著者
霜田 光一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.387-390, 2022-06-05 (Released:2022-06-05)
参考文献数
7

歴史の小径物理学会設立前後の思い出
著者
甲元 眞人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.195-196, 2017-03-05 (Released:2018-03-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ラ・トッカータ
著者
榎戸 輝揚 和田 有希 土屋 晴文
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.192-200, 2019-04-05 (Released:2019-09-05)
参考文献数
33
被引用文献数
1

科学探査が及んでいない対象を人類未踏の世界と呼ぶならば,多くの人は宇宙や深海を思い浮かべるのではないだろうか.実は,太古から身近な自然現象である雷雲や雷放電も,極端な環境のために観測が難しく,これまで知られていなかった高エネルギー現象が近年になって発見されている未踏領域である.そもそも,雷放電がなぜ起きるかという基本的問題にも未解明な点が残され,高エネルギー物理学の知見が重要となってきた.本稿では,古典的な可視光・電波での観測のみならず,X線やガンマ線の観測,宇宙線,原子核物理や大気化学に広がる「雷雲や雷放電の高エネルギー大気物理学」という新しい分野を紹介したい.雷雲の中では,大小の氷の粒が互いにぶつかりあって電荷分離が生じ,強い電場が生じる.この電場が大気の絶縁作用を破壊し,大電流が流れて強力な電磁波や音を放つのが雷放電である.この雷放電に伴う新しい現象が,1990年代から大気上層で見つかっている.ひとつは,スプライトやエルブスと呼ばれる,奇妙な形状で赤色や青色に発光する高高度大気発光現象(Transient Luminous Event, TLE)である.もうひとつは,雷放電に伴って宇宙空間に放たれる,継続時間がミリ秒で20 MeVまでのエネルギーの地球ガンマ線フラッシュ(Terrestrial Gamma-ray Flash, TGF)である.これらは,雷放電に伴う電場変化で電子が加速され,大気分子の脱励起光や,電子の制動放射を観測していると考えられる.さらに地上観測でも,自然雷やロケット誘雷で突発的なX線やガンマ線も検出された.こういった雷放電に同期した放射に加え,雷雲そのものからも,10 MeVを超えるガンマ線が数分以上も地上に降り注ぐ現象が観測されている.一発雷と呼ばれる強力な冬季雷が発生する日本海沿岸の冬季雷雲は世界的にみても稀で,雲底も地表に近いために大気吸収の影響が小さくなり,こういった放射線の測定に有利な環境になっている.そこで我々も10年以上にわたって放射線測定器を設置し,雷雲からのガンマ線を実際に数多く観測してきた.この準定常的なガンマ線の発生機構は,雷雲内の強い電場で加速されなだれ増幅した相対論的電子からの制動放射と考えられており,地球大気という密度の濃い環境下での電場による粒子加速という珍しい物理現象の研究が可能となっている.さらにここ数年で新検出器による多地点マッピングを実現したことで,思わぬ発見にも出会うことができた.雷放電で生じるガンマ線が大気中の窒素や酸素の原子核に衝突し,光核反応を起こすことが明らかになったのである.光核反応で原子核から大気中に飛び出す中性子と,生成された放射性同位体がベータプラス崩壊で放出する陽電子を地上観測で検出できたのだ.これは,雷放電が我々の上空で陽電子を生成するという面白い事実を明らかにしたのみならず,雷放電の研究が原子核の分野にも広がることを意味する.また,光核反応で雷放電が大気中に同位体15N,13C,14Cを供給することは,大気化学とのつながりでも今後の研究の進展が期待できる.本稿では,学術系クラウドファンディングや市民と連携したオープンサイエンスへの試みも紹介しつつ,国内外での高エネルギー大気物理学の潮流と我々の学際的な挑戦を紹介したい.
著者
木下 東一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.228-230, 2017-04-05 (Released:2018-03-30)
参考文献数
25

南部さんとは私の東大の物理学科大学院特別研究生時代とプリンストン高等研究所(Institute for Advanced Study; IAS)のvisiting member時代の二度にわたる共同研究の機会があった.
著者
石村 多門
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.636-644, 1999-08-05 (Released:2008-04-14)

いわゆる「構造主義」の思想的核心として, 「構造的因果性」なる概念を取り出すことができよう. それは, フランスの哲学者アルチュセールが提起した, 全く新しい因果概念である. 「因果性」という言葉で, 我々がまず真っ先に思いつくのは, 時間的先後関係によって因果性を捉える「継起的因果性」の観念であろうし, 少数の人は, 全体が部分を規定するという「全体的因果性」を思い浮かべるかもしれない. しかし, そうした因果観念は「非科学的」なものにすぎず, これらの観念に依拠して思索を進めている限り, 科学的認識を構築することはできない, というのがアルチュセールの主張であった. 本稿では, こうした挑戦的な企図に立った「構造的因果性」概念の意義について, これまで余り論じられてこなかった視角から敷延することに努めたい.
著者
田島 裕康 布能 謙
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.621-626, 2022-09-05 (Released:2022-09-05)
参考文献数
14

大きな流れは大きな抵抗を生む.こうした関係は,電気抵抗や摩擦など,自然界のいたるところに見出すことができる.例えばオームの法則によれば,発熱量は電流量の二乗に比例する.近年,こうした関係をより一般に「流れの大きさ」と「エントロピーの増大速度(散逸)」の間の関係と捉えた様々なトレードオフ不等式が,非平衡統計力学の分野で導出されている.なにを流れの大きさととらえるかには確率の流れからエネルギー流まで幅があるが,本質的なメッセージは同一である.すなわち,流れを大きくすることと散逸を小さくすることは両立しない.この「流速・散逸のトレードオフ」は,まず物理学の基礎的な面において非常に重要な意味を持つ.具体的には,このトレードオフは熱力学第二法則をより精密にしたものとして捉えることもできる.熱力学第二法則がエントロピーの増大の程度を予言しないのに対し,このトレードオフはエントロピーの増大速度の下界を指定する.流速・散逸トレードオフはまた,量子計算におけるゲート操作の速度限界や,分子モーターの動作精度と熱力学的コストの関係など多岐にわたる応用を持つ.特に重要な応用として熱機関の効率とパワーの間のトレードオフがあげられる.熱機関の効率上限がカルノー効率であることはカルノーの定理によって予言されるが,この効率上限を達成する方法としてよく知られるカルノーサイクルは,パワーを0にしてしまう.そして,カルノー効率を達成しつつパワーを正にする方法があるかないかは,少なくとも熱力学の範囲では結論が出ない.ところが流速・散逸トレードオフから導かれる白石–齊藤–田崎限界は,そのような方法が存在しないことを厳密に示す.熱機関は現代文明の基礎をなすデバイスの一つなので,このことは非常に重要な結論であるといえる.このような重要性から研究が進む一方,量子重ね合わせが流速・散逸のトレードオフにどう影響するのかについては,あまり理解が進んでこなかった.このトレードオフは不可逆性とエネルギーの流れの間の基本的な関係であり,そこに量子効果がどのような影響をもたらすのかは非常に興味深い問題と言える.さらに,このトレードオフは熱機関の性能に対する制限を与えるため,このトレードオフに量子効果がどのように寄与するかを理解できれば,量子効果が熱機関の性能にどのような影響を及ぼせるかを理解できる可能性が高い.こうした状況を踏まえ,我々は流速と散逸のトレードオフ,特に熱流と散逸のトレードオフに対する量子重ね合わせの影響を解析し,系統的な規則を得ることに成功した.得られた規則は以下の3つである.1. 異なるエネルギーの準位間の重ね合わせ(コヒーレンス)はトレードオフを強める.すなわち,異なるエネルギー間のコヒーレンスは熱流のエネルギーロスを強める.2. 縮退間のコヒーレンスはトレードオフを弱める.すなわち,縮退間のコヒーレンスは熱流のエネルギーロスを弱める.3. 縮退間のコヒーレンスが十分な量ある時には,トレードオフが実効的に無効化され,熱がエントロピーの増大なく流れることが可能になる.このことは,マクロな大きさの熱の流れで,エネルギーロスのないものを実現できることを意味する.我々の規則は直接的に熱機関をはじめとしたエネルギーデバイスに応用できる.特に規則3からは,カルノー効率を実効的に達成しつつ,有限のパワーを持つエンジンを実際に構成できる.こうした夢のエンジンの実現のための最初の手掛かりとなること,そして不可逆性と量子性の深い関係を理解する一助となることが期待される.
著者
川合 光
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.10-15, 1983-01-05

原子核の構成要素は陽子と中性子であり, それをπ-中間子が媒介して結びつけている事は周知である. これら以外にも強い相互作用をする粒子は多く知られており, ハドロンと呼ばれる. ハドロンの構造は長い間謎であったが, ここ数年の格子ゲージ理論の発達によってほぼ解決されたようである. 格子ゲージ理論はゲージ場の理論を構成的に定義する今のところ唯一の方法であり, このおかげで場の理論が数値的に計算できるようになった. ここでは, 格子ゲージ理論の基礎を中心に解説しようと思う.
著者
和達 三樹
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, 2011-01-05
被引用文献数
1
著者
笹本 智弘
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.318-319, 2017-05-05 (Released:2018-05-05)
参考文献数
3

現代物理のキーワード非平衡ゆらぎの普遍性
著者
戸田 盛和
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.185-188, 1996-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31
被引用文献数
1
著者
広重 徹
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.792-793, 1972-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
2
著者
和田 純夫
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.393-400, 1989-06-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
1

水素原子を波動関数で表すということと同じレベルで, 時空やその中のすべての物質を含む宇宙全体を波動関数で表そうとするのが, 量子宇宙論である. 古典的な宇宙論では, 宇宙は big bang から始まった事になっているが, ほんとうに始まりを議論しようとすれば, どうしても量子論が必要になる. ここ数年, インフレーション宇宙というものの後に big bang が生じたという模型が議論されてきたが, これを量子論で考えようとしたのが, 最近の量子宇宙論の研究の直接の動機である. ここでは宇宙論的側面と, 付随して問題になる量子力学そのものの解釈論など原理的側面を含めて, 最近の発展を解説する.
著者
菅野 浩明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.524-525, 2016-08-05 (Released:2016-11-16)
参考文献数
8

現代物理のキーワード数え上げ不変量の母関数から見えてくるもの
著者
小山 信也
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.436-443, 2004-07-05 (Released:2008-04-14)

数論,ゼータ関数論と量子カオス,ランダム行列理論の関わりについて概説する.前半部では量子カオスが数論的であるという意味,そして数論におけるスペクトルの重要性とその研究の方法について概説する.後半部では量子カオスの主要テーマである量子エルゴード性を解説し,それらが数論的多様体に関して解かれてきた歴史を振り返るとともに,最近の結果を報告する.また,ランダム行列理論と数論の関わりを,その端緒から振り返り,末節では最近の結果について述べる.
著者
一柳 正和
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.734-740, 1996-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
13

局所平衡理論を越える目的で提案された拡張された熱力学の特徴について解説する. 新しい理論では散逸流束を加えた熱力学的変数の組を用いて一般化されたエントロピーを定義する. 系の力学は, 示量変数に対するバランス方程式の形式で記述される. 散逸流束に対するバランス方程式は, 熱力学第2法則と抵触しないように決定される. 一般化されたエントロピーと統計力学的エントロピーの関連性が論じられる.