著者
本田 由紀 濱中 義隆 中村 高康 小山 治 上西 充子 二宮 祐 香川 めい 小澤 昌之 堤 孝晃 河野 志穂 豊永 耕平 河原 秀行 西舘 洋介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、人文社会科学系大学教育の分野別の職業的レリバンスを把握することを目的とし、①大学3年時点から卒業後2年目までのパネル調査、②25~34歳の社会人を対象とする質問紙調査、③大学生・卒業生・大学教員を対象とするインタビュー調査を実施した。その結果、主に以下の知見が得られた。(1)人文社会科学系の大学教育の内容・方法には分野別に違いが大きく、教育の双方向性・職業との関連性の双方について教育学・社会学は相対的に水準が高いが、経済学・法学等の社会科学は前者の、哲学・歴史学等の人文科学は後者の、それぞれ水準が相対的に低い。(2)大学教育の内容・方法は卒業後の職業スキルに影響を及ぼしている。
著者
豊永 耕平 須藤 康介
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.215-227, 2017-06-30 (Released:2018-04-27)
参考文献数
28

小学校英語教育の効果に関する先行研究では、交絡要因を統制して代表性のあるサンプルを分析するという統計的因果推論の過程が軽視されてきた問題点があり、異文化理解などの情意面への効果や、開始学年による違いも十分に検討されてこなかった。大規模調査データの二次分析の結果、小学校英語教育は1・2年生から始めた場合のみ、中学生の英語学力に正の効果をもたらす可能性があるが、外国への親しみやグローバル人材意識などには統計的に有意な効果をもたらさないことが示された。
著者
豊永 耕平
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.162-178, 2018 (Released:2019-09-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本稿では, 出身大学の学校歴と専攻分野が初職にもたらす影響の男女比較分析を行った. 高等教育の大衆化の中で大卒学歴内部の相対的な格差は拡大傾向にあるが, 既存研究では大卒男性の学校歴に着目した研究が蓄積されてきた一方で, 専攻分野や出身階層に着目した研究はほとんど蓄積されておらず, 大卒女性も分析対象から除外されてきた. SSM1995年調査, 2005年調査, 2015年調査の合併データを用いて専攻分野, 出身階層, 大卒女性も含めた分析を行った結果, 以下の3点が示された. 第1に, 学校歴は訓練可能性のシグナルとして初職の企業規模を左右する一方, 専攻分野もまた職場で応用可能な能力のシグナルとして専門職入職に影響していた. 第2に, 出身階層の初職への影響は, 学校歴というよりも専攻分野が大きく媒介しており, 世代間移動を説明するのに将来的な職業達成を見通した専攻分野選択とその階層差が重要な役割を果たしていた. 第3に, 専攻分野が初職にもたらす影響にはジェンダー差があり, 人文系出身者の初職での不利は男性に限定的である一方で, 同じ理工系出身でも女性は男性ほど事務販売職と比べて専門職になりやすいわけではなかった. 以上から, 学校歴が大きく影響するのは企業規模であるという限定性があるのに対して, 一見すると自由な教育選択による専攻間トラッキングもまた出身階層や男女間の差異を伴って重要な役割を果たしていることが示された.