著者
山本 江
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.111-117, 2019 (Released:2020-05-01)
参考文献数
31

ヒトの足は長い年月をかけて二足歩行に適したものへと進化してきた.足は多数の骨と靭帯から成る複雑な構造を有し, いわゆる「土踏まず」と呼ばれるアーチ構造や爪先関節は歩行において重要な役割を果たしている.これまでに開発されてき た人型ロボットは比較的単純な足部を持っているものが多いが,二足歩行の実現にはヒトの持つ足の機能を実現することが重 要である.本稿では特に爪先関節に焦点を当てて,人型ロボットの足部機構の開発に関する従来研究を紹介する.
著者
杉本 真樹 谷口 直嗣 新城 健一
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.35-40, 2019 (Released:2020-02-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

医療分野におけるXR(VR・AR・MR)は,双方向性や臨場感を向上したテレイグジスタンス,テレプレゼンス,超臨場感コミュニケーションなどと共に,遠隔医療・手術シミュレーション・トレーニングにも活用されている.モーションセンサやVR 端末も低価格化され,暗黙知であった医療手技が,遠隔地や仮想空間で共有されている.動作や認知行動までも構造化データとなり,集積されたビッグデータの効率的な活用が期待されている.遠隔医療も医師- 医師間から医師- 患者間へと拡大し,医療業界と一般社会の閉鎖的な境界がさらに解放されていき,社会が医療を担う時代の到来が期待されている.
著者
吉川 雄一郎 浅田 稔
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.231-236, 2009 (Released:2016-04-19)
参考文献数
26

ヒトの乳児は周りの大人とのどのような相互作用を通じて,またどのような仕組みで,大人が話す言葉を獲得するのか.本稿では,この問題に対して,従来の観察に基づくアプローチを補うことが期待されている認知発達ロボティクスでの取り組みを取り上げる.はじめに,親との相互模倣を通じて乳児が母音を獲得していく過程を構成する研究について紹介し,親が乳児を模倣することの役割と仕組みについて議論する.次に,乳児に対する物の提示や物の名前の教示などの働きかけを含む,より自然な養育者の振る舞いのもとで音声模倣および語彙を獲得する過程を構成する研究を紹介し,これらの共発達を可能にする仕組みについて議論する.
著者
尾崎 まみこ 西田 健
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.119-122, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
19

社会性昆虫は,巧妙なケミカルコミュニケーションを様々に用いて,血縁集団を維持している.そこで利用される種固有の化学物質はフェロモンと呼ばれ ,その化学構造が次々に明らかにされている.本稿では ,アリの道しるべフェロモンと,警報フェロモン,巣仲間識別フェロモンの 3つについて,それらの化学情報が,アリの嗅覚器でどのように受容され,脳へ伝えられ,行動へと繋がるか,近年明らかになりつつある神経機構を概説する.
著者
山本 興太朗
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.237-244, 2011-11-01

植物の地上部器官は光の方向に屈曲する屈光性を示す.屈光性の機構としては古くから青色光受容体と植物ホルモンであるオーキシンの重要性が指摘されてきたが,その具体的な分子機構は不明であった.最近,モデル植物シロイヌナズナを利用した分子遺伝学的研究によって,光受容体はフラビンモノヌクレオチドを発色団とするフォトトロピンで,オーキシン極性輸送に関わり深いキナーゼ活性を持っていることと,オーキシン作用にはオーキシン極性輸送を担う排出担体PINタンパク質の細胞内局在調節が重要であることが明らかになり,フォトトロピンによるオーキシン極性輸送調節機構が明らかになりつつある.
著者
南谷 晴之
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.58-64, 1997-05-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
26
被引用文献数
7 5
著者
中島 求
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-17, 2004 (Released:2004-08-13)
参考文献数
10

魚・イルカの遊泳運動に関する研究を紹介する.まず高速遊泳動物に見られるマグロ・イルカ形の遊泳に関して推力発生の原理を説明する.次に,ダイナミクスをより詳細に解析するため著者らが提案した解析モデルおよびその解析結果について述べる.さらに著者らが開発した3機のイルカロボットを紹介する.1号機および2号機は直進遊泳性能を調べるために開発され,それぞれ最高推進速度1.15 m/s, 1.9 m/s を達成している.また3号機は機動性能を研究するために開発され,現在,胴体全長の約半分の回転半径で水中宙返り運動が可能である.
著者
清水 優史
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.132-137, 2012 (Released:2016-04-15)
参考文献数
4

長い首が呼吸の妨げになっていると言われるキリンの呼吸に関するパラメータを測定する目的で,腹部表面の呼吸に伴う変位をステレオカメラシステムを使用して測定することが試みられた.その中で縞模様が有効なターゲットになることが知られた.ステレオカメラシステムによるターゲットの変異計測から,呼吸量を推定する方法の精度が,人の実験によって調べられた.その結果,カメラを腹部の半分を見られる適当な位置に設置すれば,ある程度の精度で測定が可能と考えられる結果が得られた.
著者
馬場 悠男
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.158-162, 1995-08-01 (Released:2016-10-31)
参考文献数
5
著者
山内 繁
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.344-350, 2010 (Released:2016-04-15)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1
著者
國吉 康夫
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.20-25, 2005 (Released:2007-02-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

ロボット模倣機能は,究極の作業教示法として,また,人間の認知の理解への構成論的アプローチとして重要性を増している.しかし,従来の構成法は,個別のタスク,状況に限定され,本当に模倣が必要となる新奇なタスクや状況に適用できない.模倣の創発・発達的構成論に向けて,認知心理学等の知見をもとに機能構成図を提案し,その諸要素とロボット研究との対応付けを解説する.また,それらの土台をなす身体性に基づく行動創発と模倣の発生についても研究動向を紹介する.
著者
木村 賛
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.169-174, 2014 (Released:2016-04-16)
参考文献数
32

直立二足歩行は地球上でヒトのみが行う特異なロコモーション様式である.この歩行がいつ,どこで,どのように,なぜ獲得されたかを知ることは人類進化過程最大の課題の一つである.ロコモーションという動きを知るためにヒトと類縁であるサルのロコモーションを調べる比較運動学の研究が進み,化石の証拠と相まって二足獲得過程を明らかにしてきた.ヒトはアフリカにおいて700 万年ほど前に二足歩行を行うことでサルと分岐した.二足歩行能力はサル特有の樹上三次元での生活へ適応する中から発達してきた.これにより,ヒトは樹上より地上に降り立った時点から,すでにかなり優れた二足能力を持っていたと考えられる.これらの考え方は化石の証拠と矛盾しない.なぜヒトが二足歩行を始めたかに関してはいまだ不明なところが多い.
著者
福永 哲夫
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.24-28, 2001
参考文献数
9

宇宙などの無重力環境下では骨格筋に対する物理的負荷が低下し,筋が萎縮する.日本人宇宙飛行士の下肢筋量を宇宙飛行前後で比較すると,1日約1%の減少が観察された.とくに膝伸展筋及び足底屈筋といった抗重力筋にこの傾向が強かった.これらの筋は日常生活を営む上での主働筋であることを考えると,宇宙での長期滞在は宇宙飛行士の健康管理上重要な意味をもつ.そこで宇宙における筋萎縮を予防するための適切なカウンターメジャーの開発が期待される.我々はベッド安静中に膝伸展/股伸展をくりかえすレジスタンストレーニングを実施した結果,筋萎縮を防止することが確かめられた. 以上のことから,宇宙滞在は著しい筋萎縮(特に抗重力筋)を引き起こすこと,その予防策としてはレジスタンストレーニングが効果的であることが確かめられた.
著者
北野 利夫
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.61-64, 2008 (Released:2010-12-06)
参考文献数
5
被引用文献数
1

DNAに込められた成長・発達のプログラム,外的環境への適応,変形に対する自家矯正などの発育期における現象を理解するために,四肢の関節,筋肉の成長・発達について解説する.筋の発達は筋の構成単位としての筋線維や臓器としての筋組織の発達と神経系支配により高度に統合された関節の運動制御機構としての発達として理解する.四肢の関節を構成する骨の両側には,成長軟骨板が骨端と骨幹端の間に形成され,関節の横径および長軸方向の成長を担う.この関節内の解剖学的特徴から,関節を含め四肢が成長し,同時に形状が変化してゆく.生理的な成長とそれに伴う形態的変化と,成長に伴う非生理的な形態的変化についての実例を挙げ解説し,最後に,矯正についての考え方と成長・発達の人工的な制御について触れる.
著者
山本 大誠
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.15-20, 2011 (Released:2016-04-15)
参考文献数
23

ストレスに対する生体の反応は,ストレスの種類や期間など種々の要因によって身体および精神面への影響として現れ る.ストレスによる身体症状および精神症状に対する予防的および治療的手段として,身体運動を通したストレッサーの対処をどのように行っていけばよいのか,そのための理論と方法および可能性について提示した.生きていることは,自己の生物学的および環境の変化を常に伴い,それら種々の変化に対して適応を繰り返すことである.身体資源を十分に活用することは,身体の質の高い動きを引き出すことによるストレッサーの適切な対処であり,生活の質を向上させるための方法であると考える.
著者
山田 実
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.241-244, 2014 (Released:2016-04-16)
参考文献数
4

転倒発生のトリガーとなる動作としては,躓き,滑り,踏み外しという足元の状況判断を誤ったことによるものが多い.ここで紹介するMulti-target step(MTS)は,移動中の足元に対する注意要求を課するものであり,MTS test が不得手な高齢者(移動中の足元の注意要求課題への対応が困難な高齢者)は転倒リスクが高いと判断される.また,MTS トレーニングは転倒予防トレーニングとして有用であり,6 ヶ月間の継続実施によって転倒・骨折数を減少させることが示唆されている.