著者
武内 次夫 深沢 力 小田 昭午
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.86-92, 1961

バネ鋼(SUP6)製造の際その鋼塊に生ずる砂カミ(鋼塊表面および表面近くに生ずる非金属成分)の組成を明らかにするため,化学分析,X線回折,螢光X線分析など行ない,かつバネ鋼砂カミの生成原因について検討した。<BR>バネ鋼砂カミ成分は石英が極めて多く, その他クリストバライト, ムライトなどからなり造塊用耐火物の組成に似ていた。従来は鋼塊製造の際石英の生成は起りえないとし,このような場合砂カミは耐火物から来たものと判断されていた。しかしながら著者らの研究の結果,砂カミ成分中には耐火物に含まれていないマンガン,ストロンチウムなども含まれており,また石英:クリストバライトの比を考えると耐火物にくらべ極めて石英態ケイ酸分が多く,平均80:20で,最も多い場には92:8にも達した。一方,同じ方法により製造した炭素鋼に生じる砂カミは脱酸剤から生成したことが分析の結果明らかになった。<BR>以上の結果従来砂カミは鋼塊製造時耐火物その他から来たものと考えられていた見解に対し,砂カミ成分は大部分脱酸剤(フェロシリコンとシリコマンガンを用いた)の酸化生成物に由来するものと判断する。もしこの見解が正しいとすると脱酸過程において脱酸剤として用いたフェロシリコン,シリコマンガンなどから石英が生成するという新しい実験結果がえられる。
著者
三藤 萬衛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.720-736, 1917-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
2

タンニン酸、没食子酸及び焦性没食子酸は同一の原料より系統的に製造せらるゝものにして之れが最良の原料たる五倍子は日本並に支那に於て最も豊富にして産量も亦僅少にあらざるのみならず容易に増加せしめ得べし又以上の三製品は多くの用途の外染料及び醫藥の原料たるを得るが故に是等の製造試驗は誠に興味あるものなるべし然るに我國に於ては原料産出に就きては相當の注意を拂はれたるも製造に關しては只大阪衛生試驗所臨時製藥調査所に於ける研究が大正五年二月四日並に大正五年九月六日の官報にて發表せられ居るに過ぎず故に余は此の問題に就きて少しく試驗し稍見る可き結果を擧げ得たれば以下項を遂ふて其の概略を報告せんとす
著者
広瀬 三夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1244-1247, 1956-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
39
著者
細田 喜六郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1869-1872, 1961-10-01 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本報告はPVC混和物成形品の亀裂現象に関する基礎的知見を得るために,極限伸長率と伸長温度の関係ならびに残留歪と亀裂発生温度の関係におよぼす,PVCの平均分子量,可塑剤含有量,加工条件などの影響を検討したものである。極限伸長率はおよそ75~90℃で最大となり,亀裂はこの温度を超えてから発生する。PVCの平均分子量が大きくなれば,極限伸長率は増大し,亀裂発生温度は上昇する。可塑剤含有量が増加するにつれて,亀裂発生温度は低下し,極限伸長率は低温においては著しく増大し,高温においては僅かに減少する。また熱ロールによる混練においては,最大の極限伸長率と最高の亀裂発生温度を与える最適の混練条件がある。
著者
小笠原 貞夫 高橋 茂行 深井 彰 中田 泰雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.2244-2247, 1969-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
6

各種金属酸化物を用いてプロピレンを気相接触酸化し,アセトンの直接合成反応を検討した。原料ガスとしてプロピレン,空気および水を用い,反応は常圧流通式固定床反応管を用いて行なった。アルミナに担持させたMo,Cu,V,Cr,Wの各酸化物の順にアセトン合成活性を認めたが, 特に, MoO3-Al2O3-触媒は選択的にアセトン合成活性を示すことがわかった。シリカやアルミニウムスポンジに含浸させた酸化モリブデンはアセトン合成活性を示さないが,アルミナに担持させると活性は著しく向上し,この触媒は酸化モリブデンとアルミナの二元機能触媒であることが帰納された。原料ガス中の水は燃焼反応を抑制し,生成物中に微量のイソプロピルアルコールや水素が存在することから,この反応はイソプロピルアルコールを経由する酸化脱水素反応であると考えられる。担体アルミナに対し,酸化モリブデン含量は約20wt%以上でほぼ一定の活性となる。最適反応温度は約300℃であり,使用触媒は500℃で空気により再生が可能であった。
著者
土田 英俊 真田 茎 森部 和彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1449-1452, 1971-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
1

N, N, N', N'-テトラメチルエチレンジアミン (TED) と二塩化-p-キシリレン (XDC) の逐次メンシュトキン反応における重合速度を考察した。反応の進行につれ速度は小さくなるが, これは官能基濃度の減少, 生長鎖荷電部が末端アミノ基の窒素弧立電子対を部分的に引き寄せその求核攻撃力を弱めることにより二次反応速度定数が漸減するためと考えられる。溶媒効果を次表に示した。DMSO は ε の関連だけでは説明できない促進作用がある。これは分極している DMSOの δ+性イオウと XDC の塩素とが静電相互作用を及ぼし, C-Cl 結合を弛緩する過程が反応に関与するため TED の求核攻撃を容易にするからと考えられる。
著者
佐藤 誠 松木 健三 菅原 陸郎
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.484-487, 1968
被引用文献数
5

定電位掃引法により酸性溶液中における二酸化マンガン電極の還元反応について検討を行なった。その結果還元分極曲線は,電解液のpHおよびマンガンイオンの濃度に依存した一定の電位で二ヵ所に還元波を示し,第1波は二酸化マンガン,第2波は低次のマンガン酸化物の溶出反応に対応することがわかったのマンガン酸化物の溶出反応に対応することがわかった。すなわち,pH3以下で第1波のピーク電位とpHおよびマンガンイオ。すなわちンの濃度との関係は,掃引速度に関係なく(1')式に一致し,第2波のピーク電位では,掃引速度が速い場合(3')式に一致するが,掃引速度が遅い場合(4)式に示した不均デ化反応による影響のため(3')式からずれるようになる。またpH3以上になるとピーク電位は(1'),(3')式から大きくずれるが,これは中性溶液中での反応と類似した挙動を示すためと思われる。<BR>以上の事実から,酸性溶液中における二酸化マンガン電極の還元の総括反応は(1)式で示されるが,その過程は中間体として(2)式によりオキシ水酸化マンガンを生成し,ついで(3)または(4),あるいは(3),(4)式にしたがって電解液に溶出するものと考えた。MnO<SUB>2</SUB>+4H<SUP>+</SUP>+2e→Mn<SUP>2+</SUP>+2H<SUB>2</SUB>O (1) E=E<SUP>0</SUP>-0.118pH-0.0296log(Mn<SUP>2+</SUP>) (1') MnO<SUB>2</SUB>+H<SUP>+</SUP>+e→MnOOH (2) MnOOH+3H<SUP>+</SUP>+e→Mn<SUP>2+</SUP>+2H<SUB>2</SUB>O (3) E=E<SUP>0</SUP>-0.178pH-0.0591log(Mn<SUP>2+</SUP>) (3') 2MnOOH+2H<SUP>+</SUP>→MnO<SUB>2</SUB>+Mn<SUP>2+</SUP>+2H<SUB>2</SUB>O (4)
著者
鈴木 周一 元井 操一郎 比恵島 康夫
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.662-664, 1961

最近, 含窒素有機物の新しい除去法として試用されて来たキノン- 活性炭処理法をショ糖中の微量タンパク様物質除去の目的に適用した。<BR>すなわち,ベンゾキノンまたはナフトキノン細末を用い,粗糖液にこれを添加し,十分反応せしめ著しく発色した液に活性炭を加えて脱色ロ過し,いわゆるキノン-活性炭処理を行なった。含窒素有機物除去度合の判定として用いられたポーラログラフによる酸素極大波抑制度の測定によれば,キノンを添加せずに活性炭処理のみで得られたショ糖液は明らかな極大波抑制作用を示すが,キノン-活性炭処理を施して得られたショ糖液は基準物質と同様な極大波を現わし,抑制物質すなわち含窒素有機物が相当に除去されていることが認められた。またいわゆるキャンデーテストによる糖液の加熱着色試験を行ない,着色度合を吸収スペクトルをもって測定した結果,キノン処理を施さないものは著しく褐色に着色するが,本法によって得られたショ糖液は可視部および紫外部領域においてともに吸光度小さく,含窒素有機物除去の効果がよく示された。
著者
武田 文七 山口 文之助
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1897-1904, 1959-12-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
7

ビニル系,ゴム系,セルロース誘導体系,ポリエステル系,ポリアミド系からそれぞれ試料をえらび,水素,酸素,窒素,炭酸ガスの透過係数(P),拡散係数(D),溶解度係数(S)を温度を変え,圧力差77cmHgにて測定した。気体についてPもDも大体H2>CO2>O2>N2であり分子の大きさからのDの予想順位H2>O2>N2>CO2と一致しない。CO2のDの大きいのは,CO2が膜を拡散するとき,その長軸方向に位置をとり易いためである。Sは気体の臨界温度の高いほど大きい。CO2>O2>N2>H2の順序が予想され多くの膜についてそうである。膜からみた場合Pの大小の順序はDの大小の順序と大体一致するがSのそれとは一致しない。PおよびDの大体の順序は測定した膜について次のようである。天然ゴム,エチルセルロース,テフロン,ポリスチレン,ポリエチレン(比重=0.926),ポリプロピレン,ポリエチレン(比重=0.951),ポリ塩化ビニル,トリアセチルセルロース,ジアセチルセルロース,ジニトロセルロース,塩酸ゴム(ライファン),マイラー,ナイロン。後者ほど分子鎖空間がちみつで,熱運動による孔形成の確率が少ない。透過性と膜の構造との関係についてえられた結果を列記する。(1)高圧法ポリエチレン(比重=0.927)ほ低圧法ポリエチレン(比重=0.951)よりP,Dは大きい。(2)ポリエチレンを冷延伸するとP,Dは減る。(3)ポリエチレン膜にスチレンをグラフトさせると,スチレン%の増大によりPはます。(4)DOPにて可塑化したポリ塩化ビニルおよびエチルセルロースはDOP%増加によりDは増し,Sは減じ,Pは最小点をとおり以後増加する。(5)市販ポリ塩化ビニル膜のPも測った。含有可塑剤に影響される。(6)ポリ塩化ビニルー可塑剤系で2次転移点とPの間に特別の関係認められない。(7)天然ゴムを塩酸化するとP,Dは激減する。(8)DOP,ネオプレンの混入は塩酸ゴムのPをます。(9)ニトロセルロースは硝化度の増加とともにPはまし,水蒸気のときの逆である。(10)エチルセルロース>トリアセチルセルロース>ジアセチルセルロース>ニトロセルロースの順にPは減少する。(11)測定した試料の中では,ポリエステル(マイラー)とポリアミド(6-ナイロン)が最もP,Dが小さい。
著者
佐々木 栄一
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.847-849, 1969

シュウ酸カルシウムを硫酸で分解してシュウ酸と硫酸カルシウムを生成させる場合,生成したシュウ酸がさらに硫酸により分解を受け,ギ酸と炭酸ガス,さらに一酸化炭素,炭酸ガス,水に分解する可能性がある。<BR>著者はシュウ酸を種々の濃度および温度の硫酸中で加熱し,シュウ酸の分解量を測定した。この結果,分解条件60℃,80℃,90℃各1時間においてシュウ酸が分解を起こす硫酸の最低濃度はそれぞれ91%,84%,75%であると推定した。<BR>分解温度50~100℃,硫酸濃度60~100%の範囲においては,温度T(℃),硫酸濃度C(%),分解率F(%)との間には<BR>F=exp[-86.6+0.511C+0.996T-0.0095CT+0.00362C<SUP>2</SUP>]<BR>の関係式が近似的に成立つことを知った。
著者
菅披 和彦 藤井 綾子 加藤 俊作 水口 純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1238-1242, 1969-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

この研究では黄色亜酸化銅と赤色亜酸化銅の相互転換の可否を確かめ, その結果に基づいて, 黄色亜酸化銅から赤色亜酸化銅の製造条件を明らかにすることを目的とした。赤色亜酸化銅を摩砕すると, 粒子が細かくなるにつれて, その色は黄色に変化した。黄色亜酸化銅を窒素ふん囲気中で900℃に,または蒸留水中で290℃に加熱すると,その色は赤色に変化した。この赤色亜酸化銅は成長した大きな粒子であることが電子顕微鏡観察によって確かめられた。X 線回折の結果, 両者に差異が認められず, 粒子の大きさにのみ差異が認められることから, つぎのように結論された。亜酸化銅の色の相違は粒子の大きさの差異によるものであり,微細粒子は黄色を,粗大粒子は赤色を呈し,相互に転換できることがわかった。各種の水溶液中での加熱の場合,黄色亜酸化銅は蒸留水を用いた場合にのみ赤色亜酸化銅へ転換した。塩化ナトリウムの中性またはアルカリ性水溶液を用いた場合には,亜酸化銅の溶解度が大きいにもかかわらず,赤色亜酸化銅への転換は困難であった。このことは亜酸化銅を溶解した水溶液の紫外吸収スペクトルの測定結果から推察される可溶性錯体の生成と関係があるように思われる。上述の結果に基づいて, 黄色亜酸化銅の水熱処理による赤色亜酸化銅の製造条件について検討し, 加熱温度が高いほど短時間に粒子成長が起こり,赤色亜酸化銅が得られることを明らかにした。
著者
長谷 昌紀 羽山 誠 山添 昇 清山 哲郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1633-1637, 1967-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
4

X線回折(粉末法)によって硝酸アンモニウムの各結晶相の安定領域および準安定領域における格子定数および熱膨張を測定した。各相の熱膨張の異方性は結晶構造における硝酸イオンの方位と強い関連性を示し,硝酸イオンの回転振動の寄与を考えると理解できる。各安定転移およびIV-II準安定転移は体積変化のとびを伴い1次転移である。一方V-II転移では格子定数(V相はII相の単位格子に対応する準単位格子を用いる)の不連続的変化は認められない。しかしc軸の熱膨張率は不連続的に変わることを明らかにしたので,比熱の測定結果も併せ考えるとV-II転移は2次転移である。実験結果にもとづき硝酸アンモニウムの相転移を水素結合の観点から考察した。