著者
小村 照寿 今永 広人 渡辺 信淳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.892-895, 1970-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1

塩化マグネシウムの電解における陰極電流効率の低下に対する酸化マグネシウムおよび酸化ホウ素の作用機構について検討した。酸化マグネシウムはマグネシウムの溶解度には影響しないので,その効果は浴中へのマグネシウム粒子の分散を引き起こすためと考えられる。このようなマグネシウム粒子の凝集の妨害は, 溶融塩中に分散した酸化マグネシウムがマグネシウム粒子の表面に吸着することによるものと推定される。また, 酸化ホウ素の添加はマグネシウムの溶解度にほとんど影響がないうえ, これは陰極で電気化学的な還元もうけない。しかし, 酸化ホウ素はマグネシウムと反応してマグネシウムの損失をまねくばかりでなく, 反応の結果マグネシウム粒子の表面に酸化マグネシウムやホウ化マグネシウムなどを生成する。そのため, マグネシウム粒子の分散をも助長することになるので, マグネシウムの電流効率は大きく低下するものと推定される。
著者
野田 稲吉 山西 信夫
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.289-292, 1964

水酸金雲母,1-フッ素,1-水酸金雲母組成調合物を500~800℃,600~1200bar下で水熱処理した。調合物中にアルミナおよびシリカ成分が不足したため,水酸金雲母調合物よりは水酸金雲母のほかに600℃以上ではクドカンラン石,500℃ではブルース石が生成した。水酸金雲母組成調合物では反応後の反応液pHは10~11で,温度が高く,時間の長いほど生成雲母の結晶性がよい。アルカリを加えpH >11となると, 生成雲母の結晶性はやや劣るようであった。1 - フッ素,1-水酸金雲母組成調合物は,金雲母のほかに常にKMgF3の相当多量が析出した。このほか,カリシライト,ハクリュウ石が伴生する。析出金雲母結晶は水酸金雲母よりやや小さい。この調合物にアルカリを過剰に加えると,カリシライト, ハクリュウ石の生成量がまし, フッ素を過剰に加えるとKMgF<SUB>3</SUB> の生成量がまし, 結局金雲母生成量は減ずる。<BR>生成結晶の格子定数を測定した結果,水酸金雲母,フッ素金雲母の値は既知の値とよく一致し,c<SUB>0</SUB>について,この両雲母間にVegard の法則が成立つものとして, c<SUB>0</SUB> の値より含有フッ素量を求め,1-フッ素,1-水酸金雲母調合物の生成物はほぼ55%のフッ素を含有,カリ過剰調合物の生成物は30%含有,フッ素過剰調合物の生成物は60%含有と推定した。
著者
畠山 兵衛 鈴木 金道 飯塚 堯介 中野 準三 右田 伸彦
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.1399-1402, 1967

リグノスルホン酸およびチオリグニンの過酢酸分解において,457mμの吸光度の減少と280mμのそれとの間には比例関係があることに基づき,両リグニンを過酢酸で酸化した場合の淡色化と,各種官能基の含有率の変化および低分子化との関係を考察した。<BR>1.280mμの吸光度に関与する構造型:フェノール性水酸基,カルボニル基および環開裂に由来するカルボキシル基をもっ6種の構造型を選び,これらの構造型を有するモデル化合物の280mμにおける吸光度を測定し,各構造型がリグニンの280mμの吸光度に関与する割合を調べた。各構造型の関与率は合計70%以上を示した。しかし,これらのモデル化合物は457mμにおいて吸光を示さないから,以上の各構造型はそのままの状態では可視部に吸光を示さない。<BR>2.過酢酸酸化および水素化ホウ素ナトリウム還元によるリグニンの色の変化:未処理,酸化処理,還元処理および酸化後に還元処理したリグニンにっいて,C.I.E.のXYZ系でリグニンの色を表示すると,明度は酸化,還元のいずれの処理によっても向上するが,酸化してから還元処理すると,著しく向上する。<BR>3.ゲルロ過法による分子量分布の比較:Sephadex G-25を用い,ゲルロ過法による分子量分布を測定し,過酢酸酸化による変化を検討した。その結果,リグニンの分子量が低下することを認めた。<BR>以上の結果を総括して過酢酸酸化によるリグニンの淡色化には,発色団あるいは助色団となる官能基あるいは芳香核が酸化によって減少することばかりでなく,低分子化も重要であると結論した。
著者
祖父江 寛 福原 節雄
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1070-1073, 1958
被引用文献数
1

ブナ, 赤松, 竹, エゾ松材よりBraunsの方法で天然リグニンを抽出し3800~650cm<SUP>-1</SUP>領域の赤外線吸収スペクトルを測定し,各吸収帯の帰属を推定した。ブナでは3400cm<SUP>-1</SUP>はOH伸縮振動,2940,2860cm<SUP>-1</SUP>はCH<SUB>2</SUB>,CH<SUB>3</SUB>のCH伸縮振動,1720,1660cm<SUP>-1</SUP>はC=Oの伸縮振動,1600,1510cm<SUP>-1</SUP>はベンゼン環の骨格振動,1460,1425,1365cm<SUP>-1</SUP>はCH<SUB>3</SUB>,CH<SUB>2</SUB>等のCH変角振動,1325cm<SUP>-1</SUP>は(不明),1270,1220cm<SUP>-1</SUP>はarylC-O伸縮振動,1120,1030cm<SUP>-1</SUP>はO-C(aliphatic)伸縮振動,825cm<SUP>-1</SUP>はベンゼン環のCH面外変角振動によるものと一応推定した。この際,1270cm<SUP>-1</SUP>吸収強度<1220cm<SUP>-1</SUP>吸収強度であった。次にブナ,赤松両リグニンを比較した。赤松はブナに比較して1325cm<SUP>-1</SUP>の吸収がなく,かつブナとに逆に1270cm<SUP>-1</SUP>吸収強度>1230cm<SUP>-1</SUP>吸収強度であった。これらの関係を既往の文献をも参考とし針葉樹, 広葉樹, 禾本科(竹),リグニン等について比較検討した。
著者
安藤 淳平 松野 清一
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.1195-1201, 1965

フロリダ, マカテア, モロッコ, タイバ, ガフサ, コシアなどの一般のリン鉱石を加熱すると, リン鉱石の主体であるアパタイト(結晶粒子の大きさ0.02~1μ)は500℃ 付近でいったん結晶性が低下し,700℃ 以上になると結晶成長を起こす。未焼成リン鉱石のク溶率はアパタイト結晶の大きさや鉱石の品位に応じて65%(ガフサ)から29%(タイバ)の間であり,500℃ の焼成で一部の鉱石は僅かにク溶率が増加し,700℃ 以上の焼成ではいずれもク溶率が低下する。1350℃ の焼成ではコラリソ鉱石(火成岩質)のク溶率(約10%)に近くなる。一般のリン鉱石のアパタイトの格子定数α0は500℃か900℃までの焼成で顕著に大きくなり, 1350℃に焼成するとコラリン鉱石のアパタイトのα0に近くなる。<BR>硫酸とリン酸との混酸による分解速度は,焼成によってアパタイトの結晶が成長してもク溶率の場合ほど変化しない。硫酸との反応で生成するセッコウが鉱石粒子の表面を覆い,このセッ3ウ皮膜が分解性に及ぼす影響の方が結晶の大きさの影響よりも強いからである。焼成によって鉱石中の炭酸ガス分が全く失われると,混酸と混合した場合の鉱石の分散が悪くなって小塊をつくり易く, このため分解率の低下をきたす。<BR>リン鉱石中の有機物の量は鉱石によって著しい差があり,熱分解の様子も異なるが,いずれも900℃ までの焼成で大部分除かれる。リン鉱石の示差熱分析曲線に見られる300~700℃の発熱の量は,鉱石中の有機物の量にほぼ対応している。
著者
高橋 武重 筒井 知 中塩 文行 竹下 健次郎 坂井 渡
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.161-165, 1970

アルゴンプラズマジェットを用いてプロパンの熱分解反応を試みた。分解反応による主生成物はアセチレンで他に少量のエチレン, プロピレンが生成した。<BR>アセチレン収率に影響するいくつかの因子について検討した。その結果, ジェット入力 3.5kW, 全ガス流量11.Ol/min が最適な操作条件であることがわかった。プロパンを水素で希釈して水素と炭素のモル比 (H/C) を変えその影響を検討した。また同時に 2000~60000K の平衡組成の計算および C<SUB>2</SUB> スワンパンドによる温度測定を行なった。アセチレン収率は H/C の増加とともに増加し, 測定された温度は逆に低下した。この傾向は平衡計算の結果と一致している。温度測定と同時に行なったアルゴン原子線スペクトル (AI=4158. 59Å) の半径方向の大きさも H/C の増加とともに小さくなることより, 反応中に加えられた水素分子がジェット中で吸熱的に解離し, そのためジェット周辺部の温度が低下し, そこに吹き込まれたプロパンがよい収率でアセチレンに転化すると推察される。
著者
柘植 盛男 宮林 達也 田中 誠之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.1896-1898, 1971-09-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

フェノール樹脂およびフェノール化合物-テトラヒドロフラン系について, ゲルパーミエーションクロマトグラフィー (GPC) の分離機構に関連する実験をおこなった。この系においては分子サイズによる分離効果よりも分子内水素結合による分離効果がより大きく働いていると考えられる結果が得られた。すなわち分子内水素結合を形成する分子サイズが大きいハイオルトフェノールノボラック多量体の溶出容量は同じ分子最で分子内水素結合を形成しない且つ分子サイズの小さいランダムノボラック樹脂の溶出容量より大きいことが認められた。この原因としては分子内水素結合により拘束されたフェノール性水酸基とテトラヒドロフランとの相互作用が, ラソダムフェノールノボラック樹脂のそれよりも小さくなり極限粘度 [η] が低下し, その結果 Benoit のパラメーター [η]・M (Mは分子量) が小さくなり溶出容量が大きくなったものと考えられる。同様にレゾール樹脂中のメチロールフェノール異性体についても, メチロール基とフェノール性水酸基との間に分子内水素結合を形成する異性体の溶出容量は分子内水素結合を形成しない異性体のそれよりも, より大きいことが認められた。またこの現象は一般のフェノール化合物についても, またメチルエチルケトンを溶媒として用いた場合にも認められた。
著者
進藤 昭男 相馬 勲 山口 宗明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.658-661, 1968-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
1

ケイ素フタロシアニンの炭化について調べるために, シリコクロロホルムとフタロニトリルから合成されたケイ素フタロシアニンを一度加水分解処理( 濃硫酸にいったん溶解し, 純水中に析出させて行なった) し, 得られた粉末を窒素気流中1000℃ まで9段階に加熱処理して, 重量熱解析, 元素組成, X 線回折, 赤外吸収スペクトル, および電気抵抗の測定を行なった。その結果,800℃ までの重量減少は加水分解処理前のもので25%であったが,加水分解処理したものではわずか15%であった。また500℃ までは顕著な変化は見られず, 500℃ から水素の急激な減少とともに, 赤外吸収スペクトルや電気比抵抗が急に変化する。しかし銅フタロシアニンのような急激な重量減少は見られず, 800℃ 近くまでフタロシアニン結晶としての規則性の一部を残す。1000℃ に熱処理した試料においてまだ窒素が7.5%,ケイ素が7.3%の割合で残っており,X線回折図形からも,かなり難黒鉛化性炭素の傾向を示すことなどがわかった。なお,ケイ素フタロシアニンの加水分解処理による耐熱性の向上は,熱処理の過程でシロキサン結合が形成されるためと考えられた。
著者
岩月 章治 伊藤 勝清 山下 雄也
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1822-1825, 1967
被引用文献数
7

フェニルイソニトリル,<I>p</I>-トルイルイソニトリル,<I>o</I>-トルイルイソエトリル,シクロヘキシルイソニトリルの三フッ化ホウ素エーテル錯体による共重合性を, イソニトリルと共鳴構造が類似しそしてカチオン重合するジアゾメタンとの共重合およびこれらイソニトリル間の共重合により検討した。ジアゾメタンとの共重合性はフェニルイソニトリル, <I>p</I>-トルイルイソニトリル><I>o</I>-トルイルイソニトリル>シクロヘキシルイソニトリルの順である。イソニトリル間の共重合からのモノマー反応性はシクロヘキシルイソニトリル>フェニルイソニトリル, <I>p</I>-トルイルイソニトリル> <I>o</I>-トルイルイソニトリルの順である。<I>o</I>-および<I>p</I>-トルイルイソニトリルの間で<I>o</I>-体の重合性が低いのはオルト位のメチル基の立体障害に基因すると推定される。またイソニトリルがジアゾメタンと共重合することから,イソニトリルとジアゾメタンの重合機構は類似しているものと推定される。
著者
鈴木 仁美 中村 貴代美 丸山 和博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.955-958, 1966-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
35

t-ブチル基を保護基に用い,m-キシレン→5-t-ブチル-m-キシレン→2-クロル-5-t-ブチル-m-キシレン→2-クロル-m-キシレンの経路で-m-キシレンから2-クロル-m-キシレンを合成した。最終段階でt-ブチル基の受容体にm-キシレンを用いれば5-t-ブチル-m- キシレンが再生し, 循環操作が可能となる。この反応につき各種のルイス( Lewis ) 酸触媒を用いてこのt-ブチル基の転移の容易さを検討した。その結果塩化アルミニウムが触媒として最も有効で,塩化鉄(III),塩化アンチモン(V)は脱t-ブチル化反応の触媒と同時に,それによって再生された5-t-ブチル-m-キシレンのクロル化剤としての作用も示し,2-クロル-m-キシレンの見かけ上の収率は高くなる。
著者
武内 次夫 角五 正弘
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1066-1070, 1965
被引用文献数
2

市販ピペッターを用いる熱分解ガスクロマトグラフィーによる合成ゴムの迅速な定性,定量分析に関する研究を行なった。合成ゴムとして, ブチルゴム(IIR),スチレン- ブタジエンゴム(SBR),クロロプレン(CR),アクリロニトリル- ブタジエンゴム(NBR),ブタジエンゴム(BR)を用いた。IIR,SBRを500~700℃ の温度でキャリアーガスの窒素を流しながら熱分解し,再現性について検討した。その結果から,500℃ でIIR-BR(50%IIR)を熱分解し50±4%,700℃ でSBR-BR(50%SBR)を熱分解して50±8%の精度で定量可能であった。つづいてピペッターの最高温度部分に石英ウールを堅くつめて,700℃ でSBR-BRの熱分解を行ない,50%SBRを含む混合物が50±5%で定量できた。そのほか,CR,NBRの500℃ における熱分解生成物をSBRと同様のカラム条件で分析したが,低沸点物が主でピークの分離が悪く,これらの条件での定量は困難であった。
著者
丸茂 秀雄 高井 誠
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.2190-2195, 1965
被引用文献数
2

イミダゾリン型両性界面活性剤から調製した28種の金属塩の低密度ポリエチレンの内部用帯電防止剤としての性能を検討した。<BR>金属塩を練り込んだポリエチレンの加工性,熱安定性は良好で,表面にはブリード(Bleed out)はない。帯電防止性は表面固有抵抗, 摩擦帯電圧などで評価した。さらに接触角, 摩擦係数ならびにそれらの表面物性の洗浄後の変化から, 単分子層形成による内部用帯電防止剤の作用機構を考察した。<BR>内部用帯電防止剤としての性能は金属根ではMg,Ca,Pb,Mn,Ba,Cd塩がすぐれており, アルキル基はC<SUB>11</SUB>H<SUB>23</SUB> より若干C<SUB>17</SUB>H<SUB>35</SUB>の方がよい。<BR>成形法による帯電防止性の差はあまりないが,インフレーション法によるフィルムでは,小規模に行なう場合には内側と外側で表面固有抵抗に差があった。この原因はやはり単分子層の形成不十分なためと考えられる。しかし,摩擦帯電圧は少ししか差はなく,開封後には短時間で外側と同程度のよい性能を示すようになる。