著者
岡田 浩樹
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.284-294, 1997

一般に韓服 (ハンボク) とは, 韓国における伝統的な衣服の総称である.原色をふんだんに用いた女性のチマ・チョゴリは韓国人にとって伝統的民族文化のシンボルとなっている.<BR>しかし, 今日のようにチマ・チョゴリが韓民族文化のシンボルとなり, またそのように語られることには, 韓国人が日本による植民地統治とその後の近代化の中で他者 (異文化) を意識し, その視線を内面化していく過程を読みとることができる.<BR>本稿は, 近代以降におけるモノとモノをめぐる語りをテキストとして読みとることにより, 特定のモノがある伝統や民族といったシンボリックな価値を帯びていく過程を明らかにする.さらにそのような過程の枠組みである近代以降の社会・文化を読み解いていこうとする試みのひとつである.
著者
石原 久代 伊東 優里
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1001-1010, 2017

<p><tt>高齢女性に合う服装色を検討するために,若年時と高齢時の適合服装色の差異について顔面の加齢再現ソフト「oldify」を用いて研究を行った. 実験は,24 名の若年女性の顔面写真を試料とし,10 形容詞対を用いてSD 法の官能検査を行い,クラスター分析により3 名のモデルを選出した.この3 名の顔面を「oldify」により老けさせ,若年時と高齢時の顔面に8 色の服装をCGで合成させ48 試料を作成した.この試料を用いて前記と同様のSD法で実験を行い,併せて見た目年齢を問う調査を行った. その結果,3 名とも特に高彩度の赤の服装色で若年時と高齢時の印象差が大きかった.着装イメージの因子分析では,若年時,高齢時とも活動性と評価性の2 因子が抽出され,活動性の因子には赤,評価性の因子には高明度色が影響することが判明した.また,視覚的年齢評価では高彩度の青,白,高明度赤が若く,黒,暗い赤,暗い青が高齢に見えることが判明した</tt><tt>.</tt></p>
著者
薩本 弥生 手塚 香代
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.701-709, 2005

本研究では, 着装シミュレーションソフトを使用して着用者の顔の印象が着装イメージに与える影響について検討した.顔の印象により, 服のみの状態とで着装イメージに違いがあるか, また, 被験者の性別やファッションへの関心度, 着用者との親しさの度合いによって評価に違いがあるか検討した.横浜国立大学の学生86名を対象に6種の服に関して「服のみ」, 着用者の「顔つき着装イメージ」の各々について形容詞対を用い7段階SD法による官能評価を行った.<BR>因子分析の結果, 「服のみ」では「性別と時代性の因子」・「年齢性と明るさの因子」・「装飾性の因子」の3因子が抽出され「モデルの顔つき着装イメージ」では「年齢性と装飾性の因子」・「似合う評価の因子」・「性別性の因子」の3因子が抽出された.両者を比較すると, 「モデルの顔つき着装イメージ」には「服のみ」の着装イメージの基本因子に「似合う評価の因子」が加えられていることが分かる.「着装イメージ」の因子負荷量に着目し「着装イメージ」の評価に影響する因子を検討したところ, 当初の予測に反してモデルとの面識の度合いの着装イメージへの影響や, ファッション関心度による着装イメージへの影響は見られなかった.一方, 顔の印象により着装イメージの評価が異なる場合があることがわかった.
著者
坂本 晶子 福井 彩華 山脇 真里
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.665-668, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
2

バストは重力により,たわむように変形し,上部の皮膚が伸ばされるという負荷を受けている.「重力に負けないバストケアBra」は,カップ内部に中央付近が本体と分離するシートを持つ構造であり,シートは立位時だけでなく,日常生活で主に着崩れの原因となる前屈時にも対応して機能 する.立位時は,皮膚伸長を抑制して微小重力環境下に近いひずみのない自然なバスト形状に整え,前屈時にはシートの着圧バランスが変わることでバスト形状変化を抑制し,日常生活における重力の影響を軽減することが可能である.
著者
瀨尾 香
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.629-635, 2018-08-25 (Released:2018-08-25)
参考文献数
9

本研究は,個別対応型のアパレル3D-CAD に搭載されているバーチャルボディに着目し,その有用性を確認する為に,アパレルCAD ソフトウエアサービス会社,東レACS 株式会社(CREA COMPO Ⅱ)とデジタルファッション株式会社(DressingSim LSX)2 社のバーチャルボディを対象として,リアルボディとの比較検討を行った.結果,各社に搭載されているバーチャルボディは,同種類のリアルボディをバーチャル化したものであっても,それを使用して作成したパターンにおいては,細部で相違が認められ,各社で異なることが確認された.バーチャルボディの基準線をどう設定するか,リアルボディをバーチャル化する際におけるXYZ 軸の線の調整方法など検討する必要があることが示された.
著者
武本 歩未 大塚 美智子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.303-316, 2021-05-25 (Released:2021-05-25)
参考文献数
14

アパレル3D-CAD を用いた衣服設計の実用化に向けて,さまざまな体形のバーチャルボディの生成方法の提案を目指し,人体の手計測データから三次元人体形状の推定を試みた.使用データは,20~70 歳代女性123 名の手計測データと三次元人体形状データである.人体形状データの主成分分析から得た主成分得点と手計測データの重回帰分析により主成分得点推定式を作成し,推定形状を生成した.検証用データを用いて,推定式の精度,推定形状の再現性の検証を行った.その結果,第1,2 主成分得点推定式は精度が高く,推定主成分得点の残差が小さい場合,実測人体形状の体形特徴を精度高く再現した推定人体形状が生成できた.しかし,第3,4,5 主成分得点推定式は,主成分得点と手計測データの相関関係が低いため,精度が低く,実測人体形状の体形特徴を十分に再現した推定人体形状は生成できず,人体形状を表すための手計測データの項目選定が必要であることが分かった.
著者
和多田 淳三 有澤 正樹 松村 幸輝 縄田 文子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.508-513, 1992

本論文では, ニューラルネットワーク (neural network) をもちいたアパレルに関する消費者行動のクラスタリング分析を提案している.本論文の目的は, 消費者の属性や判断をもとにアパレル商品に関する消費者行動の専門家の分析をモデル化することである.<BR>本論文では, ファッションの専門家によって提示された消費者のファッションスタイルクラスターの結果をニューラルネットワークに学習させ, それによって消費者の属性や判断による消費者の複雑で困難な分類を行う専門家の潜在的な能力を実現している.実例を用いて本モデルが消費者のクラスタ分析をファッションの専門家が行うのと同等の能力を実現していることを示している.
著者
須田 紀子 大平 通泰
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.148-152, 1979

ドレープ形態を最も単純化した形のモデルすなわちゴムの円環一本を糸で吊り下げた円環モデルのドレープ形成機構についてはすでに検討を行った.<BR>本報では, この円環モデルの実際の応用例の一つとして, 裾回り (試料長) およびウエスト回り (支持盤の周) を一定とし, 垂下長を5段階に変化させたフレヤースカート状モデルを作り, 各垂下長の時に生ずるひだ (挫屈波形) の形態および数等について考察した.<BR>垂下長が短いときの方が挫屈波形の形態が明確であり, 長くなるに従って乱れが出てくる.また, 薄地のものより厚地のものの方がより波形が明確である.<BR>ノード数は円環モデルの結果と同様に, 垂下長の短い方が多く, 長さが増すにつれて減少する傾向が認められた.<BR>さらに, 円環モデルのノード数の計算式を適用し, ノード数の理論値を求め実験値と比較してみると, ほぼ類似した傾向がみられ, 本報のモデルにも式の適用は可能と考えられる.
著者
川上 梅
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.229-238, 2018-03-25 (Released:2018-03-25)
参考文献数
10

2012-13 年に小・中・高生の男女749 名を対象にして,24 形容詞それぞれにふさわしい色を56 色のカラー表の中から2 色選択するという調査を行い,各形容詞がイメージする色をトーン・色相に分けて男女別学年別に集計し度数表を作成した.これらをデータとして小・中・高生の色彩感情と被服色彩嗜好(特に,「好きな」色と「着たい」色)をコレスポンデンス分析およびクラスター分析を使用して検討した.その結果,(1)Pink は,女性的で甘いイメージであり,暗いイメージ,つめたいイメージ,鮮やかなイメージとは対照的なイメージとして定着していること,(2)男女共に「好きな」色のトーンは集中が顕著であること,「好きな」色の年齢による違いは少ないが,「着たい」色は年齢と共に多様化し,特に高校生で大きく変化すること,(3)男子に比べて女子は,好きな色・嫌いな色を色のトーンで判断しており,着たい色の色相が若年から多様化していること 等が明らかになった.
著者
高木 麻未
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.129-134, 2010

<p>本研究の目的は,新たな友人関係を形成する際に他者の被服がどのような影響を与えるか,また個人がもつ友人とのかかわり方と被服行動の関連の検討である.大学生を対象に調査した結果,新たな友人関係を形成する際には,落ち着いた服装や自分と似た服装であると,話しかけやすく関係を構築しやすいと捉えられていた.さらに,同調的な友人とのかかわり方は同調を図るものとしての被服関心を,全方位的なかかわり方は個性や対人的外観を整えるものとしての被服関心を高めることがわかった.</p>
著者
渡瀬 久也 小口 忠清 堀川 精一 佐々木 えつ子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.69-72, 1978

草木染は趣向性に富んだ色彩をだすことができるため, 紬 (つむぎ) などの伝統織物に多く用いられているが, 発色, 染着あるいは染色堅ろう度増進のため, おもに金属塩が染色助剤として用いられる.そのなかには絹繊維に著しい質的劣化をおこさせるものがあるので, 本試験では染色助剤と絹繊維のぜい化性との関係について主として強力および伸度を中心にして追究した.染色助剤として代表的な硫酸アルミニウムカリウム, 重クロム酸カリウム, 塩化第ニスズおよび木酢酸鉄を, また染料としてすおう, 楊梅 (皮) およびコチニールを用いて実験し, つぎのような結果を得た.<BR>(1) 染色助剤の種類によるぜい化の程度のちがいは, 光照射を行なうことにより顕著となった.<BR>(2) 光照射によるぜい化は, スズ助剤が最もはげしく, クロム助剤が最も緩慢であった.<BR>(3) 処理回数の増加により, また光照射時間の増加によりぜい化は促進された.<BR>(4) ぜい化の程度は, 助剤のpHよりもその溶液に含まれる金属の種類と量に影響されるようである.<BR>(5) 染料問のぜい化の差異は見られないようである.