著者
金子 佳代子 伊藤 千夏 北島 光子
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要I(教育科学) (ISSN:13444611)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-10, 2009-02-28 (Released:2016-09-14)

骨粗鬆症は高齢者のQOLを著しく低下させることから、その予防に大きな関心がもたれている。骨粗鬆症の予防として若年期に獲得される最大骨量を高めることが重要とされ1)、そのために栄養バランスの良い食生活と適度な運動を習慣化することが望ましいと考えられている。若年期において骨量と食習慣との関わりについて検討した報告はあるものの2-13)、両者に関連がみられたとするものと関連がみられなかったとするものがあり、見解は一致していない。我々はこれまで、9~22歳の成長期の男女を対象として骨量の年齢別推移を調査した結果、骨量は9歳から14歳までは男女間に差はなく年齢と共に増加すること、15歳以降は女子よりも男子のほうが有意に高値を示すようになること、女子は15歳、男子は18歳で成人と同レベルに達することを報告した14)。また、中学生期における骨量と生活習慣との関わりを検討し、運動習慣のある人及び体力の指標の得点が高い人の骨量が高かったこと、骨量と食習慣には関連はみられなかったことを報告している13)。本報ではさらに、高校生期の骨量と、体格の指標、カルシウムを多く含む食品の摂取状況、運動習慣などとの関連について検討を行った。 The purpose of this study was to investigate the relationship between bone mass and intake of calcium-rich foods, habitual exercise, body composition and grip strength in 496 Japanese high school students of both genders aged 15-17y. Transmission index (TI) and speed of sound (SOS) at the calcaneus measured by using AOS-100 (ALOKA Co., Ltd, Tokyo). Osteo sono-assessment index (OSI) is given by OSI = TI × SOS2, used as an index of bone mass. OSI was significantly higher in male than in female. Weight, BMI, lean body mass and grip strength had a significant association with OSI in both males and females. In females, weight, habitual exercise during junior high school, current milk consumption, consumed dairy products during junior high school, habitual exercise for last one year had significant increasing effects on OSI in multiple regression analysis. On the other hand, in male, current milk consumption, grip strength, habitual exercise during junior high school had significant increasing effects on OSI in multiple regression analysis. The present finding suggest that OSI is significantly related to intake of calcium-rich foods such as milk and dairy products, and to habitual exercise since junior high school students. Furthermore, it is important to continue such lifestyle for acquisition of high peak bone mass.
著者
伊藤 千夏 小泉 暁子 田中 絵里香 金子 佳代子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.221-227, 2006-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
26
被引用文献数
9 3

9歳から22歳までの男女3468名の骨量を超音波法により測定し, 骨量の年齢別推移および骨量と身長, 体重, BMI, 除脂肪量, 体脂肪率との関連を検討した。骨量は乾式踵骨超音波骨評価装置 (ALOKA 社AOS-100) を用い, 超音波伝播速度 (SOS) と透過指標 (TI) を測定して音響的骨評価値 (osteo sono-assessment index 以下OSIとする) を算出し骨量に相当する指標とした。OSIは9歳から14歳までは男女間に差はなく年齢とともに増加し, 15歳以降は男子の方が女子よりも有意に高値を示した。女子では初経発来者は未発来者に比べてOSIが有意に高値を示していた。年齢を4区分 (9-12歳, 13-15歳, 16-18歳, 19-22歳) にわけ, OSIと身長, 体重, BMI, LBM, 体脂肪率との相関を検討したところ, 女子ではすべての年齢区分で, OSIと体重, BMI, LBM, 体脂肪率との間に, 有意な正の相関関係が認められたが, 男子の19-22歳では, OSIと身長, 体重などの身体組成とは相関が認められなかった。
著者
小西 史子 伊藤 千夏 木村 靖夫 金子 佳代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.247-254, 2007 (Released:2010-07-29)
参考文献数
19

The effects of the body composition, and of exercise, dietary and sleeping habits on bone mass of young people were studied. The bone mass of 339 males and 262 females aged 18-29 years were measured by the ultrasound methods. The bone mass of those subjects who exercised more than 3 times per week was significantly higher than of those with no exercise habits at school age. The subjects who continuously exercised from elementary to junior high school had the highest bone mass. A higher frequency of eating small fish in the school-aged diet was associated with higher bone mass. The bone mass of the female subjects who went to bed later than 1 a.m. was significantly lower than of those who went to bed before 1 a.m. in junior high school, high school or the present time. Multiple linear regression analysis showed exercise in junior high school to be the factor having the highest association with bone mass, this being followed by body weight and the time of going to bed in high school.
著者
北島 光子 金子 佳代子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第46回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.15, 2003 (Released:2004-03-23)

目的】 地球環境問題に対する関心が増すなかで、環境に配慮しようという意識は持つものの環境配慮行動の実践には結びつかないことが多い。広瀬(2001年)は、環境配慮行動実践の意思決定をする前段階として、環境問題に貢献したいという態度を形成する段階があり、この態度の形成には「環境問題に関する認知危機感)」、「環境問題の原因に関する認知(責任感)」、「環境負荷への対処法に関する認知(有効感)」の強化が有効であるとしている。 本研究では、環境配慮意識を行動化する過程における意思決定能力育成の一環として、環境問題や環境と生活のかかわりに関する認知の強化をねらいとした授業を行い、認知の変容を明らかにすることを目的とした。具体的には、地球温暖化の原因につながるエネルギー消費の問題を取り上げ、身近な生活行動である家庭電気製品の使用について考えさせた。【方法】 高等学校2年生「家庭一般」住生活領域(16時間)の一部として、消費生活と環境についての授業(8時間扱い)を行った。家庭におけるエネルギー消費、特に家庭電気製品の消費電力量削減を取り上げ、生徒が日常使用している家庭電気製品の消費電力量測定などの体験的学習を取り入れ、生活行動と環境との関わりや環境配慮行動と省エネルギー効果の関連性などについて考えさせた。住生活領域の最初と最後の授業で、それぞれ「環境」を鍵概念とするイメージマップを作成させ(30分間)、認知の変容の分析には、これらを用いた。イメージマップは、認知構造の分析や学習ツールとして用いられており、学習者の認知構造について、その広がりなどの程度を把握するのに有効である。ここでは、鍵概念「環境」から連想された語句(ラベル)について、イメージの量的広がりを捉ることにした。鍵概念「環境」から派生する全てのラベルを対象に「環境問題に関する認知」「環境負荷要因に関する認知」「環境荷軽減に関する認知」に該当する内容を抽出し、その数及びそれらの関連性について検討した。【結果】授業の前後のイメージマップを比較したところ、次のような結果が得られた。・それぞれの「認知」に該当したラベルの数と関連性からは、「環境問題一環境負荷要因一環境負荷軽減の関連性」、「環境問題一環境負荷軽減の関連性」「環境問題」「環境負荷軽減」に有意な差が認められた。・「地球温暖化」について「環境問題一環境負荷要因一環境負荷軽減」の3つの認知を関連させたものが大幅に増加し、「環境負荷要因」から複数の「環境負荷軽減」へのつながりもみられた。「環境負荷軽減」に該当するラベルでは、「省エネ」「リサイクル」「ひかえる・減らす・減量」等の生活行動に関するものだけでなく、「京都議定書」「(家電)リサイクル法」等の社会の動きと関連するものも増加した。「環境負荷軽減」に関する認知に広がりが見られたことは、家庭科の環境教育の特徴である生活における実践力の育成に結びつくものである。また、この認知が、社会の動きとの関連と生活行動の変容の双方に現れたことは、環境配慮行動がその「行動の仕方」としてのみ習得されたものでなく、社会の動向や自然科学的な根拠に基づいた「環境負荷軽減に関する認知」として捉えられたものと考えられた。
著者
佐藤 真紀子 金子 佳代子 宇高 順子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.555-567, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
39

Changes to the description of food and nutrition in home economics textbooks for elementary and junior high schools published in the period from 1947 to 2012 were analyzed. The description of nutrients and their functions changed with advances in the study of food and nutrition. The present textbooks for elementary and junior high schools consistently and systematically describe nutrients and their functions. The description of food groups and daily food guides changed according to the food intake, health and dietary problems of Japanese people. Further development of teaching material and methods is needed. The description of menu planning gradually changed to focus on a nutritionally balanced diet and to emphasize the combination of shushoku (cereals), shusai (protein-rich foods), fukusai (vegetables), milk and milk products, and fruits. Nutritional balance as well as multiple elements are desirable for learning future menu planning.
著者
篠原 久枝 金子 佳代子 品川 明
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 69回大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.16, 2017 (Released:2017-07-08)

【目的】牛乳は良質のたんぱく質やカルシウムの給源として学校給食にも導入され、家庭科における食品群の学習にも明記されてきた。一方、近年は乳アレルギーなどの問題も指摘されている。そこで、本研究では小学校~中学校の家庭科の教科書において「牛乳・乳製品」がいつごろから、どのように取り扱われてきたのかを明らかにすることを目的とした。【方法】公益財団法人教科書研究センター附属教科書図書館所蔵の学習指導要領に準拠した平成27年までに発刊・使用されてきた小学校家庭科、中学校技術・家庭科の教科書を分析対象とした。【結果・考察】「牛乳・乳製品」は、小・中学校を通じて「三色食品群」、「6つの基礎食品」などに一貫して必ず記載されてきた。中学校家庭科においては、我が国の食生活における「牛乳・乳製品」の受容の変化に伴い、「食品の保存方法」や「食品添加物の使用例」、「特定保健用食品」、「アレルギー原因物質」、「食糧自給率の例」など多彩な記載となり、調理実習における使用例も増加した。しかしながら、牛乳の種類による栄養成分の比較や殺菌方法などの記載はなく、今後は、調理科学的な視点や消費者として適切な食品選択、消費生活と環境の視点なども必要であろう。
著者
島村 実花 中尾 芙美子 金子 佳代子
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.75-81, 1995 (Released:2018-03-21)
参考文献数
13

大学運動部員を対象に,運動中及び運動後の水分摂取量の実態を調査し,飲食の記録から食事中水分量も算出した。飲み物の摂取量への噌好の影響を考え,(a)麦茶(糖分,ナトリウムなし) (b)糖分含有電解液1 (c)糖分含有電解液2 (d) 清涼飲料水(糖分) (e) 炭酸飲料水(糖分) (f) コーヒー飲料(糖分) (9)牛乳の運動後1時間の摂取量を,また,食塩5gの普通食と2.5g低塩食を食べた後〜就寝までの水分摂取量を比較した。結果は以下のようである。1) 運動後1時間に自由に水分摂取した後も水負債を解消しきれなかったが,就寝までに Ikg 以上摂取しており,本研究における発汗程度では運動後の飲食によって水負債を解消出来ると考えられた。 2 )被験者は麦茶を好んでいたにも関わらず,スポーツドリンク( b , C )及び清涼飲料( d , e , f ) よりも多くは飲めなかった 03 )食事中塩分が少ないと水分摂取量が少なくなる傾向がみられた
著者
大森 桂 古泉 佳代 鈴木 智恵美 金子 佳代子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.221-229, 2008 (Released:2010-07-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Enhancing the physical activity level has become a significant issue for the Japanese to prevent lifestyle-related diseases. For developing a simple and valid method to assess daily energy expenditure, we measured the energy expended by several physical activities in 13 young Japanese adults using the portable expiration gas metabolic monitor. Each subject wore a heart rate monitor on the chest and three-dimensional accelerometers on the wrist, waist and ankle. The energy expenditure was correlated with the heart rate and with the acceleration at the wrist, waist and ankle. Energy expenditure showed higher correlation coefficients with the acceleration at the waist and ankle than at the wrist. A multiple regression analysis showed that the energy expenditure could be estimated from the accelerations at the wrist and waist, the heart rate, gender, height and weight. The results indicate that measuring both the body acceleration and heart rate was important for developing a simple and valid method to assess daily energy expenditure.
著者
渡辺 美智子 北 博正 万木 良平 向笠 由美 鈴木 久乃 金子 佳代子 小池 五郎 桜間 幸次 藤本 英男 井川 正治 笹渕 五夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.40-51, 1984

体重階級制スポーツ選手の試合前の急速減量は, 体力・生理学的および栄養学的に適正な方法によって生体の諸機能の低下を防ぎながら行われるべきであり, 同時に試合後の回復期においても適正な方法によって回復させることが大切であると思われる。<BR>これらの方法を見出すことを目的として, レスリングの新人選手を対象とし, 急速減量における体重調整期, 試合期および回復期の各期間にわたり, 諸調査を実施した。その結果は次のとおりであった。<BR>各栄養素の平均摂取量の概量は, 体重調整2期では, エネルギーが20kcal/kg, たんぱく質1.7g/kg, 水分20g/kg, ナトリウム2g/日, カリウム1g/日であったが, 回復期に入ると急増し, エネルギーは60kcal/kg, たんぱく質2g/kg, 水分46~73g/kg, ナトリウム5g/日, カリウム3g/日となった。<BR>試合直前に体重の10%前後を減少させた各選手は, 試合終了から翌日までにほとんど平常体重の水準まで回復したが, その後増加しすぎるものもあり, 平常体重におちつくまでに約7日間を要した。<BR>この減量に伴って, 体内窒素代謝の亢進と, それに伴う筋力などの若干の低下, 体水分脱出による血液濃縮の影響と考えられる血液性状の変化が認められた。<BR>回復期には, 体重は速やかに平常時に復したが, 窒素, カリウムの摂取量が増加したにも拘らず尿中排泄量は増加せず, 出納はかなり大幅な正に転じた。またナトリウムは, 回復期に塩分の摂取量が多くなるに伴い尿中排泄量も増加したが, 出納は正であった。しかし, 回復期1週間後においても血液性状の一部などに充分に平常値までもどっていないのではないかと思われる徴候もあった。<BR>同復期に摂った飲食物の食品構成と各栄養素の平均摂取量については大きな欠陥は見当らなかったが, 偏差が大きく, 各個人の摂り方の内容は必ずしも充分ではなかった。<BR>被検者となった選手たちは新人ではあるがいずれもかなり高い体力水準を有していることを考え合わせると, これらの結果から, 今後スポーツ選手の急速減量にあたって, 単に減量方法だけでなく, 試合終了後における体力回復の適正な方法についても検討の余地が残されているものと考える。