著者
立川 康人 太田 裕司 宝 馨
出版者
京都大学防災研究所
雑誌
京都大学防災研究所年報. B (ISSN:0386412X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.B-2, pp.267-275, 2001-04-01

東海豪雨によって名古屋市天白区野並地区で発生した浸水被害を対象とし, 浸水状況を再現するシミュレーションモデルを構築した.次に, このモデルを用いて, いくつかの想定シナリオのもとでの浸水シミュレーションを行い, 浸水被害の原因や対策について考察した.その結果, 計画規模を越えるような豪雨に対処するためには, 排水のネットワーク構造を考えた対策を考えねばならないことが明らかとなった.
著者
田中 智大 河合 優樹 立川 康人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00096, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
14

日本全国一級水系を対象に,気象庁気象研究所の150年連続実験1メンバーから得られた年最大流域平均雨量系列に非定常水文頻度解析を適用した.まず,d4PDF過去実験が非定常境界条件のアンサンブル実験であることを利用し,定常および非定常の頻度解析による極値雨量が整合的であることを明らかにした.次に,150年連続実験の非定常頻度解析とd4PDFの定常頻度解析から得られる100年確率流域平均雨量の過去から現在,近未来,将来への変化率を比較した.両者は全水系平均値でよく一致したが,水系単位では150年連続実験の空間的ばらつきが大きい結果となった.これは,150年連続実験のアンサンブル数が一つであるためと考えられ,水系単位の変化や水系間の違いを論じるにはアンサンブル数を増やす必要があることがわかった.
著者
立川 康人 宝 馨 田中 賢治 水主 崇之 市川 温 椎葉 充晴
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.139-151, 2002-03-05 (Released:2009-10-22)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2

筆者らがこれまでに開発してきたマクログリッド型流出モデルを淮河流域に適用し,GAME強化観測期間(1998年5月1日~8月31日)の流量シミュレーションを行った.モデルへの入力データには田中らによって作成された毎時5分グリッドの水文データセットを用いた.このデータセットは,1998年の強化観測期間に取得された気象・水文観測データと鉛直一次元の陸面過程モデルSiBUCとを用いて作成されたものである.実測流量と計算流量とを比較したところ,下流域ほど計算流量は観測流量よりも小さく算定されることがわかった.この原因として,用いたデータセットの蒸発散量が過大評価されていること,ダムなどによる人為的な流水制御をモデルで考慮していないことなどが考えられるが,今後の検討を要する.また,河川流量の再現シミュレーションの過程で,河道流追跡モデルが大河川流域の河川流量を予測する上で果たす効果を示した.
著者
立川 康人 フヌクンブラ ピービー 宝 馨
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.112-112, 2007

KsEdge2Dモデルは京都大学で開発された分布型流出モデルの一つであり,国内の多数の流域で研究され,適用されてきた。この分布型流出モデルは国土地理院が提供する国土数値情報を利用することを前提として開発されているため,そのままでは国外の流域に適用することは難しい。そこで本研究では,KsEdge2Dモデルを地球上のあらゆる陸域に適用することを可能とするために,グローバルに適用可能な地形情報を加工して,KsEdge2Dモデルのための地形情報と河道情報を作成する前処理プログラムDEM-V0-Makerを開発した。タイ国のMae Chaemを対象として,前処理プログラムDEM-V0-Makerが適切に動作することを確認した。これにより,あらゆる国際流域においてKsEdge2Dモデルを適用することが可能となった。この流域でKsEdge2Dモデルを適用し,観測流量を適切に再現することを確認した。
著者
佐山 敬洋 立川 康人 寶 馨
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B (ISSN:18806031)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.226-239, 2008 (Released:2008-10-20)
参考文献数
39
被引用文献数
2 4

広域分布型流出予測システムの観測流量によるデータ同化手法を提案する.予測システムは斜面部の流れを表現する流出モデルと河道流れを表現する河道追跡モデルからなる.これらのモデルが持つ全ての状態量を実時間で観測更新することは計算付加が高く,実時間予測システムとしての実行可能性に困難が伴う.そこで,本研究では河道追跡モデルにマスキンガム-クンジ法を用い,河川流量を観測更新すると共に,流出モデルに起因する予測のバイアスを河川流量と同時に逐次推定する方法を提案する.この手法を桂川流域の洪水予測に適用し,斜面部の流出予測バイアスを補正することによって洪水予測精度が向上することを明らかにした.
著者
大津 宏康 立川 康人 小林 晃 稲積 真哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

インドシナ地域で斜面崩壊が最も多発している風化花崗岩(まさ土)からなる斜面での原位置計測の分析結果より,降雨は表面流出,地中への浸透に加え,表面貯留の3成分に分類され,この内表面貯留は,斜面表層部でのインク瓶効果により,降雨浸透が抑制されることで生じることを確認した.また,解析で算定された浸透量を流入境界とした飽和・不飽和浸透流解析と実測値との比較から,同手法は,表面貯留量の概念を導入することで,浸透量を適切に表現可能となることを示した.さらに,降雨に起因する斜面崩壊機構として,降雨浸透に伴う飽和度の上昇による有効粘着力の減少により,安全率の低下が生じることを明らかにした.
著者
中北 英一 田中 賢治 戎 信宏 藤野 毅 開發 一郎 砂田 憲吾 陸 旻皎 立川 康人 深見 和彦 大手 信人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究プロジェクトは「琵琶湖流域の水・熱循環過程解明に向けた総合研究と衛星同期共同観測」を骨子としたオープンなプロジェクトであり,1989年の山梨大学工学部砂田憲吾による提唱をベースに,様々な方々,関係機関のサポートを頂戴しながら,手弁当による参加をベースに継続して続けられてきたものである.フリーな議論をベースにそのあり方を問い続けてきたプロジェクトでもある.その土台をベースに砂田憲吾をプロジェクトリーダーとして進んできた第1ステージが1994年に終了し,1995年からは,1)衛星リモートセンシングデータの地上検証 2)衛星データを用いた水文量抽出アルゴリズム/モデルの開発 3)地表面-大気系の水文循環過程の相互作用の解明 4)水文循環過程の時空間スケール効果の解明 を目的として,本科学研究費補助金をベースとした第2ステージを進めてきた.そこでは,これまでの地上,衛星,航空機による観測に加え,対象領域全体を表現するモデルとのタイアップを新たに目指してきた.その中で,どのスケールをベースに水文過程のアップスケーリングを図って行くべきなのかの議論を深めながら,20km×20kmまでのアップスケーリングをめざし第3ステージに橋渡しをするのが,わが国に根付いてきた琵琶湖プロジェクトのこの第2ステージの果たすべき役割である.'95共同観測では,様々なサポートにより上記第2ステージの目的を追求するのに何よりの航空機,飛行船を導入した大規模な観測態勢を敷くことができた.また,96年度から初の夏期観測をスタートすると共に,モデルとタイアップさせたより深い共同観測のあり方についての議論を行ってきた.成果としては,上記目的それぞれに関する各グループの成果報告,観測・モデルを組み合わせたスケール効果の解明と今後のあるべき共同観測態勢,研究グループ外部をも対象としたデータベースや観測・解析プロダクツを報告書として啓上している.
著者
立川 康人 寳 馨 佐山 敬洋
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

治水計画の基準となる河川流量を求める場合、わが国では、降雨の確率規模を設定していくつかの降雨パターンを想定し、流出モデルを用いて対象地点の河川流量を求めるという手順をとる。このとき、入力となる降雨は、ある確率規模を定めたとはいってもその時空間パターンには無数のバリエーションがある。また流出モデルも完全なものではない。したがって予測される河川流量には多くの不確かさが含まれる。基本高水はこの予測の不確かさを把握し総合的な判断のもとに決定される。したがって、予測の不確かさを定量化し、不確かさが発生する構造を明らかにすることが重要である。予測値と共にその予測値の不確かさを定量的に示すことができれば、治水計画を立案する上で有効な判断材料を提供することになる。河川流量の予測の不確かさは、主として1)入力となる降雨が不確かであること、2)流出モデルの構造が実際の現象を十分に再現しきれないこと、3)流出モデルのパラメータの同定が不十分であること、から発生する。これらは基本的には観測データが十分に得られないことが原因であるが、洪水を対象とする場合、100年に1回といった極めて発生頻度の低い現象が対象となるため、すべての流域でデータを蓄積して問題を解決しようとするのは現実的ではない。ある流域で観測されたデータをもとに観測が不十分な流域での水文量を推定する手法を開発し、その推定量の不確かさを定量的に示すこと、またその不確かさができるだけ小さくなる手法を追求することが現実的な方法である。そこで本研究では1)降雨観測が不十分な流域における確率降雨量の推定手法の開発、2)降雨の極値特性を反映する降雨の時系列データ発生手法の開発、3)不確かさを指標とした流出モデルの性能評価と分布型流出モデルの不確かさの構造分析、を実施した。