- 著者
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皆川 太志
野嶋 琢也
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.11, pp.2030-2042, 2018-11-15
応援とはスポーツ競技を観戦する際の,観戦の楽しみを構成する要素の1つである.応援における声援やブーイングは,感情表現の一種であり,競技中のプレイヤにその思いを伝えようとする行為となる.そして勝利を願う声援,良いプレイをしたときの喝采,悪いプレイをしたときのブーイング,これらすべてはプレイに対する評価でもあり,プレイヤのモチベーション刺激につながると考えられる.ただ周囲の大多数があるプレイヤを応援するようなとき,主に声が届かないといった物理的問題から,少数が周囲と異なる対象を応援することは難しい.しかし応援は自由であるべきであり,いつでも自身の好きな対象を応援できる自由があることが望ましい.同時に,そのような応援が自己満足で終わらないために,応援されていることをそれぞれのプレイヤが認知できることが重要と考えられる.またプレイヤが,送られた応援に対して手を振るなどの何らかのフィードバックを返すことは,応援する側にとって,観戦や応援のモチベーション向上に寄与すると期待される.しかしながら通常,プレイ中に応援を認知し,応援に応えることはきわめて難しい.そこでこの問題に対して我々は,「Cheer Across」という応援拡張システムを開発した.Cheer Acrossは観客が応援をプレイヤに伝え,プレイヤからのフィードバックを得るためのAcross Penlightと,プレイヤが観客からの応援を認知しフィードバックを送るためのAcross Gearにより構成されている.本論文では,Cheer Acrossシステムの詳細な構成について述べる.そしてCheer Acrossをプレイヤと観客それぞれに使用してもらい,評価実験を行ったのでその結果について述べる.実験の結果,Cheer Acrossを利用することで,プレイヤは観客の応援に気づきやすくなり,プレイへのモチベーションが刺激されるという結果が示唆された.また観客は競技の臨場感や興奮度が向上し,応援行動をより好ましいと感じるようになるという結果が示唆された.In sports, players are being cheered by spectators. Cheering is one of the important aspect to attract people to watch sports competitions. Unfortunately, players need to concentrate on their own play. Thus, there is no time to check and make some reaction to cheering action from spectators, which are considered to be important rewards to motivate people to become spectators and keep cheering. To comply with this issue, we developed an augmented cheering system named "Cheer Across". That is a technology for a certain categories of spectator sports to enables spectators to send cheering message to players. At the same time, the technology enables players to react to the cheering message. Spectators could also feel the reaction through the proposed system. In this paper, the detail configuration of the Cheer Across system is described. Furthermore, experiments and their results are also described to show the effect of using Cheer Across to both players and spectators.