著者
二宮 祐 小島 佐恵子 児島 功和 小山 治 浜島 幸司
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-25, 2020-03-01 (Released:2020-03-30)
参考文献数
14

本論の目的は,「第三の領域」と呼ばれる分野で働く新しい専門職のキャリアと職務に関する意識に関して,ファカルティ・ディベロッパー,キャリア支援・教育担当者,インスティテューショナル・リサーチ担当者,リサーチ・アドミニストレーション担当者,産官学連携コーディネート担当者を事例として取り上げて,聞き取り調査の結果を分析することによって明らかにすることである。各分野で概ね共通して認識されていることは次の通りである。任期付雇用のために,必ずしも十分には目標を達成することができず,職能形成にも課題がある。また,求められる知識・スキルが多様であること,専門とは異なる仕事を任されること,そもそも仕事の目標さえ曖昧であったりすることゆえに,何が評価の対象とされているのかがわからず,専門職としてのアイデンティティが揺さぶられている。他方,裁量を発揮することは可能であり,やりがいを感じることもある。
著者
小山 治
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.199-218, 2017-07-31 (Released:2019-05-13)
参考文献数
31

本稿の目的は,社会科学分野の大卒就業者に対するインターネットモニター調査によって,大学時代のレポートに関する学習経験は職場における経験学習を促進するのかという問いを明らかにすることである.本稿の主な知見は,次の3点にまとめることができる.第1に,レポートの学習行動のうち,学術的作法は経験学習と相対的に強い有意な正の関連があったという点である.第2に,レポートの学習行動のうち,第三者的思考も経験学習と有意な正の関連があったという点である.第3に,レポートの学習行動以外の大学時代の変数は経験学習と強い関連がなかったという点である.以上から,本稿の結論は,大学時代のレポートに関する学習経験の中でも学術的作法と第三者的思考といった学習行動は職場における経験学習を一定程度促進するということになる.
著者
小山 治
出版者
京都産業大学
雑誌
高等教育フォーラム = Forum of Higher Education Research (ISSN:21862907)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2022-03-29

本稿の目的は、全国の4 年制大学の学部4 年生に対するウェブ調査によって、人文・社会科学分野の専門分野別習得度と関連する大学教育は何かという問いを明らかにすることである。本稿の主な知見は、10 個の専門分野ごとにみても、大学教育の中でも授業経験よりも学習経験(特に探究的な学習、授業間を関連づけた理解、授業外での活用)の方が専門分野別習得度と有意な正の関連があったという点である。以上から、本稿の結論は、人文・社会科学分野の専門分野別習得度と関連する大学教育は、授業経験(どういう授業をどれくらい受けたか)ではなく、学習経験(何を考え、どのように学んだか)ということになる。ただし、この具体的な内容については、専門分野間で共通する部分と共通しない部分があり、両者を慎重に見極める必要がある。本稿の知見の含意は、次の2 点である。第1 に、授業形態に過度に着目した大学教育改革・授業改善への警鐘が必要ではないかという点である。第2 に、大学に求められるのは、学生が自らの学習経験を高められるような仕組みづくりではないかという点である。
著者
小山 治
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.25, pp.73-83, 2012-09-10 (Released:2015-06-12)
参考文献数
18

The purpose of this paper is to clarify how undergraduates in social science faculties perceive the criteria for hiring new university graduates and how they adjust to these criteria in preparing for interviews. The major findings are as follows. First, undergraduates refer to a public image of talent and recognize that it is relevant to the criteria for hiring new university graduates and recognize that to be themselves is more effective in order to pass the job interviews. Second, they discern that employers evaluate both generic skills like teamwork and nonverbal information. Third, they elaborately prepare a presentation about themselves that they believe plays to the criteria for hiring new university graduates. In conclusion, the implication of these findings is discussed.
著者
本田 由紀 濱中 義隆 中村 高康 小山 治 上西 充子 二宮 祐 香川 めい 小澤 昌之 堤 孝晃 河野 志穂 豊永 耕平 河原 秀行 西舘 洋介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、人文社会科学系大学教育の分野別の職業的レリバンスを把握することを目的とし、①大学3年時点から卒業後2年目までのパネル調査、②25~34歳の社会人を対象とする質問紙調査、③大学生・卒業生・大学教員を対象とするインタビュー調査を実施した。その結果、主に以下の知見が得られた。(1)人文社会科学系の大学教育の内容・方法には分野別に違いが大きく、教育の双方向性・職業との関連性の双方について教育学・社会学は相対的に水準が高いが、経済学・法学等の社会科学は前者の、哲学・歴史学等の人文科学は後者の、それぞれ水準が相対的に低い。(2)大学教育の内容・方法は卒業後の職業スキルに影響を及ぼしている。
著者
小山 治
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、社会科学分野の大学教育(学士課程教育)における学習経験が就職活動・初期キャリアに対してもたらす職業的レリバンス(意義・有効性)を社会調査によって実証的に明らかにすることである。本研究は、①大学4年生に対する聞きとり調査による学習経験に関する指標の抽出、②それを踏まえた大学4年生に対する就職活動に関する質問紙調査の実施、③大卒就業者に対する初期キャリアに関する質問紙調査の実施という流れで遂行された。これらの研究の結果、大学時代の学習経験の一部は就職活動結果や初期キャリアに対して正の関連がある一方で、そうした関連の程度は必ずしも高くはないという点を明らかにした。
著者
二宮 祐 小島 佐恵子 濱嶋 幸司 小山 治 児島 功和
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

「新しい専門職」は大学改革が推進されるなかで、主として米国の高等教育機関における新興専門職が参考とするべきモデルとされたうえで、日本への導入が図られた。ファカルティ・ディベロッパー、キャリア支援・教育担当者、インスティテューショナル・リサーチ担当者、リサーチ・アドミニストレーション担当者、産官学連携コーディネート担当者を対象とした聞き取り調査、質問紙調査の結果から、必ずしも十分には目標を達成することができず、職能形成にも課題があることが判明した。
著者
二宮 祐 小島 佐恵子 児島 功和 小山 治 濱嶋 幸司
出版者
徳島大学
雑誌
大学教育研究ジャーナル (ISSN:18811256)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-20, 2017-03

高等教育改革において新しい役割を担う「専門職」の必要が生じている。本論ではそのうち,ファカルティ・ディベロッパー(FDer),キャリア支援担当者,インスティテューショナル・リサーチ(IR)担当者,リサーチ・アドミニストレーション(URA)担当者,産官学連携コーディネート担当者を取り上げる。これらの「専門職」は養成の制度化がいまだに不十分であって,他の隣接分野からの移動という事例も見られる。また,雇用のための予算が改革を推進するための時限付きの補助金であることが多いため,雇用期限が定められていたり,職位・給与が低位であったりするという特徴がある。The current higher education reforms in Japan have created a demand for new types of specialists who have had important roles in most universities since around 2000. This article focuses on Faculty Developers, Career Consultants, Institutional Researchers, University Research Administrators and Technology Licensing Managers among such new types of university-related jobs. Due to the lack of formal education systems to become one of these professionals, most of the candidates do not have enough knowledge and skills, and tend to come from related academic or business areas. When they are hired by universities, funds for their employment often come from government money budgeted for a time-limited and specific educational reform project. As a result, they tend to be hired for only a limited period of time, and/or their position and wage levels are usually lower than more traditional professions in universities.
著者
橋本 康弘 土井 真一 根本 信義 佐伯 昌彦 小山 治 橋場 典子 吉村 功太郎 桑原 敏典 磯山 恭子 中原 朋生 渡部 竜也 三浦 朋子 小澤 昌之
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、日本の中・高校生の持つ法的知識や意見に基づいた法教育プログラムの開発にある。本研究では、日本の高校生を対象とした質問紙調査を実施した。その調査結果では、法知識は正しく有していても、法意見は反対の考え方を示すなど、「法知識と法意見の乖離」が生じている項目が散見された。本研究では、「法知識と法意見の乖離」が生じている「黙秘権」と「自白強要の禁止」について、授業を開発し、それを実施した。
著者
小山 治
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.21, pp.143-154, 2008

The purpose of this paper is to clarify why the standards for employing new university graduates are unclear. This paper analyzes a dynamic process to employ new university graduates from the viewpoint of the sociology of education by interviewing corporate recruiting staff. The major findings are as follows. First, because new university graduates prepare for the listed requirements, employers add some items that are not listed in order to better evaluate applicants. Second, the standards for employing new university graduates are not fixed and are adjusted higher or lower during the course of the recruitment season. This paper finally discusses implication of these findings for companies and new university graduates.