著者
田村 光
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

The physical functionalities of various substances such as metals, uperconductings,and magnetic materials are governed by individual electrons and their interactions. However, it is difficult to exactly calculate the behavior of the quantum many–body systems containing over 50 particles with a classical computer, since the computational resource grows exponentially with the system size. Quantum simulation is an alternative approach to the many-body problems, which consists in building a well-controllable quantum system. The main objective of the quantum simulation is a deep understanding of many–body quantum phenomena ranging from dynamics of energy transport and particle localization to quantum–to–classical transition. To date, several platforms, from atoms and ions to superconducting circuits, have demonstrated the basic functionality of quantum simulation. The current challenges are not only to increase the number of particles but also to extend the versatility of the simulator. In this thesis, I describe the development of and scientifc results from a experimental platform for a versatile quantum simulation using laser-cooled Rydberg atoms. We create 2D arrays of optical microtraps using a spatial light modulator (SLM). Single87Rb atoms can be trapped in geometry-tunable and reconfigurable arrays with interatom spacings of a few micrometers. We first focused on one crucial prerequisite for the implementation of quantum simulation, i.e. detecting individual atoms with high efficiency. A fluorescence imaging yields single–atom–resolved information about the trap occupation and internal states of the trapped atoms. However, poor uniformity of trap–induced light shifts in arrays increases the detection error due to the variance of cooling efficiency and the photon scattering rate from each atom. Moreover, as each trap has a finite detection efficiency η, anN–atom system has an exponentially small detection efficiencyηN, that limits accuracy of experimental simulations. To overcome this issue, we have developed the novel optimization method to realize highly uniform holographic arrays of microtraps using in-trap fluorescence measurements. By applying this method to various arrays with up to N = 62 traps, the detection efficiency of all individual atoms, η62, can be improved from ≃ 55.0 % to ≃ 99.6 %. An optimization method such as the one presented in this work with holographic trap characteristics obtained by using in-trap atoms is useful for creation of finely optimized microtrap arrays. In order to generate strong interactions between atoms in arrays, we coherently laser–couple ground states to Rydberg states using a two–photon transition. The Hamiltonian of this system can be mapped onto spin Ising models in magnetic fields. In one experiment, we observe the collective enhancement of Rydberg excitations in the fully Rydberg blockade condition, where the interactions are much stronger than the laser–coupling. The Rydberg pair correlations we observe indicate strong correlations between nearby atoms, and blockade breaking arised from system edges. In a second experiment, we have implemented spin ising dynamics with opened– and closed–boundary conditions. We use an N = 5 1D array and an N = 6 ring array with nearest neighbor interactions, and measure the dynamics of spin densities, correlations, and all many–body states. The obtained results are in good agreement with numerical simulations for a short time and show that spatial localization of excitations appears in the 1D array, while the ring system has almost spatially homogeneous behavior. The experimental platform developed in this work has well–controllability rangingfrom atomic configurations to interactions, and pave the way for experimental investigation of synthetic or frustrated Ising magnets. 金属や超伝導素子,磁性体などの身の回りにある様々な物質の物理的特性は、物質中の個々の電子の振舞いやその相互作用により支配されている。しかしながら、このような複数の量子が相互作用しあう量子多体系は、粒子数がN = 50個でも現在のコンピュータでは厳密に解析することが難しいことが知られている。その理由は、粒子数の増加に対して系の取り得る量子状態が指数関数的に増大し、膨大な計算機リソースを要するためである。量子多体系を解析するもう一つのアプローチとして量子シミュレーションが挙げられる。量子シミュレーションは、中性原子・イオン・超伝導素子などの物理系を用いて量子多体系を記述するハミルトニアンを模擬的に再現し、個々の粒子の振舞いを実験的に解析する手法である。この手法により、未解決の物性の解明や物質の新たな機能探索が可能になるとして期待されている特に近年では粒子数の拡張だけでなく、量子シミュレータを構成する物理系の特色を生かし、粒子間の相互作用の相互作用パスや相互作用の大きさ、粒子配置などのパラメータの自由度の高い量子シミュレータの開発が着目されている。この技術により、多種多様な物質に対応させるだけでなく、対応物が存在しない系を実現することも可能になると期待されている。 本研究の目的は、冷却中性原子とリュードベリ状態間の大きな相互作用を用いて様々な量子多体系を再現可能な量子シミュレータの開発である。この手法の特徴は、リュードベリ状態間の大きな相互作用により各原子間距離を数μm以上離すことが可能となるゆえ、容易に単一サイトごとの観測・操作が実現できる点にある。さらに、空間光位相変調器(Spatial Light Modulator: SLM)によって生成された光マイクロトラップアレーを用いることで、プログラマブルに原子配置を制御することが可能となる。 本量子シミュレータの開発にあたり、我々はまず単一原子の観測効率に着目した。蛍光観測を行うことによって、原子配置や各原子に刻まれたスピンの状態を読み取ることができる。しかしながら、各サイトの光シフトの不均一性が生じると、原子の冷却効率や蛍光散乱レートにバラつきが生じ、単一原子の観測効率の悪化をもたらす。例えば単一原子あたりの観測効率がη= 0.99であっても、N= 50個の原子では指数関数的に観測効率が減少し、η50≃0.61となることが推測される。本研究では、実際のトラップ平面におけるをピーク強度のバラつきを単一原子から得られる蛍光を用いて均一化する手法を開発し、N= 62個のトラップ数においても全原子の検出効率η62を≃55 %から≃0.996 %まで向上できることを実証した。 数μm間隔のアレー状に並べられた単一原子間に強い相互作用を生成するために、我々は二光子遷移を用いて基底状態の原子をリュードベリ状態へのコヒーレント励起を行った。このようなリュードベリ原子系は磁場印加中のイジングスピンモデルにマッピング可能となる。一つ目の実験では、我々はリュードベリ原子間の相互作用が支配的な条件化において、リュードベリ状態への励起のダイナミクス測定を行った。ここでは、最大リュードベリ原子数が原子数Nに依存せず1個に制限されるリュードベリブロッケード効果や、N原子系のラビ振動が√Nに比例して増大する集団励起効果を観測した。二つ目の実験では、開境界条件および閉境界条件を有するスピン系のダイナミクスの実験シミュレーションを行った。ここでは、N= 5個の単一原子を一次元状に並べたアレーおよびN= 6個の単一原子をリング状に並べたアレーを用いて、スピンの密度分布やスピンスピン相関、多体状態のダイナミクスの測定を行った。得られた実験結果は、短時間領域においてイジングモデルの計算結果と良く一致するだけでなく、システムの境界の有無によってスピンの密度分布の局在化など系全体にもたらす効果を示す。 本研究で開発した実験プラットフォームは、個々の単一原子の高い制御性・観測効率だけでなく原子配置や相互作用領域の自由度を有し、幾何学的にフラストレートしたスピン系などの複雑なスピン系への応用が期待される。
著者
中尾 央 野下 浩司 金田 明大 田村 光平
出版者
南山大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本領域が対象とする出ユーラシア地域のモニュメント,遺物,民族誌データ、認知的データ、自然人類学的データ等を空間的・時間的位置を基準とするフレームワークに位置づけて相互参照・検索可能な形とする.SfM・三次元スキャナーやLiDAR 測量など三次元計測によって取得されたデータともリンクすることで,楕円フーリエ解析などの幾何学的形態測定の手法を用いた定量的な解析・比較を行う.また総括班との密接な連携の下,異分野統合のハブとしての役割を果たし,領域全体の一貫性・統合性を確実なものとする.
著者
池田 康紀 田村 光信 梅津 英央 田村 元彦 小林 哲 杉田 和彦 知元 正行 長井 千輔 嶋田 晃一郎
出版者
小松島赤十字病院
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.38-43, 1999
被引用文献数
1

症例は68歳男性, 1997年11月の検診にて左上肺野異常陰影を指摘されるも98年6月になって当科入院。入院後の気管支鏡検査にて左B^3aの扁平上皮癌と診断。3週間後の待機手術となったため, 気管支鏡施行後3日目に一時退院となった。退院当日より感冒症状出現し, その後39℃台の発熱が持続したため再入院となった。再入院時の胸部X線上, 左上肺野に肺炎像を認め, 翌日には鏡面像を伴う空洞を認めたため肺膿瘍と診断した。抗生物質はCTM, CLDMを投与するも解熱傾向はみられなかった。しかしCZOPに変更後36℃台に解熱したため, 左上葉切除及びリンパ節郭清術を施行した。術後病理診断において2.5×1.0cm大の腫瘍とその末梢に約4.5×4.0cm大の膿瘍を認めた。腫瘍はT1N0M0, stage I期の扁平上皮癌であった。また術中採取した膿の培養にて起因菌がKlebsiella pneumoniaeと判明した。
著者
田村 光 阿部 定範 杉浦 功一 前田 真悟 池田 信良 小島 正夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.1662-1665, 2006-07-25
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

症例は, 73歳,男性.平成13年11月胆石にて腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.術中胆嚢が穿孔し,胆汁が腹腔内にこぼれた.摘出胆嚢は肉眼的に腫瘍を認めなかったため,病理検査は,一割面のみに行われたが,明らかな悪性所見は認めなかった.良性胆嚢と判断されたため,胆嚢は特に保存はされず廃棄された.<br> 平成15年6月臍部痛にて当科受診.腹部エコー, CTにて臍のすぐ尾側の腹直筋内に辺縁不整な腫瘤像を認め,切除生検にて腺癌の転移と診断されたため,入院の上,平成15年8月腫瘍を含む腹壁を切除した.腹膜播種を疑う明らかな所見も認めなかった.組織学的に高分化腺癌の転移と診断された.明らかな原発部位を同定することはできなかった.平成16年1月再度腹壁に再発し, 2月より照射施行(58Gy/41回/29日).一旦腫瘍は縮小したものの,再増悪を認めたため,抗癌剤(CDDP+5-FU)を開始したが軽快せず,全身状態悪化し2004年7月死亡した.