著者
菊地 俊夫 田林 明
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.460-475, 2016 (Released:2016-12-10)
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究の目的は東京都多摩地域の立川市砂川地区を事例にして,農産物直売所の存在形態と農村空間の商品化の関連性から,都市農業の維持・発展メカニズムを明らかにすることである.立川市砂川地区における都市農業の維持・発展は農産物直売所の立地に大きく依存している.それは,農産物直売所が都市住民に農産物を直接販売する施設であり,その施設を都市住民のニーズに応えるかたちで維持することで,農産物生産が行われているためである.結果として,農村景観や農業的土地利用が維持されるだけでなく,農村コミュニティも維持されることになる.また,農産物直売所を都市住民が訪れて購買することにより,それを核とする農村空間は生産空間としてだけでなく,消費空間としても意味づけられるようになる.
著者
田林 明 菊地 俊夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.425-447, 2016 (Released:2016-12-10)
参考文献数
32
被引用文献数
1

現代の日本では,農村本来の機能である食料生産を存続させ,持続的に発展させることが重要な課題となっている.この報告は,稲作が卓越する北陸地方において存続・成長の可能性の高い農業経営事例を検討し,その特徴と役割を明らかにする.ここで取り上げた三つの大規模借地経営は,利潤を追求するとともに,農地活用・管理のみならず,地域社会の維持,雇用創出といった役割を果たしている.それぞれは,大規模化と多角経営化と企業的性格を強めるという方向に進んできている.今後,ますます生産物を多様化し,加工・流通部門も加えて,規模拡大を進めるものと考えられる.しかし,すべての地域の農業がこれらの企業的経営によって維持されるのは困難であり,利潤追求というよりも一定水準の農業を継続し,農地を管理し,地域社会を持続させていこうとする集落営農が,大規模借地経営の隙間を埋めるように機能していくと考えられる.
著者
菊地 俊夫 岩田 修二 渡辺 真人 松本 淳 小出 仁
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.Erratum6_1-Erratum6_1, 2011-12-25 (Released:2012-01-28)

地学雑誌120巻5号(2011)掲載の菊地俊夫・岩田修二・渡辺真人・松本 淳・小出 仁著「特集号『ジオパークと地域振興』―巻頭言―」(p.729-732)に誤りがありましたので,お詫びし訂正いたします。p.731 右段最終行:(誤)尾形 → (正)尾方
著者
菊地 俊夫
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は大都市近郊農村を主な対象にして、農地や谷戸、および里山や林地などの緑地空間の再編をグリーントリフィケーション(greentrification)として捉え、その創成メカニズムと持続性を明らかにすることを目的とした。グリーントリフィケーションとは「緑地空間の再編・美化」や「緑地空間価値の高度化」ともいわれるもので、その研究は農村や農山村における非経済的な価値を見直すことにもなる。大都市近郊では、農村空間の構成要素である里山と農地を農村と都市のコミュニティが協働で保全してグリーントリフィケーションを成立発展させ、そのことが大都市近郊農村の持続性を高めていた。