも云うべき二人のキャラクターの誕生をもたらすことにつながった。
著者
牧野 悠
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.15, pp.14-25, 2007-09

柴田錬三郎の剣戟随筆「武蔵・弁慶・狂四郎」は、発表以降、半世紀に亘り、彼の著作集に収録され続けてきた。代表作「眠狂四郎無頼控」に言及しているため、引用されることも多い本随筆であるが、その執筆方法は、先行する剣戟随筆を巧みに切り貼りし、紹介するというものであった。そこで典拠とされたのは、中里介山、直木三十五らであった。よって、本随筆中、特に弁慶に関しては、典拠としたもののバイアスがかかった描写にならざるを得なかった。また、ここでは、先輩作家の描写から、その典拠に遡り、自らのテキストに吸収する方法も活用されている。これら方法は、柴錬の初期剣豪小説作法の再現であった。したがって、本随筆は、やがて柴錬独自の方法を完成させるに至る、一種の剣戟描写修行の記として読むことが可能となるのである。また、後に発表される柴錬の、剣豪小説のキャラクターを考える上でも、武蔵・弁慶・狂四郎の三タイプの要素は、キャラクター造形上、重大な意味を持っているのである。
著者
西内 裕晶 川崎 智也 轟 朝幸 牧野 悠輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_1177-I_1185, 2016

本研究は,近年,その実施が増えている中学生を対象としたスケアード・ストレイト的自転車交通安全教室に着目し,講話や自転車乗車講習のような従来の自転車交通安全教室と比べて,教室実施前と実施後で受講者の安全意識の変化を分析した.具体的には,2種類の自転車交通安全教室を別々の中学校にて実施し,安全教室の実施前,実施直後,実施1ヶ月後において,法令理解,危険認知(危険察知,回避行動,実践意志,危険回避)についてアンケート調査を実施し,調査結果を安全教室の種類の違いにより比較するものである.その結果,スケアード・ストレイトの有無により安全意識に顕著な違いや変化は見られないものの,危険認知度については実施しない場合よりも経時変化が少ないことが分かった.
著者
牧野 悠
出版者
千葉大学文学部
雑誌
千葉大学人文研究 (ISSN:03862097)
巻号頁・発行日
no.43, pp.57-89, 2014

本稿は、日本近代文学会二〇一〇年度秋季大会(於三重大学、十月二二日)での小嶋洋輔、高橋孝次、西田一豊、牧野悠によるパネル発表「「中間小説」の問題系――昭和二〇年代の黎明」の筆者担当内容に基づいている。