著者
西条 旨子 俵 健二 本多 隆文 中川 秀昭
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.475-478, 2005-12

近年,一般環境中カドミウム(Cd)の低濃度長期暴露が早産や胎児発達に影響を及ぼす可能性を示唆する研究や,母乳を介した出生児へのCd暴露負荷の可能性も報告され,中高年だけでなく,妊産婦や乳児のCd暴露を減らす公衆衛生学的な対策が必要と考えられている。本総説においては,まず,妊娠・出産への影響を,次に,胎児への経胎盤移行による発育への影響を,最後に,潜在的な健康影響をもたらす母乳の汚染について,これまでの研究報告に我々の得た知見を加えて概説し,Cdの生殖毒性・次世代影響研究の今後の課題を明らかにした。
著者
西条 旨子 中川 秀昭 西条 寿夫
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

次世代の神経・精神発達に対するダイオキシン胎内暴露の影響を検討するために、妊娠9日より19日までの11日間、雌ウイスターラットに0.1μg/kg/dayの2,3,7,8-四塩化ダイオキシン又は同等量のコーンオイルを経口ゾンデで胃内へ直接投与した。ダイオキシン暴露群4匹と対照群5匹については、妊娠19日目に帝王切開により胎児を取り出し、その体重や脳、腎臓、肝臓、胎盤などの臓器重量を測定して、胎児期の発育を比較検討したところ、暴露群の体重、脳全体、肝臓、腎臓の平均重量はコントロールに比べ有意に少なく、特に腎臓は体重あたりの割合も有意に少なかった。この時、脳については、暴露群の視床下部は全脳あたりの割合が対照群に比べ有意に大きかった。その他の妊娠ラットは自然分娩にて出産させ、出生した仔ラットに以下2種類の行動学的実験を行い、次の結果を得た。1)生後4日から14日間、四肢の協調運動発達検査として、毎目1回、傾斜板テスト(傾斜角25度の板に仔ラットの頭を下向きに置き、体軸を180度旋回して上方に上るまでに要する時間を測定)を行った。その結果、暴露群の成長による旋回時間の短縮が生後7日目より雌雄共に遅延した。2)生後31日からの14日間、シャトルアボイダンスシステムを用いた条件回避学習課題(ブザーにより電気ショックを予知して隣の部屋へ移動することによりショックを回避する)を行い学習機能への影響を検討した。その結果、雄の暴露群の回避率や回避潜時の成長による改善が遅れた。また、非施行時の活動性も雄の暴露群で低下していた。3)行動実験終了後脳を摘出し、部位別の全脳重量に対する割合を測定したところ、雄のダイオキシン暴露群の視床下部の割合が対照群に比べ大きかった。以上より、ダイオキシン胎内暴露は次世代の運動発達や学習能力、特に雄に強い影響を与える可能性が示唆された。
著者
保田 ひとみ 柳原 真知子 畑下 博世 西条 旨子
出版者
金沢医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

里帰り分娩は、親からの支援を受けることができる一方、夫の家事育児の減少、夫婦関係や父子関係への影響が懸念されている。そこで、妻が里帰り分娩から自宅へ戻った後1か月における、夫婦の3人の家族作りの体験を、質的記述的研究法を用いて分析した。結果、夫婦は、里帰り分娩をして良かったと捉えており、実家の支援を受けながら、里帰り中は、「頻繁な連絡により夫婦関係・父親の意識を高める」、自宅へ帰って1か月後の頃では、「夫婦が互いに気遣い、初めての子どもを育てていく」という体験をしていた。
著者
森河 裕子 中川 秀昭 田畑 正司 西条 旨子 千間 正美 北川 由美子 河野 俊一 寺西 秀豊 城戸 照彦
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1057-1062, 1992-02-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
13
被引用文献数
3 2

We studied an outbreak of itai-itai disease in the Jinzu River basin, in Toyama, Japan. One hundred and fifty females recognized as itai-itai disease patients till by 1990 were studied for the ages and years of onset and residence in the cadmium-polluted area.1. Cases were recognized from as early as 1929, increased gradually to the peak of 1955-1959 and rapidly decreased up to the 1970s.2. It was found that the later the patients was born, the younger the age of onset, though there was no difference of ages of onset between the cases born in the 1910s and the cases born from 1920.3. The onset of itai-itai disease was most frequently seen at 50-59 years of residence in the cadmium-polluted area. It was found that the later a person started to inhabit the cadmium-polluted area, the shorter the period of residence in the cadmium-polluted area up to onset of itai-itai disease.4. Comparing the patients who inhabited the cadmium-polluted area from birth and those who had moved there from non-polluted areas, the age of onset was higher in the latter, but there were no significant differences in the period of residence up to onset.From these findings, it appeared that itai-itai disease was not caused by aging, but by cadmium exposure starting from the 1910s.
著者
塚田 久恵 三浦 克之 城戸 照彦 佐伯 和子 川島 ひろ子 伊川 あけみ 西 正美 森河 裕子 西条 旨子 中西 由美子 由田 克士 中川 秀昭
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1125-1134, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
18
被引用文献数
1

目的 乳幼児期の肥満が成人後の肥満にどの程度結びつくかについての日本人でのデータは乏しい。本研究は乳幼児期(3 か月,12か月,3 歳)の肥満度と成人時(20歳)の肥満度との関連を明らかにし,乳幼児健康診査(以下,健診)時の肥満指導のための基礎資料を得ることを目的とする。方法 石川県某保健所管内において1968-1974年に出生した20歳男女を対象として行われた成年健康調査を受診した男女のデータと,同管内における 3 か月,12か月,3 歳の乳幼児健診データとのレコード・リンケージを行い,全ての健診を受診して20年間追跡できた2,314人(男1,080人,女1,234人)を対象とし,乳幼児期と成人時の肥満度の関連について分析した。成績 各月齢・年齢のカウプ指数(または body mass index (BMI))相互間の相関を見たところ,20歳時の BMI と 3 か月時・12か月時・3 歳時のカウプ指数との間ではいずれも有意な正相関が認められ,中で最も強い相関を示したのは 3 歳時カウプ指数とであった(男 r=0.33, P<0.001,女 r=0.42, P<0.001)。乳幼児期の肥満度カテゴリー別に20歳時の肥満者(BMI 25 kg/m2 以上)の割合をみると,3 歳時カウプ指数15未満の者では男で4.6%,女で1.0%であったが,3 歳時カウプ指数18以上の者では男で29.1%,女で29.5%にのぼり,カウプ指数15未満の者に比べ男で6.3倍,女で29.5倍の率となった。3 か月時および 3 歳時におけるカウプ指数が平均未満か以上かのカテゴリー別に20歳時に肥満になっていた割合を検討したところ,3 か月時のカウプ指数が平均以上か未満かを問わず,3 歳時のカウプ指数が平均以上であったもので割合が高かった。結論 乳幼児期の肥満度は20歳時の肥満度と強い関連があったが,3 歳時との関連が最も強かった。3 歳時に肥満であった児は成人時にも肥満である率が約30%と評価され,本データは 3 歳児健診における将来の肥満のアセスメントに利用できると考えられる。
著者
中島 素子 三浦 克之 森河 裕子 西条 旨子 中西 由美子 櫻井 勝 中川 秀昭
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.647-654, 2008 (Released:2014-07-01)
参考文献数
20

目的 医科大学敷地内禁煙化の実施によって,医学生の喫煙率はどのように推移したか,喫煙についての学生の意識はどのように変化したかを明らかにする。方法 北陸のある医科大学において敷地内全面禁煙化が2004年に実施された。2001年から2007年まで,毎年約640人の医学生の喫煙状況を定期健康診断時に調査した(回答率91.2%)。また2000年度入学から2006年入学までの新入生全員の喫煙状況を経年的に追跡し,進級による喫煙率の変化が敷地内禁煙化によりどのように変化したかを調査した。さらに,喫煙者の喫煙に対する意識の変化や,敷地内禁煙準備期間から禁煙を開始した禁煙群と継続喫煙群の喫煙に関する意識の比較を行った。結果 2001年から2007年までの 7 年間の全学生の喫煙率は,敷地内禁煙実施前と比較すると,実施後に低下し,男子でもっとも喫煙率の高かった2002年の喫煙率41.2%と,2007年の喫煙率22.1%では19.1ポイントの差があった。毎年の新入生の喫煙率の推移を追跡すると,敷地内禁煙実施前は進級とともに喫煙率は上昇していたが,実施後は進級ごとに喫煙率が低下傾向を示した。敷地内禁煙実施前後に同じ対象者で比較すると,男子学生の喫煙率が実施前の36.0%,から実施後の25.6%へ有意に減少した(P<0.05)。また喫煙者のうち「喫煙をやめたい」と答えた人の割合が,実施前は39.1%であったが,実施後では60.2%と有意に増加していた(P<0.01)。さらに敷地内禁煙準備期間から禁煙した禁煙群70人と,継続して喫煙している継続喫煙群90人の 2 群間の意識を比較したところ,将来患者さんに積極的な禁煙教育ができないと思う者は,禁煙群20.8%,継続喫煙群50.0%であり,継続喫煙群で有意に高かった(P<0.01)。結論 医科大学敷地内全面禁煙化は,医学生の禁煙と喫煙への意識の変化に強い効果がある可能性が高いと考えられた。
著者
東口 和代 森河 裕子 三浦 克之 西条 旨子 田畑 正司 中川 秀昭
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.64-72, 1998
被引用文献数
9 9

This paper describes the development of an instrument, the Nursing Job Stressor Scale (NJSS). The statements on the job stressors were identified from the literature and redesigned to describe nursing situations that result in stress. A 55-items questionnaire was administered to a sample of 568 hospital nurses. Nurses were asked to indicate on a 5-point scale how intensively they experienced such situations as stressful. Factor analysis using a principal factoring with a varimax rotation resulted in 7 subscales that closely paralleled the conceptual categories of stressor on which the scale was based. These subscales were: conflict with other nursing staffs, nursing role conflict, conflict with physicians and autonomy, death and dying, qualitative work load, quantitative work load, conflict with patients. By selecting 33 items, a new set of the Nursing Job Stressor Scale was developed. Test-retest reliability as well as internal consistency indicated that the seven subscales were reliable. Validity was determined by correlating the total score from the Nusring Stresssor Scale with measures of burnout. These examinations showed the usefulness of the scale.
著者
森河 裕子 三浦 克之 西条 旨子 中西 由美子 中川 秀昭 北岡 和代 西条 旨子 中西 由美子 中川 秀昭 北岡 和代
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

交代勤務特に深夜勤務への適応・不適応(耐性)に伴う健康問題と、適応・不適応に関連する要因を検討した。一製造工場の男性夜勤交代勤務者を対象に全体調査と抽出調査を行った。夜勤交代勤務への適応に最も強く影響したのは年齢であり、慣れによって不適応感が軽減していくものではないことが示された。客観的睡眠モニターから深夜日の睡眠はコマ切れであり、効率の悪い睡眠であることがわかった。不適応者における睡眠以外の健康影響として、疲労蓄積による自然免役能の低下が示唆された。夜勤交代勤務による健康影響の最小化のためには、特に不適応感を抱いている者に対する適切な対応が必要である。