著者
黒崎 正三 大間 〓 初田 隆 中村 篤司
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.488-491, 1968
被引用文献数
2

塩化ビニルを工業的に製造するさいに,多種類の不純物が副生する。アセチレンと塩化水素を原料とする塩化ビニル製造工程において, 副生する不純物のうち, 塩化ビニルよりも沸点の高い成分を濃縮し, 分取ガスクロマトグラフにより高沸点物を分取した。<BR>この高沸点物のスペクトロメトリー(赤外吸収スペクトル,質量スペクトル)および元素分析,その他物理恒数の測定を行なうとともに,他方,化学定性反応処理(臭素付加反応,重亜硫酸ナトリウム付加反応)した高沸点物の濃縮試料のクロマトグラムおよびガスクロマトグラフより分離溶出する成分の炎色反応から高沸点物を定性的に分類した。それより,推定される物質を合成し,スペクトロメトリーおよびガスクロマトグラフィーにより, 同定確認した結果, 高沸点物質として検出した26 成分のうち, 19 成分を定性することができた。
著者
松崎 啓 守屋 正夫 祖父江 寛
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.869-871, 1959
被引用文献数
1

トド松パルプ中の銅アン=モニア液に不溶な部分を精製し,グルコマンナンを単離した。そのマンノース基/グルコース基(M/G)は約4で,少量のギシロース基を含む。パルプをアルカリ抽出し,抽出したヘミセルロースをフェーリング液で精製をくり返すと,M/Gが3~3.5のグルコマンナンと,グルコマンナンおよびセルロースを混じているキシランを主成分とする部分が得られた。酸加水分解したグルコマンナンのM/Gは3.65で結晶性のX線図を示した。キシラン中のアルドバイウロン酸の構造につき考察を加えた。
著者
中村 徳郎 大熊 純一 佐々木 郁生 北浦 貞夫
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1073-1077, 1958

脱脂絶乾トド松木粉に, 常温減圧下, 暗所において臭素ガスを反応させると, 臭素は木材中のリグニン( プロトリグニン)の芳香核および側鎖に主として置換反応を起す。このようにしてえられた臭素化木粉を水酸化第二コバルトと酸素によって酸化し,6-ブロムバニリンをえた。このことからリグニンの芳香核に置換した臭素はメトキシ基のパラの位置に入ったことがわかる。6-ブロムバニリンのほか少量の4,5-ジブロムグアヤコールと5-ブロムバニリン酸もえられた。また水素化ホウ素ナトリウムによってリグニン中のカルボニル基を還元した木粉も未処理の木粉とほとんど同様に臭素化される。すなわち,プロトリグニンの側鎖に存在するカルボニル基の有無は臭素の置換量にあまり大きな影響を与えないことがわかった。
著者
横山 晋 岡本 毅彦 石井 忠雄 武谷 愿
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.353-358, 1969
被引用文献数
1

トド松,ブナ,ナラ樹皮の各MWリグニンおよび赤松チオリグニン等の原リグニンにはDMSO-<I>d</I><SUB>6</SUB>を,また原リグニンのアセチル化誘導体にはクロロホルム-<I>d</I>を,それぞれNMR溶媒に用いて,高分解能NMRスペクトルを測定した。次いでアセチル化誘導体のNMRスペクトルから求めたフェノール性,アルコール性水酸基含量の測定結果を併用して,原リグニンのNMRスペクトルから各種結合形態の水素の含量を測定した。<BR>その結果MWリグニンとチオリグニンとの間の各種水素の分布には特徴的な差異が見られた。すなわちMWリグニンはチオリグニンと比べてアルコール性水酸基水素および芳香族環側鎖の脂肪族水素H<SUB>α</SUB>,H<SUB>β</SUB>(側鎖脂肪族α,β,γ位炭素に酸素が結合する)の含量が多い。これに対してチオリグニンはフェノール性水酸基水素および芳香族環側鎖の脂肪族水素H<SUB>α'</SUB>,H<SUB>β'</SUB>(側鎖脂肪族α,β,γ位炭素に酸素が結合していない)の含量が多い。<BR>高分解能NMRスペクトル分析によって求めた各種結合形態水素の含量および元素分析値を用いて,リグニンの基本構造単位に関する構造指数を求める新たな構造解析法を導入した。
著者
藤嶋 昭 本多 健一 菊池 真一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.108-113, 1969-01-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
22
被引用文献数
123

n型半導体であるTiO2(ルチル)を電極に用いて分極挙動を測定した。光照射しない時にはカソード分極下で水素発生が起こるが,アノード分極下ではほとんど電解電流が流れず顕著な電解整流作用を示した。TiO2電極表面に光照射すると,カソード電流は変化しないがアノード電流は著しく増加する。この電流はTiO2のバンドギァプ3.0eVに相当する415mμ以下の波長の光によってのみ生じ,また電流の大きさは光強度に比例する。立ち上り電位はpH4.7では-0.5V(vs.SCE)である。この電解酸化反応は従来n型半導体で報告されている電極自身の溶解反応ではなくて,水の電解による酸素の発生であることを確かめた。このことはいわゆる平衡電位より約1V以上も卑な電位で酸素発生がおこる“光増感電解酸化”であり,光のエネルギーを半導体が吸収したためである。またI-のI2への酸化も平衡電位より卑で起こることを確かめた。機構については半導体のバンドモデルから考察した。
著者
古川 淳二 鶴田 禎二 森本 和久
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1402-1406, 1957
被引用文献数
2

イソアミルナトリウムと四塩化チタンとを種々のモル比に混合反応させて, 重合触媒を調製し, これを用いて, 各種ビニルモノマー, すなわち, ビニルエーテル, プロピレン, 酢酸ビニル, エチレン, スチレン, ブタジエン, メタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルの重合反応性を調べたところ, 四塩化チタンの相対濃度が小さい触媒系に対しては, アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルの反応性が大きく, 四塩化チタンの相対濃度の大きいものに対しては, ビニルエーテルの反応性が増大することがわかった。スチレンはいずれの場合にもよく重合する。これらの事実は各モノマーの既知の反応特性から予期できるところであるが, 上記触媒成分が別個にモノマーに作用しているのではないことを確かめておいた。上記四塩化チタンのかわりに, 四塩化スズあるいはチタンテトラエトキシドを用いた触媒系, またはアルフィン系触媒についても, ほぼ同様の実験を行い, 比較検討した。
著者
野口 哲男 水野 正雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.834-839, 1967-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
15
被引用文献数
23

ヘリオスタット式太陽炉を用い,Y2O3-Al2O3系の各組成の冷却曲線より凝固点を測定し液相線を求めた。温度測定は,鏡面反射法により輝度温度と0.65μにおける分光反射率を求めて,分光放射率と真温度を算出した。太陽炉による溶融試料では,37.5mol%, 50mol%, 66.7mol% Y2O3組成で3Y2O3・5Al2O3,Y2O3・Al2O3,および2Y2O3・Al2O3の単一相を得,前二者の格子定数はそれぞれa0=12.010±0.005Åおよびa0=5.180±0.006Å,b0=7.370±0.004Å,c0=5.328±0.006Åであった。液相線はY2O340~60mol%組成の間でゆるやかなピークを示し,またAl2O3-3Y2O3・5Al2O3間の共晶点およびY2O3側の組成では既発表の結果と異なった傾向を示し,これらの結果に基づいてAl2O3-Y2O3系の平衡状態図を推定した。
著者
立石 悌三郎 藤原 正雄 桜井 洸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.1580-1582, 1958-12-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
2

マッコウ鯨脳油のロウとグリセリドの分別に溶出クロマトグラフィーを適用し, 吸着剤としてシリカゲルとケイソウ土の混合物(重量比2:1)を用い,溶出剤として石油エーテル-ベンゼン系溶剤を用いることによりほぼ完全に分別し得た。かくして得たロウ(S.V.:123.8,I.V.:55.7)とグリセリド(S.V.:207.0,I.V.:68.7)の脂肪酸組成を測定した結果, 両成分の組成に明らかな差が認められた。すなわち, ロウ脂肪酸の主成分はオクタデセン酸(19.8%),ミリスチン酸(17.0%),ヘキサデセン酸(16.0%),テトラデセン酸(11.8%),ラウリン酸(11.4%)であり,グリセリド脂肪酸の主成分はヘキサデセン酸(28.5%),オクタデセン酸(26.1%),パルミチソ酸(18.1%),ミリスチン酸(10.3%)であった。総括してロウ脂肪酸はグリセリド脂肪酸に比較して平均炭素鎖が短く, 飽和酸が多いことを認めた。
著者
村木 一郎 近藤 弘 篠田 健一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.22-26, 1962-01-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2

乾電池用電解二酸化マンガンの品質性能を迅速に評価する方法として,二酸化マンガンによる過酸化水素の分解反応に関する研究をおこなった。二酸化マンガンによる過酸化水素の分解能試験は,NH4Cl 5~10%溶液中で,試料粒度,採取量および温度などを規定しておこなえば,再現性のある満足な結果が得られる。この方法で電解二酸化マンガン,および天然二酸化マンガンなど数種の試料について,比較試験をおこない,これらの結果と電池放電性能の関係を検討した結果,各試料の運酸化水素分解能の順位は放電性能の順位と全く一致することを認めた。NH4Cl,ZnCl2,およびNH4Cl-ZnCl2などの各溶液中における二酸化マンガンによる過酸化水素の分解反応について研究した結果,NH4Clは分解反応の促進剤であり,ZnCl2はその抑制剤となることを認めた。また,これらの機構について考察をおこなった。
著者
笠井 順一 市場 政行 中原 万次郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1182-1184, 1960-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8

セメント類の凝結硬化について古くから諸説がある。著者らは新たな観点から,セメント類の水和反応に錯塩化学的な考え方が必要と考え,その一つの例としてマグネシアセメントの水和について調べて見た。すなわち軽焼マグネシアと塩化マグネシウム溶液からマグネシウムオキシクロリドの複塩を生成するまでの時間中にマグネシアは著しい過飽和現象を示すが,そのpHは理論上考えられるほどの変化を示さない。また塩化マグネシウム溶液濃度の増大はマグネシアの最大過飽和溶解度を増大するにもかかわらず,pHは逆に減少することを確かめた。この結果はマグネシアが溶解しても液相中にはOH-の増大を示さないから,マグネシアは液相中でMg2+とOH-に分れて存在している割合が少ないことを証明する。すなわち副塩生成までの過飽和現象は錯塩化学的な因子があり,一般セメント類の過飽和現象の説明の上に参考となるものと考える。
著者
西川 幸利 大津 隆行
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1836-1841, 1969
被引用文献数
16

α-およびβ-置換アセチルアセトンを合成し,その銅(II)キレートによるメタクリル酸メチルの重合を,60℃,塊状で行なった。α-位にメチルおよびフェニル基を導入した場合には,重合活性は増大し,またフェニル置換体についてはつぎのような順であった:<I>p</I>-CH<SUB>3</SUB>O><I>p</I>-H><I>p</I>-CH<SUB>3</SUB>><I>p</I>-Cl。一方,β位に置換基を導入した場合には,つぎの順であった:C<SUB>2</SUB>H<SUB>5</SUB>O>CH<SUB>3</SUB>>C<SUB>6</SUB>H<SUB>5</SUB>。このような重合活性におよぼす置換基の効果は,主として置換基のI効果と生成リガンドラジカルの安定性によって理解された。<BR>また,これらキレートによる開始機構をさらに明らかにするためにアセト酢酸エチル銅(II)キレート([Cu(eacac)2])によるスチレンの重合(60℃)を動力学的に研究した。ベンゼン中では重合速度(<I>R</I>p)は次式で表わされた:<I>R</I>p=k[Cu(eacac)<SUB>2</SUB>]<SUP>0.5</SUP>[St]<SUP>1.9</SUP>。<BR>ベンゼン以外の他の溶媒を用いた場合には,<I>R</I>pに対するみかけのモノマー次数は1.3から2.4まで変化した。このことは,開始過程においてキレートとモノマーあるいは溶媒との間での錯体形成が重要であることを示している。得られた置換基効果ならびに動力学的結果から,金属キレートによるビニル重合の開始機構について考察した。
著者
後藤 忠俊 室谷 寛 笹本 興児
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.1172-1175, 1965

塩基性炭酸マグネシウム(炭マグと略称)の製造では,良質の製品を得るために結晶状態が重視される。これは結晶化の過程に直接関係している問題である。塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムとの80℃ 程度の溶液反応で,炭マグを生成するとき他の物質が副生する。これらの物質として,正炭酸マグネシウムが知られているが,この外に(1)無定形物質,(2)従来未知のX線回折を示す物質がある。反応の初めに無定形物質が,遅れて(2)の物質が生成し,炭マグに同伴する。このような場合,炭マグ結晶は[001]方向に余り成長しない。常温反応では正炭酸マグネシウムが生成するが,希薄溶液の条件では無定形物質が得られる。これは徐々に変化して上の(2)の物質を含む複雑な状態となる。80℃ 反応の副生物は当量反応で高濃度の場合に避けられる。また熟成によって炭マグに変化させられる。しかし,この副生物は炭マグの結晶化に直接あるいは間接に影響するらしい。
著者
向坊 隆 雨宮 武男 西宮 辰明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.497-500, 1962-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
4

フッ化水素酸に侵されにくい透明材料を得ることを目的として,新しいフッ化物ガラスを研究した。フッ化物ガラスとしてはフッ化ベリリウムを主成分とするものが知られているが,吸湿性なので他のフッ化物について調べた結果,フッ化アルミニウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化マグネシウム- フッ化ナトリウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸ナトリウム系, フッ化アルミニウム- フッ化マグネシウム- メタリン酸カリウム系のガラス化組成範囲を決定した。フッ化アルミニウム-フッ化マグネシウム-メタリン酸ナトリウム系の試作ガラスに比較的よく無水フッ化水素酸に耐えるものが得られた。その一例はフッ化アルミニウム32.5mol%,フッ化マグネシウム27mol%,メタリン酸ナトリウム40.5mol%の組成のものである。この系で組成を変えたガラスについてはフッ素対酸素の原子比の大なるほど,フッ化水素酸に対する耐食性が大であり,この比が1付近でこの影響の著しいことを見出した。またフッ化水素酸中の水含有量がこの系のガラスの腐食に大きい影響を与えることが見出された。前記組成のガラスは無水フッ化水素酸による腐食は非常に少ないが,90%あるいは80%のフッ化水素酸では腐食速度は約10倍になる。ケイ酸塩ガラスではフッ化水素酸濃度の高いほど腐食速度は大きく,無水フッ化水素酸には激しく侵される。
著者
根来 健二 小泉 久則
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.922-927, 1967

p-クレゾール(I),6,6'-ジオキシ-3,3'-ジメチルジブェニルメタン(II)および2,6-ビス(2-オキシ-5-メチルベンジル)-<I>p</I>-クレゾール(III) のそれぞれすべての水酸基をプロパンサルトンおよびγ - ブチロラクトンにより, γ - スルポプロピル化およびγ - カルボキシプロピル化を行なった。得られた6種の試料(I, II, III-PS-NaおよびI, II, III-BL-Na)を精製後,元素分析およびペーパークロマトグラフィーなどにより分析した。ついで,これらの化学的純粋な6種の試料について界面化学的性質を検討し,つぎの結果を得た。<BR>1)表面張力:I, II-PS-NaおよびI, II-BL-Naの少量添加によって表面張力をあまり低下しないが,III-PS-NaおよびIIIBL-Naはかなり表面張力を低下させる。<BR>2)電気伝導度:各試料水溶液の比伝導度と濃度との間には比例関係が成立し,ミセル形成が認められない。<BR>3)粘度:試料の濃度がIII-PS-Naのときには1%,III-BL-Naのときには0.5%以下であるとき還元粘度が増大し,高分子電解質的挙動を示す。<BR>4)分散性:6試料水溶液中における炭酸カルシウム粉末の沈降試験の結果,0.1% III-PS-Na溶液中ではかなりよい分散性を示したが,0.1% III-BL-Naおよび6つのすべての試料の0.01,水溶液は凝集的に働き,速やかにCaCO<SUB>3</SUB>が沈降した。<BR>5)乳化力:流動パラフィンに対する乳化性を沸騰水浴中で求めたところ,すべての試料のうちでIII-PS-Naのみがすぐれた水中油乳化持続性を示した。
著者
山下 雄也 布本 貞明 三浦 定美
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.317-320, 1966
被引用文献数
7

ジメチルケテンとアセトンとの交互共重合で,高融点脂肪族ポリエステルを合成する条件を検討した結果,トルエン,エーテルなどの溶媒中ブチルリチウム,グリニャール試薬などの触媒系が適当であった。ナトリウム,カリウム化合物系触媒や,ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒は, ジメチルケテン単独重合体を生成しやすい, 三元共重合の結果からカルボニル化合物の共重合性がベンズアルデヒド> アセトン~ ギ酸メチル> ジメチルケテンの順序にしたがうことがわかった。エチレンオキドシは交互共重合せず,イソシヤナートはランダム共重合することを認めた。これらの結果から,ジメチルケテンとカルボニル化合物との交互共重合は対カチオンにカルボニル基が配位したキレート中間体を通って起こることを推定した。
著者
岩間 文男 広瀬 典子 中村 司 丸田 詮二朗
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1387-1389, 1971

渡り鳥の一種であるオオヨシキリを, 渡りの直後 (春) および渡りの直前 (秋) に捕獲して, 皮下部分と体内部分に分けて, エーテルで脂質を抽出し, 抽出物をアセトン可溶部と難溶部に分けた。可溶部をケン化し, 不ケン化物を抽出して, アルミナを用いるカラムクロマトグラフィーを行なって, 炭化水素とアルコ一ルに分離した。分離した各部分について, ガスクロマトグラフィー, 薄層クロマトグラフィー, 赤外吸収スペクトル測定, 諸特数測定などを行ない, 春と秋とについて脂質の変化を比較検討した。<BR>その結果春秋ともに脂肪酸の主成分は C<SUB>16</SUB>, C<SUB>18</SUB><SUP>1</SUP>であり, アルコールの主成分はC<SUB>10</SUB>, C<SUB>14</SUB>, C<SUB>15</SUB>, C<SUB>16</SUB>, C<SUB>17</SUB>, C<SUB>18</SUB>であることを明らかにした。またリン脂質としてレシチン, リゾレシチン, スフィゴメリン, ケファリンが, 糖脂質としてサッカローズ, ガラクトーズ, D(-)-リボース, L(+)-ラムノーズなどを構成成分とする糖脂質が存在することを認めた。さらに共役酸として, ジエン酸と少量のトリエン酸が含有されていることを明らかにした。
著者
堀 素夫 早川 宗八郎 鞆津 武 牧島 象二
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.638-641, 1958

本研究はセメント焼塊のような不定形の焼結物の焼結度を迅速かつ連続的に推定する目的で,これらの焼結粒子充填試料についてγ 線吸収ならびに超音波吸収の測定を行い, 従来の方法によるカサ密度, 見掛け密度, 気孔率ないし固結強度等の測定結果を比較検討したものである。まずγ 線吸収については,充填粒子の形状,粒度,密度等のいかんにかかわらず,同一組成の試料のγ 線吸収係数とカサ密度との間にはほぼ完全な比例関係が成立するので,γ 線吸収実験結果からただちにそのカサ密度を推定することができる。ただし充填試料自体の見掛け密度を推定するためには,充填粒子間の空隙部分を適当な媒質でおきかえる必要があり,置換媒液の浸透性等に問題が残る。次に超音波吸収の場合には,測定結果が試料の粒度によって著しく変動するため, γ 線吸収の場合のように簡単な関係はえられないが, 一般的な傾向として吸収係数は焼結度の増加とともに減少するといえる。