著者
上出 良一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.1165-1170, 2010-05-20 (Released:2014-11-28)
被引用文献数
1

光線過敏症を発現する薬剤は時代と共に変遷する.古くからサルファ剤,フェノチアジン系向精神薬,チアジド系降圧利尿薬,スルフォニル尿素系経口糖尿病薬,グリセオフルビンなどが知られていた.その後,ピロキシカムやアンピロキシカムによるものが多発し,最近ではニューキノロン系抗菌薬によるものが記憶に新しい.ケトプロフェン外用薬による光アレルギー性接触皮膚炎も多発している.ごく最近,血圧降下薬の合剤中のヒドロクロロチアジドによる例が増えており,また,新発売の肺線維症治療薬であるピルフェニドンは半数以上で光線過敏症が生じる.
著者
上出 良一
出版者
日本香粧品学会
雑誌
日本香粧品学会誌 (ISSN:18802532)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.124-131, 2017-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
31

Sun exposure induces acute and chronic skin damage. In an aging society, life-long protection against ultraviolet rays starting from childhood is important in order to suppress the increase of skin cancer in sun exposed areas. On the other hand, some women tend to over-protect their exposed skin from sun light to prevent pigmentation such as blotches, freckles and wrinkles. Such an attitude like photophobia in daily life might induce vitamin D insufficiency and consequently damage their health. Vitamin D can be produced by sub-erythematous doses of UVB and excess vitamin D is destroyed by UV to maintain a proper level. In general, applications of sunscreen are incomplete, so that people receive a certain amount of UV exposure on the face and dorsum of hands, which produces a necessary amount of vitamin D. In addition to biosynthesis, vitamin D is safely taken orally through proper foods and supplements. Accordingly, there is no reason to recommend sun bathing to avoid vitamin D insufficiency.
著者
上出 良一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.1115-1119, 2014-05-20 (Released:2014-05-26)
参考文献数
28

サンバーンは最も普遍的な急性の紫外線傷害の皮膚症状である.24時間をピークに生じ,軽症の場合は軽度の灼熱感とびまん性紅斑であるが,高度になれば浮腫,水疱,びらんを伴った暗紅色斑となり強い灼熱感を伴う.重症の場合は悪寒戦慄,発熱,脱水など全身症状を呈する.皮膚障害はUVBによるシクロブタン型ピリミジンダイマー形成による直接的DNA損傷が主因であるが,UVB, UVAによる酸化的傷害も加味される.多様な炎症メディエータやサイトカインが産生され,炎症細胞浸潤も伴うため,一旦生じた後に抑制することは困難である.一般的に第一選択とされる副腎皮質ステロイドホルモン外用の効果は極めて限定的である.なるべく早期から1日2回のステロイド外用を開始し,1週間続けることが症状回復を早める可能性がある.ステロイドの全身投与も重症例では慣用的に行われているが,十分な根拠はない.むしろ非ステロイド系抗炎症薬がプロスタグランジンによる炎症と疼痛の緩和に有用である.患者には再発予防のため具体的に紫外線防御対策を指導する.

2 0 0 0 OA 掌蹠膿疱症

著者
上出 良一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.355-364, 1994-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1

掌蹠膿庖症は手掌, 足底に限局する再発性の膿疱形成と, それに続く落屑性紅斑性皮疹を特徴とする疾患である。本症の10-15%に胸肋鎖骨異常骨化症を伴うが, 骨シンチグラムを行うと更に高頻度に潜在性の骨関節炎が見出される。大多数の患者では扁桃や歯肉などの細菌感染を基盤とした病巣感染が病因として考えられ, また扁桃上皮と掌蹠皮膚の角層で交差反応を示す抗ケラチン抗体が検出されている。少数の患者では歯科金属除去により軽快する。今後スーパー抗原の関与やサイトカインネットワークの乱れなどについて検討すべきである。治療の第一選択としてステロイド剤の外用が最も行われているが, PUVA単独あるいはレチノイドとPUVAの併用 (Re-PUVA) も用いられる。シクロスポリン内服 (5mg/kg日以下) は極めて有効で難治例に試みてよいであろう。完治には基盤となる病巣感染を扁桃摘出, 歯科処置などで除去することが推奨されているが, 信頼性のある術前の評価法が未だ確立されていない。皮膚科, 耳鼻咽喉科, 歯科, 整形外科その他関連科の密接な連携が本症患者にとって診療上大切である。
著者
上出 良一
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.265-272, 1996-10-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
44
被引用文献数
2 3

紫外線は皮膚の構造・機能に大きな影響を与える環境因子のひとつである。紫外線照射による急性皮膚傷害はサンバーン, サンタンとしてみられ, 慢性の紫外線曝露は老人性色素斑, 光線性弾性線維症, 腫瘍発生などの光老化として長期の潜伏期間の後に出現する。その起点は主にUVBによるDNA損傷と, UVAによる細胞内外の光感作物質の励起で生ずる活性酸素種の発生を介した細胞傷害である。その結果, 皮膚の炎症, 構造的異常, 遺伝子変異, 光発癌, 免疫反応の抑制, 光線過敏症などが生ずる。それらの症状ならびに機序について概説すると共に, それを軽減または予防するための対策について皮膚科学的見地から最近の知見をまとめてみた。
著者
上出 良一 松尾 光馬
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, 1998

全国大学付属病院108施設ならびに日本臨床皮膚科医学会(日臨皮)東京支部会員554名を対象に,人工的タンニング装置に起因する健康障害のアンケート調査を行った.249施設から回答を得,うち75施設で計119名の健康障害患者を診察していた.男女比はほぼ1:1で,10代と20代が8割近くを占めた.障害の内容(150件,重複あり)は急性障害であるサンバーン様症状84件(UVA蛍光ランプによるもの79件,PUVAによるもの4件,UVBランプによるもの1件),疼痛10件,瘙痒7件,光線過敏症5件,発熱2件,嘔気1件あった.慢性障害である黒子様色素沈着,花弁状色素斑などの色素性病変が16件,その他16件(うち皮膚乾燥6件),眼障害では表層角膜炎が2件にみられた.また病状の記載のないものが7件あった.人工的タンニングに対する意見を寄せた皮膚科医106名中,日焼けサロンに否定的な意見85件,肯定的な意見7件,賛否不明14件であり,否定的意見が約80%と大多数を占めた.皮膚科医としてUVA照射による人工的タンニングの危険性を一般に啓蒙していく必要がある.

1 0 0 0 光老化

著者
上出 良一
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.14, pp.3717-3723, 2012-12-20 (Released:2014-11-13)

光老化は紫外線による慢性皮膚障害で,加齢により生じる内因性あるいは自然老化とは異なる皮膚変化である.症状として露光部の色素沈着(日光黒子,光線性花弁状色素沈着),深い皺(表情筋による皺,項部菱形皮膚),頬部のたるみなどが見られる.機序はUVB,UVAにより角化細胞,線維芽細胞の細胞膜表面のEGF,IL-1,TNF-αなどの受容体が活性化され,細胞内のシグナル伝達系を介して転写因子AP-1を誘導し,matrixmetalloproteinase(MMP)の転写が亢進する.産生された蛋白分解酵素が真皮のコラーゲンやエラスチンを分解し,真皮は損傷を受ける.
著者
林 光葉 小林 光 伊東 慶悟 谷戸 克己 石地 尚興 上出 良一 中川 秀己
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.949-954, 2012-11-01

要約 症例1:72歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その2か月後から両側乳頭部に疼痛が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で両側乳頭直下に円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止し,約1週間で乳頭部の疼痛は軽減した.病理組織像では乳管上皮の増生や断頭分泌を伴うアポクリン化生を認めた.症例2:83歳,男性.初診の3か月前より前立腺肥大症に対しデュタステリド0.5mg/日の内服を開始した.その1か月後から両側乳頭部に硬結が出現し,初診時両側乳輪部に有痛性の皮下硬結を認めた.超音波検査で円盤状の低エコー像を認め,女性化乳房を疑った.内服中止後約1週間で乳頭部の疼痛は軽減したが,皮下硬結は4か月後も残存していた.病理組織像では乳管上皮の増生を認めた.5α還元酵素阻害剤の副作用としての女性化乳房は広く認識されるべきである.
著者
澤田 俊一 八木沼 健利 上出 良一
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.677-681, 1990-06-01

ピロキシカムによる光線過敏症の発症機序を検索するために,本症患者8名について臨床的特徴ならびにピロキシカムの光パッチテストの結果をまとめ,さらにチメロサールとその関連物質のパッチテストを行った.ピロキシカムの光パッチテストまたは内服照射試験を行った7例は,全例陽性反応を示した.パッチテストでは施行した7例全例がチメロサールならびにその抗原決定基の一つであるチオサリチル酸に強陽性を示したが,塩化第2水銀およびUVA照射ピロキシカムは陰性であった.これらのことよりピロキシカム光線過敏症の発症には,チメロサールとくにチオサリチル酸との交差感作が重要な役割を果たしていることが示唆された.