著者
汪 清 閏間 正雄 本間 博 田村 照子 永井 伸夫
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.561-569, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
36

本研究の目的は,暑熱環境下(34℃,70%RH)で足部冷水浴が体温調節機能及び自律神経機能に及ぼす影響を検討することである.実験は健康な20 代女性15 名を対象に,15℃,15 分間の足部冷水浴を行い,舌下温,皮膚温,指尖部皮膚血流量,背部発汗量,及び心拍変動を測定した.その結果,舌下温は,冷水浴中から冷水浴後にかけて有意に低下した(p<0.01).冷水浴中各部位の皮膚温はコントロール群と比べ全て低値を示した.また,各部位の皮膚温は冷水浴前より低下し,その低下度は足背部>足趾部>下腿部>指尖部>胸部>大腿部>前額部>上腕部の順であった.冷水浴後,胸部,大腿部,足背部と足趾部皮膚温は回復したが,前額部,指尖部,下腿部は回復しなかった.平均皮膚温は冷水浴中に有意に低下し,冷水浴後は有意に上昇した.指尖部皮膚血流量及び背部発汗量は冷水浴中に減少したが,冷水後にやや増加した.RR 間隔とHF は冷水浴中から冷水浴後にかけて上昇し,副交感神経活動を促進,リラクゼーション効果を示した.
著者
大久保 智生 鈴木 公啓 井筒 芽衣
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.113-120, 2011

<p>本研究では,他者のピアッシングに対する許容や,青年のピアッシングの実態,また,ピアッシングを行った動機,そしてそれらの関係性について,質問紙調査により検討した.その結果,耳とへそ以外へのピアッシングについては大多数の者が許容していないことが明らかとなった.ピアッシングの経験については,女性のほうが多く,開穴数については,1から3個が多かった.そして,ピアッシングを行った動機については,「ストレスからの回避」,「手軽な自己変容」,「ファッション性の追及」の3つが抽出され,開穴数と開穴方法と関連していることが示された.最後に,青年のピアッシングに関する研究の今後の方向性について論じた.</p>
著者
鄭 美愛 三吉 満智子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.780-787, 2003

目的: 本研究では, 第1報で報告したチェストを説明変数とした回帰式を主として用いた成人男子用平均原型を, さらに汎用原型とすることを目的とし, 本報では特に肩傾斜について検討した.<BR>方法: 被験者は53名の男子 (25~29歳) の適合原型を求め, その各部寸法についてチェストによる回帰式を求め男子原型を作製した.ただしチェストと相関の低い肩傾斜は平均値による定数とした.13名の石膏像を作成し, それを用いて汎用原型としての肩傾斜の許容範囲を調べるため平均肩傾斜及び, 1°, 2°, 3°ゆるめた原型を着用させ, 官能検査を行なった.また着用時の原型肩先と人体肩先部との空間上の浮きを肩先空隙高さとし三次元処理可能なコンピュータ上で計測し, 官能量との関係を検討した.<BR>結果: 官能検査と空隙高さ計測結果, 汎用原型は平均原型肩傾斜より前後それぞれの肩傾斜を平均的な人に対しては1.03°~1.1°ゆるめることによって適合性を保ちながらカバー率を上げることが出来るという結果が得られた.この結果は平均肩傾斜よりなで肩方向50%は補正し易さにおいてカバー可能とすれば, 正規確率分布上65.8%をカバーすることとなると言える.<BR>本報告の汎用原型肩傾斜のカバー率を上げるための方法論は有効であると考えられた.
著者
山本 直佳 川端 博子 小柴 朋子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.606-613, 2016

<p><tt>本研究は,がん治療の副作用である脱毛時に利用される医療用ウィッグの温熱特性を明らかにすることを目的とする.サーマルマネキンによる</tt>6 <tt>つのショートヘアスタイルのウィッグの熱抵抗を計測した.あわせて剃髪した</tt>10 <tt>名の男性被験者による夏季を想定した環境下でウィッグを着用し,快適感とウィッグ内温度と湿度を計測した.結果は以下の通りである.</tt> (1) <tt>顕熱抵抗値は</tt>0.06<tt>(℃・</tt>m²/W<tt>)前後で,ウィッグ間の差は少なかった.潜熱抵抗値は</tt>0.07<tt>(</tt>kPa<tt>・</tt>m²/W<tt>)前後で,人工毛の割合が多くなると高くなる傾向を示した. </tt>(2) <tt>発汗を想定した人工気候室での静止時の着用実験では,</tt>10 <tt>人中</tt>9 <tt>人が頭部に暑さを感じ,</tt>8 <tt>人が蒸れを感じていた.この間のウィッグ内温度は</tt>36.5<tt>℃,湿度は</tt>80<tt>%</tt>RH <tt>であった.</tt></p>
著者
楊 海英
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.272-281, 1996-06-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
20

北アジアの遊牧民, モンゴル族は天然繊維であるヒツジの毛でフェルトを造る.フェルトはテント式住居をはじめ, 屋内の敷物, 防寒具や荷袋など日常生活に幅広く活用されている.フェルト造りは毛刈り (shearing) からはじまる.モンゴル族は年に二回春と秋に毛刈りをおこない, 秋の毛刈りが済むとフェルト造りがはじまる.フェルト造りは解絮 (loosening) , 積層 (laying) , 水かけ (sprinkling) , 巻きあげ (rolling) などのプロセスをたどり, 最後には主としてウマなど大型家畜で曳いて (pulling) 縮充を完成させる.上述の諸段階はいずれも儀礼をともない, 長い祝詞を唱える.本論文は実地調査にもとづき, 民族誌を参照し, モンゴルにおけるフェルト造りの方法論と儀礼性を抽出しようとするものである.
著者
高月 智志子 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.466-473, 1993-09-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
7

前報では, 和服の帯電性に及ぼす要因が, 新しく試作した歩行モデル装置を用いて検討された.これに続き, 本報では, 気温20℃, 30%RH, 気流0.2m/s以下の条件下における同様の着用実験が, 10名の健康な女子を対象として行われた.対象とした和服素材は, 絹, 未加工ポリエステル, 加工ポリエステルである.未加工ポリエステルの着物は, 対象中最高の帯電電位 (6.0kV) を示し, 一方, 加工ポリエステルは最低 (1.0kV以下) を, 絹はその中間の値を示した.結果は, 前報の装置実験の結果と高い相関を示したが, 着用実験における絹の帯電電位は装置実験の結果に比べて低下がみられた.その理由としては, 絹の吸湿性が非吸湿性のポリエステルより人体からの不感蒸散の吸収に有効に作用したためと考えられる.人体の帯電電位は, 0~0.075kVを示し, 和服への帯電位に比して著しく小さく, これは, 人体の静電容量が着物より大きいためと考えられた.107m歩行後の人体の帯電電位は, 着物の裾上10cmで測定された電位と高い負の相関 (r=-0.975) を示した.
著者
滝沢 隆 川口 寛史 名倉 俊成
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.834-837, 2016-11-25 (Released:2016-11-25)
参考文献数
4

形態安定加工ドレスシャツに関して,洗濯・乾燥後そのまま着用できるノーアイロンレベルを目指して,綿100%織物でW&W 性4 級確保の開発を行った.セルロース系の天然繊維である綿は,元々「縮む」「シワになる」という欠点があり,これを抑制するため,液体アンモニア加工及び樹脂加工を施して綿繊維を改質した.樹脂加工は,セルロースの非結晶領域のヒドロキシル基(OH 基)を,反応性の樹脂剤で架橋結合させるもので,この架橋結合によって形態安定性を得ることができるが,この架橋結合が一部分に偏在化してしまうと,生地強度が大きく低下する.この偏在化を最小限に抑えて繊維内での架橋を均一化させるため,樹脂加工工程の各種条件と使用薬剤等の工夫を行った.更に,シャツ縫製・プレス後に熱処理を行い樹脂反応させる,ポストキュア方式を組み合わせた.これにより綿100%素材でW&W 性4 級レベルを完成させ,洗濯してもシワが残らないドレスシャツを完成させた.
著者
石原 久代 栃原 きみえ 椙山 藤子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.33-38, 1985-01-25 (Released:2010-09-30)
参考文献数
10

消費者が被服を選定する場合, その色, 柄, デザイン等が着装者の個性に適合するか否かは, 審美面において重要な問題であるが, 現在のところ理論的に解明された研究は少ない.そこで本研究は, 人の個性を表現する要因の中で顔面の形態的要素を取り上げ, 服装色との関係を官能検査により実験を行い, 因子分析・数量化皿類などの手法を用いて検討した.その結果, 服装色の感情効果は活動性・評価・力量性の因子で表わすことができ, 評価の因子を持つ形容詞対には高明度の色が顔面の形態に関係なくよく調和し, 逆にさえた緑, 黄緑等が調和しにくいという結果になった.また, 個性別では, 活動性・力量性の因子を持つ形容詞対に大きく影響する低明度の色は, 強い個性の人には調和しやすいが, 弱い個性の人には, 調和しにくいという傾向がみられた.なお, 白については, 顔面が整っている人程, 調和しやすいという結果であった.