著者
西本 章宏 勝又 壮太郎 本橋 永至
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.44-57, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
27

本稿の目的は,COVID-19のアウトブレイクによって大きく市場環境が変化している今日のように,急激な環境変化による非連続な状況下において,次世代イノベーションの源泉として,創発的性質を有する消費者(ENCs)に着目する有用性を示すことである。本稿では,緊急事態宣言下を含むCOVID-19のアウトブレイク(第1波)を分析対象期間とし,消費者のスマートフォンのアプリ起動ログの収集と先端層調査を実施した。その結果,ENCsは同じ先端層であるリードユーザー(LUs)よりも環境変化に対して頑健であり,新しい生活様式に適応した消費者であることが明らかになった。また,ENCsのソーシャルメディアの利用動向はLUsや一般ユーザー(GUs)とは異なり,コロナ禍でも利用数は多いが,その変化量は少なった。このことから,ENCsは平常時からソーシャルメディアを他の消費者よりも広範かつ高頻度で利用している可能性が推察された。
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎 本橋 永至 石丸 小也香 高橋 一樹
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-54, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
75
被引用文献数
1

本研究の目的は、コンテクスト効果の一種であるプライミング効果の枠組みを用いて、ある製品に対する支払意向額の判断において、当該製品とは異なるカテゴリーの製品との接触が消費者の支払意向額に与える影響を検証することである。また、プライミング効果の影響を調整する要因として、「製品カテゴリーに対する消費者の事前知識」と「製品カテゴリー間の類似性」を考慮する。さらに、消費者行動研究の視点から、価格競争に巻き込まれないための脱コモディティ化戦略の一施策を提示する。
著者
崎濱 栄治 川崎 泰一 本橋 永至
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.59-70, 2019 (Released:2020-04-21)
参考文献数
26
被引用文献数
1

インターネット広告配信においてクリック率(CTR: Click-Through-Rate)の予測は最も重要な問題の一つであり,広告配信に関わる企業にとって収益に直結するテーマであることから,膨大な研究が行われている.既存研究では,CTRの予測精度向上に主眼が置かれ,特徴量の追加や加工方法,深層学習の活用など様々な取り組みが行われている.一方,広告画像の構成要素そのものの制作については,デザイナーの経験に依存する部分が大きい.クリエイティブを制作する際にどのような要素が重要であるか,指針となるエビデンスがあれば,より効率的に制作作業に取り組める可能性がある.本研究では,モバイル広告を対象としたCTR予測問題の枠組みで,広告画像における構成要素の貢献度を測定する実証分析を行った.広告画像の構成要素の抽出には,コンピュータービジョン技術を活用し,人が解釈可能なキーワードや色彩情報を得た.CTR予測の学習器として,弱識別器に決定木を用いたGBDT(Gradient Boosted Decision Trees)の結果から各特徴量の重要度と交互作用を推定し,広告画像の中でクリックに対して有効な要素を特定した.交互作用の推定は,Deng (2019)によるInterpretable Trees(inTrees)を利用した.コンピュータービジョン技術と,特徴量の重要度と交互作用が推定可能な機械学習手法を組み合わせることで,広告画像の構成要素の抽出とその貢献度測定が可能となり,幅広い応用範囲が期待できる.
著者
寺本 高 若鶴 優 鶴見 裕之 本橋 永至 佐藤 伸 中岸 恵実子
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.15-27, 2022 (Released:2022-11-10)
参考文献数
40

The authors clarify the behavioral traits of PLP (Partnership Loyalty Program) members before their trial purchase at the focal company. Specifically, they apply a zero-inflated negative binomial regression model using historical data of PLP members: purchase, marketing reaction, and reward program usage. There are two contributions to their research. First, they clarify the behavioral traits of PLP members at other coalitional companies before the trial purchase at the focal company, which cannot be captured by the loyalty program of a single company. Then, the behavioral traits of PLP members are captured from the three perspectives: purchasing behavior, marketing reaction, and reward acquisition/redemption behavior. These results induce discussions on the effectiveness of PLP from the perspective of sharing and utilizing behavioral information of PLP members among coalitional companies.
著者
髙橋 省吾 真鍋 誠司 本橋 永至 岸本 重雄 萩原 亨 金 垠憲
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1_35-1_43, 2020-01-31 (Released:2020-03-06)
参考文献数
11

海外特許取得に関連する費用は非常に高額であり,間接費として企業収益に大きな影響を及ぼすため,各企業は海外特許費用を管理し,次年度以降にかかる費用を予測して経営戦略に織り込む必要がある.しかるに,費用が発生する時期や回数も発明案件により区々であり,その予測は極めて困難である.このため,各企業は,例えば,前年度の実績を参考に当該年度の海外特許費用を予想するなどの単純な方法に頼らざるをえない.そこで,本研究は,海外特許費用,特に米国における特許費用を,より正確に推定する方法を見出すべく,複数の統計的予測手法を比較検討し,企業実務への適用を図ることを目的とし,研究を行なった.その結果,所定のアルゴリズムを用いて,複数の予測手法の中から状況に最も適した手法を選択することで,将来の海外特許費用をより高い精度で予測する方法を見出し,予測システムの開発に着手することができた.
著者
本橋 永至 樋口 知之
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-59, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
39

消費者の嗜好やブランド間の競合関係など市場環境は常に変化しており,企業のマーケティング活動の効果も常に一定ではない。マーケターにとって,その変化を的確に捉えることは,需要予測,価格設定,ブランド診断など様々な側面において重要である。本研究では,市場反応の変化は,長期的な傾向の変化と異質な消費者の混合割合に起因する一時的な変化によるものと仮定し,状態空間モデルの枠組みを用いて,市場反応係数が時間と共に変化するブランド選択モデルを構築する。状態空間モデルは,状態変数(観測されない変数)の時間的な変化を表すシステムモデルと状態変数と観測変数の関係を表す観測モデルから構成される。 3 年間のインスタント・コーヒーのスキャナ・パネル・データを用いた実証分析の結果,ブランド固有の魅力度はほとんど変動がないことや,プロモーションの効果は時間と共に変化するが,特別陳列とチラシでは,効果の変動の仕方に違いがあることが確認された。