- 著者
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豊永 耕平
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.2, pp.162-178, 2018 (Released:2019-09-30)
- 参考文献数
- 29
- 被引用文献数
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本稿では, 出身大学の学校歴と専攻分野が初職にもたらす影響の男女比較分析を行った. 高等教育の大衆化の中で大卒学歴内部の相対的な格差は拡大傾向にあるが, 既存研究では大卒男性の学校歴に着目した研究が蓄積されてきた一方で, 専攻分野や出身階層に着目した研究はほとんど蓄積されておらず, 大卒女性も分析対象から除外されてきた. SSM1995年調査, 2005年調査, 2015年調査の合併データを用いて専攻分野, 出身階層, 大卒女性も含めた分析を行った結果, 以下の3点が示された. 第1に, 学校歴は訓練可能性のシグナルとして初職の企業規模を左右する一方, 専攻分野もまた職場で応用可能な能力のシグナルとして専門職入職に影響していた. 第2に, 出身階層の初職への影響は, 学校歴というよりも専攻分野が大きく媒介しており, 世代間移動を説明するのに将来的な職業達成を見通した専攻分野選択とその階層差が重要な役割を果たしていた. 第3に, 専攻分野が初職にもたらす影響にはジェンダー差があり, 人文系出身者の初職での不利は男性に限定的である一方で, 同じ理工系出身でも女性は男性ほど事務販売職と比べて専門職になりやすいわけではなかった. 以上から, 学校歴が大きく影響するのは企業規模であるという限定性があるのに対して, 一見すると自由な教育選択による専攻間トラッキングもまた出身階層や男女間の差異を伴って重要な役割を果たしていることが示された.