著者
庄垣内 正弘
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.124, pp.1-36, 2003-11-25 (Released:2007-10-23)
参考文献数
21

The author found fragments of Chinese texts in Uighur script at the St. Petersburg Branch for Oriental Studies of Russian Academy of Sciences and identified their corresponding Chinese originals. The phonological system of the Chinese written in Uighur is basically the same as that of the northwestern dialects of Tang and Five Dynasties. Although the fragments were composed later during the period of Yuan Dynasty, its phonological system is undoubtedly quite different from that of colloquial Chinese used in Yuan Dynasty. As a result of detailed examination of the texts, it has become clear that the phonological system behind the texts is well reflected by the Uighur inherited reading of Chinese characters similar to the Japanese Ondoku system, i.e., Chinese reading of Chinese characters.On the other hand, it is occasionally observed that Chinese characters are sporadically inserted between Uighur lines in the above texts. These inserted Chinese characters must have been read in Uighur. These Chinese characters appear not only as words, but also as phrases and sentences. An interesting fact is that in some bilingual texts such as ″Thousand Character Essay″the Uighur inherited, reading of Chinese is followed by its corresponding Uighur translation. Furthermore, in other texts represented by ″Abhidharmakosabhasya-tika Tattvartha″, it is recorded how Uighur speakers read Chinese texts in Uighur pronunciation, translating the contents into the Uighur language. Taking these facts into consideration, a conclusion is inevitable that Uighurs had their own way of reading Chinese texts which is typologically comparable to the Japanese Kundoku system, i.e., Japanese reading of Chinese characters.Japanese is known as a language in which Ondoku and Kundoku are well developed. It is extremely difficult to understand the contents of Chinese texts merely by listening to Ondoku reading, where a large number of homonyms are created by the loss of many phonological distinctions. Japanese Buddhist monks recite Chinese Buddhist texts following the Ondoku system, but at the same time they understand the contents by Kundoku reading utilizing ideographic nature of Chinese characters. The author would like to argue that Uighur monks of the Yuan dynasty period employed the same kind of method when reciting Chinese texts.
著者
大塚 秀高 高田 時雄 原山 煌 樋口 康一 牧野 和夫 森田 憲司 庄垣内 正弘 浅野 裕一 赤尾 栄慶 高山 節也
出版者
埼玉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

(1)研究集会の開催:班の研究テーマである「出版文化論研究」を念頭に、班長の筆者により、複数回研究集会が企画・開催された。ちなみに、平成16年度の研究集会の概要は以下のようになっている。平成16年5月14・15の両日、14日は京都国立博物館の講堂、15日は京大会館の会議室を会場とし、C班と共催で企画・実施(七条学会)。七条学会のテーマは、京都国立博物館で開催中の「南禅寺展」にちなんだ仏教関係の研究と、班員共通の研究対象であるアジアの特殊文庫とした。D班の発表者は、計画班で牧野和夫と筆者大塚秀高、公募班で西村浩子と中見立夫であった。七条学会の開催をきっかけに、班員の間に、相互の研究テーマに対する認識が一層深まった。そもそもD班とC班は、平成13〜14年度に筆者大塚が代表を兼ねていたため、メンバー相互間に交流があり、D班公募班の高橋章則・高倉一紀・西村浩子などは、現C班代表の若尾政希が主催する研究会「書物・出版と社会変容」研究会で報告をしている。また、G班公募班の松原孝俊が開催した第4回海外所蔵日本資料データベース会議に、D班の高田時雄・中見立夫ならびに大塚が参加し、高田と大塚は報告を、中見は司会をつとめた。(2)調整班会議の開催:後半2年間にあっては、第1回調整班会議を平成15年11月28目におこなわれた第3回「東アジア出版文化に関する国際会議」にあわせて開催し、上記の七条学会につき協議した。第2回は七条学会の当日に開催し、第3回は6月26・27の両日、沖縄那覇で開催された平成16年度第6回研究集会のおりに開催した。(3)その他:班長である大塚は総括班会議に出席し、必要な情報についてはメールで班員に伝達した。また、総括班会議でニューズレターを班ごとの特集号とするよう提案し、第6号をD班特集号とした。第6号に各自の研究テーマに関する文章を寄せた者は、計画班で大塚秀高・原山煌・牧野和夫・森田憲司の4名、公募班で蔵中しのぶ・高橋章則・中見立夫・西村浩子の4名の、あわせて8名であった。また調整班の成果報告書を作成し、班員に配布した。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘 角道 正佳 岸田 文隆 菅原 睦 澤田 英夫 橋本 勝 岸田 泰浩
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題は、ユーラシアのアジア地域を中心に、広域にわたって生じた言語接触の研究を目指したものである。各メンバーが各々携わってきた地域にみられる言語の接触状況を把握し、当該地域における社会言語学的情報を考慮しつつ、言語地域のダイナミズムを提出することをまず第1段階とし、次に個別に研究してきた言語の関与する言語接触の様相がユーラシア各地に分布する他の地域のそれと比べてどのような類似点あるいは特異点をみせているかを考察した(第2段階)。さらに、言語接触研究において従来、提出されている諸現象及び接触前段階まででみられる諸現象がアジア地域の言語接触についても頻繁に見られるか、それら諸現象の出現を条件付ける要素は何であり、何処に起因するか、等に考察を及ぼした。その上で、言語接触のあり方を整理し、ユーラシア各地の言語地域について、各領域の言語から多角的に検討してきた。本研究課題に参加したメンバーが、研究目的にそって、研究に従事した三年間の実施期間にまとめた成果の一端をApproaches to Eurasian Linguistic Areasと題した論集にまとめ、Contribution to the Studies of Eurasian Languages seriesの第7巻として刊行した。それぞれにユーラシア言語地域に分布する言語接触の諸相を扱った論考をあつめ提出できた。なお、本研究課題の参加メンバーは、その成果をふまえ、「言語接触のその後」を探る研究と位置づけた研究課題『ユーラシアの言語接触と新言語の形成-新言語形成のメカニズム解明に向けて-』に新たに取り組む予定である。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究課題はヤクート(サハ)語の英雄叙事詩オロンホの調査研究である。2年間に集中的に英雄叙事詩およびヤクート語について帝政ロシア、旧ソ連邦、現ロシア共和国の各時代を通じて著された関連文献の調査、整理、テキスト等の基礎的データの入力作業を行った。初年度にはロシア科学アカデミー東方学研究所にて帝政ロシア時代のサハ語資料の閲覧、検索などをおこなった。また機会を得て、サハ共和国内の共和国立図書館などにおいてもオロンホ資料に関連する文献調査を行い、ヤクート語話者あるいはヤクート語周辺の言語の話者等に研究協力を依頼し、オロンホに関連しての調査研究を行った。本研究課題の成果としては研究代表者の藤代、研究分担者の庄垣内がともに各自学術論文、出版物、また研究発表等を通じて随時、発表してきた。本研究課題の実施期間を通じて、サハ(ヤクート)共和国内で出版されたヤクート語学や文学に関連する文献も多く収集することが出来た。これらは特にここ2、3年に飛躍的に入手が容易になった出版物である。本研究課題を遂行して、研究成果全体、特にオロンホのデータを蓄積じたものを刊行すべき必要性を強く感じている。これらの学術文献におけるオロンホの扱い方及び未だ数量的には大量とは言えないがオロンホテキスト資料を今後も有効に活用して、オロンホのデータ蓄積を大きくしていきたい。研究代表者等は近い将来にオロンホデータに言語学的分析を加えたものを出版することを目指している。
著者
庄垣内 正弘 Shōgaito Masahiro ショウガイト マサヒロ
出版者
神戸市外国語大学外国学研究所
雑誌
神戸市外国語大学外国学研究 (ISSN:02899256)
巻号頁・発行日
no.18, pp.159-207, 1988-03

「内陸アジア言語の研究」第3号 (Studies on the Inner Asian Languages)
著者
梅村 坦 庄垣内 正弘 三友 健容 吉田 豊 松井 太 鈴木 健太郎 李 肖 DESMOND Durkin-Meisterernst
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究対象は、ベゼクリク千仏洞から1980~1981年に出土した非漢字の古文献約600点であり、その大部分は未公開の断片類である。使用される文字はウイグル文字、ソグド文字、ブラーフミー文字を中心とし、言語は古ウイグル語、ソグド語、サンスクリット語、トカラ語、漢語などにおよび、形式には写本、印刷があり、内容は仏教文献を中心として契約や公文書、詩、手紙などの俗文献に至り、10~13世紀頃のトゥルファンの複合文化を浮き彫りにする第一級の資料群であることが判明した。
著者
庄垣内 正弘
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.124, pp.1-36, 2003

The author found fragments of Chinese texts in Uighur script at the St. Petersburg Branch for Oriental Studies of Russian Academy of Sciences and identified their corresponding Chinese originals. The phonological system of the Chinese written in Uighur is basically the same as that of the northwestern dialects of Tang and Five Dynasties. Although the fragments were composed later during the period of Yuan Dynasty, its phonological system is undoubtedly quite different from that of colloquial Chinese used in Yuan Dynasty. As a result of detailed examination of the texts, it has become clear that the phonological system behind the texts is well reflected by the Uighur inherited reading of Chinese characters similar to the Japanese Ondoku system, i.e., Chinese reading of Chinese characters.<br>On the other hand, it is occasionally observed that Chinese characters are sporadically inserted between Uighur lines in the above texts. These inserted Chinese characters must have been read in Uighur. These Chinese characters appear not only as words, but also as phrases and sentences. An interesting fact is that in some bilingual texts such as &Prime;Thousand Character Essay&Prime;the Uighur inherited, reading of Chinese is followed by its corresponding Uighur translation. Furthermore, in other texts represented by &Prime;Abhidharmakosabhasya-tika Tattvartha&Prime;, it is recorded how Uighur speakers read Chinese texts in Uighur pronunciation, translating the contents into the Uighur language. Taking these facts into consideration, a conclusion is inevitable that Uighurs had their own way of reading Chinese texts which is typologically comparable to the Japanese Kundoku system, i.e., Japanese reading of Chinese characters.<br>Japanese is known as a language in which Ondoku and Kundoku are well developed. It is extremely difficult to understand the contents of Chinese texts merely by listening to Ondoku reading, where a large number of homonyms are created by the loss of many phonological distinctions. Japanese Buddhist monks recite Chinese Buddhist texts following the Ondoku system, but at the same time they understand the contents by Kundoku reading utilizing ideographic nature of Chinese characters. The author would like to argue that Uighur monks of the Yuan dynasty period employed the same kind of method when reciting Chinese texts.
著者
庄垣内 正弘 熊本 裕 梅村 担 西田 龍雄 藤代 節 吉田 豊
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、ロシア科学アカデミー東方学研究所サンクトペテルブルグ支所に保管されている古語文献を調査・整理してカタログを作成することと、主要文献を文献学的・言語学的に研究することであった。対象とした言語はウイグル語、コータン語、ソグド語、西夏語、蒙古語である。研究成果の主なもの掲げる:1.カタログ作成:(1)Kаmало〓 Tан〓уmскux Бу〓〓u〓скuх Памяmнuкоб Инсмuмума Восмокобе〓енця Pоссu〓ско〓 Ака〓емuu Наук(ロシア科学アカデミー東方学研究所所蔵西夏語仏教文献カタログ)京都大学 1999年792p..(2)『サンクトペテルブルグ所蔵ウイグル語文献カタログ』京都大学2001年(印刷中)2.文献研究:(1)『ウイグル文Dasakarmapathavadanamalaの研究』松香堂1998年xii+377p.(2)Contribution to the Studies of Eurasian Languages:Issues in the Asian Manuscripts at the Archive of the St.Petersburg Branch of Oriental Studies,Russian Academy of Sciences,Kyoto University,Kyoto(in print).3.シンポジウム:「中央アジア古代語とチュルク系極小言語-死語と危機言語の研究-」京大会館・京都大学文学部羽田記念館1997年10月24日〜25日.以上のほか、文献研究においては研究代表者・分担者の提出した論文が総計約20点に及ぶ。また、日本とロシアで10回を越える研究討議もおこなった。
著者
庄垣内 正弘 藤代 節 大崎 紀子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ウイグル漢字音成立過程の解明について、ベルリン所蔵ウイグル文字表記漢文本U5335を中心的に扱い、加えていくつかのウイグル文字表記の漢文断片を同定し、資料とした。いずれもこれまでほとんど研究されたことのない文献であった。ウイグル漢字音が10世紀代の「プロト体系」から徐々にウイグル語音化し、やがてU5335に見られるような元朝時代の簡素化した体系に発展してゆく過程を記述し、庄垣内がかつて体系として再構、提出したウイグル漢字音を検証し、その成立、発展を包括的に記述することができた。
著者
庄垣内 正弘 熊本 裕 吉田 豊 藤代 節 荒川 慎太郎 白井 聡子 間野 英二 梅村 坦 樋口 康一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、ロシア科学アカデミー東方学研究所サンクトペテルブルグ支所に保管されている中央アジア古文献の調査と整理、未解明文献の解明であった。この目的を遂行するために研究代表者あるいは分担者は度々ロシアに出向いて調査し、また、ロシアから専門家を招いて共同研究をおこなった。また中01央アジア古文献研究に携わるロシア以外の国へも出向き、当該国の研究者を招聘して研究の推進に役立てることもした。研究代表者庄垣内はロシア所蔵の未解明ウイグル語断片について研究し、『ロシア所蔵ウイグル語文献の研究』(2003,374p.+LXXVII)を出版した。ロシア科学アカデミー東方学研究所E.クチャーノフ教授は荒川慎太郎の協力を得て、『西夏語辞典(夏露英中語対照)』(2006,800p.)を出版した。語彙を扱った世界初の西夏語辞典である。一方、同研究所上級研究員A.サズィキンは、樋口康一の協力も得て、『モンゴル文「聖妙吉祥真実名経」』(2006,280p.)、『モンゴル語仏典カタログ』(2004,172p.)を出版した。吉田豊と熊本裕はそれぞれソグド文献、コータン語文献研究に従事した。また梅村坦等はロシア所蔵文献カタログ作成に取り組んだ。間野英二はチャガタイ語文献『バーブルナーマ』ロシア所蔵写本を、藤代は同じくシベリア言語資料を、白井聡子はハラホト出土のチベット語仏教仏典をそれぞれ研究し、解説とテキストを出版した。研究成果の詳細についてはメンバーによる論文集CSEL vol.10、及び報告書冊子を参照されたい。古文献の研究には膨大な時間と労力を必要とする。本研究も予定の計画を完遂できたとはいえないが、とりわけロシア人研究者の協力をえて、一般に公開できる程度の質を保持したかなりの量の成果をあげたものと満足している。