著者
吉田 信裕 舟橋 啓臣 今井 常夫 田中 勇治 飛永 純一 山田 二三夫 和田 応樹 束村 恭輔 森田 孝子 高木 弘
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.1296-1300, 1995-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
21

1979年から1992年までに,当教室では甲状腺分化癌手術を392例経験したが,このうち20歳未満の若年者は18例であった.若年者症例にも成人と同様,「(1)甲状腺全摘,(2)両側頸部郭清,(3)上皮小体自家移植」の基本術式を原則として施行してきた.腫瘍径やリンパ節転移などを成人と比較,また術後経過についてQuality of lifeを含め追跡し,当教室の術式の是非を検討した.腫瘍径はt2以上が全体の約80%を占めたが,成人は60%に留まった.またリンパ節転移は約90%の症例に認めたが,成人例は76%であった.若年者は手術時に成人より進行していたが,18例のうち1例も再発を認めていない.また術後の合併症は,軽度の上皮小体機能低下症1例と術創ケロイド3例のみであった. 10歳以下の症例の成長・発育にも何ら問題はなく,適齢期に達した女性5症例のうち3例は児を設けている.充分な根治性と良好な術後経過を期待できる,妥当な術式と考えられた.
著者
舟橋 啓臣
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.1047-1052, 1998-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

女性化乳房(gynecomastia)は外来診療において比較的よく遭遇する疾患である.生理的なものと病的なものがあり,病的女性化乳房には薬剤性・ホルモン異常性などがある.また,男性乳癌とは慎重な鑑別を要する.超音波検査,マンモグラフィー,穿刺吸引細胞診は乳癌との鑑別診断に非常に有用である.女性化乳房の多くが生理的なものと,薬剤性であるが,良性でも外科的治療の対象となる.
著者
岩岡 洋 長名 保範 吉見 真聡 小嶋 利紀 西川 由理 舟橋 啓 広井 賀子 柴田 裕一郎 岩永 直樹 北野 宏明 天野 英晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RECONF, リコンフィギャラブルシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.287, pp.61-66, 2005-09-08
被引用文献数
6

計算機を利用した生化学反応のシミュレーションが行なわれるようになってきた。大規模なシミュレーションモデルを扱う場合、膨大な計算時間を要するため、FPGAを用いてシミュレーションを高速化する研究が行われている。しかし、これまでの研究は主としてアルゴリズムの高速化であり、ユーザの利便性は考えられていなかった。そこでシステム生物学ではデファクトスタンダードとして用いられているモデル記述言語SBMLを利用可能とするためのインタフェイスソフトウェアを実装し、その際のオーバーヘッドなどの評価を取った。
著者
岡 浩太郎 チッテリオ ダニエル 舟橋 啓
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

細胞内のエネルギー代謝を制御する新規なセカンドメッセンジャー候補としてMgイオンに注目した研究を進めて来ている。本年度は特にエネルギー代謝の変動を把握する系の確立を目的とし、神経細胞ミトコンドリアの挙動とその集積・移動の解析を、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア内ATP濃度の蛍光イメージングを併用して調べた。従来ミトコンドリア活性を評価するためにミトコンドリア膜電位のイメージングが行われてきたが、我々の研究から、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア内ATP濃度は必ずしも強い正の相関を持つわけでないことが判明した。またこれらの2つのパラメータをミトコンドリアの融合と分裂時にも追跡することに初めて成功した。この成果は古くなったミトコンドリア機能がどのようにリフレッシュされるのかを考える上でも大いに貢献するものとである。また細胞内でのMgイオンの役割の生理的な意味について、本年度は特に細胞分裂の際に一過的に細胞内でのMgイオン濃度が上昇するという知見を得ることに成功した。細胞が分裂する際、ヒトでは全長2メートルにもおよぶゲノムDNAからコンパクトに凝縮した染色体が作られ、2つの細胞に正確に分配される。半世紀以上前、細胞に大量に存在するMgイオンがゲノムDNA凝縮の鍵となりうることが提唱されたことがあったが、当時は細胞内Mgイオン濃度を測定する手段が無かったため証明されぬまま忘れられてた。本年度は細胞分裂の際にMgイオン濃度が一過的に上昇することを示すとともに、Mgイオンが負の電気を帯びているDNA同士の反発を弱め、染色体の凝縮を促進していることを明らかにできた。本研究によって、実際にMgイオンが細胞のなかで染色体の凝縮にかかわっていることが初めて証明できた。
著者
吉見 真聡 長名 保範 岩岡 洋 西川 由理 小嶋 利紀 柴田 裕一郎 岩永 直樹 舟橋 啓 広井 賀子 北野 宏明 天野 英晴
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.45-58, 2007-02-15
被引用文献数
4

確率モデル生化学シミュレーションアルゴリズム(SSA)は,定義した生化学システムの確率的挙動を厳密に計算できるアルゴリズムとして知られている.しかし,SSA の実行には膨大な計算時間が必要であり,高速な実行環境が求められている.本論文では,高速実行の一手法として,Xilinx 社のFPGA(XC2VP70-5)を用いて,SSA(First Reaction Method)を実行する回路を実装,評価した結果について述べる.高速化は,パイプライン化した演算ユニットを使い,複数スレッドのシミュレーションを同時に実行することで実現する.シミュレータ回路は,中間データをBlockRAM に保持し対象の生化学システムごとの回路再構成を要しない,実用的な構造になっている.ベンチマーク的に定義できる生化学システムTIS,D4S で評価した結果,Xeon 2.80 GHz による実行と比較して,TIS では約83 倍,D4S では約95 倍のスループット向上が可能であることを確認した.This paper discusses an FPGA implementation and evaluation of a Stochastic Simulation Algorithm (SSA) called the First Reaction Method. SSAs are widely known as rigorous methods for simulating the stochastic behaviors of various biochemical systems, but also as CPU-hogging applications due to vast repetition of the algorithm. This work accelerates the execution by achieving high throughput with concurrent simulations of highly utilized pipelined arithmetic units. For upgrading practical utility, the design stores intermediate data in a BlockRAM so that reconfiguration is unnecessary for different target biochemical systems. Benchmark results on an FPGA (Xilinx XC2VP70-5) have shown that the circuit provides throughput of approximately 83 times and 95 times compared to software execution on Xeon 2.80 GHz when it was evaluated with biochemical models called TIS and D4S, respectively.
著者
舟橋 啓臣 今井 常夫 神部 福司 妹尾 久雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

クッシング症候群は、コルチゾルの過剰産生を認める症候群であり、高血圧、耐糖能異常、中心性肥満、満月様顔貌、免疫不全などの重篤な臨床症状を呈する。本邦におけるクッシング症候群の原因の多くは、コルチゾル産生副腎皮質腺腫(CPA=cortisol producing adenoma)であるがその発症機序は明らかにされていない。本研究では、CPA組織において特異的に発現増強あるいは減弱している遺伝子群をRDA(Representational Difference Analysis)を用いて同定し、その機能を明らかにすることによりCPAの発症機序を解明することを目的とした。CPAとそれに隣接する正常副腎から抽出したRNAを用いRDAを行い、CPAに特異的に発現しているcDNA群をクローニングした。その結果、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST-A1)及びDiminuto遺伝子が同定された。これらのmRNAの発現は、CPAに強く認められ、隣接正常副腎では殆ど発現が認めらなかった。副腎由来の細胞株H295Rを用い、GST-A1が副腎細胞の増殖に重要であることをこの酵素の特異的な阻害剤であるエタクリン酸を用いて明らかにした。一方、Diminuto遺伝子は、コレステロール産生に関わる酵素をコードすることが報告され、我々は、この発現が副腎皮質刺激ホルモンにより増加することをラットを用いた研究より初めて明らかにした。この結果は、Diminuto遺伝子産物による副腎におけるコレステロール産生がコルチゾル産生に重要であること示唆した。