著者
戸所 隆 宇根 寛 山田 晴通 鈴木 厚志 長谷川 均 川口 太郎
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

パラダイム転換を必要とする時代には、地理学を伝統的な総合的基礎科学としてだけでなく、広範な応用科学・政策科学として発展させ、社会貢献しつつ学問的に発展できる地理学に変身させる必要がある。それには、研究者養成や地理教員養成以外にも通用する資格として地域調査士を創設し、その必要性を国民各層に広報・周知させなければならない。本企画調査は地域調査士の創設を目的検討してきた。本企画調査は(社)日本地理学会企画専門委員会のメンバーで東京・群馬を中心に月一回の研究会を開催した。また、地域調査士の創設の是非やそのあり方に関して、教育・研究者の立場から(社)日本地理学会会員に、需要者の立場から地理学および関連専攻学生にアンケート調査を実施し、地域調査士を採用する立場から国や都道府県・市町村関係者、コンサルタントや観光関係などの企業関係者に聞き取り調査を行った。さらに、資格制度を先行的に導入した社会調査士認定機構等にも訪問調査した。その結果、地理学の本質を社会化する新たな資格制度の創設は、次に示す理由から社会的に意義が大きいと判明した。すなわち、(1)分権化社会への転換に伴う地理的知識や技能に基づく地域調査需要の増大(2)地理学の有用性と社会貢献を社会にアピールする認知システムの確立(3)各種資格制度創設ラッシュにおける地理学独自の資格制度の必要性(4)現代社会に必要な幅広い地理的知識を提供できる専門的人材の育成システムの構築である。以上の結論に基づき、制度設計(調査士と専門調査士・認定制度・標準カリキュラム・継続教育・更新制・学会としての講習会)や事務体制・財政的見通し、倫理規程、関連他学会との協力体制、導入スケジュールの基本を検討した。その結果、今回の企画調査によって、制度導入の道筋をつけることができ、制度導入実現に向けての次のステップに進むことができた。
著者
三島 江津子 岡戸 洋 加藤 さおり 櫛原 秀之 黒田 純子 榊原 隆志 首代 みどり 鈴木 厚志 松岡 加恵 宮坂 朋恵 渡辺 法男 横田 学 板倉 由縁 鈴木 照美 斉藤 寛子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 = Japanese journal of pharmaceutical health care and sciences (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.403-408, 2009-06-10
参考文献数
11
被引用文献数
1

When pharmacists provide drug guidance to in-patients,they are often asked about health foods such patients are regularly taking in expectation of anti-cancer effects.However,pharmacists cannot always answer these questions based on scientific evidence.<br>To further evaluate the efficacy of health foods for this purpose,we did a survey of the literature concerning 5 frequently used health foods said to have anticancer effects using the PubMed and Ichushi search services,obtaining 1,300 papers from the former and 1,142 papers from the latter.However among them,we could not find any providing data from randomized controlled trials and thus there was no clear scientific evidence,though some of the papers noted an improvement in the quality of life of patients.<br>In conclusion,when pharmacists provide guidance on health foods to patients and their families,it is important for them to collect detailed information and evaluate them on a scientific basis.
著者
亀井 啓一郎 原 美登里 鈴木 厚志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 = Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
巻号頁・発行日
no.69, 2006-03-10
参考文献数
1

1 はじめに<BR> モノやヒトや自己との対話をとおし、協力・協働のある学びが提唱されて久しい。地理教育に関する文献では、古くから野外観察や野外調査に基づいて自ら情報を目的に応じて収集・処理し、それを解釈・判断し、自らの考えを述べる能力育成の大切さが指摘されてきた。自らの観察や調査によって構成された心象は、視聴覚教材等によって得られたものより狭い地域範囲にとどまるが、観察や調査に基づき得られた内容には深さと多角的側面が備わり、地域を認識する基礎となるためである。このようなことが指摘されてきたにもかかわらず、それらを実践する組織的な方法や、評価・展示のための仕組みを十分に構築してきたとはいえない。本発表は、4年目を迎えた「彩の国環境地図作品展」の実践報告である。これにより、地理教育の基礎・基本を視座に据えた、大学と地域社会との協働ネットワークづくりの一端を紹介したい。<BR><BR>2 「彩の国環境地図作品展」の組織と概要<BR> 「彩の国環境地図作品展」は、2002年度より埼玉県内の小・中・高・特殊教育諸学校に在籍する児童・生徒を対象として開始している。立正大学地球環境科学部と埼玉県北部地域創造センターは、県の推進する「職・住・遊・学」拡充戦略の一つにこの地図作品展を位置付けた。そのため、当初より埼玉県や埼玉県教育委員会、熊谷市教育委員会、地元の現職教員、生涯教育施設の長に実行委員として参加頂き、初年度の組織を立ち上げた。2005年度の実行委員は総勢17名、その内10名は県内諸機関から参加頂いている。 後援団体としては、埼玉県やさいたま市、教育委員会、公益法人、そして日本地理学会をはじめとする地理学・地図学系学会に協力を依頼している。また、東京電力(株)埼玉支店には、特別協賛という形で発表会・表彰式の会場を提供頂いている。 2005年度の「彩の国環境地図作品展」の年間日程は以下の通りである。5月から6月にかけて、埼玉県内の小・中・高校や生涯教育施設などに作品募集のポスター・チラシを配布し、作品応募を呼びかけた。作品の受付は9月2日から16日である。10月に作品審査となる実行委員会を開催し、11月から翌年2月にかけて、発表会・表彰式と作品展示会を開催している。 なお、この地図作品展の事業経費は、立正大学地球環境科学部予算と同大学院にて実施するオープンリサーチセンター経費から支出されている。<BR><BR>3 地域協働ネットワークづくり<BR>産官学協同事業の事例を示す。「彩の国環境地図作品展」の作品募集の一環として、「地図作り教室」を開催している。開催当初は、立正大学地球環境科学部の施設のみで観察・調査・地図作成のすべてを行っていた。2004年からは、北本市にある埼玉県自然学習センターとの事業として、7月の第3・4週の土曜日に開催している。「地図作り教室」では自然学習センターの指導員が中心となり、自然学習センターのある自然観察公園で観察・調査を行い、その翌週、立正大学地球環境科学部において地図化と発表会を行っている。さらに、2005年は熊谷市環境対策課と協働で「地図作り教室」を開催している。入賞作品については、発表会・表彰式を開催し公表している。発表会・表彰式は、東京電力(株)の普及施設であるTEPCO SONICを会場とし、実行委員や国土地理院や埼玉県などの授賞団体の関係者に出席頂いて開催している。作品展は巡回展示により行っている。展示会場はTEPCO SONIC・埼玉県自然学習センター・さいたま川の博物館・立正大学熊谷キャンパスで、入賞作品だけではなく、多くの応募作品を展示・公開できるように配慮している。このように、発表会・表彰式と巡回展示においても地域社会との協働体制を推進している。<BR><BR>4 作品の特徴<BR> 2005年度の応募は34作品であった。そのうち10作品を入賞作品として選出した。入賞作品を学年別にみると、小学生5作品、中学生3作品、高校生1作品、中学生と高校生のグループによるものが1作品である。このうち、国土地理院長賞を受賞したのは、熊谷市立佐谷田小学校元荒川環境調査隊H17の「がんばれムサシトミヨ!ムサシトミヨの食料編」である。また、埼玉県知事賞と日本地理学会長賞を受賞したのは、こどもエコクラブザ・すぎちゃんズの「ようこそ鳥さん元荒川へ」である。両作品とも埼玉県内を流れる元荒川をテーマとしてグループで観察・調査をし、その結果を図表や写真を用いて表現豊かにまとめた作品である。これらは、本地図作品展の目的の一つである、身近な環境や地域の姿を自ら観察・調査することを実践した質の高い作品である。また、このような作品は増える傾向にある。これは、われわれの取り組む事業の趣旨が出品者側にも伝わり、地域恊働ネットワークが少しずつ形成されている証拠ともいえよう。
著者
三島 江津子 岡戸 洋 加藤 さおり 櫛原 秀之 黒田 純子 榊原 隆志 首代 みどり 鈴木 厚志 松岡 加恵 宮坂 朋恵 渡辺 法男 横田 学 板倉 由縁 鈴木 照美 斉藤 寛子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.403-408, 2009 (Released:2010-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

When pharmacists provide drug guidance to in-patients,they are often asked about health foods such patients are regularly taking in expectation of anti-cancer effects.However,pharmacists cannot always answer these questions based on scientific evidence.To further evaluate the efficacy of health foods for this purpose,we did a survey of the literature concerning 5 frequently used health foods said to have anticancer effects using the PubMed and Ichushi search services,obtaining 1,300 papers from the former and 1,142 papers from the latter.However among them,we could not find any providing data from randomized controlled trials and thus there was no clear scientific evidence,though some of the papers noted an improvement in the quality of life of patients.In conclusion,when pharmacists provide guidance on health foods to patients and their families,it is important for them to collect detailed information and evaluate them on a scientific basis.
著者
鈴木 厚志 泉 貴久 福田 英樹 吉田 剛
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.82, 2006

1.はじめに 2005年2月23日、イラクや北朝鮮の国位置がわからない大学生や高校生の存在を知らせる見出しが新聞紙面を賑わせた。地理教育専門委員会は、次期学習指導要領の改訂を視座に置き、同年2月22日、文部科学省記者クラブにて三つの提言を行った。その提言の基となる我々が実施した。世界認識調査(以下、調査)は、当時何と話題となり、マスコミにもよく取り上げられていた10か国の位置を問うものであった。我々は調査にあたって、「位置や場所の特徴を学習することは、国土や世界の諸地域を正しく認識する基礎となる」という考えに立った。調査結果は上述のごとくマスコミで大きく報道され、地理の重要性を社会に訴える機会をつくったともいえる。2.調査結果 調査は日本地理学会会員の協力を得、2004年12月から2005年2月上旬にかけて25大学(3,773名)、9高校(1,027名)にて実施した。大学での調査は、会員の担当する授業において実施しており、その結果は地理学に関心ある学生による結果と判断される。高校については、首都圏の進学校が大半を占める。国別の正解率は次のようになり、大学生については高校時代の「地理」履修の有無に基づきクロス集計を行った。3.報道と社会的反響我々は記者会見に先立ち、学会からの提言と調査結果の概要を、記者クラブへ事前配布をした。マスコミ各社はそれを読んで会見に臨んだため、その関心はかなり高かった。記者会見には、全国紙各社と通信社およびNHKと民放1社のテレビ局の記者らが出席した。会見そのものは30分程度であったが、終了後も活発な質問と取材があった。民放テレビ局は、事前配布した調査結果をもとに、会見当日に街頭にて独自取材を行い、我々の調査の妥当性を確認し、その結果を深夜のニュース番組で大きく取り上げた。翌日の朝刊では全国紙のみならず、通信社の配信により、広く地方紙でも記事が掲載された。その後、新聞や雑誌には調査結果をもとにした記者のコラムや読者からの投書、さらに会見当日に出席していなかったテレビ局からも取材依頼が相次いだ。これら二次的なマスコミによる報道は、発表者らも予想しない展開でもあった。4.調査から得た教訓 地理教育専門委員会は、「基礎的な地理的知識を継続して学習し、地理的見方・考え方を確実に定着させることを目指した地理教育」への提言に向けて行った今回の調査と記者会見から、次の三点を教訓として得た。第一は、現状と問題点をきちんと公開することである。会員からすれば今回の調査は単純なものであり、今日の「地理」履修状況や学力低下傾向から、その結果は当然かもしれない。今回の発表は、その結果をありのまま公開したに過ぎないのである。第二は、学会と市民を結ぶチャネルを確保することである。次期学習指導要領の改訂に向けた文部科学省や中教審委員や文教族の国会議員等への陳情活動と並行し、我々は市民を納得させ、世論を味方にする努力を怠ってはならない。外に向かった効率良い情報発信を継続すべきである。第三は、我々会員が地理学や地理教育の基礎・基本をきちんと認識することである。単に地理の重要性やおもしろさを訴えたところで、社会の共感を得ることは難しい。子どもの発達に応じた基礎・基本が整理され、それらを次の世代へ創造的に継承していくことの重要性が、広く会員へ認識されなければならない。
著者
長谷 川均 鈴木 厚志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.164-169, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
10

日本地理学会は,GISと地域調査の2分野で4種類の資格の認定事業を管轄している.これらの資格制度は,地理学の社会的地位を高め地理学会が社会貢献をするために設置され,大学教育における地理学の発展を図ることを目的とした.制度の設立は,アウトリーチを意識したものではなかった.しかし,二つの資格制度は,有資格者のバックグラウンドが地理学であることが認知されることで,地理学会の存在を外に向かってアピールすることに貢献している.今後は,日本地理学会サマースクールの充実を図ることなど,地理学会が主導して専門的な視点からのアウトリーチを行うことが必要である.さらに,日本地理学会は,地理学におけるアウトリーチ,社会連携・社会貢献を活性化させるために,さまざまな方法を試みる必要がある.