- 著者
-
藤井 篤
- 出版者
- 中央大学
- 雑誌
- 法學新報 (ISSN:00096296)
- 巻号頁・発行日
- vol.121, no.11, pp.715-728, 2015-03
平成一一年に始まった司法制度改革は、裁判員裁判制度の創設をはじめ司法制度の全般にかかわる大改革となった。弁護士制度の改革の内容は多岐にわたるが、弁護士懲戒制度はその根幹を維持しつつも、大きな変容をとげた。懲戒手続の第一段階となる綱紀委員会の手続に綱紀審査会を設け法曹でない学識経験者が審査する制度としたこと、従来弁護士のみが委員となっていた綱紀委員会に裁判官、検察官、学識経験者からなる外部委員を加えたこと、懲戒手続開始の時期を綱紀委員化の手続にふしたときとし明確にしたこと、懲戒請求権者の異議申出の制度が明確になったことなどがある。制度改正により弁護士に対する懲戒の制度は透明性を増したとされているが、その後、弁護士の不祥事は減少せず、増加している。特に依頼者から預かった金銭の横領に関する事件は、高齢化した弁護士、経営状態が悪化した弁護士などにより度々に引き起こされている。 弁護士の懲戒制度の位置づけをとらえ直しその制度を実効性のあるものとし、国民の信頼に応えられる弁護士をどのように形成して行くのかを模索する論考である。