著者
今津 均
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.463-475, 2011 (Released:2011-11-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

Cytoscapeはバイオインフォマティクス分野などの複雑ネットワーク解析や視覚化ツールとして開発され,現在ではソーシャルネットワークやセマンティックWebなどを含むさまざまな分野で活用されている。しかしながら,わが国ではCytoscapeの活用事例は少ないようであり,世界的に見ても「Cytoscapeを特許情報解析に応用した」という事例を見いだせていない。そこで,本稿ではCytoscapeを特許情報解析に活用する具体的手順と,その応用事例を通じてCytoscape視覚化機能の豊富さやネットワーク解析機能による特徴ノード群の抽出方法などのテクニックと,Cytoscapeを含めたテキストマイニングなどによるマクロ解析における注意点などをも合わせて解説する。
著者
窪田 輝蔵
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.391, 2001 (Released:2001-09-01)
参考文献数
16

現代学術雑誌を代表するNature,BBA,JBCの歴史と現在をたどり,その誕生,変遷を探る。学術雑誌の今日の姿とその特徴はレフェリー制度,編集と出版の乖離(かいり),市場競争である。それぞれ検討すべき課題がある。価格を巡るあつれきが米国のSPARC,英国のNESLIを生み,電子ジャーナルの出現が学術出版社をNeutral Databaseによる情報サービス業に変身させ,市場である図書館をコンソーシアムによるブローカーに変身させつつある。今日,特にわが国において,学術雑誌に真の出版人が求められている。
著者
宇陀 則彦
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.163-173, 2008 (Released:2008-06-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2 5

本稿はあるべきシステムをイメージするためにはバンテージポイントから大局的に眺める必要があることを主張する。現在,デジタルライブラリ,デジタルアーカイブ,機関リポジトリなどさまざまなシステムが存在するが,そのどれもが図書館,文書館,博物館,美術館のシステム担当者が求めるシステムとは一致しない。そこにはおそらくまだ概念化されていない「あるべきシステム」が存在するに違いない。本稿ではそのシステムを提供する主体を「リソースプロバイダ」と定義し,あるべきシステムを考えるための視点を与える。最も重要な視点は利用者のメンタルモデルである。
著者
山本 隆一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.619-628, 2017-12-01 (Released:2017-12-01)
参考文献数
3

医療情報の標準化は相互運用性実現の手段の一つで,効率化が喫緊の問題になっている社会保障においては実現しなければならない最重要項目といえる。日本では医療情報システムの普及は1950年代に始まり,諸外国に比べてかなり早かった。当時は事務処理の合理化がIT化の主目的であり,医療情報の標準化は重視されなかった。このようなシステムの普及が医療情報の利活用のための標準化の普及を遅らせたことは否めない。しかし,データ指向社会においては医療情報の利活用は社会保障の合理化のためだけでなく,創薬,医療機器開発,医療周辺産業の発展のためにも必須で,標準のさらなる普及が急がれる。
著者
隅田 英一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.12-21, 2014-04-01 (Released:2014-04-01)
参考文献数
15

本稿では,半世紀を越える歴史があり,現在,巷(ちまた)にあふれる自動翻訳システムの2014年の到達点を紹介する。自動翻訳に対する人々の印象はさまざまである。翻訳対象の言語・分野・文長などによって,翻訳品質が大きく違うからである。たとえば,日本語と英語の間では,汎用で高精度な自動翻訳システムは現存しない。一方,日本語と韓国語の間では,汎用で高精度な自動翻訳システムが手軽に利用できる。技術に立ち返って,現在の自動翻訳の真の姿を共有することを目的として,中核技術になっている統計翻訳について詳しく説明する。統計翻訳は,対訳データから翻訳に必要なモデルを導出し,これに基づく確率を最大化するように翻訳する。統計翻訳は,①専門分野の高精度翻訳を実現できる,②多言語化が容易である等の従来技術にない特徴を有する。統計翻訳を旅行会話に適用した音声翻訳と特許に適用したテキスト翻訳を例に,高精度の自動翻訳について紹介する。
著者
箕輪 真理 川嶋 実苗 三橋 信孝 堀尾 徹
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.910-917, 2015-03-01 (Released:2015-03-01)
参考文献数
18

科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)が,倫理的配慮や安全な取り扱いを必要とするヒトに関するデータを取り扱う「NBDCヒトデータベース」の正式な運用を2013年10月に開始して1年が経過した。本稿では,このデータベースについてあらためて概説し,現況も報告する。併せて1年間の運用に際して生じた実際上の問題から主要なものについて対応方針を紹介し,今後の運用に向けた課題とその対策などについて考察したい。
著者
谷藤 幹子 高久 雅生 大塚 真吾 轟 眞市
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.888-901, 2009 (Released:2009-03-01)
参考文献数
26
被引用文献数
4 1

研究成果の蓄積と公開は,独立行政法人たる研究所においても重要な任務だが,それを図書館が担うという考え方はつい先ごろまでまったく浸透していなかった。そもそも図書館は,本を買って置く場所という認識である。専門職員が充分にいるわけでもない。しかしさすがに情報社会の波が研究現場にもさまざまな形で押し寄せてくるに至り,組織全体としての情報の流通・発信力に不足感を感じてきたところといえる。物質・材料研究機構(NIMS)では,購読図書の電子化が進んでいることとも合わせ,いっそのことバーチャルな世界でデジタルライブラリーを考えようということになった。未来のライブラリーとは(人も含め)どのようなものか? 研究者が使いたくなる機能とはどのようなものか? そうした問いかけを重ねる中で,単なる蓄積・公開にとどまらず,蓄積された情報が確かな手応えを伴って発信できる仕組み,より能動的なライブラリーシステムを目指してNIMS eSciDocの研究開発に着手したところである。第一期はシステムの「発信する力」に焦点をあて,その具現化にふさわしいソリューションを追求し,改良と試験運用を開始した。本稿はその概要を述べるとともに,他の文書/動画共有サイトとの発信力の比較を行ったNIMS研究者の声も紹介する。
著者
北本 朝展
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.293-304, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)
参考文献数
8

「デジタル台風」とは,台風に関するあらゆる情報を整理し,誰でもアクセス可能なデータプラットフォームの構築を目標とするプロジェクトである。気象データや社会データなどさまざまな大規模データを統合するだけでなく,データの意味を類似性やランキングといった相対値の文脈で解釈する機能など,「デジタル台風」にしか存在しないユニークなデータや機能が人気を集めている。本稿はこのデータプラットフォームを2つの観点から考察する。第1に,公開から約13年間の約1億6,300万ページビューのアクセス解析に基づき,時間変動する情報価値や情報流通におけるソーシャルメディアの価値などを考察する。第2に,デジタル台風が直面するさまざまな持続可能性の問題を,パスファインダーによるキュレーションや,市民科学とオープンサイエンスのかかわりといった観点から論じるとともに,持続可能なデータプラットフォームに向けて目指すべき方向を展望する。