著者
中西 彬 花井 隆晃 伴 邦教 服部 翔吾 太田 宗宏 谷口 義則
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
pp.21-00017, (Released:2022-03-23)
参考文献数
22

愛知県の谷津田環境で実施される造成事業の計画地に生息するホトケドジョウの保全を検討するため,計画地域にある 2 河川(下流で合流)の 7 地点とこれらと本川が異なる 1 地点を対象にミトコンドリア DNA の D-loop 領域とマイクロサテライト DNA を解析し,遺伝的構造を把握した.ミトコンドリア DNA は 2 河川 7 地点間に変異は認められず,遺伝情報が既知の東海集団に属すると判定された.また,マイクロサテライト DNA は,帰属性解析及び FST 値の結果から,河川流域ごとに遺伝的なまとまりがあり,2 河川間で遺伝的分化の程度に差があった.事業の影響を受ける 1 地点と近隣の 1 地点は,遺伝的多様性が非常に低く,2 地点間には多少の遺伝的分化が見られ,圃場整備による流路の分断化や個体群の小規模化の影響があると考えられる.この 2 地点は,過去には遺伝的交流があったと推測されることから,両地点の個体群を一体とした生息地の確保や遺伝的交流の確保が有効であると考えられる.
著者
谷口 義則
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.991-996, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2 3
著者
谷口 義則 中野 繁
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.79-94, 2000-02-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
75
被引用文献数
1 3

地球温暖化に伴う水温の上昇が,淡水魚類に及ぼす影響に関する研究は,主に1990年代に入ってから盛んに行われてきている。これらの研究の多くは,対象魚種の水温に対する生理反応データに基づく分布変化予測と生物エネルギーモデルを用いた個体群動態の予測に大別される。しかし,実際には,温暖化が淡水魚類に及ぼす影響は,温度上昇そのものだけでなく,他の局所的環境撹乱因子との複合効果などを通じてもたらされると考えられる。さらに,多くの場合,従来の温暖化の影響予測では,個体群の遺伝構造の変化,生活史の可塑的変化および捕食者一被食者関係や競争などといった生物問相互作用の変化を介した影響に関する議論が欠落している。そのため,温暖化に対する淡水魚類群集の反応に関して十分に適正な予測が未だ得られているとは言い難い。また,温暖化によってもたらされると予測される淡水魚類の絶滅や分布変化は,食物網や物質循環の動態など生態系の諸特性に波及的な効果を及ぼすものと考えられるが,このような視点からの研究も未だ行われていない。今後は,長期間の観測データの蓄積や大規模操作実験によって温暖化の影響をメカニスティックに解明することに主眼を置くこと,さらに多分野の研究者が相補的に共同しうる研究体制を構築することなどが必要と考えられる。
著者
花井 隆晃 中西 彬 伴 邦教 服部 翔吾 田頭 直樹 谷口 義則
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2210, (Released:2023-07-05)
参考文献数
19

愛知県の谷津田の 2地点に生息するホトケドジョウの消化管内容物を四季にわたって調べた。全体では個体数および湿重量はいずれもユスリカ科が最大であった。また、個体数ではカイアシ亜綱、カクツツトビケラ科が多く、湿重量ではイシビル科、ガガンボ科が大きかった。餌料重要度百分率( %IRI)の解析結果では、いずれの地区でもホトケドジョウの体長が 50 mm未満の階級においてユスリカ科が最大であった。 50 mm以上 60 mm未満の階級では、それ未満の体長階級よりもユスリカ科の %IRIが低く、イシビル科やカクツツトビケラ科、ガガンボ科などの比較的湿重量の大きいものが高かった。また、ホトケドジョウの標準体長と餌生物の最大湿重量の間には弱い正の相関が認められた。季節ごとの餌生物の %IRIは、地区 Bの 6月を除いて、両地区のいずれの季節においても、ユスリカ科が最大であり、冬季のユスリカ科の %IRIが他の季節よりも高かった。本研究では餌となる底生無脊椎動物等の現存量を定量化しなかったものの、ホトケドジョウが四季を通じてユスリカ類を利用すること、特に冬季には本分類群に強く依存する傾向が示唆された。本研究の結果、ホトケドジョウの保全を図る上で仔魚・稚魚期および冬季の主な餌資源であるユスリカ類が多く生息し、イシビル科やガガンボ科等の比較的大型の水生無脊椎動物を含む多様な底生生物が生息可能な環境の保全が重要であることが示された。
著者
平 将人 二瓶 直登 遠藤 あかり 谷口 義則 前島 秀和 中村 和弘 伊藤 裕之
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.173-182, 2012

タンパク質含有率の増加を目的とした出穂期の窒素追肥が,硬質コムギ品種ゆきちからの中華麺適性に及ぼす影響を検討した.出穂期における窒素追肥量の増加に比例してタンパク質含有率は高くなり,SDSセディメンテーション沈降量および湿グルテン含量は増加して生地物性は強くなった.一方,グルテンインデックスは低下したが,中華麺官能検査におけるゆであげ7分後の食感の評点は有意に高くなった.したがって,出穂期の窒素追肥によりグルテンインデックスは低下してグルテンの質は変化するが,生地物性が強くなることで中華麺のゆでのびを抑えられることが明らかとなった.また,福島県でゆきちからを喜多方ラーメン用として栽培する際に目標となるタンパク質含有率を明らかにするために,製粉工場でゆきちから100%で製造されたタンパク質含有率が9.1,9.8および10.8%の中華麺用粉を用いて中華麺官能検査を行い,タンパク質含有率と中華麺適性との関係を検討した.外国産硬質コムギを原料に用いたタンパク質含有率が11.8%の中華麺専用粉と比べて,ゆきちからの色相およびホシの程度の評点は10.8%でも有意に高かった.また,ゆであげ7分後の食感の評点はいずれのタンパク質含有率においても有意差は認められなかったが,総合評価の評点は9.8%および10.8%で有意に高かった.したがって,福島県で喜多方ラーメン用にゆきちからを栽培する際には,出穂期の窒素追肥により,タンパク質含有率を粉で10.0~11.0%程度にすることが望ましいと考えられた.
著者
石崎 大介 谷口 義則 淀 太我
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.49-54, 2012-04-25 (Released:2014-05-16)
参考文献数
38

Brown trout Salmo trutta, a well-known game fish, has had considerable adverse effects worldwide on native aquatic organisms in waters to which it has been introduced. Although the establishment of brown trout and its impact on native biota have been frequently reported in Japan, such reports have been primarily limited to Hokkaido. In 2008 and 2009, 11 juvenile and 6 adult brown trout, including a mature female, were captured in the Odori Stream, Jinzu River system, central Japan, a mating pair of brown trout swimming near a redd also being observed in 2009. It is now considered that the species has become established, following an accidental introduction from a local hatchery in 2004 during a severe flood indicating that future possible introductions of this species must remain a concern, even in central Japan.
著者
星野 次汪 伊藤 誠治 谷口 義則 佐藤 暁子
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.21-25, 1994-03-05
被引用文献数
5

粒大と品質との関係を明らかにするため, 1989/1990年, 1990/1991年に栽培したコユキコムギを用いて, 原粒を縦目篩を用いて大きさ別に分け, 原粒及び粒大別に製粉された60%粉の粗タンパク含有率, 灰分含有率及びコムギ粉生地の物性などについて試験を行った. 粒大が大きいほど千粒重は大きく, 3.0mmの粒は1.8mmの粒の約3倍の重さであった. 粗タンパク含有率は1989/1990では粒大が大きいほで高くなったが, 1990/1991ではいずれの粒大でもほぼ一定の値であった. 灰分含有率は1989/1990では2.4mm, 1990/1991では2.6mmの粒が最も低く, それより粒大が大きくなるかあるいは小さくなるにしたがって高くなった. 製粉歩留は, 粒大が大きいほど高くなり, 粒大間に1%水準の有意差が認められた. 粉の比表面積(cm^2/g)は粒大が大きいほど小さかった. 粉の白さ(R455), 明るさ(R554)は粒大が大きいほどその値は大きかったが, 胚乳の色づき(logR 554/R 455)は逆に小さかった. ファリノグラムの特性値(Ab, DT, Stab., V. V, Wk)及びアミログラム最高粘度は粒大間で有意差が認められなかったが, エキステンソグラムの各特性値のうち, 面積は1.8mmの粒を除けば粒大が小さいほど大きく, 伸長抵抗は粒大の大きいもの及び小さいものが小さかった. これらのことから, 大粒は, 灰分含有率が低く, 製粉歩留が高く, 粉色相が優れているが, ブラベンダー特性はやや小粒の方が優れていた.