著者
藤代 節
出版者
国立情報学研究所
雑誌
学術情報センター紀要 (ISSN:09135022)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.53-72, 1998-03

東・中央シベリアを中心として、広い地域に分布するチュルク系言語ヤクート語の動物及び植物を表す語彙についての研究である。ヤクート語にはその主要な話者であるサハ(あるいはヤクート)族が今日の居住域に至るまでに辿ってきた過程が、特に語彙において反映されており、そのことがチュルク諸語の中にあって、ヤクート語が特異な言語とされる所以でもある。この言語の特異性を明らかにするため語彙の中でもセットとして扱えるものを取り上げる。既に色彩名称と方向表現に関する研究を発表したが、本稿でこれに続いて同じくセットとして動植物名称を選び、研究の対象とした。色彩名称、方向表現についてと同じくサハ族の英雄叙事詩オロンホ「クース・デビリィエ」を主な資料とし、この中に見られるヤクート語の動植物名称の整理分析を試みた。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘 角道 正佳 岸田 文隆 菅原 睦 澤田 英夫 橋本 勝 岸田 泰浩
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題は、ユーラシアのアジア地域を中心に、広域にわたって生じた言語接触の研究を目指したものである。各メンバーが各々携わってきた地域にみられる言語の接触状況を把握し、当該地域における社会言語学的情報を考慮しつつ、言語地域のダイナミズムを提出することをまず第1段階とし、次に個別に研究してきた言語の関与する言語接触の様相がユーラシア各地に分布する他の地域のそれと比べてどのような類似点あるいは特異点をみせているかを考察した(第2段階)。さらに、言語接触研究において従来、提出されている諸現象及び接触前段階まででみられる諸現象がアジア地域の言語接触についても頻繁に見られるか、それら諸現象の出現を条件付ける要素は何であり、何処に起因するか、等に考察を及ぼした。その上で、言語接触のあり方を整理し、ユーラシア各地の言語地域について、各領域の言語から多角的に検討してきた。本研究課題に参加したメンバーが、研究目的にそって、研究に従事した三年間の実施期間にまとめた成果の一端をApproaches to Eurasian Linguistic Areasと題した論集にまとめ、Contribution to the Studies of Eurasian Languages seriesの第7巻として刊行した。それぞれにユーラシア言語地域に分布する言語接触の諸相を扱った論考をあつめ提出できた。なお、本研究課題の参加メンバーは、その成果をふまえ、「言語接触のその後」を探る研究と位置づけた研究課題『ユーラシアの言語接触と新言語の形成-新言語形成のメカニズム解明に向けて-』に新たに取り組む予定である。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究課題はヤクート(サハ)語の英雄叙事詩オロンホの調査研究である。2年間に集中的に英雄叙事詩およびヤクート語について帝政ロシア、旧ソ連邦、現ロシア共和国の各時代を通じて著された関連文献の調査、整理、テキスト等の基礎的データの入力作業を行った。初年度にはロシア科学アカデミー東方学研究所にて帝政ロシア時代のサハ語資料の閲覧、検索などをおこなった。また機会を得て、サハ共和国内の共和国立図書館などにおいてもオロンホ資料に関連する文献調査を行い、ヤクート語話者あるいはヤクート語周辺の言語の話者等に研究協力を依頼し、オロンホに関連しての調査研究を行った。本研究課題の成果としては研究代表者の藤代、研究分担者の庄垣内がともに各自学術論文、出版物、また研究発表等を通じて随時、発表してきた。本研究課題の実施期間を通じて、サハ(ヤクート)共和国内で出版されたヤクート語学や文学に関連する文献も多く収集することが出来た。これらは特にここ2、3年に飛躍的に入手が容易になった出版物である。本研究課題を遂行して、研究成果全体、特にオロンホのデータを蓄積じたものを刊行すべき必要性を強く感じている。これらの学術文献におけるオロンホの扱い方及び未だ数量的には大量とは言えないがオロンホテキスト資料を今後も有効に活用して、オロンホのデータ蓄積を大きくしていきたい。研究代表者等は近い将来にオロンホデータに言語学的分析を加えたものを出版することを目指している。
著者
藤代 節 Fujishiro Setsu フジシロ セツ
出版者
神戸市外国語大学外国学研究所
雑誌
神戸市外国語大学外国学研究 (ISSN:02899256)
巻号頁・発行日
no.21, pp.155-184, 1990-03

「内陸アジア言語の研究」第5号 (Studies on the Inner Asian Languages)
著者
庄垣内 正弘 熊本 裕 梅村 担 西田 龍雄 藤代 節 吉田 豊
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、ロシア科学アカデミー東方学研究所サンクトペテルブルグ支所に保管されている古語文献を調査・整理してカタログを作成することと、主要文献を文献学的・言語学的に研究することであった。対象とした言語はウイグル語、コータン語、ソグド語、西夏語、蒙古語である。研究成果の主なもの掲げる:1.カタログ作成:(1)Kаmало〓 Tан〓уmскux Бу〓〓u〓скuх Памяmнuкоб Инсмuмума Восмокобе〓енця Pоссu〓ско〓 Ака〓емuu Наук(ロシア科学アカデミー東方学研究所所蔵西夏語仏教文献カタログ)京都大学 1999年792p..(2)『サンクトペテルブルグ所蔵ウイグル語文献カタログ』京都大学2001年(印刷中)2.文献研究:(1)『ウイグル文Dasakarmapathavadanamalaの研究』松香堂1998年xii+377p.(2)Contribution to the Studies of Eurasian Languages:Issues in the Asian Manuscripts at the Archive of the St.Petersburg Branch of Oriental Studies,Russian Academy of Sciences,Kyoto University,Kyoto(in print).3.シンポジウム:「中央アジア古代語とチュルク系極小言語-死語と危機言語の研究-」京大会館・京都大学文学部羽田記念館1997年10月24日〜25日.以上のほか、文献研究においては研究代表者・分担者の提出した論文が総計約20点に及ぶ。また、日本とロシアで10回を越える研究討議もおこなった。
著者
井上 治 小松 久男 栗林 均 宇野 伸浩 藤代 節 柳澤 明
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題は、北方ならびに中央ユーラシア地域の複雑で多様な文化を、歴史学・言語学・文学・人類学などの手法を有機的に組み合わせ、時代・地域・学問分野・方法論などの研究上の境界を超えて考究することを目指した。基本視点は異文化受容と文化変容の過程に設定し、文献資料・口頭伝承などの資料の分析を通じて、在来要素と外来要素の存在、外来要素の波及・流入過程、外来要素の流入による在来要素の変容と定着過程、在来要素の干渉による外来要素の変容と定着過程、それらの中間に存在する諸媒体などに着目して、受容・変容・定着という文化の動態を把握すること、各地域における異文化受容と文化変容のモデル化の可能性を追求すること、上記の動態あるいはモデルの相互比較により地域間の異同とそれを生んだ歴史的・社会的諸要因を究明すること、各地域における「伝統」の再構築とアイデンティティやエスニシティのダイナミズムの実態を明らかにすること、これらのいずかの側面にアプローチし、以下のような研究が行われた。(1)清朝で編纂された5言語対訳辞典『御製五体清文鑑』の研究上の問題点、(2)イランのモンゴル人政権における婚姻関係、(3)南方に移住したバルガ人たちの社会・文化変容プロセス、(4)シベリアのチュルク諸語の言語状況の動態、(5)ポスト社会主義時代のトゥバの文化的産物と文化実践の変容過程、(6)中央ユーラシアのテュルク系叙事詩の主人公側意識の多様性、(7)元における高麗在来王朝体制の保全のあり方、(8)古代ボン教の変容とその継続性、(9)モンゴル英雄叙事詩の年齢表現と「七冲」という易学の概念との関係、(10)19〜20世紀前半のモンゴルの祖先崇拝儀礼における伝統的価値観と仏教的価値観の整合過程のモデル化。また、島根県立大学服部文庫所蔵のモンゴル語、テュルク諸語文献の目録(暫定版)を完成させた。
著者
庄垣内 正弘 藤代 節 大崎 紀子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ウイグル漢字音成立過程の解明について、ベルリン所蔵ウイグル文字表記漢文本U5335を中心的に扱い、加えていくつかのウイグル文字表記の漢文断片を同定し、資料とした。いずれもこれまでほとんど研究されたことのない文献であった。ウイグル漢字音が10世紀代の「プロト体系」から徐々にウイグル語音化し、やがてU5335に見られるような元朝時代の簡素化した体系に発展してゆく過程を記述し、庄垣内がかつて体系として再構、提出したウイグル漢字音を検証し、その成立、発展を包括的に記述することができた。
著者
藤代 節 フジシロ セツ Fujishiro Setsu
出版者
神戸市外国語大学外国学研究所
雑誌
神戸市外国語大学外国学研究 (ISSN:02899256)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.155-184, 1990-03

「内陸アジア言語の研究」第5号 (Studies on the Inner Asian Languages)
著者
庄垣内 正弘 熊本 裕 吉田 豊 藤代 節 荒川 慎太郎 白井 聡子 間野 英二 梅村 坦 樋口 康一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、ロシア科学アカデミー東方学研究所サンクトペテルブルグ支所に保管されている中央アジア古文献の調査と整理、未解明文献の解明であった。この目的を遂行するために研究代表者あるいは分担者は度々ロシアに出向いて調査し、また、ロシアから専門家を招いて共同研究をおこなった。また中01央アジア古文献研究に携わるロシア以外の国へも出向き、当該国の研究者を招聘して研究の推進に役立てることもした。研究代表者庄垣内はロシア所蔵の未解明ウイグル語断片について研究し、『ロシア所蔵ウイグル語文献の研究』(2003,374p.+LXXVII)を出版した。ロシア科学アカデミー東方学研究所E.クチャーノフ教授は荒川慎太郎の協力を得て、『西夏語辞典(夏露英中語対照)』(2006,800p.)を出版した。語彙を扱った世界初の西夏語辞典である。一方、同研究所上級研究員A.サズィキンは、樋口康一の協力も得て、『モンゴル文「聖妙吉祥真実名経」』(2006,280p.)、『モンゴル語仏典カタログ』(2004,172p.)を出版した。吉田豊と熊本裕はそれぞれソグド文献、コータン語文献研究に従事した。また梅村坦等はロシア所蔵文献カタログ作成に取り組んだ。間野英二はチャガタイ語文献『バーブルナーマ』ロシア所蔵写本を、藤代は同じくシベリア言語資料を、白井聡子はハラホト出土のチベット語仏教仏典をそれぞれ研究し、解説とテキストを出版した。研究成果の詳細についてはメンバーによる論文集CSEL vol.10、及び報告書冊子を参照されたい。古文献の研究には膨大な時間と労力を必要とする。本研究も予定の計画を完遂できたとはいえないが、とりわけロシア人研究者の協力をえて、一般に公開できる程度の質を保持したかなりの量の成果をあげたものと満足している。