著者
九里 善一郎 上田 寿 志田 正二 篠原 健一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.350-352, 1960-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

粉末状のポリ塩化ビニルを真空中で放射線照射し,後これを空気中で溶媒に溶かして,ゲル分率を測定してもゲル化していないが,照射後真空のまま100℃ に,10分間加熱するか,あるいは真空中で溶媒に膨潤させればゲル化する。また空気中照射したポリ塩化ビニル粉末は,真空中で100℃ に加熱した時にのみゲル化する。アンモニアガス中で照射したものは,そのままで既によくゲル化している。これらの結果より,架橋機構を検討した。
著者
奈良 賢一 真鍋 修
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.1866-1869, 1971

o-, m-, p-ベンゼンジスルホン酸塩 (BDS), ベンゼントリスルホン酸塩 (BTS) のアルカリ融解反応において, アルカリの濃度, 温度の反応速度に与える影響をしらべた結果, いずれの場合もスルホン基のモル濃度を [S], 水酸化アルカリの活量濃度を a<SUB>MOH</SUB> とすると, アルカリ融解反応の速度は次式で表わされた。<BR>-d[S]/dt=k[S]・a<SUP>2</SUP><SUB>MOH</SUB><BR>示差熱分析の測定から BTS〓フェノールジスルホン酸〓レゾルシンスルホン酸〓フロログルシンへの段階的融解反応の温度は I 150℃, II 250℃, III 300℃ であった。ベンゼンスルホン酸塩 (BS) および置換 BS の水酸化カリウム中での融解反応の活性化エネルギーと活性化エントロピーとの間には補償効果があり, またメタ位のスルホン基の1個の増加は活性化エネルギーを約 8kcal 減少することがわかった。アルカリ融解反応における置換基の影響についても検討した。
著者
服部 健一 谷野 幸雄
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.55-58, 1963
被引用文献数
1 10

本品は重要な分散剤であるがその基礎的知見に乏しく分散機構,水溶液の性質に至っては全然知られていない。また成分についても多くの成書が2核体として取扱っているが,はたして2核体が主成分とみなせるかどうかは疑わしい。当然その多分子性,高分子性が分散性と密接な関係があるものと予想されるので,この組成,構造を明らかにすることは分散性を解明する上に重要な問題と考えられる。組成を明らかにするため先ず精製β-ナフタリンスルホン酸のホルマリン縮合物ナトリウム塩を合成し,ペーパークロマトグラフィーによって<I>Rf</I>を異にする9個のスポットに分けた。おのおのスポットの核数を決定するためZollingerの方法によってスルホクロリドにかえアセトフェノン中における氷点降下法によってその分子量を測定した。その結果Rfが小さくなるにつれ順次分子量は増加しており,それぞれ1,2,3,……9核体(原点)に相当することを確認した。同時に従来の2核体が主成分であるかのような取扱いは誤りであることが明らかになった
著者
吉森 孝良 山田 次彦 本郷 勉 武内 次夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.1808-1811, 1962-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8

金属ウラン中の1ppm以下の微量の銀を陽極溶出電量分析法によって定量した。はじめに銀の電量分析法において,電解液の容積とそのpH,あるいは電解液中に混入したタリウムやウランの影響について検討した。つぎにこの結果を実際の金属ウランの分析に応用した。すなわち銀含量が0.4ppm以上の試料では,ウランをクエン酸錯塩としてその影響をのぞくことによって,とくに銀をウランから分離することなく定量することができた。また銀量が0.4ppm以下の試料に対しては, タリウムとともに銀をヨウ化物として沈殿させ, ウランから分離して定量し, 満足すべき結果を得ることができた。
著者
橋田 洋二 中島 欣也 関口 自然 松井 弘次
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.1132-1138, 1969
被引用文献数
5

非対称型ジスアゾ染料合成のための基礎資料と,二つの別々な芳香環にある二つの官能基間の相互作用についての知見を得るため,各種のテトラゾ化ジアミンとR酸(2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸)とのアゾカップリング反応の第1段反応の速度定数(k<SUB>1</SUB>),第2段反応の速度定数(K<SUB>2</SUB>)を分光光度計を用いて測定した。<BR>テトラゾ化ベンジジンの場合,K<SUB>1</SUB>/K<SUB>2</SUB>が約650であるが,ベンジジンの二つのべンゼン環の間に-O-,-S-,-SO-,-SO<SUB>2</SUB>-,-CH<SUB>2</SUB>-,-CO-などの架橋基を導入すると,K<SUB>1</SUB>/K<SUB>2</SUB>はかなり小さくなる。しかし,O-トリジン,O-ジアニシジンのテトラゾ化物の場合には大きなK<SUB>1</SUB>/K<SUB>2</SUB>の値が観測されることがわかった。<BR>以上の結果の理由について分光学的資料とも関連して考察を行なった。
著者
橋田 洋二 中島 欣也 関口 自然 松井 弘次
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.180-183, 1970
被引用文献数
1

オルト効果に関する知見を得る目的で, (1) 式のような構造を持つベンゼンジアゾニウム塩とR酸 (2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸) とのカップリング反応速度を測定した。<BR>X : オルト置換基 (H, CH<SUB>3</SUB>, OCH<SUB>3</SUB>, Cl, NO<SUB>2</SUB>)<BR>Y : 4あるいは5位の置換基 (H, CH<SUB>3</SUB>,OCH<SUB>3</SUB>, Cl, NO<SUB>2</SUB>)<BR>同じオルト置換基を有するおのおののジアゾニウム塩の携合において自由エネルギーの直線関係が認められるが, しかし Hamnett の反応定数 (ρ) は置換基 (X) の種類により, かなり変化する。<BR>テトラゾ化置換ベンジジン (2) の場合の速度定数の比 (<I>k</I>1/<I>k</I>2)(<I>k</I>1,<I>k</I>2 はそれぞれ第1段, 第2段反応の速度定数) の相違は, この反応定数の変化のためと考えられる。
著者
江川 博明 本里 義明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.397-401, 1965-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3

緻密に織られたビニロン布のリン酸エステル化をリン酸-尿素法およびリン酸二アンモニウム-尿素法について試み,その反応条件と得られたカチオン交換布の性質を測定し,イオン交換膜として利用の可能性を検討した。最も良好なイオン卒換布を得るには・ビニロン布を85%リン酸20g,尿素50g,水20gまたはリン酸二アンモニウム20g,尿素40g,水40gの反応浴に浸漬し,液を2倍重量付着させ,100℃で30分間乾の反応条件と得られたカチオン交換布の性質を測定し,イオン交換膜として利用の可能性を検討した。最も良好なイオン交換布を得るには,交換布を得るには,ビニロン布を85%リン酸20g,尿素50g,水20gまたはリン酸二アンモニウム20g,尿素40g水40gの反応浴に浸漬し,液を2倍重量付着させ,100℃で30分間乾燥し,ついで160~180℃で20~30分間熱処理するのが適当であった。市販のビニロン布(厚さ0.46mm)を用いた場合,最適条件で得られたイオン交換布は総イオン交換容量が2.0~2.3meq/g,水和時の厚さ0.58~0.60mm,膜中輪率(0.1N/0.2NKCl)が0.99~0.99,比電導度(0.1NKCl)が8~9Ω-1cm-1×10-3,湿潤時の抗張力および破裂強度がそれぞれ200~220kg/cm2,14~15kg/cm2を示し,耐酸,耐アルカリ,耐溶剤性は非常に良好でそのままイオン交換膜として利用可能と考えられる。なお両方法において熱処理を高温で長時間行なうときは架橋結合の生成が認められた。
著者
土田 英俊 篠原 功 神原 周
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.824-827, 1963-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
3

スチレン- 四塩化炭素系のテロメリ化反応により, 重合度範囲3~400のオリゴスチレンを合成した。反応はAIBNを開始剤とし, 重合温度80および60℃で実施した。[CCl4]/[Styrene] が0.2~50の範囲, 温度80℃ では生成物の分子量は300>Pn>3となり,生成オリゴスチレンは一定の重合度分布を持つ帯電現象の著しい白色の粉末である。両末端の塩素定量値と氷点降下法で測定した平均重合度を比較して,生成物がα,α,α,ω-四塩化物であることを確かめた。氷点降下法による数平均分子量と25℃におけるベンゼン溶液の極限粘度を測定して, 次の関係式を得た。[η]=3.64×10-4M0.64これらの結果から必要とする平均重合度のオリゴスチレンを合成する条件が得られた。
著者
土田 英俊 篠原 功 神原 周
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.828-831, 1963-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
2

四塩化炭素-スチレン系のテロメリ化反応で得られた,平均重合度約40のオリゴスチレンの分子量分布を測定した。分別は,溶離型カラムクロマト法によった。20φ×2000mmの硬質ガラス管に160~200meshに整えた石英粉,シリカゲル粉を充填したカラムを使って分別効果を検討した結果,この種のオリゴマーについては後者の方が分別効果が大きいが,実用上はいずれも効果的に分別できることがわかった。展開剤にはMeOH-MEK系を連続組成変化するようにして用い,分子量分布,試料の数平均分子量と極限粘度の関係を検討した。この結果,溶離クロマト法は低重合体の分別,分子量分布測定に有効であり,再現性もよいことが明らかになった。オリゴスチレンの分子量分布曲線は,ポリスチレンのそれと比較して正規分布に近いようである。分別オリゴスチレンの数平均分子量とベンゼン溶液25℃で測定した極限粘度の関係式として,次式を得た。[η]=3.03×1mm-4M0.62
著者
北条 舒正 白井 汪芳 高山 公子 大和 公子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.470-473, 1969-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

銅フィプロイン錯体の生成反応を種々のpH領域で検討した。フィブコィンはLiBrに溶解し,透析により,LiBrを除き調製した。この溶液を種々のpHで銅イオンと反応させた。溶液の変化は,pH滴定曲線,紫外可視スペクトル,粘度から検討した。pH8.5以下では,可視部700mμに吸収をもち,分子内錯体の生成が認められる。常温で放置すると,pH6.5から7.5付近でゲル化が起こるのが視察される。このゲルを30℃で乾燥して,X線回折,IRスペクトルから調べると,クロスβ構造であることが判った。pH8.5以上の溶液では可視部540mμに吸収をもってくる。これはCu←N結合に基づくものと考えられる,粘度は低下し,X線回折から,ランダム構造であることが明かになった。
著者
箱崎 順一 東村 栄之助 豊田 静子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.887-891, 1968-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6

官能基としてN-ブトキシメチルアミドと酸アミド基を含む反応性アクリル系高分子の橋かけ反応についてTorsional Braid Analysis (TBA) を用いて検討した。TBA 法は今までは主に高分子の粘弾性の熱的変化の測定に用いられていたもので,,橋橋かかけけ反応については定性的な反応過程の追跡がわずかに行なわれているに過ぎない。本報ではアクリル系高分子の橋かけ反応の速度論について化学的手法との対比において剛性率を用いる速度式によって定量的な取り扱いを可能にした。その結果,この系では反応初期では2次反応式に従い,活性化エネルギーと官能基の相互反応性も通常の化学的手法から求めた値と一致した。そして官能基の反応率の変化は橋かけ反応の進行と対応することがわかった。
著者
祖父江 寛 福原 節雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.520-524, 1960-03-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
15
被引用文献数
3

典型的な試料として,酢酸セルロースをNaOH-エタノール溶液でケン化してつくった非晶性(再生)セルロース膜を用いた。この試料を濃度を変えたエタノール水溶液および他の有機溶剤でおのおの十分に置換し,乾燥,重水素化後,赤外線吸収スペクトルを測定し,OH基の吸収強度から相対的な結晶化度を求めた。この結果,(1)セルロース膜の結晶化度は他の条件が一定な場合,エタノール中のH2O濃度および浸漬温度に支配され,H2O濃度が大で,かつ温度が高いほどより多く再結晶化することを認めた。そこで非晶性セルロースの再結晶化はミクロブラウン運動に起因するものと推定した。(2)非晶性セルロースの再結晶化に及ぼすH2Oの影響は大きい(D2O中に浸漬するだけで乾燥しなくてもかなりな量が再結晶化する)がエタノール,アセトン,ベンゼン等の影響は非常に少ない。(3)また,非晶性セルロース膜に付着した有機溶剤の完全な除去は困難であることを赤外線スペクトルから明らかにした。