著者
伊藤 純子 香西 みどり 貝沼 やす子 畑江 敬子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.531-538, 2004-10-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
2 3

炊飯時に7種類の調味料(食塩,醤油,清酒,食酢,上白糖,カレー粉,トマトペースト)を添加し,米飯の炊飯特性に及ぼす影響について検討した.1) 吸水率は全ての調味料において浸漬後30分間の増加が著しく,調味料の添加により,吸水が阻害される傾向が見られ,特に食塩,醤油,トマトペーストで顕著であった.2倍濃度の調味液に浸漬させた場合,ほぼ全ての調味料において,浸漬初期の段階で濃度に依存して吸水が阻害される傾向があった.食酢浸漬の場合,120分後の吸水率は2倍濃度の方が大きく,長時間の酢酸浸漬に伴って米粒表層のタンパク質が溶出し,水が米の組織内に取り込まれやすい状態になったのではないかと考えられた.2) 加熱吸水率は60°C以上での増加が著しいが,調味料の添加により,吸水が阻害される傾向が見られ,食塩,醤油,トマトペーストで顕著であった.特に食塩は濃度に依存して吸水が妨げられ,逆に食酢は吸水が促進された.また,全ての調味料において加熱直前に添加した方が吸水が阻害されない傾向が見られた.3) 炊飯中の温度履歴は食塩,醤油,清酒,食酢,上白糖を添加した場合,無添加とほぼ同様であったが,カレー粉,トマトペーストを添加した場合,炊飯中の温度上昇が一定でなく,釜内の温度分布も不均一であった.特にトマトペーストは温度の立ち上がりが非常に遅かった.4) 米飯の水分含量は20°C・1h放置後において,清酒と食酢を除くいずれにおいても無添加より有意に少なく,5°C・24h低温保存後では,無添加に比べ食塩,上白糖,カレー粉で有意に少なかった.トマトペーストでは20°C・1h放置よりも5°C・24h放置後の方が有意に水分含量が高く,澱粉の老化に伴う結合水から自由水への変化が大きかったことが考えられた.5) 米飯の硬さは,20°C・1h後では食酢を除く全ての調味料で無添加より有意に大きく,5°C・24h後では上白糖,カレー粉,トマトペーストで無添加より有意に大きかった.米飯の粘りは,食酢において20°C・1h後および5°C・24h後ともに無添加より有意に大きかった.米飯の付着性は,食酢で20°C・1h後,5°C・24h後ともにいずれの調味料よりも有意に大きく,一方上白糖,カレー粉,トマトペーストは5°C・24h後において無添加より有意に小さかった.以上の結果を調味料ごとにまとめると,食塩,醤油は吸水を阻害し,水分の少ない硬い飯になった.清酒は吸水を阻害し,水分量に有意差はないものの,硬い飯になった.食酢は吸水を阻害するものの,水分量,硬さに有意差はなく,粘り,付着性の高い飯になった.上白糖,カレー粉,トマトペーストは吸水を阻害し,水分の少ない硬い飯となり,5°C・24h低温保存後の飯は無添加より硬くて付着性の小さい飯となった.このように本研究では添加する調味料の種類によって炊飯特性が様々に異なり,米飯の仕上がりに影響することが分かった.
著者
白木 まさ子 貝沼 やす子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.651-657, 1979-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

最初に, A法 (卵白のみをおもに起泡する別立て法1), B法 (卵白, 卵黄を別々に起泡する別立て法2), C法 (全卵を起泡する共立て法) によって調製したスポンジケーキの品質について比較検討した.次に, これらの調製方法との関係において, 小麦粉混合のための攪拌の程度およびケーキ生地の放置が焙焼前のケーキ生地の安定性に及ぼす影響を知るため実験を行った.1) A法とB, C法の間に相違がみられ, B法とC法は似た傾向を示す.A法によればケーキのきめは密で均一性にすぐれているが, 比容積が小さく, ややかためとなる.外形は中央部が高い山型で, 表皮の焼き色は黄褐色を呈する.B, C法はきめが粗く, 均一性ではA法に劣るが比容積が大きく, A法に比べやわらかい.外形はなだらかな直線型で焼き色は褐色である.2) (卵+砂糖) 攪拌液と小麦粉を混合するときは短時間の軽い攪拌が望ましい.C法ではさっくり軽く混ぜる程度 (G-Emixer, No. 1で15秒) にとどめるべきであり, A法ではC法以上の攪拌 (G-Emixer, No. 1で30秒) であってもよい.しかし, 過度の攪拌 (G-Emixer, No. 1で1分) になると比重の増加, 粘度の低下が著しい.3) ケーキ生地の放置は, A, B, C法とも40分以内であればケーキ生地の安定性にほとんど影響を与えない.しかし放置60分ではケーキ生地の比重と粘度の増加が認められる.
著者
貝沼 やす子 長尾 慶子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
調理科学研究会
雑誌
調理科学
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.419-423, 1990
被引用文献数
4

洗米方法の違いにより,米粒あるいは飯粒の性状には多少の差異が生ずることがわかった。すなわち,"研ぐ"と表面が削られるため,洗液中に溶出する固形分量が多くなるとともに,米が砕ける割合も増加した。コシヒカリ,キタヒカリいずれも研いだ後水取り替えを行ったものは白く炊き上がり,官能検査でも有意に白いと評価された。しかし,官能検査における総合的な評価には全く有意差は認められず,本実験で採用した"洗う"または"研ぐ"操作は飯の食味に大きな影響は与えないと結論した。本研究を行うにあたり,走査型電子顕微鏡使用の便宜をはかっていただきました日本食品化工株式会社ならびに撮影を担当して下さいました同研究所曽根博信氏に感謝いたします。

1 0 0 0 OA 米の調理

著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.287-293, 1994-11-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
66
被引用文献数
3
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.89-95, 1991-05-20
被引用文献数
8

夏みかん果汁を直接炊き込む方法により古米の食味の改善を試みた。また,食酢を用いた炊飯も行い果汁の有効性を検討した。結果を以下に要約する。1)官能検査において,果汁添加飯および食酢添加飯は香り,粘り,かたさの点で古米の改善がみられ,総合的にも白飯に比べ好ましい飯となった。2)飯のテクスチャーは,果汁および食酢の添加により,かたさの低下と付着性の増加が測定され,官能検査と対応した古米の改善がみられた。3)飯のつやは古米の白飯は通常米の白飯に比べかなり低いが,果汁及び食酢の添加により高まり,通常米と同程度となった。4)顕微鏡観察において,果汁飯および酢飯の飯粒周辺部の変化と付着物が観察され,飯のテクスチャーやつやなどとの関係が示唆された。5)官能検査により果汁飯と酢飯の適塩量を検討したところ,果汁飯の方が酢飯より少ない食塩量で食味上好まれる結果となった。6)果汁飯と酢飯では飯粒中の食塩の分布状態が異なり,果汁飯の方が飯粒表層部に分布する食塩量が多いことが示唆された。以上,夏みかん果汁により古米の食味の改善を行うことの有効性が明らかになった。また,食塩の分布状態と味の感じ方の関係は興味深い結果であったので,今後さらに検討を進める予定である。
著者
貝沼 やす子 田中 佑季
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.620-627, 2009-12-15
被引用文献数
6 11

(1) 米ペーストには粒径が6μm付近のでんぷん微粒子の存在が殆どを占めていた.米粉は粒径10~100μmにかけて広く分布していた.また,米ペーストの吸水率は50~60%と強力粉より少なかったのに対し,米粉は100%を超えており,強力粉より大きかった.<BR>(2) パン生地のファリノグラム解析において,米ペースト添加生地はコントロール生地と同等程度の硬さであったが,米粉添加生地はコントロールより明らかに硬かった.<BR>(3) 走査型顕微鏡観察では,米ペースト添加パン生地はコントロールパン生地に比べるとグルテン形成が少なくなっているものの,米粉添加パン生地よりもグルテンが形成されており,でんぷん粒とよく絡み合っていた.米ペースト添加パン生地は発酵させた際の体積増加率がコントロールパン生地より大きかったが,米粉添加パン生地は明らかに小さかった.<BR>(4) 米ペースト添加パンは米粉添加パンよりもパンの膨化状態・内相の品質・テクスチャーが改善されており,コントロールパンに近い,柔らかくきめの整った良好なパンとなっていた.<BR>(5) 米ペースト添加パンは米粉添加パンよりも低温に保存した場合のパンの硬化が抑制されており,コントロールパンと同等の変化を示した.<BR>これらのことから,米をペースト状にし,そのままパン生地に添加するという新たな米添加パンの調製法は,米の調理特性を活かした有用性のある調製法であると考えられる.また,パン以外の小麦粉調理で代替利用できる可能性も秘めており,米粒,米粉に次ぐ,米の新たな活用法としての有効性が期待できる.現時点では研究室規模の実験であったが,今後は実用化に向けて米ペーストを効率的に製造できる機器の開発,米ペーストを添加した業務用生地の調製法などの検討を行っていく予定である.
著者
貝沼 やす子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.170-176, 2003-05-20
被引用文献数
1 1

1)魚・肉の購入場所はスーパーマーケットが80%以上を占めており,魚は使う日に,肉は数回分まとめて購入する場合が多かった。2)気軽に使える魚はさんか,いか,さけ,えび,さば,あじ,まぐろ,いわし,ししゃも,ぶりの10種であった。3)魚は切り身で購入して利用する場合が多く,姿のまま購入するのはさんま,いわし,いか,あじなどの小型の魚の場合であった。次いでさば,いわし,さんまはすべての購入形態での利用が万遍なく行われており,さけ,かつお,まぐろ,ぐり,たらは切り身,惣菜(刺身を含む)での利用が多い魚であった。4)魚は焼く,煮る,刺身で調理されることが多かった。いか,あじ,さけ,いわしは気軽に使われており,多様な調理法に向く魚であると考えられた。一方,たら,ぶり,まぐろ,かつお,さんまなどは料理のイメージが固定していた。5)豚肉,牛肉は厚切り,ひき肉が,鶏肉では1枚肉,ひき肉が気軽に使われていた。豚肉,牛肉は煮物,煮込み物,焼き物,鍋物などに気軽に使われており,豚肉ではフライすなわち豚カツでの利用も多く,比較的多様な調理法での利用が期待できた。鶏肉は煮物,空揚げでの利用が多く,他の調理法での利用は少なかった。
著者
貝沼 やす子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.199-207, 2006-04-15
参考文献数
9
被引用文献数
4

1)米飯から調製する粥の物性には米飯の加水量の影響が大きく,米飯の保存方法の影響は小さかった.2)いずれの米飯粥も加熱時間が長くなるにつれて付着性は増加する傾向を示したが,粥飯粒自体は軟化傾向を,おもゆを含むとかたさは増加傾向を示した.3)加水量の多い米飯を利用した1.7倍粥では米飯の吸水率は少なく,分離液(おもゆ)の粘性は小さかった.かたさ,みかけの破断応力も低い傾向にあり,粥飯粒の外観は10分加熱ですでに過度に膨潤しており,崩れが観察された.4)加水量1.5倍,1.3倍の米飯から調製した粥は,1.7倍粥に比較してかたさ,みかけの破断応力,分離液の粘性は高い傾向にあり,粥飯粒の外観は米粥に似ていた.5)官能検査において,いずれの米飯粥も20分加熱で米粥に近い性状であると評価された.1.7倍米飯粥のみは20分加熱しても有意に水っぽいと評価され,物性測定の結果に対応していた.
著者
貝沼 やす子 福田 靖子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.118-126, 2005-04-20
被引用文献数
1

We have shown in previous studies that the use of bamboo charcoal advanced the gelatinization of starch, and reddened and softened kintoki beans. We applied these effects for red rice steamed with glutinous rice and cowpeas. The pH value of the bamboo charcoal extract was about 9.5, and it decreased to about 8.0 after cooking cowpeas for 15 minutes. The broth used to boil the cowpeas with the bamboo charcoal extract became redder and clearer. There was a positive correlation between the pH value of the cooking water and the value measured by a color difference meter of the broth used to boil the cowpeas. Glutinous rice soaked in the broth used for boiling the bamboo charcoal extract became redder after steaming. The sensory test evaluated the red glutinous rice prepared by using the bamboo charcoal extract as significantly redder than that by using tap water. Use of the bamboo charcoal extract also accelerated the softening of the cowpeas, and the red glutinous rice was evaluated as tender in texture just after steaming.
著者
江間 章子 貝沼 やす子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.341-347, 1999-04-15
被引用文献数
12

The effects of cooking pot material and heating conditions on the physical and chemical properties of rice gruel were studied. It was found difficult to adjust the heat input to rice gruel cooked in a yukihira nabe (earthen pot) when the temperature reached over 100℃ at the bottom of a pot. Rice gruel cooked rapidly was harder and stickier than when cooked slowly, particularly when a yukihira nabe was used as the pot. Rice gruel cooked slowly had a large amount of reducing sugar, mainly consisting of glucose. Rice gruel that was too sticky was not easy to swallow and was disliked. Rice gruel cooked in an aluminum pot was preferred to that in a yukihira nabe, although the application of the heat retaining method to the latter type of pot was effective.