著者
小西 省吾 高橋 啓一
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.3-18, 1999-01-25
被引用文献数
2

日本産のステゴドン属であるアケボノゾウとシンシュウゾウの下顎骨の特徴を検討した.また6種のステゴドン属と5種のゾウ亜科についても比較検討した.比較のための形質には,主に下顎結合の正中断面と下顎体の横断面を用いた.ゾウ亜科との比較から得られたステゴドン属の下顎骨の特徴は次の通りである.1)ステゴドン属の下顎体の横断面はゾウ亜科よりもほっそりしていて,下顎体の外側面は膨らまない.2)下顎体の内腹側に溝がみられる.3)下顎結合の正中断面は種によって変異があり,その多くは前後に長い.4)下顎角は膨らまない.5)M2段階以前では先行歯と後継歯が同じ面に位置する.これらの特徴は,ステゴドン属の下顎骨が長いことと関係する.一方,アケボノゾウの下顎骨の特徴として以下の点が挙げられる.1)前縁が立つ.2)下顎結合の正中断面はステゴドン属の他の種よりも前後に短い.3)M1段階の標本では後継歯が先行歯の後下方に位置する.4)第3大臼歯の舌側への湾曲は強い.これらは,アケボノゾウでゾウ亜科にみられたような下顎骨の前後短縮がすすんでいることを示す.また,シンシュウゾウはツダンスキーゾウに比べて下顎骨の前後短縮が進んでいる.このことから,両者は別種であると考えられる.
著者
蔡 保全 高橋 啓一
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 = The Quaternary research (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.427-439, 2003-12-01
被引用文献数
2

台湾,チベットを除く中国南部(99°~122°E,21°~32°)の後期旧石器時代(40,000~9,000年前)における文化と環境の関係について,従来の研究をまとめた.<br>石器などの文化遺物に基づいて,この時代の中国南部は5つの文化地域に分けることができる.それらは,雲南-貴州高原地域(Yunnan-Guizhou Plateau Region),西四川高原地域(West Sichuan Plateau Region),四川盆地-長江南部丘陵地域(Sichuan Basin-the Hilly Regions south of the Yangtze River),長江の中・下流平野部(The Plain of the Middle and Lower Reaches of the Yangtze River),五嶺南部地域(the Area south of Wuling)である.一方,この地域の中~後期更新世の地層からは,ステゴドン-パンダ動物群が発見されているが,それらもまた地域ごとに動物種の組み合わせが異なっている.動物群集の違いは,おもに温度や湿度,緯度や高度とも関係して起こっている.<br>この論文では,5つの文化地域で見られる道具の特色の違いが,動物相の違いとよく一致していることを紹介した.<br>例えば,西四川高原地域は高度が高く,中国南部の中ではやや高い緯度に位置する.ここでは,ステゴドン-パンダ動物群は見られず,中国北部の動物相と北部と南部の遷移的な動物相が見られる.発見された動物種は,比較的冷涼で乾燥した草原性のものが多く見られる.この地域で見られた2万年前ごろの富林文化(Fulin Culture)では,狩猟生活を中心としており,その道具には小さなスクレイパー,尖頭器,彫刻刀などを使い,チョッピングツールを欠いていた.<br>緯度的にも低く,高度も低い五嶺南部地域には,典型的なステゴドン-パンダ動物群が生息していた.亜熱帯南部の気候で,高い温度と湿度があった.35,000~26,000年以上前と18,000~9,000年前の2つの時代に分けられているが,人びとの生活は狩猟よりも採集生活が中心であったため,大形のチョッパーが重要であった.<br>先にあげた2つの地域の間にある雲南-貴州高原地域では,ステゴドン-パンダ動物群の要素が45%ほど見られたが,それはこの
著者
平山 廉 藤井 明 高橋 啓一
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.80, pp.17-20, 2006-09-28

A partial skeleton of Mesodermochelys undulatus Hirayama and Chitoku, 1996 (Testudines: Chelonioidea: Dermochelyidae), with carapace estimated as 1.3m long, was collected from the Late Cretaceous (early Late Campanian) Izumi Group at Shionoe, Takamatsu City, Kagawa Prefecture, Western Japan. This occurrence supports the presence of highly localized sea turtle fauna dominated by Mesodermochelys in the sea adjacent to Japan during the Late Cretaceous.
著者
高橋 啓一 添田 雄二 出穂 雅実 青木 かおり 山田 悟郎 赤松 守雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.169-180, 2004-06-01
被引用文献数
1 8

1998年8月に北海道網走支庁湧別町の林道脇の沢から発見されたナウマンゾウ右上顎第2大臼歯化石の記載と,気候変化に伴ってマンモスゾウとナウマンゾウの棲み分けが北海道で入れ替わった可能性を報告した.臼歯化石の年代測定結果は30,480±220yrs BP(未補正<sup>14</sup>C年代値)であった.臼歯が発見された沢には,臼歯化石の年代とほぼ同じ時代に噴出した大雪御鉢平テフラ(Ds-Oh)を含む地層が分布していることから,この臼歯はこの沢に堆積する地層から洗いだされた可能性が高いと推定した.<br>今回の標本も含め,これまで北海道で発見されているナウマンゾウとマンモスゾウの産出年代およびその当時の植生を考えると,地球規模の気候変動とそれに伴う植生の変化に合わせて,2種類の長鼻類が時期を変えて棲み分けていたことが推定された.同時に,約3万年前のナウマンゾウ化石の発見は,MIS3の頃の北海道にナウマンゾウが津軽海峡を渡って来ることができたか,どうかという議論の一材料を提供することとなった.
著者
北川 博道 瀬戸 浩二 高橋 啓一
出版者
島根大学
雑誌
島根大学地球資源環境学研究報告 (ISSN:13439774)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.31-47, 2006-12-27

In this paper, we describe 75 tusks and post-cranial skeletal elements of Palaeoloxodon naumanni that were recovered from the sea floor around Moroshima Island in the western Seto Inland Sea of Japan in 1956 and 1957, and discuss their significance.13;These specimens are particularly valuable from the biogeographic and morphological viewpoints due to their locality and the details of their discovery. A sacrum(MO 560929-1126)recovered among these specimens is the first report of a sacrum of P. naumanni. An atlas(MO 560929-1117)and a humerus(MO 57-1112)are also compared with those of previously reported well-preserved specimens of P. naumanni. Although the features of the humerus are comparable with those of P. naumanni humeri reported from other areas, the atlas differs from a Lake Nojiri specimen. The differences between the two specimens are most likely attributable to intraspecific variation.
著者
齊藤 文則 高橋 啓介 鳥尾 哲矢 桑沢 安行 野本 智永
出版者
The Japanese Society of Lumbar Spine Disorders
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.85-90, 2006

【目的】骨粗鬆性椎体偽関節に対する経皮的骨セメント椎体形成術の治療報告. 【対象】症例は15例16椎体, 罹患高位は胸腰椎 (T11~L2) 15椎体, 腰椎 (L3) 1椎体. 男性2例, 女性13例, 平均年齢73歳. 経過観察期間は平均29カ月. 遅発性脊髄麻痺を7例に認めた. 【結果】手術時間は平均42分. 術中, 術後の全身合併症はない. 術直後, 全例腰背部痛は改善. 遅発性麻痺例も全例軽快 (MMT 1~2→3~5). 経過中, 隣接椎の圧潰を63%に認めた. 1年以上の経過観察例で, 注入椎は隣接椎体間で架橋形成を認めた. 【考察】本法は手術時間も短く, 疼痛も劇的に改善し有用である. しかし, 多くの症例で隣接椎の圧潰を認め問題である. また, 骨セメントに骨親和性がなくとも注入椎は周囲の架橋形成で安定化した. 遅発性麻痺例では椎体形成術のみで麻痺の改善が得られることから, 麻痺の発生には偽関節部の動的圧迫の要素が強いと考えられた.