著者
永原 陽子 鈴木 茂 舩田クラーセン さやか 清水 正義 平野 千果子 中野 聡 浜 忠雄
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、「植民地責任」という従来の歴史学になかった概念を試論的に提示し、脱植民地化研究におけるその可能性を探った。「植民地責任」論は、かつて植民地支配を受けた地域の人々から近年になって出されている、植民地支配にかかわって生じた大規模暴力に対する謝罪や補償への要求等の動きを、歴史学の問題として受け止めたものである。そこでは、植民地体制下、あるいは植民地解放戦争などの中でおこった大量虐殺等の大規模暴力が、「戦争責任」論において深化・発展させられてきた「人道に対する罪」として扱われている。そのような趣旨の訴訟等を比較検討した結果、植民地支配の歴史をめぐって、主体に解消されない、「個人」や「民族」主体、その他様々なアクターが形勢してきた新たな歴史認識を見て取ることができた。植民地主義の歴史にかんするこうした新たな歴史認識は、植民地支配の直接の前史としての奴隷貿易・奴隷制にも及ぶものである。こうした歴史認識・歴史意識の変化は、政治的独立とは別の意味での「脱植民地化」現象ととらえることができる。このことから、本研究では、「植民地責任」論を「脱植民地化」研究を主体論的にとらえるための方法と位置づけた。植民地体制下の大規模暴力の少なくない部分は、「人道に対する罪」に代表される、「戦争責任」論の論理によってとらえることが可能である。しかし、そのような法的議論が対象とすることのできない歴史的現象、また「罪」の指標には該当しない、日常化した植民地体制の問題も、植民地支配を経験した人々の生にとってはきわめて重要なことであり、本研究は、「平時」と「戦時」の連続性の中において大規模暴力を理解し、それを通じて、脱植民地化を16世紀以降の長い世界史の中でとらえ直すための方法として「植民地責任」論を提示し、その有効性を確認した。
著者
太田 重久 鈴木 博孝 鈴木 茂 福島 靖彦 喜多村 陽一 勝呂 衛 山下 由起子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1103-1104, 1987-09-25

東京女子医科大学学会第271回例会 昭和62年6月11日 弥生記念講堂
著者
立石 博高 相馬 保夫 佐々木 孝弘 金井 光太郎 鈴木 茂 鈴木 義一 新井 政美 藤田 進
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、文明の「辺境」と「マイノリティ」の生成を、近代ヨーロッパにおける市民社会の形成のメカニズムと関連させながら歴史的に解明することにある。平成17年度は、文献資料・文書館資料の収集(アメリカ合衆国、中東地域)、国際ワークショップ(イタリアの研究者)、および国際シンポジウム(アテネ、ポーランド、エストニア、デンマークの研究者)を共に東京外国語大学において開催し海外の研究者との研究協力関係の構築に努めた。平成18年度は、前年の研究成果にたち各種の研究会、国際シンポジウム(チェコ、ウクライナ、ポーランドの研究者)を東京外国語大学で開催し、また、およびチェコ・プラハで国際ワークショップを開催し、現地の研究者とともに、本科研研究代表者・分担者が報告等を行う同時に同地での文献資料・調査研究を精力的に行った。平成19年度は、本科研最後の年にあたるため、それまでの研究成果をまとめ、さらにそれを発展させるために、東京外国語大学海外事情研究所において市民社会論に関する研究会を開催し、国内から二名研究者を招請、ヨーロッパ市民社会とその周縁に存在する諸社会との比較・再検討が今日的視点から行なわれた。またスペイン・バルセローナとポンペウにおいて国際ワークショップを開き、「近現代ヨーロッパとアメリカ・ロシアの『市民権』」「ヨーロッパの国民形成と『市民社会』」等のテーマに関して本科研のメンバー及び同地の研究者が報告、議論するとともに、資料収集と現地調査を行った。また11月から2月にかけ本科研の成果である『国民国家と市民』(山川出版社、2008年11月出版予定)の準備研究会を東京外国語大学海外事情研究所で行った。これらの研究報告会、ワークショップ、シンポジウムなどは、本課題を解明し、検討・発展させるための有意義な場となり、その成果は、各年度の海外事情研究所『クァドランテ』(No.8〜10)成果報告書ならびに上記の論集で示されるであろう。
著者
片柳 憲雄 武藤 輝一 田中 乙雄 鈴木 力 藍沢 喜久雄 西巻 正 田中 陽一 武藤 一朗 武田 信夫 田中 申介 鈴木 茂 田中 典生 藪崎 裕 大森 克利 多田 哲也 鈴木 聡 大日方 一夫 曽我 淳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.968-976, 1991-04-01
被引用文献数
18

1989年末までの22年間に経験した食道癌症例814例のうち,他臓器に重複癌のある64例(7.9%)を対象として,手術術式,治療成績を中心に検討した.同時性2臓器重複癌は37例,異時性2臓器重複癌では食道癌先行が10例,他臓器癌先行が11例あり,3臓器以上の重複癌も6例に認めた.同時性重複癌の重複臓器は胃が25例と圧倒的に多く,このうち16例は早期胃癌であった.胃癌合併例では,早期癌が胃管作製時の切除範囲に含まれる場合を除いて胃全摘,結腸による再建を原則とした.同時性重複癌の両癌切除例の5生率は34.6%であり,少なくとも一方が非切除であった症例に対して有意に(p<0.05)良好であった.さらに,食道癌治癒切除例の予後は,5生率58.3%とほぼ満足できる成績であった.治療成績向上のためには,重複癌の存在を念頭においた診断と,両癌の治癒切除を目指した積極的な手術が重要であると思われた.
著者
高崎 健 小林 誠一郎 鈴木 茂 鈴木 博孝 武藤 晴臣 原田 瑞也 戸田 一寿 済陽 高穂 山名 泰夫 長岡 巍 朝戸 末男 林 恒男 喜多村 陽一 平山 芳文
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.759-765, 1980-07-01
被引用文献数
16

食道静脈瘤に対する直達手術としての食道離断術には, 経胸的, 経腹的の二通りの方法がある. この両術式は単に食道離断を胸部で行うか, 腹部で行うかといった差ではなく, 血行郭清の考えか方に大きな相違がある. しかしながら一般にはこの点について誤解があると思われ, 経腹的な方法では血行郭清が不十分であると思われているむきがある. われわれの経腹的食道離断術100例の成績は手術死亡6例, 再出血は6例であるが, 血行郭清に改良を加えた最近の58例には再吐血は認められておらず, 経胸的方法にくらべ何ら遜色ない術式であると考え, 食道静脈瘤の成り立ちより考えた両術式の血行郭清の相違点につき明らかにしたい.
著者
小林 誠一郎 高崎 健 浜野 恭一 山田 明義 鈴木 茂 青木 暁 武藤 晴臣 原田 瑞也 秋本 伸 岩塚 迪雄
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.686-690, 1977-11-30

腸管吻合器の消化管手術分野への応用について, 私どもの58例の臨床経験を述べた. 食道静脈瘤に対する食道離断術, 食道癌に対する食道胃吻合術 (胸壁前および胸腔内吻合) 噴門部癌に対する食道空腸吻合術, 直腸結腸病変に対する低位前方切除術などに関して, その利用方法, 手術手技について略述した. 器械を用いることの利点としては, 吻合の確実性, 手術時間の短縮, ひいては手術侵襲の軽減などがあげられよう. とくに下部食道噴門部癌に対する経腹的操作のみによる, 縦隔側高位での食道切離食道空腸吻合術については, 吻合器使用の良い適応であると考えている.