著者
門間 哲雄 荻原 正通 池内 幸一
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.141-143, 1998-02-20

症例は42歳,男性。24年前に尿道口からボールペンの先端部を友人から挿入されたまま放置していた。最近になり,亀頭部の疼痛と腫脹それに伴う排尿困難が出現したため当院を受診した。単純撮影にて尿道に石灰化を認め,尿道異物の診断にて緊急入院となった。膀胱瘻を造設し抗生剤にて局所炎症所見を軽快させた後に外尿道口切開を施行し,結石化した異物を除去した。最近の本邦の報告において,調べ得た限りでは本症例は最も長期間の尿道異物であった。
著者
常樂 晃 林 独志 島居 徹 内田 克紀 赤座 英之 近藤 福次
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.909-911, 1999-10-20

患者は,25歳,男性。精神的に困窮したため発作的に爆竹を尿道に挿入し爆発させた。尿閉となり近医を受診し,治療目的で当科に紹介され,入院となった。MRIでは尿道構造が消失していた。尿道へのカテーテルの挿入はできなかったため,膀胱瘻を造設した。保存的に治療したところ,排尿障害を残さず自然治癒した。爆竹による尿道損傷の報告はなく,自験例が1例目であった。
著者
小谷 俊一 甲斐 司光 成島 雅博 伊藤 裕一 大村 政治
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.943-948, 1993-11-20

射精障害例に対し1)硫酸ネオスチグミンのクモ膜下注入法:33名(脊髄損傷30名,その他3名),2)試作電極(双極電極)による電気射精:25名(脊髄損傷21名,その他4名),3) Seager型手持ち式直腸プローベによる電気射精:10名(脊髄損傷9名,その他1名)の人工射精法を施行した。 この結果,順行性射精による射出精液量や精子運動率の面からは硫酸ネオスチグミンのクモ膜下注入法が最も優れていたが,副作用(頭痛,嘔気,嘔吐,血圧上昇など)の強い例が多かった(45%)。これに対し電気射精法は副作用が軽度で安全性の面で優れていた。なお電気射精法の中では,短時間で効率的に精液が得られる点から,Seager型手持ち式直腸プローベが有用と考えられた。
著者
佐藤 達夫
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.837-846, 1991-10-20

睾丸(精巣)のラテン語名testisの第1語義は「証人」witnessであり,「睾丸」は男性を証明するものという意味で派生した第2語義と想像される.使用頻度の高いtestify,testament,testという英単語もtestisと用じ語源をもつものらしい.睾丸のもつ重要性は"testis"に表わされていると見ていいだろうし,英語testisやフランス語tes-ticule,イタリア語testicolo,スペイン語testeに継承されているのも理解できるところである.それにくらべると,睾丸炎orchitisなどに使われるギリシャ語のorchisは蘭(一般にオーキッドorchidと呼ばれている)のことで,その球根の形に似ていることに由来し,またドイツ語のHoden(単数はHode,ふつう複数で用いられる)は古高地ドイツ語の包むumhüllenから由来したとされ(いわば「おくるみ」),testisよりインパクトがかなり弱い. ついでながら副睾丸(精巣上体)のepididymisのepi—はもちろん「の上に」であるが,didymisはギリシャ語で「対をなした」に由来する.つまり有対の睾丸の上にのっかったものという程の意味で,ギリシャ出身の大医学者Galenus(129〜199)が使っているという1).
著者
長根 裕介 五十嵐 匠 杉本 周路
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.529-531, 2003-06
著者
中井 靖 青木 勝也 松本 吉弘 篠原 雅岳 影林 頼明 三馬 省二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.983-986, 2013-11-20

症例:44歳,男性。外尿道口より陰茎陰囊境界部までの尿道腹側をカミソリで鋭的に完全切開され,近医で尿道単純縫合を受けたが,尿道は完全哆開した。以後,無治療であったが,13年後,再婚を転機に尿道再建術を希望して当科を受診した。尿道粘膜は再建に使用可能と判断し,尿道下裂に準じてThiersch法により一期的尿道形成術を施行した。留置カテーテル抜去後,立位排尿が可能となった。外傷性前部尿道損傷の原因として,尿道カテーテルによる損傷や尿道異物による尿道皮膚瘻などの報告はあるが,われわれが調べた限りでは,自験例のように意図的に広範囲に縦切開された尿道に対して尿道形成術を施行した報告はなかった。
著者
永井 敦
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.611-616, 2006-08
著者
友田 岳志 中橋 満 加藤 佳央 宮本 一行
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.521-523, 2003-06-20

症例は80歳,女性。55歳の頃に脳梗塞を発症し,71歳頃より寝たきりとなり自宅で介護されていたが,肺炎のため入院し,尿道異物を指摘された。骨盤部単純X線写真で尿道に一致して大きな結石陰影が認められ,経尿道的結石破砕術を予定していたが,突然66×47×43mm,重量119gの巨大結石が自然排出された。結石分析はリン酸カルシウム,リン酸マグネシウム・アンモニウム,炭酸カルシウムの混合結石であった。
著者
玉木 信
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.225-228, 2011-03-20

2007年12月から2009年7月まで当院を受診し新規に診断された慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群(CP/CPPS)49名(ⅢA9名,ⅢB40名)に,ノイロトロピン16単位を2分割にて連日内服投与した。ノイロトロピン投与2週間後,6週間後でNIH-国際前立腺炎症状インデックス(NIH-CPSI)を用い効果を検討した。その結果,痛み・不快感,排尿症状,生活の質(QOL)の各項目において有意な改善が認められた。また3項目の総点も有意に改善され,治療への有用性が示された。なお全例で副作用を認めなかった。本報告は同剤の慢性前立腺炎への初の有効性報告である。
著者
戸田 克広
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.440-441, 2010-05-20

間質性膀胱炎は,器質的な異常がないにもかかわらず,頻尿,尿意切迫感,下腹部痛や会陰部痛などを引き起こす疾患である。有病率は10万人に10.6人から女性4.5人に1人までと大きな差があり,それは主に診断基準による差である1)。羞恥心のため,医療機関を受診しない患者が少なくない。たとえ医療機関を受診しても異常なしと診断され,治療法はないといわれる患者も少なくない。疼痛の範囲が会陰部や陰囊部を超えて骨盤全体におよぶと,慢性骨盤痛と診断される。 一方,線維筋痛症(fibromyalgia:FM)といわれる慢性痛がある。有病率は約2%2)であるが,その不全型あるいは前段階の慢性広範痛症(chronic widespread pain:CWP)の有病率は,FMを含めると約10%と報告されている3)。
著者
小谷 俊一 近藤 厚生 瀧田 徹
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.39, no.9, pp.785-787, 1985-09-20

緒言 近年,脊髄損傷者の整形外科的治療,尿路管理,リハビリテーションなどの進歩は目ざましいものがあり,これらに伴い,彼らの社会復帰や雇用,さらには結婚といつた問題がクローズアップされてきた。そして彼らの中には現実に実子を希望する者も存在する。われわれはこれら実子希望の男性脊損者に対してGuttmann & Walsh1)により考案されたクモ膜下腔硫酸ネオスチグミン注入による人工的射精誘発法を応用し,本法により採取できた精液により配偶者間人工授精(artificialinsemination with husbands semen,以下AIHと略す)を施行してきたが,今回この方法により妊娠,分娩に成功した1例を経験したので報告する。
著者
宮北 英司
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.98-100, 2010-04-05

要旨 尿道ブジーは,尿道通過障害に対して,特に尿道炎,外傷や尿道になんらかの処置を受けた既往のあるものに対して,狭窄の計測ないしその拡張のために施行されてきた。軟性内視鏡の発達により種々の方法が開発されている。本稿では,尿道ブジーの種類,その手技のコツについて述べる。
著者
秋下 雅弘
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.28-31, 2015-01-20

要旨 加齢に伴い低下するテストステロン分泌は,認知機能の低下や認知症発症とも関連することがわかってきた。地域住民を対象とした疫学研究や認知機能障害を有する患者を対象とした観察研究では,血清テストステロン濃度が低い高齢男性のほうが認知機能は低く,発症・進行が早いことが報告されている。一方,テストステロン補充療法の効果を検討した研究は少ないものの,小規模研究で認知機能の改善効果が報告されている。今後は対象を絞り込んで臨床試験を行うことと,作用機序を解明する研究が求められる。
著者
高木 健太郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.474, 1968-06-20

広沢虎造の浪花節,特に石松の渡船の中での「神田の生れさ」というくだりは何回聞いても飽きぬようだつた。神田明神下の生れ,そこで育つたからだろうか。下町の気風が身に泌みこんでおつて,年をとつても上京して按摩をとらせながら,あんまに「旦那は江戸つ子でやすね」といわれるととても嬉しそうだつた。祖父は下山順一郎であつたが,私も想像しか出来ぬが,母方の姓を名乗つて高木となり,自分の父を知りつつ,名乗れぬような家庭事情に育つたので,何だか暗い影があつたような気もする。一高に入つて実父下山順一郎から植物学の講議を受けたが,出欠をとるとき,父の名だけは"高木"と呼び捨てにするので友人が妙だと思つていたという。 生母も他家に嫁し,父もなく,母方の祖父高木昇三郎に育てられたとか。この人の写真はいつも大切にしていた。負けてたまるかという気概はこの幼少の頃の悲しみに萠しているのかも知れない。環境による江戸つ子の勇み肌と家庭の事情による悲哀,孤独と生来の負けん気が一生を貫いたように今の私には見える。江戸は芯から性に会つていたらしく一高を出て,九大に入学するために,関門を船で渡るときは遠く島流しに遇つたようで涙を流したとか。
著者
土屋 ふとし 滝沢 明利 岩崎 晧
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.299-300, 2011-04-05

Q 精巣外傷の症例。出血はかなりの程度だったようだが,今は止まっている。保存的に様子をみてよいか。 [1]概 説 精巣外傷のうち最も多いのは挫傷である。受傷原因としては,喧嘩,スポーツ外傷,交通事故,落下事故などがある。 精索血管(精巣動脈,蔓状静脈叢など),陰囊に分布する血管が損傷することにより陰囊内出血をきたす。陰囊皮膚は薄く伸縮性があるため血腫,浮腫により大きく腫脹する。また出血が下腹部,陰茎,肛門にまで及んで変色を伴う場合もある。鈍的な精巣外傷は通常,局所の激しい疼痛,吐き気,嘔吐,下腹部痛などを伴いショック症状をきたす場合もある。 大きな外力が働いたり,恥骨,大腿骨に強く押しつけられた場合に,精巣白膜が損傷して,精巣実質が脱出した精巣破裂に至る。精巣の鈍的外傷の約48%に破裂が起こるとされ1),破裂後3日以内が手術のゴールデンタイムとする報告は多い。受傷後3日以内に手術を行うと精巣温存率は90%であるが,3日を過ぎると45%に激減するとの報告がある2)。 精巣破裂の診断に関して,超音波検査は簡便で損傷の概要をつかむには適している。精巣の輪郭の不整像,白膜の連続性の消失,実質内の低エコー領域の存在などを観察する。超音波検査の精巣破裂に対する診断の感度は64%,特異度は75%とする報告がある3)。MRI検査はT2強調画像もしくは造影T1強調画像が白膜の描出に優れている。MRI検査は超音波検査よりも高い診断率で再現性も高いが,検査時間が長く診断までの時間を要する。 血腫が存在すると画像的診断が難しくなり,精巣破裂は80%で血腫を伴うことから4),血腫の存在のみでも早期の手術が好ましいとの意見もある5)。血腫の大きさにより手術適応を決めるという意見もあるが,エビデンスはまだない。 血腫を伴う精巣破裂を保存的治療で経過観察することにより,感染,壊死,精巣の萎縮,精子形成能や内分泌機能の低下などの危険性が指摘されている。保存的治療により経過観察が可能であった報告例も散見されるが,いずれもretrospectiveなものにすぎず,その適応については決まったものはない。
著者
米田 勝紀 山川 謙輔 日置 琢一 天野 信一
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.335-337, 1989-04-20

症例は75歳女性で脳血管障害による長期臥床老人,オムツによる尿路管理がなされていた。全身状態が悪化,バルーン挿入不可能とのことで当科受診。尿路単純撮影にて尿道に鶏卵大の層状の結石を認めた。外尿道口切開を加え結石を摘出,大きさは57×43×30mmで45g,成分は燐酸Ca83%,炭酸Ca17%であった。6ヵ月後の尿道造影では尿道は正常の大きさであり,膀胱で徐々に大きくなった結石が尿道に嵌頓したものと診断した。
著者
松島 正浩
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.179-183, 2000-03-30

1 はじめに 尿道カルンクル,尿道脱に関してデーターベース,オービットメドライン,医学中央雑誌で過去30年間のデーターを調査したが,登録されていたのは5作のみで,いずれも病院の統計または尿道ポリープの鑑別疾患としての記載のみである。よって,尿道カルンクル,尿道脱の基本的事項は周知のことであり,最近のトピックスは皆無である。
著者
高橋 剛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.52-54, 2008-04-05

1 診療の概要 亀頭包皮炎は,亀頭の包皮内板・外板に挟まれたスペースに起こる限局性の感染症である。このスペースには幼児期に恥垢がよく貯まるので,それが原因と思われがちであるが,これは誤りである。恥垢は閉鎖スペースに皮膚が脱落して発生するものであって,外部からの感染は防護されている状態といえる。恥垢そのものは表皮角化の脱落によるケラチン質の集塊であって,これ自体が感染の基になることはない(図1)。ときには恥垢が小豆大になって外から透見できることがあり,小児科医から脂肪腫の疑いとして紹介されてくることもある。年長になるに従って包皮外板と内板の癒着が取れてスペースが外界と通じるようになると,雑菌の繁殖を許すようになる。また排尿後に尿が流入して尿中成分が沈着するようにもなる。 このようなときにバルーニングがあると(図2),増悪因子とされて小児科医から包茎手術の要請をしばしば受けるが,後述するように重大に取る必要はない。また包皮を無理にめくったりすると内外板の癒着が外力によってはがされ,発赤,浮腫をきたし感染を受けやすくなる。いずれにしても外界と接するような状態になったとき,包皮内外の衛生状態が悪く清潔が保たれなかったり抵抗力が弱まっていると,容易に炎症の母地となり菌が繁殖し,包皮,亀頭のびらんをきたし,膿を排出するようになる。このとき恥垢は液状化し,膿の一部となって排出される。炎症が強い場合は陰茎全体が赤く腫れ,ソーセージ様になることもあるが,これはあくまでも反応性の皮膚発赤であって病巣は先端部のみである。
著者
長根 裕介 五十嵐 匠 杉本 周路 平方 仁 川田 望 滝本 至得
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.529-531, 2003-06-20

症例は52歳の男性。妻および子供2人と同居。40歳頃より,女性になりたいとの願望が生じる。日々自己性器への嫌悪が強まり,自宅で陰囊をカミソリで切開後,両側精巣を摘除し投棄した。その後,陰囊部の疼痛と腫脹が増強し,当科を受診した。同日緊急に血腫除去,精索断端の結紮およびドレナージを行った。術後に精神神経科で性同一性障害と診断され,現在外来で経過観察中である。本邦における自己去勢報告例は,本症例を含めて4例のみである。
著者
関田 信之 江越 賢一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.161-164, 2007-02-20

症例は74歳,女性。発熱,右側腹部痛を主訴に来院し,腎盂腎炎の診断にて入院となった。保存的加療にて改善がみられない腎膿瘍と診断し,右腎摘除術を施行した。術後も発熱,疼痛が続き,腎摘後10日目に下肢の神経症状が出現した。脊椎疾患を疑いMRI検査を施行したところ,腰椎椎間板を中心に炎症所見を認め,化膿性脊椎炎と診断された。比較的稀な疾患であるが,尿路系疾患に併発することが多いとされており,泌尿器科医が十分に認識しておくべき疾患であると思われた。