著者
小野 映介 片岡 香子 海津 正倫 里口 保文
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.317-330, 2012-12-01 (Released:2013-06-14)
参考文献数
33
被引用文献数
6 7

津軽平野中部における浅層堆積物の層相および鉱物組成,火山ガラスの形状・屈折率,14C年代を検討した.当地域は奈良時代から平安時代初頭に有機質シルト層や未分解有機物層が堆積する湿地であったが,後の火山灰質砂層の堆積により堆積環境が激変した.火山灰質砂層は様々な堆積構造を呈し,十和田a(To-a)テフラ由来の火山ガラスを多く含むため,十和田火山AD 915噴火後のラハール堆積物と判断できる.ラハール堆積物の上位にはAD 930~940頃の白頭山-苫小牧(B-Tm)火山灰が認められ,To-aテフラの噴出後B-Tm火山灰の降灰時期までの二十数年以内でラハールが終息したと推定される.ラハール堆積物上位の土壌化層には,平安時代中期の遺物が包含される.津軽平野中部では,平安時代の遺跡が多く存在することからも,ラハールの流入で広大な砂地が形成され,人々の居住可能な場が整い,居住の増加に影響を与えたことが考えられる.
著者
吉川 周作 水野 清秀 加藤 茂弘 里口 保文 宮川 ちひろ 衣笠 善博 三田村 宗樹 中川 康一
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.505-520, 2000-12-01
被引用文献数
17 32

神戸市東灘区魚崎浜で掘削された東灘1,700mボーリングコアの火山灰層序を明らかにした.本コアは,基盤の花崗閃緑岩(深度1,545.7m以深)と,それを不整合に覆うK1-L層・K1-U層から構成される.淡水成のシルト・砂・砂礫主体のK1-L層(深度1,545.7~691.8m)は,朝代火山灰層に対比できるK1-1382火山灰層を挾み,大阪平野地下の都島累層と陸上部の大阪層群最下部・下部下半部に相当する.海成粘土層と淡水成の砂礫・砂・シルトの互層からなるK1-U層(深度691.8~23.3m)は,31層の火山灰層を挾み,大阪平野地下の田中累層と大阪層群下部上半部~段丘堆積層に相当する.本層中のK1-648,K1-566,K1-537,K1-488とK1-486,K1-444,K1-422,K1-351,K1-348ないしK1-347.4,K1-245,K1-223,K1-175,K1-141,Kl-101,K1-26火山灰層は,イエローIIないしIII,ピンク,光明池III,山田III,アズキ,狭山,今熊II,八町池I,八町池II,カスリ,港島I,鳴尾浜IV,八田,甲子園浜III~VI,平安神宮の各火山灰層に対比された.この火山灰対比により,19層の海成粘土層を,それぞれMa-1,Ma0,Ma0.5,Ma1,Ma1.3,Ma1.5,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5,Ma6,Ma7,Ma8,Ma9,Ma10,Ma11(1),Ma11(2),Ma11(3),Ma12層に対比した.
著者
長橋 良隆 里口 保文 吉川 周作
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.51-69, 2000-01-15
被引用文献数
24 59

本州中央部の3層の鮮新-更新世火砕流堆積物と広域火山灰層の対比と噴出年代の推定は, それらの層位的関係, 層相, 古地磁気方位, 鉱物組成や火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率・化学組成, 層序学的年代資料に基づいて行われた.穂高-Kd 39テフラは約1.76 Maに噴出し, 火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashを形成した.恵比須峠-福田テフラは約1.75 Maに噴出し, stage 1の水蒸気プリニー式噴火による降下火山灰の形成, stage 2(前期)の降下軽石・火砕流の噴出と降下火山灰の形成, stage 2(後期)の火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成, stage 3の噴火活動終了後に再堆積した火山砕屑性堆積物に分けられる.大峰-SK 110テフラは約1.65 Maに噴出し, stage 1の火砕流噴出, stage 2の噴火活動の休止期, stage 3の火砕流噴出とその火砕流が新潟堆積盆に直接流入した火山砕屑性堆積物および火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成に分けられる.
著者
里口 保文 山川 千代美 高橋 啓一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.Supplement, pp.S70-S78, 2012-08-15 (Released:2013-02-21)
参考文献数
51
被引用文献数
2 2

近年,第四紀が正式な地質年代区分の一つとしてその定義が国際地質学連合(IUGS)に承認された.第四紀の始まりは更新世の始まりでもあり,地層としての第四系の下限は,鮮新−更新統境界という意味でもある.鮮新−更新統境界の新定義は1980年代に決められた旧定義より下げられ,年代的には約80万年古くなった.本コースでは,近畿地方において旧定義と新定義における鮮新−更新統境界の両方が観察できる古琵琶湖層群において,両者を露頭観察するとともに,陸域における地層にとっての鮮新−更新統境界の意味を考える.
著者
長橋 良隆 里口 保文 吉川 周作
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.51-69, 2000-01-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
71
被引用文献数
27 59

本州中央部の3層の鮮新-更新世火砕流堆積物と広域火山灰層の対比と噴出年代の推定は, それらの層位的関係, 層相, 古地磁気方位, 鉱物組成や火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率・化学組成, 層序学的年代資料に基づいて行われた.穂高-Kd 39テフラは約1.76 Maに噴出し, 火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashを形成した.恵比須峠-福田テフラは約1.75 Maに噴出し, stage 1の水蒸気プリニー式噴火による降下火山灰の形成, stage 2(前期)の降下軽石・火砕流の噴出と降下火山灰の形成, stage 2(後期)の火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成, stage 3の噴火活動終了後に再堆積した火山砕屑性堆積物に分けられる.大峰-SK 110テフラは約1.65 Maに噴出し, stage 1の火砕流噴出, stage 2の噴火活動の休止期, stage 3の火砕流噴出とその火砕流が新潟堆積盆に直接流入した火山砕屑性堆積物および火砕流噴出に伴うco-ignimbrite ashの形成に分けられる.
著者
里口 保文 樋口 裕也 黒川 勝己
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.74-86, 2005 (Released:2005-06-10)
参考文献数
41
被引用文献数
4 13 7

東海層群の大田テフラ層は,古琵琶湖層群,氷見層群,浜忠層にも対比されるテフラ層があるが,それらの年代はそれぞれ異なっている.本論では三浦層群のテフラ層との対比を行うことによって,大田テフラ層の年代を決定することを試みた.その結果,テフラの記載岩石学的性質や化学成分より,大田テフラ層は三浦層群のAn85テフラ層と対比された.さらに,三浦層群のAn77とAn53テフラ層は,東海層群の小鈴谷,坂井火山灰層とそれぞれ対比された.三浦層群の古地磁気層序と生層序の平均堆積速度から算出した大田テフラ層の年代は,約3.9 Maである.また,同様の検討から小鈴谷火山灰層,坂井火山灰層の年代は約3.9 Ma, 4.1 Maである.これら広域テフラ層の層序と年代をもとにして,本州中央部の下部鮮新統についての広域層序をまとめた.
著者
長橋 良隆 吉川 周作 宮川 ちひろ 内山 高 里口 保文
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.345-352, 2004-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
28
被引用文献数
2 7

火山ガラスの屈折率は,その主要成分化学組成に依存している.そのことを火山ガラスの主要成分含有量と屈折率(n)から,各成分ごとに屈折度(n-1)を算出することにより例示した.また,近畿地方および八ヶ岳山麓に産するテフラ(102試料)のEDS分析結果を用いて,主成分元素の酸化物含有量と屈折率との関係について検討した.SiO2はその含有量が多いことから,屈折率に寄与する割合が大きい.またSiO2量が増加すると,屈折率は低下する.SiO2と負の相関にある成分(TiO2・Al2O3・FeO*・MgO・CaO)は,含有量が増加するにつれて屈折率が高くなる.SiO2と相関のないNa2Oは,含有量と屈折率に相関がない.K2Oは,SiO2-K2O図でK2Oレベルの異なる複数のトレンドがあるが,含有量と屈折率には一続きの相関はない.火山ガラスの屈折率はテフラ同定・対比の際の重要な指標であるが,屈折率が近似する火山ガラスでも,主要成分化学組成は異なる場合がある.