著者
綿貫 早美 狩野 太郎 亀山 絹代 筑井 夕佳織 諸田 了子 中野 良子 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.109-116, 2003-03
被引用文献数
3 1

術後せん妄は重大な医療事故につながる合併症である。術後せん妄は医師と看護師が共に責任を持つべき問題であるが,高齢者の術後せん妄予防に向けた看護介入を検討した報告は少ない。今回我々はせん妄の発症率,発症時期,症状,発症因子を分析した。対象と方法:1998年〜2000年の3年間に当院泌尿器科で手術を受けた65歳以上の高齢者502人を対象に,カルテ及び看護記録から遡及的にデータ収集を行った。収集したデータをもとに術後せん妄発症率及び発症のピーク時期,症状などを分析した。また,502人中,せん妄を発症した22人を「せん妄群」とし,せん妄群と性,年齢,術式,麻酔の種類を一致させた22人を抽出し「非せん妄群」とした。せん妄群と非せん妄群を比較しせん妄発症に関連する要因を分析した。結果:せん妄の発症率は腰椎麻酔患者で2.2%,全身麻酔患者で17.1%だった。術後せん妄の発症ピークは,全身麻酔患者で術後2-3日目,腰椎麻酔患者で術当日の夜だった。せん妄の発症に関連する要因として,1)不眠・昼夜逆転 2)視聴覚障害 3)鎮痛・鎮静剤の使用が明らかとなった。結論:術後せん妄予防のため,術後早期から睡眠の援助,眼鏡や補聴器の使用,鎮痛・鎮静剤の適正使用の援助を実施することの重要性が示唆された。
著者
岩永 喜久子 小板橋 喜久代 神田 清子 二渡 玉枝 常盤 洋子 岡 美智代 牛久保 美津子 小泉 美佐子 前田 三枝子
出版者
群馬大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

A大学附属病院に9領域の教育-臨床連携による看護専門外来を開設し、看護のイノベーションとして看護役割拡大モデルを提示した。9領域の看護専門外来は、リラクセーションマッサージ、リラクセーション外来、リンパ浮腫外来、がん看護相談外来、乳腺看護外来、糖尿病療養相談・フットケア外来、母性看護外来、神経内科看護相談外来、母乳外来である。従来の診療体制の医学モデルに看護独自の専門性を加えて、キュアとケアを融合させた。
著者
大山 ちあき 狩野 太郎 神田 清子
出版者
群馬大学
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.39-44, 2001-03

本研究の目的は, がん専門病院と一般病院のがん告知に関する考え方の違いを明らかにすることである。対象はがん専門病院に入院中のがん患者186名と, 10施設の一般病院に入院中のがん患者412名であった。医師の告知状況, 病名告知についての看護者の考え方などについて, 平成11年10月1日に病棟責任者記載による一斉調査を行った。その結果, 医師の告知状況は, 「がんまたは悪性腫瘍」として真実を告げている割合が, がん専門病院では84.4%であり, 一般病院の54.1%に比べると約30.0%高くなっていた。看護者が望む病名告知も医師と同様の結果であった。がん告知に対する看護者の考慮する点は, がん専門病院・一般病院ともに「病期・予後」を最優先にしていた。がん専門病院の看護者は「患者の知る権利」「患者の希望」を大切にしていた。一方, 一般病院の看護者は「家族の希望」を優先していた。以上の結果より, がん専門病院と一般病院では, がん告知に対する看護者の姿勢に明らかな違いが見られた。今後, 一般病院では看護者・医師ともに, 患者の意思を尊重した告知のあり方を, 病院独自の方法で検討していく必要性が示唆された。
著者
神田 清子 飯田 苗恵 狩野 太郎
出版者
群馬大学医学部保健学科
雑誌
群馬保健学紀要 (ISSN:13434179)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.25-31, 2000
被引用文献数
2

本研究の目的は, 化学療法に伴うがん患者の味覚変化に対する看護者のアセスメントとその介入の実態を明らかにすることである。対象は, 全国の500病院で働く病棟の副婦長1000名であり, 郵送法による質問紙調査を施行した。回収は634名(回収率63.0%)であり, 記入不備などを除く568名を分析した。味覚変化のアセスメントは, 「患者からの訴え」による方法がもっとも多く87.0%, 次いで「食事嗜好の変化との関連」57.6%であった。各項目に対する介入の割合は, アセスメントの割合に比べて低くなっていた。介
著者
神田 清子 飯田 苗恵 狩野 太郎
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.379-387, 2001-11-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

【背景・目的】がん化学療法に伴う味覚変化に対して, 看護者が行っているセルフケア教育の内容を明らかにすることである.【対象と方法】全国の500病院で働く病棟の副婦長1000名であり, 郵送法による質問紙調査を施行した.回収は634名 (回収率63.0%) であり, 該当なし, 記入不備を除く568名について分析を行った.セルフケア教育内容は自由記述により回答を求め, 内容分析を行った.【結果】看護者の約59%が患者・家族を対象として, がん化学療法に伴う味覚変化に関するセルフケア教育を行っていた.セルフケア教育内容で一番多い項目は, 「味覚変化時の食事」, 次いで「症状・徴候の観察」, 「味覚回復のための含嗽液」であった.教育内容としては, 味覚変化の原因と出現時期, 観察, 食事, 含嗽, 味覚刺激方法など一連のセルフケア教育を行っていることが明らかになった.味覚を回復するための含嗽液として, イソジン, レモン水, 氷水が高頻度に指導されていた.【結論】セルフケア教育内容として, 味覚変化時の食事指導は定着しつつある.しかし, 薬剤投与中の金属味への対処方法の教育は行われておらず教育内容に含める必要があることが明らかになった.さらに味覚を回復するために実践されているレモン水については, その効果が曖昧のまま指導されており介入研究が必要であることが示唆された.
著者
神田 清子 栃原 裕 飯田 苗恵
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

癌化学療法に伴う味覚識別能の変化に対応した食事ケアを検討することを目的として,次の3研究を施行した.第一に,癌化学療法を受けた入院中の患者45名を対象に治療前・中(4日目)・後(治療後10日目)の甘味・塩味・酸味・苦味についての識別能を試薬滴下法により検査し分析した.第二に,癌化学療法を施行する患者のための病院献立および食事への取り組みについて,全国の病院241施設を対象として郵送法により調査し,有効回答145施設の現況を分析した.第三に,癌化学療法を受けている患者,3事例の味覚識別能および食事摂取状況,食事嗜好を調査し,栄養バランスの評価を行った.結果は次のようにまとめられる.1.甘味・塩味・酸味・苦味のうち癌化学療法の影響を強く受けていたのは塩味であり,識別閾値は治療中敏感になり,治療後は有意に鈍感になっていた.2.癌化学療法を受ける患者のために特別な献立を有している施設は,48(33%)であり,献立の種類は,化学療法食,口内炎食,加熱食などであった.3.味覚識別能と食事の嗜好との関係では,甘味・塩味・酸味の味覚では,味が鈍感になった味覚を主体とする食品を補食する傾向にあった.また,薬剤投与中は,蛋白食品や煮物に対する嫌悪感が認められた.4.化学療法剤が投与されている期間および口内炎の合併は,蛋白質,脂質,炭水化物摂取量を極端に減少させ,熱量は基礎代謝量にさえ満ちていない.以上,癌化学療法を受け味覚に変化をきたした患者の食事ケアとしては,鈍感になった味を少し強化した味付けにする.化学療法剤投与中では,肉,卵,魚類の蛋白食品を少量使用する.治療後は,口内炎の合併がなければ塩味をやや濃くし,麺類など塩分の味付けを集中させる献立を提供する.加えて,食事ケアでは,病院食として化学療法食,口内炎食を確立する必要がある.そのためには栄養士と協力し,組織的な取り組みを行うことが不可欠である.