著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.4-15, 2021-09-20 (Released:2021-10-15)
参考文献数
40

本稿の目的は,企業現場で急速に発展している組織・消費者間コミュニケーションについて,近年の学術研究ではどのようなデータが収集・分析されているのか紹介することである.分析を①テキスト分析,②行動データ分析,③アンケート調査分析の3つに整理したうえで,それぞれの分析における「具体的なデータ収集・分析方法」「分析で明らかにできること」「適しているテーマ」を述べる.
著者
村瀬 俊朗 王 ヘキサン 鈴木 宏治
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.16-30, 2021-09-20 (Released:2021-10-15)
参考文献数
103

理論を構成する抽象概念の変数化は,実証を行う上で重要な作業である.経営学者はアンケート調査を活用して概念の抽出を行ってきたが,データの大規模化や時系列での取得が困難であるため,一部の理論の検証が難しい.このデータに関する問題を解消するために,自然な人の行動の記録であるログデータの活用方法を模索する必要がある.そのため,本稿では自然言語処理と機械学習を応用したログデータの活用方法を検討する.
著者
丸山 峻 島貫 智行
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
pp.20210201-4, (Released:2021-02-01)
参考文献数
31

障害者の職場定着を促すうえで、障害者の特別な人事管理の要否に関する先行研究の見解は一致していない。本稿は、社会的アイデンティティの考慮の有無に注目したアイデンティティ・コンシャス人事管理とアイデンティティ・ブラインド人事管理の枠組みからその境界条件を検討した。事例研究により、職場で共有されている障害者の能力観と障害者活用におけるライン管理者の裁量が境界条件として機能することを例証した。
著者
北林 孝顕
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.59-70, 2021 (Released:2021-07-15)
参考文献数
20

本稿は,広範な開発業務の外部委託に焦点を当て,鉄道車両開発を素材に,高いプロジェクトの満足度の実現に効果的なユーザーのマネジメント行動を分析し,その背後にある知識マネジメントについて考察した.その結果,効果的にマネジメントしているユーザーは,従来メーカーが保持すべきとされてきた統合知識や部品知識を活用しながら設計統合化に深く関与し,開発の主導権を確保していることが明らかになった.
著者
青木 哲也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.59-71, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
47

本研究の目的は,オンライン上での企業に対する顧客の自発的な貢献を促進するために,企業がその貢献に対してどのように反応すべきか明らかにすることである.既存研究は個別顧客と企業の二者関係に注目し,報酬による貢献意欲向上を議論していた.本研究は,企業と顧客,他の顧客の三者間関係に議論を拡張し,個別顧客への報酬支払いが他の顧客に影響を与える可能性について,組織支援理論・公正理論を踏まえて議論す る.
著者
宮尾 学
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.21-32, 2016-03-20 (Released:2016-08-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本稿では,多義的な製品の開発と価値創出について非決定論的な視点で事例研究を行い,次の点を発見した.開発プロセスでは,製品コンセプトの提案・評価・変更の応酬によって,製品が創出しうる価値が最大限議論された末に1つのコンセプトに収斂していた.さらに,製品の価値創出プロセスでは,こうした組織内での対話に加え,消費者への伝達,伝達内容と製品設計の調整,競合の追随という4つのメカニズムが複雑に作用していた.
著者
水野 誠
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.35-46, 2015-06-20 (Released:2016-04-07)
参考文献数
14

本稿では,ビッグデータの利活用が求められる現在のマーケティング環境において,ボトムアップ型発想を行うことの重要性を論じる.第一に,マーケティング実務におけるデータ分析の歴史的経緯を概観し,第二に,ビッグデータの活用に関する一般的な誤解を指摘する.そのうえで,マーケティングにおけるトップダウン型発想とボトムアップ型発想を対比させ,ビッグデータとマーケティングの共進化にむけた,両者の相互循環 のありかたを考察する.
著者
山口 真一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.24-32, 2018-06-20 (Released:2018-08-24)
参考文献数
21

本研究では,組織内外データ活用について実証分析を行う.分析の結果,自社データ活用率は36%,他社データ活用率は19%に留まることが分かった.さらに,「経営者がデータ活用を学ぶ」,「代表者を若い人とする」,「企業規模を大きくする」,「社員の自発的参加を促し,合理的管理をする」,「強制的,命令的な組織とし,データ活用をトップダウンで実行する」等の要素が,データ活用促進戦略として有効であることが明らかになった.
著者
小阪 玄次郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.59-69, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
41

本稿の目的は,破壊的イノベーションによる転換期に,転換への適応が困難な既存企業とアライアンスを結んで新規技術を提供する,という新興企業の事業機会について検討することである.市場調査業界における技術転換を事例として分析した結果,業界の既存企業,新規技術を用いる先発の新規参入企業,および後発の新規参入企業の者の間での競争関係が,新旧3企業間でのアライアンスの先行要因として示唆された.
著者
西村 孝史
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.49-61, 2020-03-20 (Released:2020-08-13)
参考文献数
49

J1リーグを題材にSHRM(戦略的人的資源管理)におけるミクロ的基礎に関する実証研究を行った.既存のユニットレベルの人的資本研究の課題に対して報酬分散の概念を援用し,ユニットレベルの人的資本の分散と人員構成が,順位に与える影響を検討した.分析の結果から,⑴チーム内での報酬分散は順位に負の影響を与えること,⑵タスク型のダイバーシティは,順位に正の影響を与えることを指摘する.
著者
近藤 公彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.26-36, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
33

この論文では,小売業におけるデジタル化とデジタル・トランスフォーメーションの諸相を考察し,それらを成立条件とするオムニチャネルの本質を規定するとともに,オムニチャネル化に向けた販売/コミュニケーション・チャネルの発展プロセスを成功裏に推進するための3つのオムニチャネル・ダイナミック・ケイパビリティ,すなわち,統合ダイナミック・ケイパビリティ,調整ダイナミック・ケイパビリティ,および分析ダイナミック・ケイパビリティを提示する.
著者
奥瀬 喜之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.16-25, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
18

ビジネスにおけるデジタル化の波は,マーケティング・ミックスの一つとしてのプライシングにも少なからぬ影響を与えている.本稿では,デジタル化時代のプライシングの2つの流れとしてのダイナミック・プライシングとサブスクリプション・モデルについて取り上げ,事例を踏まえて,それらの新しいプライシングが成立するための条件と,残された課題について考察していく.
著者
井口 衡
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.4-17, 2020-03-20 (Released:2020-08-13)
参考文献数
40

本稿では,同族企業における事業承継問題が長期的投資行動に与える影響について考察した.中小同族製造業企業のデータを用いて分析したところ,経営者の事業承継に関する期待が長期的投資行動に対して正の影響を与えること,そしてその影響は,自らの子供以外の人物による事業承継の可能性が高いと経営者が考えている場合には,自らの子供による事業承継の可能性が高いと考えている場合よりも,大きくなることが明らかになった.
著者
尾田 基 江藤 学
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.33-46, 2019-03-20 (Released:2019-06-16)
参考文献数
18

本論文は,近年の先行者優位の議論が,環境決定論的-企業適応的文脈に進んでいることを指摘し,先行者優位の議論に対して加藤(2011)の〈技術システムの構造化理論〉による接近を試みる.電動アシスト自転車の市場創造プロセスを探索することで,構造形成に携わった先行企業と,構造を所与として受け入れた後発企業では構造から受ける影響が異なることを示す.また,先行者優位の議論は非市場戦略の領域にも論点があることを示す.
著者
佐々木 秀綱
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.73-88, 2017-03-20 (Released:2017-09-11)
参考文献数
47

本研究では,フレーミング効果および互酬性効果が交渉者の態度に与える影響を明らかにするため,企業内の予算交渉過程を描いた場面想定法実験を行った.実験から明らかになった知見は次の2つである.第1に,利得フレーミングの交渉者は,交渉相手からの譲歩を受けると,返報として自らも譲歩的な態度をとりやすい.第2に,損失フレーミングの交渉者は,相手からの譲歩の有無にかかわらず,強硬な態度を保つ傾向がある.
著者
加藤 敬太
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.29-39, 2014-03-20 (Released:2014-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本稿の目的は,ファミリービジネスにおける企業家活動のダイナミズムを明らかにすることである.従来のファミリービジネス研究では,ファミリービジネスにおける保守的なガバナンス構造と戦略創造の静態的な関係性を論じてきた.本稿では,ミツカングループの事例分析から,ファミリー企業家による企業家活動と戦略創造のダイナミックな関係を明らかにする.
著者
山下 裕子
出版者
白桃書房
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.p75-86, 1993-07
被引用文献数
1
著者
渡辺 周
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.18-35, 2020-03-20 (Released:2020-08-13)
参考文献数
44

本稿では,撤退の意思決定に外部取締役が与える影響がその属性によって異なる可能性を検討する.具体的には,外部取締役の負の影響を観察した渡辺(2017)について,この負の影響はどのような取締役によるものなのか,逆に正の影響をもたらす取締役はいないのかを明らかにする.分析の結果は,ボード・クオリティの研究にもとづき,独立性と専門知識に注目して解釈を行い,両側面とも低い取締役が負の影響をもたらすことを議論する.
著者
秋山 英三
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.38-48, 2017-12-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
44

社会集団や組織における協力行動の形成の問題は,様々な分野の研究者の興味を引いてきた.本稿では,集団における協力状態を実現するメカニズム,特に,直接互恵,関節互恵,マルチレベル淘汰,ネットワーク互恵を,計算機シミュレーション研究を中心とした近年の動向を踏まえつつ概説する.