著者
青江 誠一郎 小前 幸三 井上 裕 村田 勇 峰岸 悠生 金本 郁男 神山 紀子 一ノ瀬 靖則 吉岡 藤治 柳沢 貴司
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.283-288, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

本研究は, 異なる配合率のモチ性の大麦品種「キラリモチ」混合米飯の摂取が米飯と比較して食後血糖値の上昇を配合率依存的に抑制するかとGlycemic Index (GI) が配合率依存的に低下するか検証するため実施した。対象は健常な成人10名 (男性6名, 女性4名) とした。糖質50 g分の米飯 (基準食) とモチ性大麦の配合率が30, 50, 100%の大麦混合米飯 (試験食) のそれぞれを摂取し, 摂取前および摂取開始から15, 30, 45, 60, 90, 120分後の血糖値を測定した。血糖値, 血糖値上昇曲線下面積 (IAUC) , Glycemic Index (GI) について解析した。大麦の配合率が増加するほど血糖値とIAUC0-120が低下した。GIは, 基準食を100とした場合, 大麦配合率30, 50, 100%でそれぞれ, 79.7, 67.5, 48.3であった。モチ性大麦混合米飯には, β-グルカン量に依存して米飯と比較して血糖値の上昇を抑制する効果が示唆された。
著者
荒木 茂樹 伊藤 一敏 青江 誠一郎 池上 幸江
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.235-251, 2009 (Released:2011-03-30)
参考文献数
94
被引用文献数
3 5

Although barley has traditionally been one of the most important food grains, the intake in Japan has been decreasing during the last forty years. Barley provides many essential nutrients (carbohydrates, dietary fiber, vitamins and minerals) and functional components (dietary fiber and polyphenol). Studies on the health benefits of barley have been rapidly increasing in terms of the cholesterol-lowering effect, serum glucose and insulin normalization, decreased body fat accumulation, and blood pressure reduction. It has been scientifically proven that the soluble dietary fiber in barley, β-glucan, might reduce the risk of cardiovascular disease (CVD). It is inferred that two principal mechanisms may contribute to the cholesterol-lowering effects of barley and β-glucan: 1) reduction of cholesterol and bile acid absorption from the small intestine, 2) inhibition of cholesterol synthesis in the liver. Barley and β-glucan have therefore been approved as a potential health benefit against the risk of CVD in the United States and Sweden. Recent clinical studies have suggested that the consumption of barley and its products might reduce many risk factors associated with the metabolic syndrome, namely diabetes, hypertension and dislipidemia. This review presents information that will hopefully increase the awareness of professionals and consumers for the health benefits of barley.
著者
山中 千恵美 池上 幸江 青江 誠一郎
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.385-391, 2011 (Released:2012-04-25)
参考文献数
15

カルシウムの摂取量と形態の違いがKKマウスの腹腔内脂肪蓄積に及ぼす影響を比較した。KK/Taマウス3群に, カルシウム含量が0.5%となるように炭酸カルシウム (NC) あるいはミルクカルシウム (MC) を配合した飼料, あるいは, カルシウム含量が0.1%となるように炭酸カルシウム (LC) を配合した飼料をそれぞれ給餌した。終体重, 飼料効率はLC群がNC, MC群に比べて有意に高かった。肝臓脂質蓄積量は, LC群がNC, MC群に比べ有意に高かった。血糖値, 血清インスリンおよびレプチン濃度は, LC群がNC, MC群に比べて有意に高かった。血清PTH濃度は, MC群がLC群に比べて有意に低かった。各腹腔内脂肪組織の重量は, LC群がNC, MC群に比べて有意に増加した。MC群とNC群の間に有意な差は検出されなかった。以上の結果, カルシウムの摂取量の低下は, 腹腔内脂肪蓄積を促進することが認められ, おそらく, インスリン分泌の過剰によると考えられた。しかし, ミルクカルシウムと炭酸カルシウム間では, 腹腔内脂肪蓄積に対して顕著な差は見られなかった。
著者
築舘 香澄 青江 誠一郎 明渡 陽子 大森 正司
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.293-299, 2012-06-15 (Released:2013-10-10)
参考文献数
27

Gamma-aminobutyric acid (GABA) is an inhibitory neurotransmission compound found in the vertebrate brain. GABA has recently been attracting attention as a functional food with its anti-stress effect. However, the bioactive mechanisms of dietary GABA have not been fully clarified. We investigated in this study the biosynthesis and catabolism of GABA in the liver and brain of rats under repeated stress and GABA administration. After repeated restraint stress (16 hours a day for 7 days a week), a decrease in the liver weight and food intake were apparent. In addition, the glutamate decarboxylase (GAD) 65 gene expression was significantly increased in the liver, and the GABA concentrations in the liver and plasma were also significantly increased. In contrast, when GABA (100mg/100g of body weight) was orally administered to the rats, while the concentrations of GABA in the liver and plasma were significantly increased, the mRNA expression of GAD and GABA transaminase (GABA-T) remained unchanged.These results show that, under repetitive stress for 7 days, GABA biosynthesis in the liver was enhanced, and then the GABA concentrations in the liver and plasma increased. While dietary GABA resulted in an increase in GABA concentrations in the liver and plasma, it did not affect the gene expression of the enzymes responsible for GABA biosynthesis and catabolism. The GABA concentration in the brain was unaffected by GABA administration and stress application, and remained constant.
著者
青江 誠一郎 野崎 聡美 菊池 洋介 福留 真一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.20-25, 2018 (Released:2018-03-12)
参考文献数
21

【目的】小麦全粒粉パン摂取後の血糖値上昇が,小麦粉パン摂取後と比較して抑制されるか検証する。【方法】空腹時の血糖値が正常な成人19名(男性10名,女性9名)を試験対象とした。糖質 50 gを含む小麦全粒粉パン(試験食)または小麦粉パン(対照食)を摂取し,摂取前および摂取後15分,30分,45分,60分,90分,120分の血糖値を測定した。試験はプラセボ対照無作為化単盲検クロスオーバー試験とし,主要評価項目はGlycemic Index(GI値),副次評価項目を各時点の血糖上昇値,最大血糖上昇値,血糖値上昇曲線下面積(IAUC)とした。【結果】グルコース溶液を基準とした場合,小麦全粒粉パンのGI値は65.2,小麦粉パンのGI値は73.0であり,小麦全粒粉パンは小麦粉パンよりもGI値が有意に低かった。小麦全粒粉パンを摂取した場合,小麦粉パンを摂取した場合と比較して最大血糖上昇値が有意に低く,IAUCが有意に小さかった。【結論】小麦全粒粉パンの摂取は,小麦粉パンの摂取と比較して健常者の食後血糖値の上昇を抑制する効果が確認された。
著者
笹岡 歩 河本 高伸 青江 誠一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.253-258, 2015 (Released:2016-04-06)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

【目的】本研究は大麦の健康機能に着目し,大麦粉ホットケーキの摂取が小麦粉ホットケーキと比較して食後血糖値の上昇を抑制するかを検証するため実施した。【方法】対象は空腹時の血糖値が正常な成人12名(男性6名,女性6名)とした。糖質 50 g分の大麦粉ホットケーキ(試験食)と小麦粉ホットケーキ(対照食)のそれぞれを摂取し,摂取前および摂取開始から15分,30分,45分,60分,90分,120分後の血糖値を測定した。なお,試験は無作為化,単盲検,クロスオーバー試験とし,統計解析は各変数の正規性を確認後,血糖値変化量(Δ血糖値)の経時変化の解析は乱塊法二元配置分散分析を,血糖値上昇下面積(IAUC)の解析はFriedman検定を行った。また,ホットケーキシロップを添えた場合についても同様の試験を実施した。【結果】ホットケーキシロップ無しおよび有りの試験について,大麦粉ホットケーキを摂取した場合,小麦粉ホットケーキと比較して,0~120分間の全平均Δ血糖値およびIAUCが有意に低下した。【結論】大麦粉ホットケーキには,小麦粉ホットケーキと比較して血糖値の上昇を抑制する効果が確認された。
著者
青江 誠一郎
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-6, 2015 (Released:2015-07-27)
参考文献数
12
被引用文献数
5 5

Barley have a component of soluble fiber called β-glucan which have β-(1→3) and β-(1→4)-linkages. Studies on the physiological functions of barley have been rapidly increasing in terms of the cholesterol-lowering effect, serum glucose and insulin normalization including the second meal effects, decreased body fat accumulation, and appetite control. It has been scientifically proven that the soluble dietary fiber in barley, β-glucan, might reduce the risk of cardiovascular disease (CVD). The Food and Drug Administration (FDA) has stated that daily intakes of 3 g or more of soluble fiber (β-glucan) in barley may reduce the risk of heart disease by its ability to lower total cholesterol and LDL-cholesterol. The European Food Safety Authority (EFSA) supported the following health claim for barley β-glucan: 1) maintenance of normal blood LDL-cholesterol concentrations, 2) reduction of post-prandial glycemic responses, and 3) digestive function (normal stool frequency). Recent clinical studies have suggested that the consumption of barley and its products might reduce many risk factors associated with the metabolic syndrome, namely diabetes and dyslipidemia. In our inter vention study in Japanese men and women, the consumption of high β-glucan barley reduced waist circumstaznce and visceral fat area. This review presents recent information about the health function of barley β-glucan.
著者
加藤 美智子 椿 和文 久下 高生 青江 誠一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.60-68, 2016 (Released:2016-07-12)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

【目的】大麦には,種々の生理作用が報告されているが,大麦β-グルカン抽出物を配合してβ-グルカン含量を増やした場合に,増量に伴う用量依存性が期待できるのか検証した例はない。そこで,本実験では,大麦β-グルカン抽出物を配合した高脂肪食をマウスに給餌し,耐糖能と腹腔内及び肝臓脂肪蓄積に及ぼす影響を評価した。【方法】6週齢のC57BL/6Jマウスに脂肪エネルギー比率50%の高脂肪食を与えた。各飼料中のβ-グルカン含量は,コントロール(C)群0.0%,全粒大麦(B)群1.2%,β-グルカン抽出物添加大麦(B+G)群3.1%,β-グルカン抽出物(G)群5.0%とした。各飼料と水は12週間自由摂取させた。耐糖能試験,肝臓脂質および血清インスリン,レプチン濃度を測定した。また,腹腔内脂肪細胞の平均サイズをコールターカウンターを用いて計測した。【結果】血清インスリン濃度,血糖値−時間曲線下面積は,β-グルカン含量と用量依存性があり,C群に比べ,すべての試験群において有意に低値を示した。脂肪組織重量,脂肪細胞の平均サイズ,レプチン濃度及び肝臓脂質量は,飼料中のβ-グルカン含量と用量依存性が認められた。【結論】大麦β-グルカン抽出物を添加して飼料中の含量を増加することにより,用量依存的に耐糖能異常が起こりにくくなり,腹腔内及び肝臓脂肪蓄積抑制作用が認められた。
著者
山中 千恵美 青江 誠一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.75-82, 2018 (Released:2018-04-16)
参考文献数
22

食餌中へのカルシウム (Ca) 添加量がマウスの膵臓の機能に及ぼす影響を調べた。KK/Taマウスを3群に分け, AIN-93G組成を基本とし, Ca含量が0.25% (L群) , 0.5% (M群) , 1.0% (H群) となるように炭酸Caを配合した飼料をそれぞれ7週間給餌した。その結果, 血清Ca濃度に差はなかったが, 血清リン濃度は, L群, M群に比べてH群で有意に高かった。血清副甲状腺ホルモン (PTH) 濃度は血清リン濃度と有意な負の相関が認められた。インスリン負荷試験 (ITT) では, 15分, 30分値の血糖値がM群に比べてL群, H群で有意に高かった。膵臓の機能に関わる遺伝子発現は, M群, H群に比べてL群で有意に高かった。膵臓の炎症に関わる遺伝子発現では, H群に比べてL群で有意に高かった。以上の結果, 低Ca摂取は, 膵臓での炎症を誘発し, インスリン抵抗性を示すことが認められた。また, 高Ca摂取では, 低Ca摂取とは異なり, 別のメカニズムで膵臓の機能に影響した可能性が示された。
著者
青江 誠一郎
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.C57BL/6Jマウス(ワイルド型;+/+マウス)の食餌応答性:ob/+マウスのバックグランドデータを把握する目的で+/+型マウスの食事応答性を検討した。その結果,ワイルド型(+/+)マウスにおいて、高脂肪食負荷は内臓脂肪蓄積を増加させるが、脂肪細胞の機能への影響は弱いと考えられた。2.レプチンノックアウトマウスのヘテロ型(ob/+)とワイルド型(+/+)マウスの食餌応答性の比較:ob/+および+/+雄マウスを評価した結果、いずれのマウスも感度良く飼料の影響が評価できた。本マウスでは遺伝子の因子よりも高脂肪食の影響が強いことが示された。3.ヘテロ型(ob/+)とワイルド型(+/+)マウスを用いた食品素材の評価:大豆リン脂質、卵黄リン脂質を評価した結果,両リン脂質は脂肪細胞の肥大化を抑制した。4.レプチン受容体ノックアウトマウスのヘテロ型(db/+)とワイルド型(+/+)マウスの食餌応答の比較:C57BL/6Jのバックグランドを持つdb/+マウスを作成し、食餌応答性を比較した。その結果、db/+マウスの方がヘテロ型とワイルド型との差が大きく、高脂肪食においてその差が大きかった。5.新規な肥満モデルマウスとしてのSTR/Ortマウスの評価:自然発症変形性膝関節症モデルであるSTR/Ortマウスを評価した結果、通常食においても太りやすく、高脂肪食に対する感度も良かった。6.C57BL/6JマウスとKK/Taマウスを用いた機能性食品素材の評価:C57BL/6JマウスとKK/Taマウスを用いて,機能性食品素材の評価を行った。C57BL/6JマウスとKK/Taマウスが効果の感度がそれぞれ違うため,目的に応じて系統の違うマウスを選定するべきであると考えられた。