著者
稲冨 徹 福地 君朗 三上 正憲 小松崎 早子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.161-163, 2012-04-10

要約 背景:フィナステリド(プロペシア®)はテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを阻害することで,男性型脱毛(androgenic alopecia:AGA)に対し有効性を示す.方法:フィナステリド内服歴が6か月以上の成人男性AGA患者34例を対象に,内服による頭毛,体毛の変化についてアンケート調査した.結果:平均年齢は44歳,フィナステリドの平均内服期間は1mg/日×18か月であった.体毛が濃いと感じているのは対象患者群の50%に当たる17例であり,濃い部位は下腿や髭が多かった.AGAへの効果は,やや改善以上が全体で34例中21例,62%だった.やや改善以上の比率を体毛の濃さによって比較すると,濃い群では15/17例(88%)だったのに対し,薄い群では6/17例(35%)と有意差をもって濃い群でフィナステリドの有効性が高かった.フィナステリド内服によって体毛への影響を感じた患者はいなかった.結語:AGA患者の約半数は髭やすね毛が濃く,またそれらの体の濃いほうがフィナステリドのAGAに対する有効性が高い.
著者
夏秋 優
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.149-152, 2014-04-10

要約 マダニ刺症において,咬着したマダニ虫体を除去するには局所麻酔下で皮膚ごと切除するのが確実である.ワセリン法は咬着中のマダニ虫体を被うようにワセリンを載せて,約30分後に異物鑷子で除去する方法である.マダニ幼虫であれば比較的容易に,若虫や成虫では咬着後早期であれば除去できる可能性があるので,試す価値がある.マダニが媒介する感染症には注意が必要であるが,マダニ除去後,感染症予防のための抗菌薬は一律に投与するのではなく,必要に応じて判断するべきである.
著者
鄭 柄貴 松尾 正文 芦田 雅士 大橋 明子 市橋 正光
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.773-775, 2003-08-01

19歳,女性.歯科にて抜歯後ショック症状があった.抜歯時に消毒に用いたイソジンのスクラッチテストが陽性であり,ポリビニルピロリドン(PVP)のスクラッチテストも100倍希釈まで陽性であった.数名の健常人では陰性であり,PVPによるⅠ型アレルギーと診断した.イソジン®の有効成分であるポビドンヨードはヨウ素とPVP より構成されている.PVPは安定,可溶,粘稠などの目的のために多くの製品に含まれる.とりわけ眼,口腔内など吸収が良く症状が誘発されやすい部位に用いる医薬品が多いので注意が必要である.
著者
嶋 聡子 磯田 憲一 水谷 仁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.145-147, 2005-04-01

要約 近年,身のまわりの化学物質の種類の増加やオフィス,住宅における建材の変化,気密性の増強などに伴い,種々の症状を訴える人が増加し社会問題となっている.これらの病態に対して化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity;MCS)という概念が提唱され,基礎および臨床面からその対応が迫られている.MCSの最大の原因物質としてホルムアルデヒド(FA)が問題視されているが1),本稿では多量の新製品パーソナルコンピュータ(PC)を設置した室内で新たにアレルギー様症状を呈した1例を提示する.そして,FA室内濃度の測定結果を踏まえ,PCから排出されたFAと関係すると考えられたため,新たにPCアレルギーという概念を提唱するとともに,今後FAも含めMCSのさらなる解明とPCを含めた環境基準の設定を期待する.
著者
稲津 美穂子 四津 里英 玉木 毅 的野 多加志 加藤 康幸 林 利彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.988-991, 2015-12-01

要約 21歳,女性.東アフリカ・ウガンダ共和国に2週間滞在した.帰国から10日後,右母趾爪郭の疼痛,皮疹に気づいた.右母趾爪郭に径5mm大の緊満性の黄白調小結節が1か所あり,粟粒大の黒色点が透見された.臨床所見,スナノミ症の流行地への渡航歴より,スナノミ症を疑い摘出した.実体顕微鏡にて虫体,虫卵の充満した卵巣が確認され,虫体はTunga penetransと同定された.当院では,2009年10月〜2013年10月の4年間に,自験例を含め計6例のスナノミ症患者が受診している.グローバル化に伴い,日本でも今後症例数の増加が予想される.
著者
野村 房江
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.1161-1166, 1969-11
被引用文献数
1
著者
林 光葉 小林 光 伊東 慶悟 谷戸 克己 石地 尚興 上出 良一 中川 秀己
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.949-954, 2012-11-01

要約 症例1:72歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その2か月後から両側乳頭部に疼痛が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で両側乳頭直下に円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止し,約1週間で乳頭部の疼痛は軽減した.病理組織像では乳管上皮の増生や断頭分泌を伴うアポクリン化生を認めた.症例2:83歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その1か月後から両側乳頭部に硬結が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止後約1週間で乳頭部の疼痛は軽減したが,皮下硬結は4か月後も残存していた.病理組織像では乳管上皮の増生を認めた.5α還元酵素阻害剤の副作用としての女性化乳房は広く認識されるべきである.
著者
岩澤 うつぎ 宮川 かおり 柿沼 寛 鈴木 啓之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.35-38, 1995-01-01

43歳,男.約20年来,尋常性乾癬と診断され加療されていた.当科初診の10カ月前より関節の腫脹,疼痛,運動制限が出現.皮疹の性状と病理組織所見,およびリウマチ血清反応陰性を示す関節症状を併せて関節症性乾癬と診断した.関節痛増悪のため入院,メソトレキセートの少量間歇投与を試みたが効果なく,サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)に変更したところ関節症状は軽快し,通常の生活および職場復帰が可能となった.サラゾスルファピリジンの関節痛に対する作用機序など若干の考察を記した.
著者
高木 章好 梶田 哲 豊田 典明 山本 明美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.148-151, 2000-04-15

ウイルス性疣贅の一型である尋常性疣贅の中には液体窒素による凍結法などに反応せず,治療に苦慮する症例がある.今回我々はモノクロロ酢酸による腐食療法を行い,本法が安価で簡単,安全かつきわめて有効な治療と思われ報告する.方法は,少量のモノクロロ酢酸飽和水溶液を楊枝の先で直接疣贅に塗布し(疣贅上に付着した液を数回軽く突くようにして疣贅内に浸透させるが,周囲に流れないように気をつける),乾燥を確認し帰宅させ,処置した日は入浴をさける.原則とし1週間に1度の間隔で施行した.結果は,1998年1月から6月まで総数377例,男171例,女206例に施行し,最年少は2歳男児,最高齢は83歳女性であった.ほとんどの症例で著効または治癒し,不変,悪化は足底で1.8%,手背は0.6%であった.
著者
坪井 良治 田嶋 麿美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.133-136, 2006-04-01

要約 マラセチア(Malassezia)は,1996年,Guéhoによる再分類やその後のSugitaらによる新菌種の報告などで11菌種に分類されている.鱗屑から直接,菌由来DNA配列を検出することによりマラセチアの同定が可能になったことから,健常人や各種皮膚疾患において複数の菌種が同一部位に定着し,病態に関与していることが明らかになってきた.これまでの研究結果から,癜風やマラセチア毛包炎はマラセチア感染症といえるが,脂漏性皮膚炎はマラセチアが発症に深く関与した疾患であり,アトピー性皮膚炎では増悪因子の1つであると考えられる.また,痤瘡,酒さ様皮膚炎,ステロイド外用薬長期使用中の皮膚炎にも関与している.これらのマラセチア感染症や関連疾患に対して,ケトコナゾール外用薬やイトラコナゾールの内服を,感染症に対しては単独で,関連疾患に対しては従来治療に上乗せする形で投与すると著明に症状が改善することを報告した.
著者
吉田 益喜 成田 智彦 川田 暁
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.642-646, 2013-07-01

要約 外鼻下半分は,皮膚,支持組織の軟骨と裏打ちの粘膜とから構成され,複雑な形状をしている.その再建法には局所あるいは遠隔皮弁,遊離皮弁,composite graft(複合組織移植)などさまざまな方法があるが,今回,2001年4月~2010年6月に行った鼻再建の中で耳介部をドナーとしたcomposite graftを行った12症例を検討した.再建例の2/3は男性であり,原疾患は基底細胞癌が最多であり,部位は鼻翼が最多であった.移植片の長径は平均20.4cm,幅平均15.3mmであり,移植後は3例に部分壊死があり,他は全生着した.患者の満足度はほとんどの例が満足であった.耳介部をドナーとしたcomposite graftによる鼻再建は,外鼻下半分の形態に非常に適合し,手技が簡便で,有用な再建法と思われた.
著者
深井 恭子 山口 さやか 大嶺 卓也 山城 充士 眞鳥 繁隆 高橋 健造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.393-396, 2017-05-01

要約 27歳,女性.オコゼ刺傷による右下腿皮膚潰瘍に対して,ゲーベン®クリームを外用していたが難治のため当科を紹介受診した.潰瘍周囲に紅斑,丘疹が広がり,ゲーベン®クリームの外用を中止したところ,潰瘍部の肉芽形成が良好となり植皮術を行った.術後,顔や植皮部にヒルドイド®ソフト軟膏を外用し,瘙痒が出現していたが不定期に外用を続けていた.約1年後に全身に紅斑が拡大し,再度当科を受診した.パッチテストでは,ゲーベン®クリーム,ヒルドイド®ソフト軟膏,これらに共通した添加物であるパラベンが陽性だった.自験例では,最初の接触皮膚炎の診断時に原因成分までは特定しなかったため,パラベン含有薬剤の外用を継続し経過が長期化した.パラベンは身近な医薬品,化粧品に数多く含まれており,難治性の皮膚炎や皮膚潰瘍では,パラベン類へのアレルギーも念頭に置きたい.
著者
山本 由美 乃木田 俊辰 川島 眞
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.88-90, 1999-01-01

25歳,女性.20歳頃より腰背部に瘙痒を伴う米粒大までの灰褐色角化性丘疹が出現し徐々に増数し,ステロイド軟膏の外用を行うも著変なし.50% dimethyl sulfoxide(DMSO)外用療法を1日1回施行し,半年後には個疹の縮小,扁平化と色素沈着の減少を認めた.組織学的にも表皮直下のアミロイド沈着の減少を確認した.
著者
川島 眞
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.155-158, 2013-04-10

要約 かゆみを有する皮膚疾患患者を対象に鎮静性抗ヒスタミン薬(d-クロルフェニラミン,ケトチフェン)と第2世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬(べポタスチンベシル酸塩)をクロスオーバーで投与し,かゆみ抑制効果と眠気の副作用の程度について比較検討した.その結果,かゆみ抑制効果においては両者ともに有意な効果を示し,両者間に有意差はみられなかった.一方,眠気の副作用に関しては,第2世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬では投与前後で有意差はみられなかったが,鎮静性抗ヒスタミン薬では有意な眠気の悪化が認められた.抗ヒスタミン薬の眠気の副作用と効果の強さは相関しないことが証明され,第2世代の非鎮静性抗ヒスタミン薬の使用が推奨されると結論した.
著者
中村 雄彦
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.p65-68, 1977-01
被引用文献数
1
著者
千貫 祐子 森田 栄伸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.8-11, 2012-04-10

要約 近年,旧「茶のしずく石鹸」中の加水分解小麦(グルパール19S®)で経皮または経粘膜感作されて,小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)を発症したと思われる患者が急増した.患者の多くが小麦によるFDEIAの主要アレルゲンであるω-5グリアジンに対する特異的IgEを有しておらず,従来のFDEIAとは異なる臨床症状および予後を呈している.