著者
所 康子 藤井 富美子 皆川 基
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.125-132, 1984

牛血液を用いて, 浸漬法により血液人工汚染布を作製し, 各種布に対する血液たん白質付着量および血液たん白質汚れの水に対する溶解性, およびその溶解性に及ぼす温度およびpHの影響について検討を行った.<BR>布に対する血液たん白質付着量は, 血液たん白質濃度に比例して増加し, 疎水性繊維織物に対する付着量は, 親水性繊維織物よりも多くなる.同じたん白質濃度においては, 血清たん白質付着量は全血たん白質より多くなる.<BR>布に付着した血液たん白質の水に対する溶解性は, 薄膜状に布に付着している血液たん白質は溶解しにくく, 一方, 層状に付着しているものは分散されやすい.<BR>血液たん白質汚れは絹二羽重, ナイロンモスリン, ポリエステルモスリンから溶解されやすく, 一方, 綿カナキン, アクリルモスリンから溶解されにくい.<BR>血液たん白質汚れの水に対する溶解性は, 80℃で著しく減少し, 血液たん白質の等電点のpHで, その溶解性は極小となる.
著者
平松 隆円
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1032-1037, 2012

<p>化粧は,身体に直接施すものであるため,その使用が各種のアレルギーなどを誘発する可能性がある.歴史的に,消費者は化粧の使用により鉛中毒や黒皮症に冒されたりしてきた.その時々で,企業の経済活動が優先され,また情報提供や注意喚起の稚拙さの問題が生じた.企業は,どのように消費者や社会と関わり,経済活動をおこなうべきなのか.また,消費者は企業の提供する製品や情報を,どのように受け止めていくべきか.本研究では,化粧品による鉛中毒と黒皮症の事例を取り上げ考察した.</p>
著者
箱井 英寿 柏尾 眞津子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.143-147, 2010

<p> 本研究では,健康意識が,衣食住の各生活領域にどのように関わっているのかを検討する.85の男女大学生を対象に調査を実施した結果,以下のことが明らかとなった.<br> 1)健康意識に関する項目を因子分析した結果,対人配慮志向,能動的志向,楽観的志向,非執筆志向の4因子が見出された.2)健康に関する一般的な行動項目を因子分析した結果,健康管理,快適志向,ふれあい,病気リスク回避の4因子が見出された.3)衣食住生活に関する行動を因子分析した結果,衣生活,食生活,住生活における健康行動構造が見出された.<br> これらの関連を検討した結果,対人配慮意識が人や動物とのふれあい行動や病気リスクを回避する行動を規定していること,能動的志向意識が衣生活に関連した行動を規定していることなどが見いだされた.また,他者とのふれあい行動と衣生活行動が関連していることが見いだされた.このように本研究からは,食生活に関する行動のみならず,装うことが健康行動に関連することが示唆された.</p>
著者
閏間 正雄 富森 美緒
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.218-221, 1979-06-25 (Released:2010-09-30)

被服の長期着用時に生じるテカリと被服の製作過程中で受ける布地のアイロン, プレス時に生じるテカリについて, 女子学生を対象としてアンケート調査を行なった。その主な結果は, 次の通りである.1) 着用テカリ, プレステカリとも被調査者の多くが経験している.その割合は, 着用テカリの方が大である.2) 着用テカリの経験者の多くは, その発生が被服を着用して2年以内にみられたとし, また被服の種類には, 学生服上着, 同スカート, スラックス類をあげた.3) 着用テカリの発生した被服の部位は, 主として, ひじ, 尻部等であった.4) 着用テカリの発生した被服の色は, 主として紺, 黒また, 被服の素材は主として毛に, 布地組織は主として斜文織にみられた.5) プレステカリの発生した布地の色は, 主として紺, 黒等, また布地の素材は主たる毛, 毛/ポリエステル混紡のほか綿, ポリエステル等, 布地組織は主たる斜文織のほかクレープ, ジャージー等であった.6) 着用テカリ, プレステカリの両テカリ発生の実態には, 被服や布地の色, 素材, 組織の点で有意な差があった.
著者
内田 幸子 小柴 朋子 田村 照子 森本 美智子 田辺 文憲
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.44-51, 2014

<p>臨床現場で働く看護師にとってナースウェアは,看護業務を行っていく上で不可欠であり,超高齢社会に突入した我が国において,高齢者のケアに多くの時間を要する看護師の衣環境の工夫は急務である.本研究の目的は現状のナースウェアについて調査し,問題点を抽出して今後の改善課題を明確にすることである.アンケート調査は東京都,山梨県で実施,対象者は554名である.ナースウェア選択時に重視する項目は「動きやすさ」「素材」「デザイン」が上位で,回答者の45%が現行のナースウェアに「動きにくさ」を感じていた.ナースウェアの型としてはパンツスーツ型が,開きではファスナー開きが好まれていた.ナースウェアの色は「白」が最も好まれ,次いで「ピンク」であった.洗濯は大多数が病院契約のクリーニング業者で行っていた.ナースウェア選択基準の特性について因子分析を行った結果,耐洗濯性,素材,付加機能,デザイン性,動きやすさを重要視していると解釈することができた. </p>
著者
渡邊 純子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.113-118, 1982

日常生活における静電気による帯電を, 衣服材料3種と, 床材4種を組み合せて, 実験的に再現し検討した.実験室の環境条件は, 温度24±1.5℃, 湿度28.2±2.5%で, 被検者に椅子からの立上がり作業を行わせ, 次のような結果を得た.<BR>1.椅子からの立上がりによる帯電は, 椅子のビニルレザーと衣服材料との剥離によるものであり, 両者の摩擦帯電列の遠近が著しく作用し, その結果, ビニルレザーから遠い毛が最も帯電位が高く, それより近いポリエステルやアクリルが予期していたよりも低く現われた.<BR>2.制電性加工のカーペットは, 帯電圧が低い場合は制電効果が少ないが, 他の床材, すなわちナイロンカーペット, アクリルカーペット, クッションフロアーの帯電が, 電撃ショックの閾値である2kVないし3kVを越えるような条件では効果が現われ, 他の床材では最高14kVまで帯電するのに対して, 常に2kVから3kVに抑えられた.記録を見ると, 何らかのストッパーが働くかのように, それ以上帯電が増加しなかった.<BR>3.電撃ショックの閾値を越える帯電の減衰時間を観察したが, 10分以上経過しても閾値まで下がらないものがかなりあった.<BR>4.帯電性の個人差もかなり大きかったが, その原因としては, 皮膚の帯電列上の個人差と, 皮膚水分の人による差や, 日による差が考えられる.