著者
杉田 慎之介 長谷川 純子 鈴木 英樹
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22016, (Released:2023-10-03)
参考文献数
28

【目的】積雪寒冷地在住高齢者の冬季と春季の生活空間変化および性別,フレイルの有無による生活空間の季節変化について明らかにすることを目的とした.【方法】対象は北海道当別町在住で高齢者クラブに所属している高齢者とし,冬季に基本チェックリストを実施し,ロバスト群とプレフレイル・フレイル群に分類した.さらに,冬季と春季で生活空間(Life-space assessment:以下LSA)を評価した.LSAの季節変化を全対象者,性別,フレイル分類でそれぞれ比較した.また,LSAによる最大到達範囲と外出頻度の変化について検討した.【結果】春季に比べ冬季のLSAは全対象者(p=0.004,95%CI 2.67-13.34),ロバスト群(p=0.038,95%CI 0.52-16.48)で有意に低値を示した.最大到達範囲と外出頻度の変化については主に「町内」と「町外」レベルでの変化が認められた.【結論】積雪寒冷地在住の高齢者に対する介護予防活動の提案は季節やフレイルの有無による影響を考慮する必要がある.
著者
上地 広昭 竹中 晃二 鈴木 英樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.288-297, 2003-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
7 4

本研究の目的は, 子ども用身体活動行動変容段階尺度および子ども用身体活動の恩恵・負担尺度を開発し, その尺度を用いて子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係を検討することである。研究Iでは, 小学4-6年生男子201名および女子200名を対象に, 子ども用身体活動行動変容段階尺度を開発し, その信頼性および妥当性を検討した。その結果, 子ども用身体活動行動変容段階尺度は, 高い信頼性および妥当性を示した。研究IIにおいて, 小学4-6年生男子213名および女子205名を対象に調査を行った。因子分析の結果, 子ども用身体活動の恩恵・負担尺度は9項目2因子構造 (「身体活動の恩恵」因子および「身体活動の負担」因子) であることが明らかになった。また, 子ども用身体活動の恩恵・負担尺度の信頼性および妥当性が確認された。研究IIIにおいては, 小学4-6年生男子202名および女子201名を対象に, 子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係を検討した。分散分析を行った結果, 身体活動の恩恵・負担尺度得点について, 身体活動の行動変容段階の主効果が認められた。不活動な子ども (無関心ステージ) は, 他の子どもに比べ, 身体活動の恩恵に対する知覚が弱く, 負担を強く知覚していた。標準得点を用いて, 身体活動の恩恵と負担の知覚の交差点 (恩恵の知覚が負担の知覚を上回るポイント) を検討した結果, 男子では「実行ステージ」, 女子では「維持ステージ」において認められた。本研究の結果から, 子どもにおける身体活動の行動変容段階と意思決定バランスの関係の一部が示された。
著者
只石 朋仁 鈴木 英樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11628, (Released:2019-09-30)
参考文献数
46
被引用文献数
1

【目的】高齢在宅パーキンソン病(以下,PD)患者45 名を対象に,生活空間の評価と関連する因子を検証した。【方法】評価項目はLSA,MDS-UPDRS part Ⅲ,転倒予防自己効力感尺度(以下,FPSE),10 m 歩行テスト,Timed up & go test とした。MDS-UPDRS part Ⅲの下位項目を振戦,固縮,無動,軸症状にそれぞれ割りあてた。LSA と各項目の関連性をスピアマンの相関係数で検討し,LSA を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。【結果】LSA に関連したのはFPSE(β = 0.39, p < 0.01)と軸症状(β = –0.54, p < 0.01)であり,自由度調整済み決定係数は0.66 であった。【結論】軽症から中等症のPD 患者において生活空間の狭小化にはFPSE と軸症状が関係していた。PD 患者の活動支援には軸症状に対する理学療法と,運動能力に見合った自己効力感を保つための心理的支援が必要と考える。
著者
只石 朋仁 鈴木 英樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.351-359, 2019 (Released:2019-10-20)
参考文献数
46

【目的】高齢在宅パーキンソン病(以下,PD)患者45 名を対象に,生活空間の評価と関連する因子を検証した。【方法】評価項目はLSA,MDS-UPDRS part Ⅲ,転倒予防自己効力感尺度(以下,FPSE),10 m 歩行テスト,Timed up & go test とした。MDS-UPDRS part Ⅲの下位項目を振戦,固縮,無動,軸症状にそれぞれ割りあてた。LSA と各項目の関連性をスピアマンの相関係数で検討し,LSA を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。【結果】LSA に関連したのはFPSE(β = 0.39, p < 0.01)と軸症状(β = –0.54, p < 0.01)であり,自由度調整済み決定係数は0.66 であった。【結論】軽症から中等症のPD 患者において生活空間の狭小化にはFPSE と軸症状が関係していた。PD 患者の活動支援には軸症状に対する理学療法と,運動能力に見合った自己効力感を保つための心理的支援が必要と考える。
著者
大野 大地 鈴木 英樹 水谷 良二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】厚生労働省による高齢者介護実態調査では,介護施設において入所し生活されている高齢者の中で,膝関節に拘縮をかかえ,さらにズボンの脱着動作に介助を要している者が過半数いることがわかっている。寝たきりの高齢者に対するリハビリテーションでは,主疾患に加え,加齢や寝たきりによる合併症状(視覚障害や難聴,認知症,覚醒レベルの低下など)がみられ,意思表示を含めた本人の主観的な疼痛や疲労感などを客観的な指標で把握することが困難とされている。寝たきりの高齢者にとって,急激な体動や疼痛によって起こる心肺反応は,急性心筋梗塞や脳梗塞の再発リスクになることがわかっている。しかし,日常的な介護に伴う心肺反応を客観的に測定した研究は少ない。そこで今回は,膝関節の伸展制限を有する寝たきり高齢者の下衣脱着動作介助に着目し,介助時の心肺反応の変化をみるとともに,関節可動域の変化が,それらの反応にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしたいと考えた。【方法】介護老人保健施設入所利用者の中で,65歳以上で且つ障害老人の日常生活自立度判定基準がB及びCランクに該当する者の中から,医師の指示のもとバイタルサインが安定しており膝関節に10度以上の伸展制限を有している者を対象とした。無作為に抽出した6名で研究を開始した。研究は,Single Subject design - ABA法を用い,非介入4週間,介入6週間,非介入4週間の全14週間を期間とした。計測項目は,膝関節の他動伸展可動域,下衣脱着動作介助に伴う対象者の血圧,脈拍,SPO<sub>2</sub>,呼吸数,マスク圧,介助にかかる所要時間,体動回数とし,介入の前後で比較した。体動センサーは,腹部に装着した。介助実施者は,施設内にて選定された対象者を日頃から担当していて,且つ介護経験5年以上の者とした。介入は,平均週2回の個別リハビリテーションの他に,膝関節の他動的な関節可動域運動(全可動域5回)とハムストリングスのストレッチ(60秒間)を1日2回(午前・午後)実施し,毎介入後は獲得された最終可動域で保持できるようポジショニングを1時間行った。以上の条件にて週5日間,計6週間実施した。【結果】介入前と比較し介入後は,「膝関節の他動伸展可動域」が拡大した。また,介入後は,下衣脱着動作介助時の「血圧(SBP,DBP,PP),脈拍,SPO<sub>2</sub>」が減少した。介助時の「呼吸数,マスク最大陰圧」においては増加した。「介助にかかる所要時間(脱ぎ,履き),体動回数」は減少した。【考察】下衣脱着動作介助時の「血圧(SBP,DBP,PP),脈拍,SPO<sub>2</sub>」が介入前と比較し,介入後に減少したことについて,膝関節の他動運動介入が要因として考えられるが,このことについて石田らは寝たきり高齢者に対する他動運動は循環機能を高め,精神的にも落ち着かせると考察している。また,「介助時の呼吸数,マスク最大陰圧」が介入後に増加したことについて,介入による循環機能の向上が要因として考えられるが,このことについて堀田らは活動する筋の酸素要求に応じて呼吸を調節する機能が運動開始直後にもあり,運動開始直後の呼吸数を高めることで酸素摂取量増加に影響すると考察している。そして,「介助にかかる所要時間(脱ぎ,履き),体動回数」が減少したのは,関節可動域が拡大したことがよりスムーズな脱着動作につながったと考えられ,これについて井手ら,小林らは,他動的に着衣させる場合においても関節可動域が重要であると報告している。【理学療法学研究としての意義】これまで,日常的な介護に伴う心肺反応を客観的に測定した研究は少ない。今回,膝関節の他動伸展制限を有する高齢者に対し,膝関節の他動伸展運動を行うことで,下衣脱着動作介助に伴う高齢者の血圧や脈拍,SPO<sub>2</sub>の変化を低下させる可能性があることが示唆された。また,関節可動域制限が軽減されることは,介助をする側にとっても介助をより安全でスムーズに進める上で重要な要因であると考える。
著者
辻 澄子 中村 優美子 外海 泰秀 柴田 正 内堀 伸健 川田 誠 小林 建夫 鈴木 宏 室井 順子 鈴木 由記子 兼田 登 鈴木 英樹 宮本 文夫 伊藤 誉志男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-123, 1990
被引用文献数
2 6

農産物39種類195試料,水産物23種類115試料及び畜産物8種類40試料の生鮮食品合計70種類350試料並びに農産加工品58種類331試料,水産加工品38種類323試料,畜産加工品19種類147試料,菓子類18種類90試料,嗜好飲料31種類250試料,油脂・砂糖・調味料など15種類75試料及び調理加工食品11種類55試料の加工食品合計180種類1271試料中のH<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>を酸素電極法により測定した. <BR>生鮮食品70種類中,H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>を含有していない食品は56種類であり,平均値として1mg/kg未満のものが9種類であり,1mg/kg以上のものはピーナッッ(乾)(3.3mg/kg),カレイ(1.7mg/kg),ホタテ貝(4.0mg/kg),ホタルイカ(3.4mg/kg),及びカニ(1.2mg/kg)の5種類であった. <BR>一方,加工食品188種類中,H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>を含有していない食品は47種類であり,平均値として1mg/kg未満が82種類,1~5mg/kgの範囲の食品が41種類であり,5mg/kg(以下単位省略)以上の食品としては甘らっきょう(5.7),干ししいたけ(7.4),いかなご佃煮(9.1),焼のり(8.9),ひとえぐさ佃煮(7.8),乾燥ひじき(8,5),玉露(葉)(6.7),煎茶(葉)(6.2),玄米茶(葉)(6.4),番茶(葉)(6.4),ほうじ茶(葉)(30.4),紅茶(葉)(18.0),ウーロン茶(葉)(35.3),麦茶(45.0),コーヒーいり豆(140.3),インスタントコーヒー粉末(368.5),ココア(62.8),こいくちしょうゆ(7.6)の18種類であった.茶類及びコーヒー類は飲用状態ではいずれも5mg/kg以下となった. <BR>調理による食品中のH2O2含有量に対する影響について,加熱調理では,H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>量の増加傾向が,水もどし調理では,干ししいたけ以外はH2O2量の減少傾向が示された. <BR>従って,H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>含有量は調理方法により大きく変化することが判明した. <BR>更に,干ししいたけのように,水もどしすることにより,H<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>量が増加傾向を示し,ばらっきも大きいことから,しいたけ成分からのH<SUB>2</SUB>O<SUB>2</SUB>生成の可能性が示唆された.