著者
飯村 慈朗 蒲 伸泰 平林 秀樹 春名 眞一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.404-409, 2007-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
17
被引用文献数
2

後部副鼻腔 (後篩骨洞と蝶形骨洞) 嚢胞による視器障害を起こし, 緊急手術を施行した6症例について報告した。症例1~3は視力障害を起こしており, 症例4~6は視力障害を伴わず視器障害は外眼筋麻痺のみであった。視力障害を起こした3症例のうち, 発症から手術までの期間 (罹患期間) が24時問以内であった1症例の視力は完治した。しかし, 罹患期間1ヵ月以上であった他2症例の視力は軽度改善するも完治とはならなかった。そして外眼筋麻痺のみを起こした3症例は罹患期間にかかわらずすべて完治した。今回われわれは, 後部副鼻腔嚢胞による視器障害の予後・緊急性の有無について検討をし, 視神経障害と比較して外眼筋麻痺のみの障害の場合は緊急性が低いと考えた。
著者
北村 正樹 景山 茂
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.688-692, 1996-12-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
4
著者
廣瀬 肇 望月 高行
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.274-282, 2005-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
22
被引用文献数
2

最近経験したWallenberg症候群の1例を中心に耳鼻咽喉科医としての立場から嚥下障害とその対策について考察した。今後, 脳血管障害の頻度の増加が予想されWallenberg症候群に直面する機会も稀ではないと考える。本症の病態をよく理解し, 適応があれば積極的な手術的治療に踏み切る必要があり, その手技についての知識と経験を備えていくことが耳鼻咽喉科専門医に求められるところである。嚥下障害の病態は複雑であり, その対策にあたっては, 学際的アプローチに加え患者の家族の理解と協力が不可欠である。各医療施設においても, 耳鼻咽喉科医をはじめ, 各科の医師およびコメディカル専門職員の協力に基づくチームアプローチによって嚥下障害診療の実をあげていくことが肝要である。嚥下機能の改善は患者のQOLの向上に直結するもので, 耳鼻咽喉科医として今後ますますこの問題に積極的に取り組んでいくべきである。
著者
馬場 一泰 柴田 清児ブルース 古川 昌幸 友田 幸一
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.395-399, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
2

Various surgery supported equipments have recently advanced remarkably. The possibility of the navigation system as the tool for surgical skill improvement was evaluated in 30 cases between January, 2006 and September, 2008. The 28 cases was assessed as “Useful” of the navigation system, and the 8 cases was assessed as “Necessary” of the navigation system. It was concluded that the usefulness of navigation system had being changed by the surgeon's experience from the first stage to the present and it will play an important role in the surgical skill improvement and safe operation.
著者
勝井 則明 真鍋 美智子 喜多 英二
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.Supplement1, pp.3-8, 2005-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
4
被引用文献数
2

院内感染における医原性因子の一つであるネブライザーの微生物汚染対策について検討した。本研究では, 病院で使用中のネブライザーの管理方法と微生物汚染度との関連性, ネブライザーの消毒とその効果, 蛇管・鼻管あるいはエアフィルターからの汚染菌飛散の有無, ジェット式および超音波式ネブライザーについての細菌汚染試験, 超音波式ネブライザーの薬液カップの損傷と汚染菌の侵入性などについて調べ, ネブライザーの効果的かつ実際的な汚染防止対策をまとめた。
著者
大野 芳裕
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.430-434, 1998-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
12

外耳道真菌症14例 (0歳から72歳, 平均41.0歳) に対してラノコナゾール (アスタット®) 軟膏外用療法を行いその有効性を検討した。治療としては外耳道内の清掃後, ラノコナゾール軟膏を綿棒にて鼓膜から外耳道深部を中心に週に1~2回程度塗布し, 視診上真菌が消失するまでの期間を観察した。ほとんどの例は2~4回までの処置で真菌は消失し, そのうち6例は1回の処置のみで真菌が消失し再発例は1例も認めなかった。ラノコナゾールはAspergillusやCandidaに対して高い抗真菌活性を示す。また基剤である油脂性軟膏は皮面保護作用を有し, 粘性が高いために長時間にわたり薬剤が局所に留まるという効果がある。これらの点で優れた治療効果を発揮したものと考えられ, 湿潤・びらんを示す例を含めた外耳道真菌症の治療に有用であると思われた。
著者
三輪 高喜
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.70-79, 2011 (Released:2012-04-15)
参考文献数
26
被引用文献数
2

嗅覚検査の現状と将来の展望について概説する。嗅覚検査は自覚的検査と他覚的検査に分けられるが, 他覚的検査はいまだ臨床で用いられておらず, 臨床検査として行われているのは自覚的検査のみである。自覚的検査は, 域値検査, 同定能検査, 識別検査に分けられ, 域値検査は患者のニオイを感じる強さすなわち嗅力を表している。同定能検査ならびに識別検査は患者のニオイを嗅ぎわける, または認識する能力を表している。わが国で行われているT&Tオルファクトメーターは域値検査と同定能検査の両方を兼ねた検査であるが, 検査の煩雑さとニオイ汚染の問題から臨床の現場で用いられることは少ない。近年, ニオイスティック, Open Essenceなど日本人に適した嗅覚同定能検査が開発され発売されている。同定能を測定するのに有効な検査法であるが, まだ保険承認が得られていないため, 臨床検査として用いることはできない。今後は他覚的検査の臨床応用とともに, これらの同定能検査が臨床の場で用いられるようになることが求められている。
著者
遠藤 朝彦
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.252-275, 1999-06-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
48

アレルギー性鼻炎に対する水泳環境の影響について文献的展望, 臨床統計的観察, 疫学的研究, 実験的研究を実施した。その結果, プール水の水質をはじめとし, 水泳をとりまく環境の中にアレルギー性鼻炎の症状を悪化させる要因が潜んでいることが明らかとなった。また, 悪化をもたらす機序として, 鼻粘膜の異物の透過性亢進や抗体産生の増強が関わっている可能性が高いことを示唆する実験結果が得られた。得られた結果を総合的に考察して, 「安全で健康的に泳ぐためには, 水質が適正に管理された水泳用プールで, 適度な運動量を守って泳ぐことが大事である。」との結論を得た。
著者
保手浜 勝 竹森 利和 平岡 哲也 荻野 敏
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.49, no.Supplement1, pp.37-40, 2006-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
4

【目的】43℃のエアロゾル, すなわち鼻局所温熱療法が鼻アレルギーの諸症状に有効であることについてはすでに多くの報告がある。今回家庭の浴室で48℃のミストを発生するいわゆるミストサウナの鼻アレルギー等の鼻閉に対する効果を検討した。【対象および方法】10名の鼻アレルギー患者を対象に, ミストサウナ入浴 (10分) と通常の40℃の入浴の鼻閉に与える効果をVASおよびacoustic rhinometry (AR) により比較した。なお, 全例別の日時に両方の入浴および測定を行っている。【成績および考察】通常入浴では, 出湯直後のみVASで鼻閉の改善がみられたが, acoustic rhinometryによる鼻腔容積の有意な増加はみられなかった。それに対し, ミストサウナではVASにおいてもacoustic rhinometryにおいても鼻閉の改善は30分以上持続し, 90分後においてもミストサウナは通常入浴に対して有意に鼻閉改善効果がみられた。このようにミストサウナは従来の鼻局所温熱療法と同様の効果がみられ, これを用いた毎日の入浴は鼻アレルギーの症状改善に有用と思われた。

1 0 0 0 OA 頸部リンパ節

著者
尾尻 博也
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.450-451, 1997-08-15 (Released:2011-03-18)
著者
松尾 光馬
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.134-143, 2019-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
11

ヒトヘルペスウイルス α ヘルペス亜科に分類される単純ヘルペスウイルス1型 (herpes simplex virus type 1: HSV-1), 2型 (HSV-2), 水痘・帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus: VZV) 感染症は皮膚科, 耳鼻咽喉科での日常診療においてしばしば遭遇する。 その臨床型はさまざまであり, HSV 感染か, VZV 感染かで迷うこともしばしばみられる。 HSV と VZV 感染症では抗ウイルス薬の投与量は異なり, また, 皮疹の重症度, 腎障害の程度などによって投与量, 投与方法の調整が必要となる。 本稿では同ウイルスによる臨床症状, 診断法, 帯状疱疹に関しては合併症, ワクチンによる予防についても述べてみたい。
著者
西部 義久 永野 篤弘 上嶋 康秀
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Supplement1, pp.46-49, 2002-08-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
6

点鼻製剤は, 鼻腔局所で作用する薬物のみならず, 全身作用を目的とする薬物においても, 経口・注射に代わる投与経路として期待されている。しかしながら, 線毛運動等のクリアランス機構によって, 製剤の鼻腔内滞留時間は制限を受け, より効率的なデリバリー達成のためには薬物浸透性の向上が必要とされる。薬物浸透性を向上させる方法として, 吸収促進剤の添加, 粘膜付着性高分子の添加さらには粉剤化などが報告されている。今回, これらに代わる新規な薬物浸透性改善法を検討した結果, 懸濁製剤の浸透圧を低く調整することにより, 薬物浸透性が劇的に向上することを見出した。ウサギを用いたフルオレセイン経鼻吸収試験において懸濁製剤の低浸透圧化によりフルオレセインの生物学的利用率が顕著に向上した。懸濁製剤の低浸透圧化による薬物浸透性向上は, 吸収促進剤を一切使用しない, 安全な新規点鼻製剤技術としてその有用性が期待される。
著者
北村 正樹
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.229-232, 2015-08-15 (Released:2016-08-15)
参考文献数
4
著者
山本 和央 小島 博己 田中 康広 常喜 達裕 池内 聡
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.294-299, 2009 (Released:2010-10-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

中耳真珠腫術後に発生し経乳突法と経中頭蓋窩法を併用した術式により部分切除, 摘出, 骨欠損部を整復し得た側頭骨内髄膜脳瘤の1例を経験した。症例は40歳の男性。弛緩部型中耳真珠腫の診断で, canal wall up tympanoplastyにてstaged operation (段階手術) を施行した。初回手術所見にて中頭蓋窩硬膜の広範囲な露出を認め, 真珠腫上皮と硬膜との癒着が著明であった。段階手術2回目の手術の際に硬膜を一部損傷したため, 筋膜で補修した。骨欠損部に対しては皮質骨で乳突腔側より補強し乳突腔は骨パテで充填した。1年後に外耳道後壁に拍動を伴う腫脹とdebrisを認めるようになり, CT, MRI所見より髄膜脳瘤及び真珠腫再発と診断した。まず経中頭蓋窩法により頭蓋底骨欠損部から逸脱した脳髄膜瘤を一部正常硬膜を含め切断した。硬膜の欠損部は筋膜にて形成し, 骨欠損部を骨片にて再建した。次に経乳突法により髄膜脳瘤と癒着した真珠腫上皮を摘出した。耳介軟骨にて外耳道後壁を再建し, 乳突腔側からも中頭蓋窩の骨欠損部を骨片で再建し, 乳突腔は骨パテで充填した。現在術後12ヵ月経過しているが, 再発を認めていない。本疾患は髄膜炎や脳膿瘍などの重大な合併症を引き起こすことがあり, 的確な診断と治療が必要である。
著者
今井 透 遠藤 朝彦 吉村 剛 宇井 直也 大久保 公裕 藤倉 輝道 新井 寧子 余田 敬子 北嶋 整 相田 瑞恵 小津 千佳 酒主 敦子 森山 寛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.427-438, 2005

東京都において, 観測史上最多のスギ花粉飛散を記録した20o5年に, 多施設共同でスギ花粉症に対するラマトロバンおよび抗ヒスタミン薬との併用療法を, 鼻症状およびQOLについて花粉症日記と日本アレルギー性鼻炎標準調査票 (JRQLQ No.1およびNo.2鼻眼以外の症状用) を用いて検討した。比較に際しては, 初期治療群と飛散後治療群に群別した。初期治療群では飛散後治療群に比較して, 鼻症状およびQOLともにスギ飛散ピーク時のスコアの抑制がみられ, 副作用は認められなかつた。作用機序の異なるラマトロバンと抗ヒスタミン薬との併用は, シーズン10,000個/cm2を超えるような大量飛散年においても, 飛散ピーク時の鼻症状ならびに患者QOLを改善することから有用な治療法であることが示唆された。
著者
榊原 昭
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.286-292, 2017-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
9

耳鼻咽喉科診療への内視鏡ビデオシステムの導入は, 局所の詳細な観察, 画像の保存が可能になるなど, メリットが多い。 しかし一方では, カメラや光源の導入コスト, 機材の大きさ, 煩雑なケーブルの取り回しなどが欠点となっている。 モニターや操作用のダイヤルなどを一切省いたユニークなレンズ交換式の汎用デジタルカメラ (Olympus AIR A01®) は小型軽量で, 撮影条件の設定や画像の確認などは, 無線で接続されたスマートフォンやタブレット端末で行うのが特徴である。 これに iPad Pro®, バッテリー LED 光源を組み合わせて, 安価で小型の無線接続内視鏡ビデオシステムを構築し, 鼓膜, 鼻副鼻腔の観察と記録, さらには内視鏡下の処置と小手術に応用して, 2年間にわたってその有用性と安全性について検証した。 当システムは小型軽量でケーブルが不要でモニターも自由に移動でき, 耳内や鼻副鼻腔の観察と記録のみならず, 内視鏡下の処置や小手術も安全, 確実に行うことが可能であった。 また, リアルタイムで iPad Pro® に表示されるストリーミングビデオ, 記録された画像ともに高品位であった。