著者
太田 美里
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.1010-1011, 2017

2013年から2年間,中国北京大学薬学院に博士研究員として在籍した時の体験談である。中国では博士研究員修了は博士号取得後の一つの経歴として重要視されており,登録から修了までの過程を述べた。滞在時には苦労した点が多く,実体験をそのまま記した。一方,中国の実験室は様々な機器が揃っており,実験環境が素晴らしい。また,中国の病院の生薬を用いた処方の調剤の様子を見学できたのでその実情について紹介した。
著者
阿部 誠治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.346-347, 2018

2014年6月より2年間、米国ニューヨーク州に留学してきた。研究は統合失調症や自閉症に関する基礎研究でマウスを使った動物実験が主な内容であった。初めての海外生活、実験内容もほとんど初めてということもあり、なかなか上手くいかなかったが、徐々に慣れてきて何とかこなすことができた。留学を通して得られた物は多くあり、多くの方に海外での挑戦をして欲しいと思う。
著者
岸本 堅太郎
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.53_3, 2019 (Released:2019-01-01)

米国で民間保険会社から委託を受けたPBM(薬剤給付管理会社)が作成する医薬品の推奨リストのこと.通常は,①競合のない医薬品,②競合のある中で推奨される医薬品(臨床上の有用性,リベートなど),③競合のある他の医薬品,④後発医薬品に4分類されることが多い.また,全ての医薬品が収載されているわけではない.日本の薬価基準と違い,価格は載っていない.
著者
太田 茂
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.101, 2019 (Released:2019-02-01)

薬学教育が6年制の薬剤師養成課程を設けてから基礎系科目における教育はどのように変化してきたであろうか。またどのように変革すべきであろうか。基礎系科目について、臨床応用を意識しながら講義を行うことは重要であるが、それとともに学生が基礎系科目で得た知識を臨床現場において自発的に展開できる能力を培うように導くことも留意すべきであると思われる。
著者
大和 孝江
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.97-100, 2019 (Released:2019-02-01)

大塚グループの発祥会社である株式会社大塚製薬工場(徳島県鳴門市)の本社敷地内には、輸液の歴史、技術、製品を一堂に展示した輸液ライブラリーがあります。1940年頃のナス型と呼ばれるガラスアンプルから現在のソフトバツグに至るまでの輸液容器の変遷、現在の輸液製造のフローパネル、医療施設を再現した無菌調剤研修室などを展示しています。また、同敷地内には当社最初の事務所(兼)研究室であった施設もあります。
著者
二橋 亮
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1086-1090, 2014

江戸時代の浮世絵にも描かれている「アカトンボ」は,日本人にとって最も馴染みの深い昆虫の1つといっても過言ではないだろう.童謡の「赤とんぼ(作詞:三木露風,作曲:山田耕筰)」は,ほとんどの人が口ずさむことのできる数少ない歌の1つであり,青空を群れ飛ぶアカトンボは,秋の訪れを告げる風物詩としても馴染みの深いものといえる.<br>日本人なら誰もが知っているアカトンボであるが,かつて日本や中国では,漢方薬として使用されていたことをご存じだろうか.ナツアカネやショウジョウトンボなど,特に赤みの強いアカトンボが,百日咳や扁桃腺炎,梅毒などに効果があると信じられていたのである.戦後もアキアカネやナツアカネの成虫を乾燥したものが薬局で売られているという紹介記事が出ており,緒方らは,ナツアカネとアキアカネを材料に,「赤蜻蛉成分の研究(第一報)」という論文を1941年の薬学雑誌で発表している.ちなみに,この論文ではアカトンボの具体的な成分が同定されたわけではなく,その後続報が発表されることはなかった.それでも,この論文の存在は,アカトンボの薬効成分に着目した研究があったことを伺わせるものである.<br>最近では,トマトの赤色色素であるリコペン(カロテノイドの一種)や,イチゴの赤色色素であるアントシアニン(フラボノイドの一種)に,強力な抗酸化能があることから,疾病に対する予防効果があるとも言われている.これらの例をみると,真っ赤なアカトンボの赤色色素も,もしかすると本当に健康に良いのかもしれないと思えてくる.その前に,そもそもアカトンボの赤色の正体は何であろうか.
著者
張 音実
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.472, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
3

ヒトの腸管,皮膚,口腔あるいは膣などの様々な部位には,多種多様な微生物(細菌と真菌)が常在している.これは“微生物叢(microbiota)”と呼ばれ,いわば微生物の集団社会である.この微生物叢は宿主と絶妙な相互作用を示しながら,宿主の健康維持や感染防御などに寄与している.しかしながら,微生物叢の構成バランスが破綻すると疾患へ進展することがある.例えば,炎症性腸疾患,大腸がん,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎,気管支喘息,糖尿病や歯周病では,患者と健常人ではその微生物叢は大きく異なることが示されている.乳がんは,乳管や小葉上皮から発生し,その発生には女性ホルモンであるエストロゲンが関与すると考えられているが,不明な点も多い.Urbaniakらはヒトの乳房組織にも微生物が存在し,乳がん患者と健常人では異なる微生物叢が形成されていることを発見した.これは,乳がんの発症には特定の微生物が関与している可能性を示唆するものである.本稿では,乳房組織の微生物叢と乳がん発症の関連性に関する論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Muszer M. et al., Arch. Immunol. Ther. Exp., 63, 287-298(2015).2) Urbaniak C. et al., Appl. Environ. Microbiol.,82, 5039-5048(2016).3) Hieken T. J. et al., Sci. Rep., 6, 30751(2016).
著者
新薬紹介委員会
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.343, 2018

本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.<br>本稿は,厚生労働省医薬安全局審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される"新医薬品として承認された医薬品について"等を基に作成しています.今回は,平成30年1月19日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.<br>なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
著者
笹井 泰志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.89, 2016

私が学生だったおよそ20年前と比較して,研究機器は目覚ましい進歩を遂げている.私よりも年上の方々からすれば,その変化に対する驚きはなおさらのことと思われる.機器そのものの性能も上がり,分析できなかったものが分析できるようになったり,見えなかったものが見えるようになった時には大いに感動した.また,多くの操作がソフトウェアで制御できるようになり,特別なテクニックを必要とせず,プチッ,プチッと幾つかクリックするだけでデータが取れるようになった.そして,海外メーカーの機器でさえ,日本語に対応したマニュアルやソフトウェアを提供しており,誰もが気軽に使用できるようになった.これらは我々研究をする者にとって,もちろん素晴らしいことである.
著者
苅谷 嘉顕 本間 雅 鈴木 洋史
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.415-419, 2018 (Released:2018-05-01)
参考文献数
11

分子標的薬は、副作用発現により治療中断となる場合があり、副作用機序解析や予測の基盤確立は大きな課題である。生体を多階層システム的に捉える手法には、チロシンキナーゼ阻害薬の副作用解析など複数の成功例があり、システムファーマコロジー手法は副作用解析に有効と考えられる。現在、in silico解析を含む様々な手法が開発されつつあり、システムファーマコロジーに基づく副作用解析や予測は更なる発展が期待される。
著者
小西 英之 眞鍋 敬
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.310-314, 2014 (Released:2016-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

一酸化炭素(CO)は有機合成において最も重要な一炭素源として,古くから現在に至るまで実験室や工業プロセスに広く用いられている.しかしCOは無色無臭の気体であり,人間にはその存在が感知できず,さらにはわずか0.1%という低濃度ですら生命を脅かすほど危険な化合物でもある.このような高い毒性を有するCOは,入手容易ではあるが非常に扱いにくい物質であり,実験化学者たちもなるべく使いたくないというのが本音である.このような背景のもと,毒性の高いCOガスに代わる安全なCO等価体の開発を望む声が自然と高まってきた.実際,過去20年ほどで様々なCO代替品が発見されており,それらを用いる有機合成反応も数多く報告されている.筆者らは,ギ酸エステル等のギ酸誘導体が温和な条件下でCOを発生できることを見いだし,それを従来のCOガスの代わりに利用する実用的な有機合成反応の開発を行ったので,ここに紹介する.
著者
井本 大介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1145-1149, 2018

WHOが指定する顧みられない熱帯病(NTDs)と、それに対する新薬を開発する研究開発型NPOであるDNDiの成り立ち、DNDi日本事務所の役割を概説。NTDsに対するこれまでの日本の貢献と、より広い国際保健の分野における国際社会の潮流、日本政府の方針・戦略につき述べた後、スーダンで実施中のマイセトーマに対する臨床試験を例に、NTDs対策において具体的に求められる行動を考察した。
著者
林 周作
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.820, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
3

潰瘍性大腸炎は,大腸粘膜にびらんや潰瘍を形成する原因不明の慢性炎症性疾患であり,近年急速に患者数が増加している一方で,既存の治療薬に対して抵抗性を示すことが多く,新規で有用な治療薬の創出が求められている.青黛は,リュウキュウアイやホソバタイセイ等の植物から得られる生薬で,国内では藍染めの染料として用いられている.中国では以前から,潰瘍性大腸炎患者に対して青黛を含む中医薬が処方されており,我が国で行われた臨床試験においてもその有効性が示されている.そこで本稿では,これまで十分に解明されていない青黛の潰瘍性大腸炎に対する有効性メカニズムに関して,Kawaiらが行った最近の研究成果について紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Sugimoto S. et al., J. Gastroenterol., 51, 853-861(2016).2) Kawai S. et al., J. Gastroenterol., in press.3) Medina-Contreras O. et al., J. Immunol., 196, 34-38(2016).
著者
鹿角 契
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1140-1144, 2018 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13

グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、日本政府、日本の製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団等の共同出資によって設立された、グローバルヘルスR&Dに特化した日本発の非営利・国際機関であり、途上国で蔓延する感染症に対する治療薬、ワクチン、診断薬の研究開発を支援している。これまでに74件のプロジェクトに対して総額約132億円の投資を行い、8件が既に臨床試験段階に入っている。今後日本が感染症に対抗すべく創薬開発をさらに推進し、保健医療の面から国際的貢献を果たしていく役割は極めて大きい。
著者
小林 資正
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.554_1, 2014

大学紛争の終わり頃に大学に入学した私は,大学改革を求める(?)学生による大学封鎖やそれを解除するために導入された機動隊との衝突に訳も分からず熱くなったことが懐かしい.私が受けた講義についてはもうほとんど記憶になく思い出されるのは,講義時間の大半が製薬企業におられた頃の経験談だった先生の講義や,ひたすら板書されたことをノートに書き写すことに必死だった先生の講義があったことぐらいである.<br>楽しかったのは,3年次の午後にあった基礎実習である.ガラス細工に始まり,化学合成,ネズミの解剖,電気配線などいろいろと科学実験を経験させていただいたが,いつも誰よりも早くその日に課せられた項目の実験を達成しようと1人競争心を燃やしたものだった.4年生になると研究室に配属され,結果の見えない研究テーマをいただいて研究者の仲間入りをさせていただいた.結果が導き出されることが分かっている学生実習と違い,研究というのは単純な作業の積み重ねだけでは展開せず,試行錯誤の繰り返しにより見いだした工夫が成果を生むことから,興奮し面白さを体感することができた.<br>ひたすら大学入試の勉強のために費やしてきた高校時代を取り返すために,大学に入ってからは休みになったらあちこち旅行に出かけたり友達と麻雀したりして遊んでいたが,このまま卒業したのではつまらないと思うようになり,もっと研究がしたくて大学院に進学した.<br>その後,大学に居残って大学教員になり,あと数年で定年退職を迎えようとしている.その間,いろいろな制度の改革があり,大学教育も大きく見直されてきた.シラバスの作成,授業アンケート,アドミッションポリシー,薬学教育モデル・コアカリキュラム,安全管理業務,大学評価や教員の個人評価のほか,6年制の薬学科においては薬剤師養成のための共用試験制度や実務実習制度などなど枚挙にいとまがない.その結果,書類作りや教育業務がどんどん増えて,先生方にとってかなり負担になってきているのではと心配する.この先生方のご苦労が報われて,若き優秀な研究者が数多く育って欲しいものである.