著者
中川 清隆 松山 寛子 原田 元 二神 成一 谷藤 泰正 天木 嘉清 古幡 博
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.83-89, 2006-03-01
参考文献数
12

The Jikei University Hospital is located about 600m from the Tokyo Tower in the central area of Tokyo. This means that the patients and staff members of the hospital may be exposed to strong electromagnetic field intensities (EMFI) radiated from the tower antenna and to various telecommunication EMFI that exist in a large city like Tokyo. EMFI was measured at eight points of the hospital buildings facing the tower. Two types of antenna were used to cover the frequency range from 30MHz to 1.5GHz. EMFI was calculated from every peak value in the frequency spectrum recorded logarithmically. Every peak intensity was less then 2μW/cm at the maximum of the whole spectrum, which is a much lower value than the standard value specified by the Japanese 'Radio Radiation Protection Guidelines For the Human Body in Electromagnetic Fields'. Additionally the total value of the whole spectrum was less than 6μW/cm at all eight points. It is concluded from these actual results of measurement that our hospital does not need to perform any urgent safety measures to protect patients and staff members from the various electromagnetic environments, including strong broadcasting waves from Tokyo Tower.
著者
高井 政貴 牧 岳彦 高橋 裕一 大ヶ瀬 浩史
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

〔はじめに〕EOG滅菌に関しては特定化学物質としての法規制や都条例による排出規制により従来と異なる運用が求められている.一方,現状の滅菌装置では滅菌時間の短縮の目的もあり滅菌時のEOG濃度を700 800mg/Lと比較的高濃度で制御する場合が多い.法規にしたがった安全運用のためにはエアレーションを滅菌器内で実施する必要があり,その際はエアレーションに数時間を要するため,滅菌時間短縮のメリットは少ない.また,滅菌に使用されたEOGは大半が消費されずに大気放出されるため,高濃度のEOGは環境汚染の原因となるばかりでなく,経費面の無駄につながる可能性もある.本研究では以上のような状況を勘案し,低濃度のEOG滅菌を再評価する目的で,滅菌性能の確認を行った.〔方法〕現在医療機関で主流となりつつあり陰圧式の滅菌装置を用い,EOG濃度760および400mg/Lにおいて滅菌処理を行い,指標菌Bacillus subtilis ATCC9372株のD値を測定することにより滅菌性能の評価を行った.市販のストリップ型BI(レーベン社製)を用い,D値の測定は生残曲線法にて行った.また,AAMIのテストパックによる両濃度における滅菌性能の比較も行った.〔結果〕今回の試験より,EOG濃度760mg/Lにおいて得られたD値は2.3分,400mg/LのD値は4.9分であり,EOG濃度と死滅速度定数には正の相関が認められた.また,AAMIのテストパックの結果からも今回求めたD値の信頼性が確認された.〔考察〕今回の研究によりEOG濃度を従来の約1/2に設定しても滅菌時間を2倍にすることにより同等の滅菌性能が得られることが確認された.エアレーションを含めた場合,全行程時間に対し大幅な延長は無く,排出量とランニングコストを50%程度削減できる可能性が示唆された.
著者
中村 亮一 村垣 善浩 伊関 洋
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.248-255, 2005-05-01
被引用文献数
2

はじめに -術中情報の可視化- 精密かつ安全な手術を遂行する上で最も重要な事項の一つは, 患者, 病変に関しての質の高い情報をいかに確保するかということである. 「敵を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」とは孫子の言葉であるが, 手術においてもまさしくこの言葉が当てはまる. すなわち, 対象となる病変の情報を多く獲得し, かつ自分が手術という一連のプロトコルの中で現在どういう状態にあり, これから何をするべきかを決断するための情報を獲得することが, よりよい手術結果を獲得するために必要なことである. 肉眼で確認できない患者体内の病変についてのより質の高い情報を獲得するための試みが古くより多くの医学者, 科学者によりなされてきた. Roentgenが1895年11月8日にX線を発見し12月22日に夫人の手指骨の透過写真を撮影したのが, 非侵襲的な(切開等の直接的侵襲を伴わない)体内情報の画像化の最初である. その後, HounsfieldによるX線CTの開発(1968), 和賀井敏夫らによる超音波診断装置の開発, そしてLauterbur, Mansfieldらにより開発された核磁気共鳴画像(MRI)(1971)の登場により, 体内の多品質, 高品質な画像情報の獲得が可能となった.
著者
中村 智裕 山田 悌士
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

近年,感染性医療廃棄物の処理問題は病院経営の上で重要視されつつある.特に感染性排液の処理については,その量は年々増える傾向であり,各施設によってその処理方法が問題となっている.今回われわれはその中でも泌尿器科の経尿道的手術時に発生する大量の感染性廃液の処理について着目した.これまでこれら手術時に発生する廃液の処理は感染性廃棄物専用のプラスチックバケツに廃液をため消毒剤入り凝固材によって固形化し焼却あるいは埋め立てなどの処理をしていた.しかし,この方法では,手術途中でのバケツ交換による手術の中断や廃棄するバケツの重量が重すぎ移送が困難,環境破壊などの問題を抱えていた.しかし一度の手術に出る廃液の量も多く廃棄コストの問題もあった.そこでわれわれは手術室改築にともない,この廃液処理に歯科用吸引装置を利用し,手術を中断することなく自動で廃液を吸引し,感染性廃水処理槽で非感染性処理水とした後,一般雑排水として排水するバキュームシステムを考案した.この処理システムは泌尿器科の経尿道的手術時に対応できるようバケツに金属メッシュフィルタやレベルセンサを取り付けた.また,4室同時に手術ができるようセントラル配管方式にした.さらに,使用後も容易に片付けができるように消毒や洗浄がしやすい構造に改良をした.これによりスタッフの労力の軽減や処理費用の削減,手術室の効率的運用などが可能となった.しかし,このシステムは地下に感染性汚水を処理するための処理槽を設けたり,各部屋をつなぐ配管工事が必要であったりとイニシャルコストが非常にかかる欠点がある.そこで現在はこれらの大がかりな設備を必要としない,あるいは既存の手術室にも設置が可能なシステムも考案中である.
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.699-725, 2004-11-01
被引用文献数
1

今回の調査結果報告書は,滅菌業務が日常的に行われている1,400の施設を無作為に抽出して,約3ヵ月にわたる調査期間において32%の回収率で寄せられた結果をまとめたものである.円本における滅菌バリデーションの実態を把握し,日本医科器械学会から4年前に出された「医療現場における滅菌保証のガイドライン2000」の改訂に向けての基礎資料となるものである.アンケートの集計により,滅菌のバリデーションを実施している施設が23%に達することが明らかとなった.かなり高い実施率を示す結果となっているが,この数値はバリデーションの本質が正しく理解されずに,各種インジケータを使用した滅菌業務の日常的な管理が,あたかも滅菌バリデーションであると過大解釈されてアンケートに回答している可能性が伺える.滅菌バリデーションにおいては,各種滅菌法の変動要因を把握して,初期の目的どおりに装置が機能することを科学的に検証して確認する必要がある.したがって,医療施設での滅菌バリデーションでは,装置の確認,運転再現性の確認,滅菌性能の確認が主な内容となる.すなわち,据付時適格性確認(installation qualification:IQ),運転時適格性確認(operational qualification:OQ),稼働性能適格性確認(performance qualification:PQ)である.(1)据付時適格性確認(IQ)は,搬入設置された滅菌器が設計どおりに機能できるように正しく備え付けられていることを確認する行為である.蒸気滅菌器では電気,水蒸気,水,圧縮空気の供給状況と,蒸気排気,空気排気,排水等の設備が基本条件を満たしているかどうかを評価しなければならない.(2)運転時適格性確認(OQ)では,蒸気滅菌器の場合には,空気が十分排除されて減圧がなされているか,温度が規定どおりに上昇しているか,その変動は規定値以内に収まっているか,滅菌時間は設定どおりか,などを科学的に確認しなくてはならない.(3)稼働性能適格性確認(PQ)には物理的PQと微生物学的PQがある.前者は,たとえば温度センサーによりコールドポイント(最低温部)で実負荷のもとで測定する方法などであり,後者は,実際にその滅菌法に対して抵抗性のある微生物が死滅したかどうかを確認する行為が該当する.オーバーキル法,バイオバーゲン法,ハーフサイクル法などの方法が用いられている.現在検討されている「医療現場における滅菌保証のガイドライン2000」の改訂に向けて,それぞれの施設で実施可能な滅菌バリデーションであるかどうか,さらにメーカが行うべきことかなどを明確に区別して提示する必要がある.IQとOQはメーカが実施すべき項目といえる.PQにおいては,インジケータの使用基準の作成,テストパックの作り方や置き方の解説,Bowie&Dicktestを必須とするかどうかの検討,過酸化水素ガスプラズマ滅菌のバリデーションの追加,滅菌前の洗浄のバリデーションをどこまで追及するかなどについての検討も必要となってくる.また,滅菌バリデーションを実施した場合の問題点に対して,日常管理の中でどのように検証すべきかについても考えていかなくてはならない.これからの医療施設における滅菌業務において,さらに高い水準を維持するために,医療用工業滅菌と施設内滅菌が同一基準の安全性の確保と滅菌保証を行っていく必要がある.また,滅菌バリデーションの実施を広く啓蒙していくために,その実現に向けて今回のアンケート結果を踏まえた新しい「医療現場における滅菌保証のガイドライン」の改訂が期待される.
著者
尾崎 眞 美代 賢吾 平井 正明 河野 隆二 鎗田 勝 佐久間 一郎
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.2-27, 2005-01-01

佐久間(司会) きょうは大変お忙しいところ,お集まりいただきましてありがとうございます.今回,お集まりいただきましたのは,日本医科器械学会という医科器械のメーカがかなり参加されている学会で,医科器械学という学会誌があるのですが,そこでの座談会ということで企画されまして,どんなテーマがいいだろうかということで話し合った結果,編集委員の中から「医療機器の情報セキュリティ」という問題があるだろうということで,これは器械をっくる立場で結構,今後,重要な問題になるだろうということで,現状,どういう問題があるかということ,それから技術的にはどんな可能性があるものが存在しているか,そのあたりを含めてざっくばらんに意見を交換する形で会員に有用な情報を与えたいというのが目的です.申し遅れましたが,私は今回,まとめ役を仰せつかりました東大の佐久間と申します.よろしくお願いいたします.
著者
岩淵 隆
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.306-309, 1985-06-01
著者
高島 征助 新 太喜治 加見谷 将人
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.15-22, 1996-01-01
被引用文献数
23

An attempt to estimate the radicals numbers formed from hydrogenperoxide by plasma discharging technique in the apparatus (STERRAD 100, Johnson & Johnson Med. Co.) has been done using ascorbic acid (A. A) and diphenyl picryl hydrazyl (DPPH) as radical indicator. Then, the radical numbers were reduced from the adsorbance difference at λ max. on the spectra (on A. A : ultraviolet, on DPPH : visible ray) between before and after sterilizing using the Loschmidt's number, respectively. In result, it was found that the radical numbers were similar to the molecule numbers of H_2O_2 fed into the sterilizer before sterilizing. Moreover, it was guessed that ・O radical mainly reacted on A. A and ・OH radical mainly reacted on DPPH by the spectroscopic and gas chromatographic techniques.
著者
岩田 学
出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, 2003-04-01

現在の病院の電気設備はJIS「病院電気設備の安全基準」に基づいて施工されている.しかし,この規格が制定されたのは,昭和57年11月であり,平成8年に改正されている.このためこれら以前に建てられた病院では現存のJISの設備とは異なっている場合がある.竣工から10年以上経った病院の手術室の電源事情について聞き取りと現地調査により問題点を調べた.調査では,「使用中に電気が止まったことがある」と「時々警報が鳴る」の答えが約半数からあった.この内,了解の得られた病院で現場調査を行った所,(1)コンセントの口数が足りない.(2)電気の取り方が偏っている.(3)機器の消費電力を知らない.(4)アイソレーション電源の警報が鳴っても対処方法が解らない,(5)警報が出た原因が判らない.(6)電源容量に不安を持っている.等が判った.これらの病院で現在のJISで施工される場合との違いを調べたところ,保護接地は正しく行われていたが,等電位接地はほとんど行われていないか不十分,非接地配線方式(アイソレーション電線)は持っていたが,電源容量が1室5kVAとなっていた.これらの内,心臓外科の手術室では増設工事を行って+5kVAとしている所があった.非常電源はほぼ使われていたが,瞬時特別非常電源(無停電)の使用は限られていた.また調査した手術室の多くで,電源配線に変更が加えられていたが,これは十数年間の間に医用電気機器が増えて来たためと推察された.これらの問題点を整理して,土曜日1日で改修できる計画を立てて実施した.主な改善は,(1)電源回路を目的別に分配,(2)コンセント回路数の増設,(3)コンセントモジュールの追加,(4)過電流警報器の設置,である.