著者
大塚 礼穂 横山 弥生
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement1, pp.41-46, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

本研究は, 数列をCGにより視覚化し, さらに作品へと展開した例を示すものである.従来, 形態の生成において数列を利用することは稀であったが, 数列を視覚化した結果, その美しさには目をみはるものがあった.数列を形の変化の規則とし, 回転を主としたアフィン変換を用い, 動きを与えることで新しい形を生み出す.また, CGを利用することで複雑な形態や図形のシミュレーションを短時間で行うことができた.さらに, 作品への展開には, リズミカルで変化のある美しい形の生成も可能となった.完成した形態は, 基本図形のイメージとは異なる美しさを持ち, 立体への展開においても予想以上に美しい形態生成の方向性が示唆された.
著者
吉澤 大輔 横澤 肇
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.45-48, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

樹木は, 樹種によって異なる遺伝的形質とその樹木が存在する周囲の生育環境によって生長が決定され, 生育環境に適した樹形を形作る.樹木の生長要因には, 光, 重力, 風, 温度, 水, 地質などが挙げられる.本研究では, その中で光環境が樹木に与える影響に注目して生長シミュレーションを行うことにより, 生育環境に適応して生長する樹形の多様性を表現する.特に, 樹木の経年変化と下枝の枯れ上がり, そして, 複数本の樹木が密集した条件における, 樹木間の相互作用による特徴ある樹形の形成を表現する.
著者
井堰 絵里佳 伏見 清香
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.9-16, 2017 (Released:2018-06-01)
参考文献数
12

スマートフォンのディスプレイ上において,「視認性」と「理解度」の高いピクトグラムを用いた解説支援Webサイトを制作する.そのために第一の目的として,スマートフォン上でのピクトグラムの使用サイズにおいて,「視認性」と「理解度」が高くなる「図の細かさ,精細さ」を明らかにする.第二の目的として,その結果を反映したピクトグラムを用いたスマートフォン用解説支援Webサイトを制作し,その有効性を明らかにするために,博物館において評価実験を行う.その結果,「視認性」と「理解度」が高くなる「図の細かさ,精細さ」は,「図」が細い方に偏る傾向があることが明らかになった.
著者
太田 高志 藤堂 英樹 加納 徹
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, 2019
被引用文献数
1

本研究はデジタル画像から多色刷り版画を作成することを試みたものである. セルフィーやプリクラなど自分自身の画像を工夫して撮ることの流行とクールジャパンと呼ばれるような日本文化への注目に触発されて,筆者らは自身の画像が浮世絵風に変換されると面白いのではないかと考えた.また,実際に多色刷りの版画として紙に印刷することができればさらに面白く教育的な体験を与えることができるのではないかと考えた.実現にあたって,基となる写真を画像処理により浮世絵風な画像に変換し,さらに色別に分解することによって版木の3 Dデータを用意した.これを3 Dプリンターによって印刷して版木を作成することができる.作成した版木を使って実際に多色刷りの作品を紙に印刷することができたことから,こうしたアプローチが可能であることを確認することができた.
著者
近藤 邦雄 岡崎 真知子 土井 章男 松田 浩一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Supplement, pp.29-34, 2001 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

モーションキャプデータは、人の動きをそのまま測定するため、リアルな動作データが得られるが、冗長な情報を含んでいる場合が多く、動作の修正や変更には多くの手間と時間が掛かる。本研究では、測定した動きの特徴をそのまま生かし、冗長な情報を削減する手法を提案し、モーションキャプチャデータをユーザーにとって扱い易いものとすることを目的とする。そこで、モーションデータのxyz軸の角度データに対し制御点削減を行なう手法を提案する。この手法を用いて削減したモーションキャプチャデータの動作の比較や検討をしたした結果、提案手法を用いて削減されたモーションキャプチャデータは削減前と比較するとほぼ同等の動きをすることが確認された。また、特徴となる動きのみを抽出するため、動作強調法に対し有効であることが確認できた。この削減手法の特徴は以下の通りである。 (1) 測定した動きの特徴を生かした削減が可能である。 (2) 削減の割合をユーザがコントロールできる。 (3) データ量の削減が実現できるので大量の動きのデータベース構築に有効である。 (4) データ量を削減することによって、動きの修正が容易に行なうことができる。 (5) 削減したデータは動作強調法に対し有効である。提案手法により、元の動きの特徴を保持しながらデータ量は約50%に抑えることが可能となった。
著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-12, 2010 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

彫刻とは,材料の素材が持つ3次元の立体性を本質的な形式とする芸術である.しかし,彫刻が3次元であるという自明の事実と,彫刻を立体として捉えるということは同一ではない.そこには,平面において奥行き概念を獲得する絵画空間にも似た,立体認識の特異な仕組みがある.ただし,立体概念とは単なる知覚以上の内容を意味し,感性上の現象であるという点で主観的な認識と言える.だが,それは2次元の平面に投影された線の認識を必要とし,それを手掛かりにとすることで技術的に検証が可能である.ただし,彫刻における線の意味は,所与の実体である材料に対する操作を直接導く理念の現れでもあり,そこに彫刻の独自性がある.つまり,彫刻の立体概念には,単なる形状とは別種の,制作過程,素材の物性といった複合的要因が密接に関係しているのである.
著者
徐 弘毅 兼松 祥央 茂木 龍太 鶴田 直也 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
Japan Society for Graphic Science
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.11, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

日本のロボットアニメは長い歴史を持ち,多くの傑作が制作されている.また,戦闘シーンはロボットアニメにとって重要なシーンの1つである.本研究では,ロボットアニメにおける戦闘シーン制作のための構図設計支援システムを提案する.そのため,既存のロボットアニメ10作品から,2531の戦闘シーンを抽出し,ロボットの行動,カメラの動き,ショットサイズなどを分類した.また,これらの分類を用いてカメラワークや構図に関するデータのライブラリを開発した.このライブラリを用いることで,ユーザーは戦闘シーンを制作する際に,演出意図に合わせたカメラワークを検索可能である.開発したライブラリを用いた実験の結果,このライブラリは特に映像経験のないユーザーにとって有用であることが分かった.このことから,ディレクターなど映像制作ツールの取り扱いを専門としないユーザーでも容易に戦闘シーンの構図設計が可能である.
著者
武士俣 貞助 岩井 実
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.1-9, 1973 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2
著者
斉藤 孝明 鈴木 賢次郎
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-4, 2000

切断面実形視テストの誤答原因を立体視化等により奥行き感を調節する方法を用いて探る試みが行われている。本調査では先に報告した実写映像版MCTと同様の視差を持つ線画版立体視MCTを開発し、その結果を実写映像版や透視図版の結果と比較した。主な結果を以下に示す。平均得点は透視図版と変わらず、実写版よりも低い。問題毎の正解率は、透視図版に比べて一部の問題で増加しているが、一部の問題では減少しており、相殺されて平均得点に差が現れなかったものと思われる。実写版の平均得点が線画版よりも高いのは実写版に固有の「面の陰影」によるものと考えられる。線画版・実写版いずれの場合でも全解答時間および問題毎解答時間に差は認められなかった。
著者
深田 陽子 山口 泰
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.9-14, 2008

本研究では, 顔画像を解析することによって, 顔の見た目年齢を推定するとともに, その見た目年齢を保存しつつ魅力度を高める顔画像の操作法の実現をはかる.顔の見た目の年齢推定には, 各年代を代表する典型的な顔をサポートベクターマシンによって学習させ, 年齢判別ベクトルを求めた.この年齢判別ベクトルに各顔の特徴ベクトルを投影し, 年齢推定の判断基準として用いた.顔の魅力操作にあたっては, 性別や年代といった要素とは独立して, 魅力的/非魅力的と感じさせる要素があるものと仮定し, 年代ごとの魅力顔について調査した.以上を踏まえた上で, 入力画像に対して見た目の年齢を保ったまま顔の魅力を増減するために, 入力画像の年代を推定し, その年代における魅力顔に近づける操作法を示す.
著者
原 正敏
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.45-65, 1969 (Released:2010-08-25)
参考文献数
35
著者
加藤 千佳 太田 昇一
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.103-108, 2007

葛飾北斎は, 国際的にも有名な日本を代表する絵師の1人である.彼は狩野派・土佐派・洋風画・漢画など様々な画風を学んだとされ, それらを吸収しながら彼独自の作風を作り上げた.北斎の構図は独創的であり, いくつかの著作の中でその構図の基礎を著している.「三ツワリ法」や「コンパスと定規を用いての作図法」を絵手本で紹介し, また遠近法と陰影を強調する手法を用いて「洋風木版画シリーズ」を描いている.本研究では, 彼の代表作である「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」を対象に, 「神奈川沖浪裏」の芸術性を高めている重要な要因の1つが北斎独特の構図に因ることを, 「おしおくりはとうつうせんのづ」との関連性から検証した.さらに幾何学的観点から構図に潜む比の果たしている役割について考察を行い, 特に構図の要となる不変な黄金矩形が存在することを幾何学的に立証する.
著者
宮腰 直幸
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.17-18, 2014

種差海岸に立っていた潮観荘と呼はれる別荘兼アトリエの再現CGを作成した.この建物は吉田初三郎のアトリエであり,昭和28年に焼失している.資料は数点の写真とスケッチ,模型および当時の状況を知る人の証言という状況で非常に困難な作業となった.作成したCGムービーは2013年7月に青森県立美術館で開催された特別展で公開された.
著者
蛭子井 博孝
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.9-14, 1985
被引用文献数
1

The Cartesian ovals are simply defined with bipolar coordinates. However it is difficult to draw them by handwriting. In this paper, therefore, we have constructed a computational drawing system by means of XY plotter that works with PC 8001mkII. And then, the ovals will show some particular properties. First, the ovals change gradually with left and right eccentricities. Second, the set of the intersections of three circles forms the oval. Third, when the eccentricities change continuously without changing the director circle and the foci, the ovals fill between the ellipse and the director circle. Forth, there can be shown two kinds of evolutes of the ovals. The one is drawn as an evelope of the straight lines, and the other with paramatric equations. In this way, these properties of the oval can be shown for the first time by using computational drawing system.
著者
阿部 浩和
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement1, pp.179-184, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7

近年, 建築系の設計教育において学生の提出図面に見られる図的表現法の混乱や設計製図技量の不足などが指摘されており, 自分でイメージした建築形態が模型では表現できても, それを設計図面に表現することができない学生も見受けられ, このことは建築の外部形態と内部空間との関係や, 3次元形態と2次元表現との対応関係が十分涵養されていない可能性があることも考えられる.このような現象は以前からも同様であるのか, それとも初学年の図学・製図教育のCAD/CG化に起因するものか, はたまた初等, 中等教育における図形関連教科の削減が原因なのかは不明である.ただ少なくとも近年のCAD/CGを含む情報化技術の普及とともに, 正確に図を作図し表現することの意味が希薄になってきている可能性があり, 学生の素養に変化がでてきている可能性がある.このような観点から本稿では, 建築系学生の大学1年次から3年次までの図的表現を含む演習科目を比較分析するとともに, CAD/CG教育の影響と学生の製図技量の現状について考察する.
著者
山内 一晃 阿部 浩和
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.35-40, 2004

大学は社会で期待される能力を備えた学生育成を教育目的の一とするが、期待される能力の内容や大学での教育成果がどの程度企業で生かされるのか十分把握できているとはいえない。そこで大学教育と企業教育の接点を模索する第1段階として、大手総合建設会社T社の建築設計に関する新社員教育の概要を記録・分析し以下の結果を得た。T社の社員教育は全社的社員教育を推進する「教育研修体系」として整備され、新社員教育はその内の社員や管理職等の階層別教育の一として位置付けられ昭和43年から毎年実施されていること、新社員は1年間大阪で全寮生活を送り、入社後7日間の導入教育を受けたあと3回の配置転換を経験すること、技術系新社員は設計部、見積部、作業所の3部署を経験すること、設計部配属の新社員は配属先の指導担当者からマンツーマン教育を受け、設計部独自のカリキュラムに基づく品質、環境、防災、CG, CAD等の新社員教育を受講し、設計部配属終了時にはそれまでの設計教育の総集編ともいうべきONEDAY EXERCISEなる設計演習を行い、教育成果と設計能力の評価を受けること、この間上長と指導担当者は「新社員教育計画・指導記録表」の作成とフォローを行い次部署に引き継ぐこと、設計部配属の新社員は各種の新社員教育や寮会に出席のため、現業の実務時間は一般社員の約75%程度であること、などが判明した。
著者
加藤 道夫
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement2, pp.83-88, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5

モデュロールの初期の導出作図には, それまで用いられてきたトラセ・レギュラトウールの内, 対角線を手段とするトラセ・ディアゴナルが適用されていた.本研究はトラセ・ディアゴナルの性質を明らかにすることで, 初期の導出作図の誤りが軽視された理由を考察するものである.その結果, 次の点が明らかになった. 1) 初期の導出作図は近似解であり, その誤差を再検証した結果, ル.コルビュジエの著書で指摘されるように0.6パーセントであった. 2) トラセ・ディアゴナルの適用例を検証し, それが事後的な調整であり, 予め定められた一定の比に依存しないことがわかった. 3) 初期の導出作図に見られるトラセ・ディアゴナルも事後的に確認された近似的関係を作図に導入したものである. 4) 以上から, 当初の導出作図の誤差は, それ以前のトラセ・ディアゴナルにおける誤差と同様, ル・コルビュジエにとって大きな問題ではなかったと考えられる.
著者
渕上 季代絵
出版者
図学研究
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.75-78, 2001

本研究は唐草紋様の螺旋について、そのパターン的特徴から何らかの数理的要素を取り出し、パターン生成アルゴリズムの作成を目的としている。前回は風呂敷のパターンを対象に全体的特徴と部分的特徴について述べた。全体的特徴として、個々の螺旋が連結して全体を構成しており、しかも平面が螺旋によって均一に埋め尽くされている平面充填パターンであるとした。また、部分的特徴としては、個々の螺旋の形態的特徴と螺旋間の関係について明らかにした。今回は、全体的特徴である平面充填について検討し、螺旋による平面充填パターンの生成アルゴリズムの作成を試みた。まず、手がかりとして平面充填曲線の描画アルゴリズムを検証した。一定の操作で線を折り曲げていくと平面を埋め尽くすことで知られているこの曲線の各部分に螺旋を配置することで螺旋による平面充填が可能になると考えた。唐草紋様の平面充填以外のパターン的特徴として螺旋どうしは交叉がなく、連結していることが挙げられることから、これらを満たす配置の方法を検討した。