著者
海老塚 広子 藤本 智子 潮来 茉里 山本 真衣 三澤 香莉 塩谷 一紗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 68回大会(2016)
巻号頁・発行日
pp.166, 2016 (Released:2016-08-04)

【目的】 母乳は乳児に栄養を与える手段として、栄養学的意義はもちろん免疫学的・精神的に優良であるといえる。母親の食事形態により乳児の母乳への吸いつきが悪くなることが観察され、妊娠・授乳期の母親の食事が、乳児の離乳食の嗜好性に影響を与えていることも推察される。本研究では、母親の食事摂取状況や食習慣と、母乳の匂いに着目し、その関連性について明らかにすることを目的とした。個人による母乳の匂いの差異および食事内容による母乳の匂いへの影響について検討した。【方法】 授乳婦7名を対象とし、3日間の食事調査および食事後約2時間経過した母乳の採取を依頼した。母乳の分析には、におい識別装置(FF-2A:(株)島津製作所)を用いた。統計処理はSPSSを用いて多変量解析、Asmell2を用いて臭気指数相当値による類似度解析を行った。【結果および考察】 授乳婦の食事調査の結果、エネルギー・主要栄養素量に大きな差異は認められなかった。母乳の匂いには個人差があること、カレーを摂取することにより、におい成分のバランスに変化が現れることが判明した。また、鯛のあらが母乳の匂いに変化を与えている可能性が高いことが確認された。この結果を、授乳婦への栄養指導に役立てて、健康な乳児の発育に貢献することが期待される。
著者
藤本 智久 皮居 達彦 田中 正道 石本 麻衣子 大谷 悠帆 久呉 真章 大城 昌平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,新生児のケアにディベロップメンタルケア(DC)が導入されてきており,本邦でも日本DC研究会が中心となりNIDCAP(Newborn Individualized Developmental Care& Assessment Program)を普及するべく活動がなされ,現在,日本でも13名の国際NIDCAP連盟が認定するNIDCAP Professionalが誕生している。NIDCAPは,Alsが開発した赤ちゃんの行動を根拠とした新生児のケアを提供するプログラムであり,赤ちゃんと家族を中心としたケアを推進していくものである。現在,当院でも2名(PT,Ns)のNIDCAP Professionalがおり,NIDCAPを展開している。また,NIDCAPの効果についての報告は,海外では散見されるが,本邦ではNIDCAPの効果について検討した報告はない。今回,NIDCAPの効果を修正6か月前後の発達指数を用いて比較検討したので報告する。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,2013年以降に出生し当院NICU,GCU入院し,修正6ヶ月前後で新版K式発達検査2001が実施できた超低出生体重児17名(平均出生体重706.6±181.8g,男性6名,女性11名,在胎26.1±1.6週)である。そのうちNIDCAPの継続観察を実施した児(NIDCAP群)8名とNIDCAPの観察対象とならなかった児(Control群)9名に分けた。対象を外来で修正6ヶ月前後に発達検査を行い,姿勢運動(P-M)領域,認知適応(C-A)領域,言語社会(L-S)領域,全領域のそれぞれについて発達指数を算出し,NIDCAP群Control群で比較検討した。なお,統計学的検討は,Mann-WhitneyのU検定を用いて危険率5%以下を統計学的有意とした。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>NIDCAP群とControl群の修正6ヵ月時の平均発達指数(NIDCAP群/Control群)は,P-M領域では,100.3±14.8/102.9±9.4,C-A領域では,103.4±6.3/102.9±7.5,L-S領域では,110.5±7.2/101.2±7.5,全領域では,103.2±8.2/103.5±7.0であり,L-S領域でのみ有意にNIDCAP群が高値を示した(p<0.05)</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>今回のNIDCAP群とControl群の比較の結果,L-S領域にのみ有意差を認め,NIDCAP群が言語社会面の発達指数が高くなっていた。これは,NIDCAPによって赤ちゃんの行動観察を根拠としてケアを行うことで,相互作用が促され,また退院後も家庭で母親が継続することより,赤ちゃんとのアイコンタクトやコミュニケーションが増え,修正6ヵ月時点での言語社会面の発達につながっていた可能性も考えられる。また今回,運動面や認知面では有意差がみられなかった。これは,NIDCAPを開始するにあたってすでに浸透しているポジショニングや環境への配慮などベースとなるDCによる影響もあり,今回の違いとして出てこなかった可能性も考えられる。今後はNIDCAPの介入例を増やし日本での長期の予後等についても検討していく必要があると考える。</p>
著者
藤本 智久 岡田 祥弥 行山 頌人 森本 洋史 中島 正博 西野 陽子 皮居 達彦 田中 正道 久呉 真章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100114, 2013

【はじめに】 当院では,極・超低出生体重児に対して発達フォローアップとして新版K式発達検査を実施しており,その経過で,発達の遅れを認める児を経験することがある.その中には発達がキャッチアップする児とキャッチアップせずに発達遅滞や発達障害と診断される児がいる.今回,修正18ヶ月までにキャッチアップした児としなかった児について検討したので報告する.【方法】 当院 周産期母子医療センターに入院し,発達フォローアップの依頼のあった極・超低出生体重児(入院中に明らかな脳障害や染色体異常を認めた児を除く)で,修正12ヶ月前後および修正18ヶ月前後の新版K式発達検査において各領域の発達指数が85未満の値を示した児のうち,継続調査が可能であった53名(男児23例,女児30例)を対象とした.さらに,修正18ヶ月までにキャッチアップを認めた児(キャッチアップ群)21例(男児8例,女児13例)と修正18ヶ月でキャッチアップを認めなかった児(非キャッチアップ群)32例(男児15例,女児17例)について,在胎週数,出生体重,Apgar Score,修正3ヶ月前後のGeneral Movements(GMs)評価,新版K式発達検査の経過および予後について検討した.なお,統計学意的検討は,t-検定およびMann-WhitneyのU-検定,カイ2乗検定を用いて行い,危険率0.05以下を統計学的有意とした.【説明と同意】 対象児の保護者には,フォローアップについての説明および情報の取り扱いについて紙面および口頭にて説明し,同意を得て実施した.【結果】 周産期情報の比較では,在胎週数は,キャッチアップ群が,平均31.0±3.2週,非キャッチアップ群が,平均29.1±3.3週,とキャッチアップ群の方が統計学的有意に長かった(P<0.05).しかし,出生体重およびApgar Score 1分値,5分値では有意差を認めなかった.また,修正3ヶ月前後のGMsの結果では,キャッチアップ群でFidgety Msを認めたものが17例,Abnormal Fidgety Ms(AF)を認めたものが,4例であった.非キャッチアップ群では,Fidgetyを認めたものが19例,AFを認めたものが13例であった(有意差なし).新版K式発達検査の経過をみると,12ヶ月において,姿勢運動領域(PM領域)のDQは,キャッチアップ群が80.5(以下中央値),非キャッチアップ群が87.4と統計学的有意にキャッチアップ群が低かった(p<0.05).しかし認知適応領域(CA領域),言語社会領域(LS領域),全領域では,有意差を認めなかった.さらに18ヶ月において,PM領域のDQは有意差を認めなかったが,CA領域,LS領域,全領域のDQではキャッチアップ群が有意に高値を示した(p<0.05).予後について比較すると,最終的に2歳半以降で自閉症などの発達障害を認めた児は,キャッチアップ群が1例,非キャッチアップ群は8例であった(有意差なし).【考察】 今回の結果より,キャッチアップ群と非キャッチアップ群を比較すると周産期の情報では,統計学的に有意差を認めた項目は,出生時の在胎週数のみであった.横塚らは,早産児では在胎期間が短くなるほど修正月齢よりもさらにゆっくりとした発達を示し,3歳頃にキャッチアップすることが多いと述べており,在胎期間は,キャッチアップの有無を考える上でも重要であることを示していると考える.また,修正3ヶ月前後のGMs評価では,統計学的有意差は認めなったが,非キャッチアップ群の方がAFを多く認めた.GMsは,予後予測としては信頼性の高い評価であるが,観察者の習熟度によるところが大きく有意差が出なかったのかもしれない.また,新版K式発達検査の経過をみると,12ヶ月での運動発達の遅れは,18ヶ月までにキャッチアップされることが多いが,認知面,言語面での発達の遅れは18ヶ月になるにつれて目立ってくることを示している.また,予後についても,キャッチアップ群は1例,非キャッチアップ群が8例に発達障害を認めたことより,修正18ヶ月での言語社会性の発達の遅れは,7割以上は正常発達にキャッチアップしていくが,自閉症など発達障害に注意して経過を追っていく必要があると考える.【理学療法研究としての意義】 本研究は,極低出生体重児の発達経過を見ていくなかで,発達の遅れを認める児であっても大半が,キャッチアップを認めるようになることを示しているが,在胎週数や修正18ヶ月での言語発達の状況等によっては,注意して経過を追っていく必要があることなど両親への発達のアドバイスを行う基礎資料としても有用であると考える.
著者
藤本 智子 井上 梨紗子 横関 博雄 伊東 慶子 大嶋 雄一郎 柳下 武士 玉田 康彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.281-289, 2013-03-20 (Released:2014-10-30)

原発性手掌多汗症の中等症から重症(発汗量≧0.5 mg/cm2/min)の患者90例を対象に,20%塩化アルミニウム液・50%塩化アルミニウム液・プラセボの3群に無作為割付し,1日1~2回8週間の単純塗布を二重盲検下で行った.評価項目として発汗量・HDSS(Hyperhidrosis disease severity scale)・DLQI(Dermatology life quality index)を用い他覚的,自覚的な症状改善度を測定し治療経過中に診察と患者日誌を用いて副作用を集計した.結果85例がプロトコールを終了し,塩化アルミニウム液の外用群では濃度依存性に8週間後の発汗量の減少を認め,群間比較では治療8週間後の50%濃度群がプラセボ群と比較して統計学的に有意な(p<0.05)発汗量減少を認めた.患者の自覚症状であるHDSS,DLQIについては塩化アルミニウム液の外用群は2週間後から有意な(p<0.001)改善を認めたが,プラセボ群もHDSSでは4週間後から改善を認め(p<0.05),DLQIでは2週間後から有意な改善を認めた(p<0.01).以上の結果から原発性手掌多汗症に対する塩化アルミニウム液の外用療法の有効性を認めた.副作用として外用部位への刺激皮膚炎が濃度依存性に認められ,外用方法の指導と基剤の検討が今後必要であると考えた.一方塩化アルミニウムの血中濃度の上昇はみられず,体内への移行性は認めなかった.
著者
樋口 精一郎 藤本 智 田中 誠之 鄭 澤根
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1984, no.8, pp.1268-1272, 1984

数種のオルト位アルキル置換ニトロベンゼンおよびパラ置換ニトロベンゼンの1600cm<sup>-1</sup>付近のバンドとパラ置換体に特徴的な1120,860cm<sup>-1</sup>のバンドのラマン散乱強度を検討した。1600cm<sup>-1</sup>のバンド強度の検討から,置換基効果による強度の挙動が局所的な電子密度の変化によるのではなく,分子内電荷移動に関係する電子雲の空間的広がりによることが示唆された。このことは,あつかったバンドに共鳴ラマン効果がかかわっていることを示唆する。そこで,パラ置換ニトロベンゼンの3本のバンドの強度について励起波長依存性を検討した。励起光が短波長になるにしたがい強度はほとんどの場合に増大するが,1600,1120cm<sup>-1</sup>のバンドの強度増大はそれほど大きくないのに対して,860cm<sup>-1</sup>の方は,置換基の電子供与性が強くなり分子内電荷移動型のUV吸収が長波長側ヘシフトするといちじるしく大きくなることが明らかにされた. このように強度を置換基および励起波長という2点から見ることにより,置換基による1120および860cm<sup>-1</sup>バンドの相対強度の逆転というスペクトルパターンの変化,強度のいちじるしい大きさなどの問題を解釈し得ることが示された。