著者
西本 章宏 勝又 壮太郎
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.53-65, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
31

本研究の目的は,決済手段に対する消費者の心理的所有感が,決済手段の選択,支払意思額(willingness to pay: WTP),受取意思額(willingness to accept: WTA)に及ぼす影響について明らかにすることである。本研究では,2種類の決済手段(現金とスマートフォン決済)を対象として,2つの実験を行った。実験1では,参加者に架空の購買シナリオを読んでもらい,相対的に心理的所有感が低い決済手段が支払い時に選択されやすく,選択された決済手段による支払いの方がWTPは高くなることを明らかにした。実験2では,参加者に4種類の架空の売買シナリオのいずれか2つを読んでもらい,相対的に心理的所有感が高い決済手段が受け取り時には選択されやすく,選択された決済手段による受取の方がWTAは低くなることを明らかにした。
著者
西本 章宏
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.2_27-2_50, 2010 (Released:2018-08-31)
参考文献数
55

本研究は、消費者の認知的精緻化を促進させる「適度な不一致」に焦点を当てている。本研究の目的は、製品拡張に対する「適度な不一致」の適用可能性を探ることである。そこで、本分析では、MCMC(マルコフ連鎖モンテカルロ)法による階層ベイズによって、製品拡張に対する消費者の認知的精緻化のモデリングを試みている。その結果、(1)「適度に不一致」な製品拡張は、階層的カテゴリー構造の下位レベルにおいて同定され、ゆえに、(2)「適度な不一致」製品は、消費者選好構造において、市場の境界線を拡張させることを明らかにしている。
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.15-25, 2018 (Released:2018-11-17)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,コンジョイントデザインを用いた消費者のWillingness to Pay(支払意向額)測定方法を比較し,予測精度が高いWTP測定方法を特定することである。本研究では,分析対象として,コンビニエンスストアでの昼食の購買状況を設定し,調査対象者に対して,コンジョイントデザインを用いた4つのWTP測定方法(自由回答方式,第一価格オークション,ヴィックリー・オークション,BDM方式)を試みている。その後,調査対象者には,実際にコンビニで昼食を購入してもらい,そのレシートデータを提供してもらっている。そして,本研究では,WTP測定方法において想定されるバイアスを考慮したモデルによって,各測定方法におけるWTPを算出し,最も予測精度が高いWTP測定方法は自由回答方式であることが明らかになった。
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.31-45, 2018-03-20 (Released:2018-06-18)
参考文献数
31

本研究は,着メロから着うた・着うたフルへと日本の有料音楽配信サービス市場が転換する局面に着目し,ネオ制度派組織論を起点とするメガマーケティング概念を活用して,組織フィールドにおける多主体の制度的実践について分析を行った.定性分析からは,複数の制度的実践による揺さぶりが明らかになり,得られた分析結果をもとに,定量分析によって市場の断絶と創造における制度的実践の成果について検証を行った.
著者
石田 真貴 西本 章宏
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.7, 2022-06-30 (Released:2022-08-08)

本研究の目的は,機能的固着を回避できないリードユーザーから革新性の高い新製品アイ デアを抽出することができる,新たなリードユーザー活用法を提案することである。本研究 では,合計 4 つのステップによって開発・評価された新製品アイデアの革新性と類推距離の あいだには逆U字の関係性があること,近距離よりも遠距離の周辺市場に所属するリード ユーザーから発案された新製品アイデアの方が,革新性の高い評価を得ることができること を明らかにした。
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎 本橋 永至
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.44-57, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
27

本稿の目的は,COVID-19のアウトブレイクによって大きく市場環境が変化している今日のように,急激な環境変化による非連続な状況下において,次世代イノベーションの源泉として,創発的性質を有する消費者(ENCs)に着目する有用性を示すことである。本稿では,緊急事態宣言下を含むCOVID-19のアウトブレイク(第1波)を分析対象期間とし,消費者のスマートフォンのアプリ起動ログの収集と先端層調査を実施した。その結果,ENCsは同じ先端層であるリードユーザー(LUs)よりも環境変化に対して頑健であり,新しい生活様式に適応した消費者であることが明らかになった。また,ENCsのソーシャルメディアの利用動向はLUsや一般ユーザー(GUs)とは異なり,コロナ禍でも利用数は多いが,その変化量は少なった。このことから,ENCsは平常時からソーシャルメディアを他の消費者よりも広範かつ高頻度で利用している可能性が推察された。
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎 本橋 永至 石丸 小也香 高橋 一樹
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-54, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
75
被引用文献数
1

本研究の目的は、コンテクスト効果の一種であるプライミング効果の枠組みを用いて、ある製品に対する支払意向額の判断において、当該製品とは異なるカテゴリーの製品との接触が消費者の支払意向額に与える影響を検証することである。また、プライミング効果の影響を調整する要因として、「製品カテゴリーに対する消費者の事前知識」と「製品カテゴリー間の類似性」を考慮する。さらに、消費者行動研究の視点から、価格競争に巻き込まれないための脱コモディティ化戦略の一施策を提示する。
著者
勝又 壮太郎 西本 章宏 ウィラワン・ドニ・ダハナ 飯野 純彦 井上 哲浩
出版者
日本マーケティング・サイエンス学会
雑誌
マーケティング・サイエンス (ISSN:21874220)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.26-52, 2016 (Released:2017-03-06)

本稿では,イノベーション普及理論に関するマーケティング分野のこれまでの進展と今後の展望について論じていく。とくに本稿では以下の 2 点を考慮する。第 1 は,マーケティング周辺分野のイノベーション普及研究について客観的かつ包括的なレビューを行うことを目指す点である。これまでのレビュー手法だけでなく,計量書誌学アプローチを導入し,計量的に論文を分類・分析していく。ただし,分析結果から得られた研究動向については,個別の論文や雑誌を取り上げ,具体的な議論を行っていく。第 2 は,得られた分類の結果を活用し,本誌にこれまで掲載された論文との関係を検討する点である。そして,日本におけるイノベーション普及研究のこれまでの成果と,今後の展開について議論していく。
著者
勝又 壮太郎 西本 章宏
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.1-9, 2016 (Released:2016-12-14)
参考文献数
13

This study focuses on the process of market generation and diffusion. Especially, we examine the relationship between market attractiveness and legitimation of the product market. We conduct the study following two steps: First, we refer some previous work to analyze the transition of market such as socio-cognitive and institutional theories. Second, we propose a method to measure the legitimacy which change along with the market expansion from published newspaper articles. In general, it is difficult to observe the transition of the market change from behavioral outcome such as sale amount and diffusion rate, this study measures the latent market change from the change of the word. Third, we develop a quantitative model to examine the relationship between observed degree of legitimacy and marketing performances. Our empirical model is based on the bass diffusion model which enable us to estimate market diffusion rate and examine the impact of the legitimation on the diffusion rate and profitability. As a result, we find that market size and profitability increase at the formulation stage of the legitimacy, on the other hand, the market size and profitability decrease at the stabilized stage. Based on the findings, we also discuss the optimal market entry strategies and desirable new product development strategies. For example, we can obtain an implication to entry observing the change of the word.
著者
西本 章宏 勝又 壮太郎 石丸 小也香 高橋 一樹
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1_85-1_110, 2010 (Released:2018-08-31)
参考文献数
44

本研究は、カテゴリー不確実性における消費者の製品カテゴライゼーションに焦点を当てている。本研究の目的は、このような認知状況下においてファジー理論を適用させることで、新たな製品カテゴライゼーションのあり方を明らかにすることである。そこで、本分析では、カテゴリー・メンバーシップ関数を用い、カテゴリー不確実性における消費者の製品カテゴライゼーションのモデリングを試みている。その結果、カテゴリー不確実性における製品カテゴライゼーションは(1)消費者ごとに異質であり、(2)その認知的異質性が当該マルチプル・カテゴリー製品に対する評価に大きな影響を及ぼしていることを明らかにしている。
著者
小田 福男 加藤 敬太 乙政 佐吉 西本 章宏
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

北海道から極東ロシアまでの北方圏における、北海道地域企業の産業クラスター形成と極東ロシア地域とのリンケージ・需要搬入による継続的活性化、地域ブランド強化の現状と方策を究明した。その結果、次のような知見が得られた。(1)産業クラスター形成における企業家活動、地域オープン・イノベーションのユニークな重要性。(2)地域ブランド・マネジメントにおける新規顧客とリピート顧客の異質性、各々で異なったアプローチを適用することの重要性。(3)北海道と極東ロシアとの地域間国際交流に関して、特に住宅・住宅建材分野でのロシア極東地域の現状の厳しさと長期的視点の重要性。